サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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本日は五月にしては暑いです。


第百五話

  結成を斬る

 

 

 

「大丈夫か?」

 

レオーネはマシロに殴られたアカメの元に駆けつけていた、無数の殴られた跡が痛々しかった。

 

「・・・大丈夫だ」

 

「シヴァに診てもらった方がいいんじゃないか?」

 

「大丈夫だと言ってるだろ!!」

 

 

突然の大声にレオーネは驚いた、だが一番驚いたのはアカメ本人である。

 

 

「・・・すまない」

 

「気にするな」

 

 

アカメは心底へこんでいた、気遣かってくれたレオーネにきつく当たってしまったから。

 

 

「私はそんな小さな女じゃない、だから気にするな」

 

「わかった」

 

 

アカメはささやかに微笑んだ、落ち込んでいるとレオーネに悪いから。

 

 

 

「ところでエヴァ、本気でアカメを奴に差し出すのか?」

 

 

ナジェンダには確信があった、エヴァは事が終われば本気でアカメを差し出すつもりだと。

 

 

「差し出すとは人聞きが悪いな、決闘の場を設けるだけだ」

 

「だがアカメの気持ちを察しているのだろう」

 

 

アカメは今まで殺してきた人間への罪滅ぼしにあえて自分を殺させる、そう選択する可能性は高い、そう思いつかないエヴァではないはずだ。

 

 

 

「アカメが討たれる選択をするなら好きにすればいいだろう、そいつの人生だ好きにすればいい」

 

 

ナジェンダは呆れつつもコイツらしいとも思った、コイツにとってアカメは駒なのだ、自分やレオーネ、総大将達もそうなのだろう。

 

 

「そうなれば私はアカメに助太刀する、文句はないな?」

 

「別にない」

 

「ちょっと待ったナジェンダ、私を忘れるなよ」

 

「ああ、そうだったな」

 

「そういうわけだ、私も助太刀するぜ」

 

「ナジェンダ、レオーネ!」

 

 

アカメは二人を巻き込みたくなかった、元はといえば自分が蒔いた種である、二人まで危険に巻き込むわけにはいかなかったのである。

 

 

「さっきも言ったが私はお前が好きだ、たとえお前に非があってもそんなものは知ったことではない」

 

「だが・・・」

 

「私は正義なんかじゃない、筋金入りのロクデナシだ、私は私の好きなようにやる、いいな」

 

「全く、しょうがないな・・・」

 

 

正直アカメはやれやれと呆れつつも自分に正直なレオーネをうらやましいとも思った、レオーネの生き方は気苦労とは無縁だろう、トラブルは絶えないだろうが・・・

 

 

「アカメ、気にするなとは言わん、その問題は帝国を打倒してから考えるべきだろう」

 

「そうだな・・・」

 

 

 

一応帝国打倒するまでは手を出さないと言ったので当面は大丈夫だろう、今は帝国打倒を優先すべきである。

 

 

 

「エヴァよ、以前私が提案した案件の事だが」

 

「ああ、特殊工作部隊の設立の件だな」

 

 

特殊工作部隊・・・革命軍の決起の際に大臣を始めとする帝国の重臣を一掃するための部隊である、帝国が暗殺部隊を設立したのと同じように革命軍も重要性を認知したのである。

 

 

「ああ、何とか可決したぞ」

 

「本当か?」

 

「ああ、最初はプライムの奴は気が進まないふしはあったがハクロウとキョウジが戦略的に有効だと説いて最終的に

首を縦に振ったのだ」

 

「そうか」

 

 

何はともわれ帝国の打倒の一歩を踏み出したのだナジェンダは胸の高まりを感じた。

 

 

「メンバーはお前とアカメ、レオーネ、この場にいないラバックとブラート、全部で5人だったな」

 

「ああ」

 

「五人では少なくないか、後10人くらいなら増員してもいいぞ」

 

「いや、あまりに人数が多すぎても支障がきたすからな、増員は1,2人くらいでいい」

 

「そうか」

 

「できることならパンプキンを加えたい」

 

「パンプキンか」

 

「今の私では十分に性能を発揮できないからな、別の人間に引き継ぎたい、できそうな奴いないか?」

 

「一人面白そうな奴がいる」

 

「面白い?」

 

「西の異民族のハーフのガキでな、銃の腕はまあまあだが根性と執念がなかなかの奴だ」

 

「ほう、お前がなかなかと言うとはかなりの奴だな」

 

「ではお前自ら見定めてみるか?」

 

「ぜひそうさせてもらう」

 

ここでレオーネが手を挙げた。

 

「ちょっといいかな」

 

「なんだ」

 

「帝都の下町で変わった奴がいるんだ」

 

「変わった奴?」

 

「最近活動的に動いている殺し屋なんだが、かなり抜けている奴なんだ、でも殺しの時にはものすごく俊敏になるんだ」

 

「そいつを加えろと?」

 

「もちろんそいつの調査はするつもりだ、それで面白いと思ったら加えたいと思う、どうかな?」

 

「まあ、私はかまわんぞ、ナジェンダ、お前は?」

 

「調査の結果次第で加入を考えてもいい」

 

