サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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ゴールデンウイークの真っ最中です、暇つぶしにご覧ください。


第百四話

敵討ちを斬る

 

 

その場にはマシロとエヴァ、アカメと言う名前の少女の他にもう二人いた、一人は20代前半の女性で右目に眼帯をしており、右腕は義手である、彼女の名はナジェンダ、帝国の元将軍で帝国を抜け革命軍に合流する途中で帝国の襲撃にあい、右目と右腕を失い瀕死の重傷を負い、長期のリハビリを行っていたのである、もう一人は知らない、露出の高い衣装を着た二十歳前後の金髪の女性である、新たなメンバーなのだろう、今はそんなことはどうでもいい、アカメという名の少女の方が問題である。

 

 

 

「暗殺部隊と言ったか!?」

 

「ああ」

 

 

 

マシロは動揺していた、さらに力をつけて復讐をすることを誓っていた暗殺部隊の奴が目の前にいる、冷静でいる方が無理である。

 

 

一方、二人の女性も首を傾げていた、突然エヴァに呼ばれ今の状況に至るのだから。

 

 

「なあ、エヴァ、どういうつもりだ?」

 

「しばらく黙って見ていろ」

 

 

金髪の女性は面白くない表情をした、暗殺部隊という言葉が出た瞬間ただならぬ気配を出したからである、それは怨恨の気配である、アカメは暗殺部隊として多くの人間を殺してきた、当然恨んでいる人間も多い、この女もその一人であろう、なぜアカメと対面させたのか理解できなかった。

 

 

もう一人の女性ナジェンダもエヴァの考えがわからなかった、だが質問はしなかった、質問しても返答はないとわかっていたからである。

 

 

「おい、アカメ」

 

「心配するなレオーネ」

 

 

金髪の女性の名はレオーネということがわかった、今は本当にどうでもいいことである。

 

 

 

「アカメと言ったな」

 

「ああ」

 

「お前、暗殺部隊の一員だったのか?」

 

「ああ」

 

「・・・サバティーニ一座を知ってるか?」

 

「ああ」

 

「コウガという男を知ってるか?」

 

「ああ、私が殺した」

 

「間違いないのか?」

 

「ああ」

 

 

アカメの返答の後沈黙が続いた、ほんの数秒にすぎなかったがものすごく長く感じた、そして突然その沈黙が破られる。

 

 

 

バキィ!!

 

 

 

マシロは有無を言わせずアカメの顔面を殴りつけおもいっきり吹っ飛ばされ地に伏した。

 

 

「てめぇ、何しやがる!!」

 

 

 

アカメが突然殴られレオーネは烈火の如く激怒した、全身から殺気があふれ出している、今にもマシロを殺す雰囲気である。

 

 

「黙って見ていろ、邪魔するなら殺す」

 

「やってみろよ、逆にお前を殺してやるよ」

 

 

互いに殺気に満ちた目で睨みつけた、一触即発寸前である。

 

 

「よせ、レオーネ!!」

 

「なぜ止める!?アカメ!」

 

「いいんだ、これは当然の報いだ」

 

 

アカメの迫力にレオーネは何も言うことができなかった、アカメの覚悟は相当なものであったから。

 

 

「いい度胸だ、手加減はしないぞ」

 

「ああ」

 

 

 

マシロはアカメを徹底的に殴りつけ続けた、アカメの血が飛び散り地面に落ちていく、その様をレオーネは歯ぎしりしながら見ていることしかできなかった。

 

 

「どういうつもりだエヴァ?」

 

 

ナジェンダはエヴァに問いかけた、一見冷静そうに見えるが内心苛立っていたのである。

 

 

「黙って見ていろ」

 

「だがこのままではアカメが・・・」

 

「アカメはこれくらいで潰れるタマではないだろ」

 

「それはそうだが・・・」

 

「今は動くな、これは命令だ」

 

 

命令と言われてナジェンダは動くことが出来なくなってしまった、エヴァはナジェンダの直属の上官であるから。

 

 

その間にもアカメはマシロに殴られていた、アカメはフラフラで虫の息寸前であった。

 

 

 

「まだくたばるなよ、コウガの恨みはこんなものでは晴れんからな」

 

 

マシロはさらにアカメを殴りつけようとした、すると突然エヴァの一言がそれを止めた。

 

 

「そこまでだ」

 

「な、何を言っている?」

 

 

マシロはア然とした、なぜ突然止めたのか、全く意味がわからなかったからである。

 

 

「お前の手柄の分殴らせてやった、ここで打ち止めだ」

 

「何を言っている、コウガの敵が目の前にいるんだぞ!」

 

