守銭奴を斬る
シュテンを倒したシェーレは今すぐにでもサヨの元へ駆けつけたいのであったがメガネを失いほとんど見えない状態だったので動けないでいた、どうにかできないかと考えているうちに誰かが近づいてくる気配を感じた。
誰!?
もし新たな敵ならまずい展開になる、たまたま奇策がうまくいって倒すことができたが次はうまくいくとは限らない、そう不安を感じていると聞き慣れた声が聞こえた。
「シェーレ!?」
その声はサヨの声であった、近づいてきた人物はサヨだったのである、シェーレは心から安堵した。
「サヨ、無事でよかったです」
「多少傷は受けたけど、なんとか大丈夫よ」
「傷?大丈夫ですか?」
傷を受けたと聞いてシェーレは慌ててサヨの元へ駆けつけようとした、するとシェーレは足がもつれてサヨを巻き込んで地に倒れてしまったのである。
「す、すいません」
「だ、大丈夫よ」
「本当にすいません」
もにゅ
「きゃっ!」
シェーレは倒れた際にサヨの胸の触れており、思わず胸をもんでしまったのである。
「す、すいません!」
「き、気にしないで」
シェーレはなんとかしょうと動こうとした、だがシェーレは慌ててしまいさらに騒動になってしまうのである。
もにゅもにゅもにゅもにゅ
「ちょっと、シェーレ、胸、揉まないで!」
「あわわ、すいません、本当にすいません!」
もにゅもにゅもにゅもにゅもにゅ
シェーレは完全に取り乱しさらにサヨの胸を揉んだのである、シェーレを制止するのはほぼ不可能であった、それでもサヨはみすみす胸を揉み続けられるわけにはいかなかった。
「シェーレ、とにかく落ち着いて、深呼吸をして落ち着いて!」
「は、はい、ヒッヒッフーしてみます」
「それ違う!」
どうしよう、何て説明したらいいのかな···とにかくどうにかして落ち着かせないと···
何か妙案がないかと考えようとするも胸を揉まれまくったことで頭が十分に働かなかったのである。
何も思い浮かばない、それに何か妙な気分になってきた、何なのこの気分···
突然浮き上がってきた気分に戸惑うサヨ、いつまでも続くかと思われたこの営みは突然終わることになる。
「···何やっているんだ、お前達?」
その場に現れたのはナジェンダであった、目の前の光景にさすがのナジェンダも首を傾げている。
「ボ、ボス、これは、その···」
サヨは慌ててナジェンダにこれまでのいきさつを説明した、案内役の密偵が殺されたこと、殺した者が羅刹四鬼であったこと、その羅刹四鬼をなんとか倒したことをナジェンダに説明した。
「···まさか羅刹四鬼と交戦していたとはな」
ナジェンダはいきさつを聞いて驚いていた、羅刹四鬼は大臣の強力な手駒、こんな辺境で遭遇するとは思っていなかったのである。
「奴らと戦うのは大臣の暗殺の時と思っていたのだがな」
「はい、私達も驚きました」
てっきり宮殿で大臣の護衛をしていると思っていたからである。
「連中、もしかしたら帝具を回収していたのかもしれません」
「帝具を?」
奴らの仕事の一つに帝具回収も含まれている、ありえない話ではない。
「まだ確認していないので断定はできませんが」
「わかった、解析班に調べるよう通達しておく」
「···はい」
「どうした?」
ナジェンダは落ち込んでいるサヨを見て妙だと思った、羅刹四鬼を倒し、帝具を回収できたかもしれない、見事な手柄を立てたのになぜ落ち込んでいるのであろうかと。
「実は···」
サヨはナジェンダに説明した、羅刹四鬼を倒せたのは全くの偶然で実力的には全く歯が立たなかったのである。
「アカメならここまで苦戦することなく倒せたんじゃないかと思いまして」
アカメなら自分が思いつかない戦法であっさり倒せたのではないかと思わざるをえないサヨであった。
「気に病むな、お前が戦った相手は話を聞く限りイバラだろう、奴は羅刹四鬼の中で最強の使い手だ、アカメでも苦戦は避けられなかっただろう」
「そうですね」
サヨはできるだけ普通に返事した、内心はふがいない戦いをしてしまったことに落ち込んでいたのであるが、強敵を倒して盛りあがっている雰囲気を壊したくなかったからである。
「そうだ、敵が持っていた包みを回収しないと」
羅刹四鬼を倒せても帝具を回収仕損なってしまえば手柄も半減してしまうのである。
「これのことか?」
ジャドがイバラが持っていた槍らしきものを持って現れた、どうやら回収してくれたようである。
「はい、そうです」
回収してくれたことでサヨは安堵した、回収がされなかったら一大事であったから。
「それにしてもまさか羅刹四鬼と遭遇するとはな···」
こんな西方の辺境で大臣の最強の駒の一つである羅刹四鬼と遭遇するとは全くの予想外であった。
「とにかく羅刹四鬼の二人を仕留めて帝具を回収したのだ、大きな戦果と言っていいだろう」
戦果、その言葉に響くものを感じた、最近の革命軍は右肩下がりが続いており、流れを変える一手になるかもしれないのである。
「サヨ、帝具を回収した報酬楽しみにしておけよ」
ナジェンダが言った一言がサヨの全身を駆け巡った、それは落ち込んだ気持ちを吹き飛ばすには十分であった。
「報酬ですか!?」
ナジェンダが放った報酬の一言にサヨの目は $ ¥に変わっていた、それは見事なものであった。
「ああ、しかも未知の帝具だからな、さらに上乗せされるかもな」
「やったぁ!!」
サヨは喜んだ、周りの目を気にすることなく大はしゃぎしていた、大金が手に入る、故郷の仕送りが増える、これ以上に嬉しいことはなかった。
「現金な奴だ」
ナジェンダは苦笑いした、ついさっきまで落ち込んでいたのに報酬の一言で一変したものだから、ちなみにサヨが落ち込んでいるのを隠していたことを見抜いていた。
「何はともあれこれで帝国との差は大きく縮まったな」
「ああ」
前の戦いで多くの帝具を損失してしまい、革命そのものが危ぶまれるところだったのである、今回の一件で帝国が回収するはずであった帝具を奪い取り、なおかつ羅刹四鬼の二人を仕留めたのである、かなり大きいのである。
「後は西の異民族だな」
「やはり連中に動きはないか?」
「ああ、だが連中も何もしないわけにはいかなくなるだろう、奴らを動かすための今回の任務だからな」
「連中が動いたとしてもすんなりとことは運ばないかもな」
「その時はお前達に骨を折ってもらうことになるだろうな」
「やれやれだな」
「不満か?」
「いや、望むところだ」
帝国との戦力の差はある程度縮まった、だが西の異民族との国交回復はまだ成功していない、革命の達成には必要不可欠である、決して容易でない、それでも果たさなくてはならないのである。