「そういうことだ」

 

「じゃあ、帝都に戻ったら早速調査してみる」

 

「人員は集まっても活動は当分先になるだろう、やることは山ほどある、まず拠点を築かんとな」

 

「それに情報網の構築も必要だ」

 

「もっと大事なことあるでしょ?」

 

「なんだ?」

 

「金だよ金」

 

「金か・・・そうだな、金は確かに重要だハハハ」

 

 

大笑いするエヴァと対照的にナジェンダはやや呆れた顔をしている。

 

 

 

「心配するな、金に糸目はつけん」

 

「そうこなくっちゃ」

 

脳天気なレオーネに対してアカメは真面目な表情で質問した。

 

 

 

「大臣達の暗殺までの期間私達何をすればいい?」

 

質問したアカメには返答がどのようなものか明確な予想があった、ただ確認するためである。

 

「決まっているだろう、お前が今までしてきたことを行うのだ、暗殺だ」

 

 

エヴァは説明した、部隊は帝都内で殺し屋として活動していくことになる、帝国の重臣や富豪を主に殺していくことになるだろう、時には民の依頼で殺すことにもなるだろう。

 

 

「わかった」

 

「あっさりしているな」

 

「私にはこれしかできないからな」

 

「わかっているならいい」

 

「一つ言いたい事がある」

 

「何だ?」

 

「クロメの事だ」

 

「ああ、お前の妹だったな」

 

「知っての通り、私が革命軍に加わる際の条件としてクロメの事に関してわがままを許してほしい、そうナジェンダに伝えて同意を得た」

 

「ナジェンダの同意は得たのだろう」

 

「ああ、だがエヴァの同意があれば誰も文句は言わないだろう、ナジェンダには悪いが」

 

 

ナジェンダは信用できる、だが革命軍の中では新参者であり絶対の発言力があるわけではないのだ。

 

 

「気にするなアカメ、お前の判断は正しい、新参者もあるが将軍だった頃の力を失っているから発言力は高いとは言えないのだ」

 

「ナジェンダ・・・」

 

 

アカメとしては心苦しかった、自分一人ならこういうことはしなかった、だがクロメの事が関係しているので万全を期したいのだ。

 

 

「話はすんだか?」

 

「ああ」

 

「では、お前が出した条件のことだが・・・いいだろう、同意しよう」

 

「本当か?」

 

「そのかわりお前には相当の結果を出してもらうぞ」

 

「もちろんだ」

 

 

アカメはとりあえず安堵した、幹部の同意が得たことで簡単にはほごにはならないだろう。

 

 

「よかったな、アカメ」

 

「ああ」

 

表面的には笑顔であるがクロメの説得がうまくいくかは別問題である、むしろ失敗する可能性は高い、レオーネもそのことはわかっている、アカメへの配慮であった。

 

 

「ところでナジェンダ、部隊の名称はどうする?」

 

「名称?」

 

「特殊工作部隊では様にならんからな、特にないなら私がつけるが」

 

「いや、名称は考えている」

 

「ほう、それは?」

 

「ナイトレイドだ」

 

「ナイトレイドか」

 

 

 

ナイトレイド、夜襲を意味する言葉である、それを聞いたエヴァは面白そうな表情をしている。

 

 

「お前にしては洒落た名称だな」

 

「お前に任せたら滑稽な名称をつけられそうと思ったからな」

 

「言ってくれるな、いいだろう、これより特殊工作部隊ナイトレイドの結成を宣言する」

 

 

エヴァの結成宣言を聞いてアカメ達は胸の高まりを感じた、帝国打倒の一歩を歩んだからである。

 

 

「ナジェンダ、お前が前線の指揮をとれ、私が本部の決定を指示する」

 

「了解だ」

 

「一応言っておくが・・・」

 

「わかっている、任務の途中で死んでも一切記録には残らないのだろう」

 

「ああ、私はどっちでもいいんだが、気にする輩が多くてな」

 

「そういうわけにはいかんだろう、私達がやろうとしていることは暗殺だからな、記録に残すわけにはいかんだろ」

 

「ふん、私達は帝国と戦争をするのだぞ、そうなれば数万の人間は一瞬で死ぬ、暗殺に引け目を感じてどうする」

 

「お前のように図太い人間は稀だ、ほとんどの人間はそういうのを気にするのだ」

 

「くだらんな、帝国に負ければ我々は全て罪人として滅びるというのに」

 

「負けはせんさ、そのための我々ナイトレイドだ」

 

「なかなかの意気込みだな、だがどれだけ意気込んでも任務をこなしていけばお前達の誰かがいつか必ず死ぬだろう、その覚悟はあるか?」

 

「当然だ」

 

「覚悟ならとうにできている」

 

「私達はそんなものにビビったりしないよ」

 

「そうか、ならば歩むがいい修羅の道を」

 

 

ナジェンダ達は覚悟を決めていた、それは確かである、だが、心底ではここにいる面子が誰も死なずにすむという期待をわずかに抱いていたのであった。

 

 

 

 




今回はナイトレイド結成の瞬間を書いてみました、かなり微妙な文章になってしまいました。

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