再会を斬る(前編)
「あれから八年か···」
八年前にエビルバードに捕まり何千キロも離れた巣まで運ばれてしまった、逃げ出そうともしたが降りられる高さの場面が全くなく、結局巣まで何もできなかったのである、幸い巣に到着したらすぐ逃げることができた、大蛇という大きな獲物がそばにあったのですんなり逃げることができたのである。
「アカメとクロメ、どうなったのかな?」
巣から逃げ出した後二人が気になって戻ろうとした、だが全く知らない場所であの秘境がどこにあるのか検討もつかなかったのである、それに万が一戻れたとしても試験の途中で逃げ出したとみなされ抹殺されるおそれもあったのである。
「アカメがそばにいれば大丈夫だと思うけど」
二人が無事にゴールしたとしても二人一緒にいられるとは限らない、姉妹別々にされる可能性もあるのだ、この予想が外れてくれればいいのだが。
「この八年色々訪れたわね」
この八年色々なところへ巡りまわったものだ、帝国の辺境、南の異民族、西の異民族の領土、北の異民族の領土はまだ訪れていないが一度くらいは行ってみようと思う。
「さて、野宿に適したところを探さないと」
まだ日は暮れていないが明るいうちに野宿に適したところを見つけておかないといろいろ面倒になるのである、闇夜になってからでは格段に手間がかかるからである、洞窟が見つかれば楽なのだが。
「今夜も木の上かな」
しばらく歩いてみたがやはり都合よく洞窟なんて見つからない、諦めかけていた時に予想外のものを発見したのである。
「あれは···もしかして村?」
正直信じられなかった、こんな人里離れた辺境に村があるなんて、とにかくこれは渡りに船である、村に行ってみるとしよう。
「へぇ、ちゃんとした村じゃない」
廃村寸前の村かと思っていたが建物は新しく村が作られて年月はそうたっていないようである、最近できた開拓村なのだろうか、とにかく野宿を回避できそうである。
「とりあえず食堂に行ってみようかな」
食堂に行けば人が集まる、そこでいろいろ聞いてみようと思う、こんな辺境になぜ村があるのか興味があるから。
「いらっしゃい!!」
食堂に入ると女性が笑顔で迎えてくれた、歳は二十前半くらいだろうか、愛想のいい美人である。
「注文は何にする?」
「とりあえず定食を」
「あいよ、ちょっと待っててね」
「わかった」
しばらく待っていると定食が出来上がった、思ったよりもずっと早い、さっそく定食をたいらげた、なかなかの味である、食べ終わりお茶を飲んでいると人が入ってきた。
「魚を持って来たぞ」
その声に聞き覚えがあった、勘違いではなく確かにその声に聞き覚えがあるのだ、振り向いて確認すると···
「アカメ?」
目の前に一人の少女に面影があった、アカメが成長したらこうなるだろう、それに雰囲気があの頃のアカメと同じなのである。
「お前は?」
アカメも目の前にいる少女を見て思い出そうとしていた、そしてそれは確信に至る。
「生きていたのか!?」
8年前にアカメとクロメを助けようとして消息不明になってしまった少女が目の前にいる、アカメも冷静でいられなかったのだ。
「あなたも生きていたのね」
「ああ」
「よかった」
思わぬ再会であった、感激のあまり抱きつくというのはありふれた話だが今回はそうではなかった。
もにゅ
「大きくなったわね」
抱きつくことはせずかわりにアカメの胸を思いっきり揉んだ、そしてそのまま揉み続けるのであった。
「ななな」
いきなり胸を揉まれてアカメは顔を真っ赤にしてあ然としていた、そしてそれは怒りに代わった。
「何をする!!」
アカメは振りほどいてキッとにらみつけた、本気で怒っているようである。
「何って、これは都会で流行っている女子同士のスキンシップよ」
「スキンシップ!?」
「そうよ」
「とても信じられん」
「あなた最近都会に行ってないでしょう?」
「確かに」
「じゃあ、嘘だって断定できないでしょう」
アカメは反論できなかった、都会の流行など全く知らない、だから嘘だと断定できないのである。
「本当に流行っているのか?」
「信じる信じないはあなたの自由よ」
そう言われてアカメはそういうのが流行っているんだなと思うことにした、何が流行るかわからないからである。
「じゃあ、さっそく続きを···」
「やめろ!!」
「なぜ止めるの?」
「···恥ずかしいからだ」
「これはスキンシップよ、別に恥ずかしくないわよ」
「しかし」
「あなたって堅いとこあるわね、8年前から変わっていない」
「そうか?それなりに社交性が身についていると思うが」
「まだまだね、もう少し上を目指してもいいと思うよ」
そうなのか?私は堅いのか?もう少し柔らかくなった方がいいのか?
アカメが頭を悩ませていると食堂に誰かが入ってきた、それはアカメと同年代の少女であった。
「アカメちゃん」
「ああ、ツクシか」
「ツクシ?」
「ああ、私の仲間だ」
仲間か、この娘も8年前の試験に参加していたということよね、一見気弱そうに見えるけどあの試験から生き残ったのだから弱いということはないはず。
「ふぅん」
それにしてもこの娘胸大きいわね、アカメよりも大きい、ぜひ揉んでみたいわね。
心の中でそう思っているとアカメは予想外の行動をしたのである。
もにゅ
「ア、アカメちゃん!?」
アカメは突然ツクシと呼んだ少女の胸を揉んだのであった、彼女は突然のことに真っ赤になってうろたえた。
「な、何するの!?」
なぜいきなりアカメが自分の胸を揉んだのかツクシはわけがわからなかった。
「これは都会で流行っているスキンシップだそうだ」
「スキンシップ!?」
「ああ」
「と、とても信じられないよ」
「確かにな、だが流行っているんだ」
「そ、そうなんだ」
ツクシは自信を持って答えたアカメを見てそうなんだと信じることにした、普通に考えたらおかしいと思うものだがアカメがそうだと言ったらあっさり信じるアカメのことをとても信じているんだろう。
「あのー」
さすがにこのまま放っておくのはまずいかな、早くあれは嘘だと訂正しないと。
「お前も私の胸を揉め」
「ええ!?」
「都会のスキンシップを経験しておく必要がある」
「で、でも」
「遠慮はいらんぞ」
「···恥ずかしいよ」
周りに人が大勢いる中で胸を揉みあうなんて恥ずかしすぎる、ツクシはどうしても決断できなかった。
「私はお前ともっと親交を深めたいんだ」
「私もだよ、でも···」
「大丈夫だ、すぐ馴染む」
「わかった、えい!」
ツクシもアカメの胸を揉んだ、さすがにアカメのように思いっきりは揉めないがそれでもアカメの顔を赤面させるには十分であった。
「いいぞ」
「えい、えい」
ツクシは死ぬほど恥ずかしかったがアカメともっと仲良くなりたいという思いでアカメの胸を揉み続けた、アカメも負けじとツクシの胸を揉んでいる、その様を見て店の客は大盛りあがりした。
「いいぞ、もっとやれ!」
「ヒュー、ヒュー!」
「いっそのこと胸を出せ!」
興奮して悪乗りが進んでいく男達、それを見てさすがに不安を感じ始めた。
···まずいわね、ちょっとした冗談だったのに、大事になってきた、このまま一線超えなければいいんだけど。
今さら冗談だったと言える雰囲気ではない、こうなったらなるようになるしかない、うまくいったら乗り切れるかもしれない、そう期待しつつただ傍観することにしたのである。