「そいつにはやってもらう仕事がたくさんあるからな、今くたばるのは困るのだよ」

 

「そんなこと知ったことか!私はコウガの敵を討てれば後の事はどうでもいいのだ、コイツを殺した後私を殺せばいい」

 

「馬鹿を言え、お前の命とアカメの命とでは全く釣り合いが取れん、どうしても拒否するのなら今すぐお前を殺すまでだ」

 

 

マシロはこれが脅しでないと瞬時に理解した、現にナジェンダとレオーネは殺気を込めて身構えており、いつでも仕留めることができるのである、マシロはそれでも簡単には引かなかった。

 

「ミーラやロリス、ムディはこのこと知っているのか?」

 

「いや、知らん」

 

「あいつらがアカメのことを知ったらすぐにでも殺しにくるぞ」

 

「その時はあいつらも殺すまでだ」

 

 

コイツは本気だ、マシロはすぐに確信した、だが引くわけには絶対にいかない、マシロは無理を承知で問いかけた。

 

 

「アカメの首、何と引き換えならいい?」

 

「エスデスか大臣の首ならいいぞ」

 

 

やはりそうきたか、マシロの予想は的中した、取り引きをするつもりはないことを改めて確信した。

 

 

 

「おいおい、まさかエスデスと大臣の首を引き換えにアカメを売るつもりじゃないだろうな?」

 

 

レオーネが不安そうに問いかけた、実際コイツならやりかねないからである。

 

 

「もしそうなればアカメを首を褒美にするだけだ」

 

 

レオーネはたいして驚かなかった、コイツならそう答えると予想していたからである。

 

 

「今はそんなことどうでもいいだろう、今の問題は目の前のマシロをどうするかだ」

 

 

それの手っ取り早い解決策はマシロを即刻で殺せばいい、だがアカメはそれを望まないだろう、他にいい手は・・・

 

 

レオーネが思案している最中に倒れていたアカメは起き上がり折れた奥歯を吐き出した。

 

 

 

「私を殺そうとするのはいい、それだけのことをしてきたからな、だが、今は待って欲しい」

 

「虫のいいことをぬかすな、お前が最初からコウガの提案を受けていればよかったのだ」

 

 

全くそのとうりだ、だがあの時はそれが正しいと信じて疑わなかった、だから受け入れることはできなかった、

だが、仕方がなかったなどと言って納得するわけがない、どうすれば・・・

 

 

 

「こういうのはどうだ?」

 

 

エヴァが突然提案をした、ろくでもない提案であろうが皆それを聞くことにした。

 

 

「アカメを殺すのは帝国を打倒するまで保留とする、そのあとはアカメとの殺しあいの場を設けてやる」

 

 

アカメ以外の人間は何を言っているんだコイツという表情をしている、特にマシロは、目の前に敵がいるのに見逃すなどと受け入れるわけがないのだ。

 

 

 

「言っておくがこれは頼みではない、命令だ」

 

 

 

そんなことはわかっている、コイツが頼み事をする奴などではないことは。

 

 

「それを信じろと?」

 

「それはお前の勝手だ」

 

マシロとしては実に馬鹿馬鹿しい提案であるがこのままアカメを殺そうとすればエヴァ、ナジェンダ、レオーネの三人を相手にすることになる、確実に仕留められる、そうなれば敵討ちを果たせなくなる、それよりは・・・

 

 

 

「・・・仕方あるまい」

 

 

マシロとしては不本意極まりないが敵討ちの可能性を残せるのであれば受け入れるしかなかったのである、さらに不本意なのはレオーネとナジェンダである。

 

「勝手に話を進めるな、私達は全く納得してないぞ」

 

「そのとうりだ、お前の独断で決めていいことではない」

 

「ならばお前達も参加すればよい」

 

「はあ!?」

 

「別に助っ人を禁じたわけではない、お前達の好きにすればいい、無論マシロもだ」

 

「つまり私もミーラ達を加えていいんだな」

 

「かまわん」

 

 

マシロとしては多少の不満があるもののアカメを堂々と殺せる機会を得ることになるのである、まあ良しとすべきだろう。

 

 

「今はアカメの命預けてやる、だが時が来れば必ずアカメを殺す」

 

「ああ」

 

 

マシロは言い放ちその場を後にした、そしてエヴァとアカメ達が残った。

 

 

「大丈夫か、アカメ?」

 

「ああ」

 

「こっぴどくやられたな」

 

「・・・仕方ない」

 

 

アカメはマシロに憎しみを全く抱いていなかった、自分を恨んでいる人間は星の数ほどいる、これからもこういう状況はいくらでも起こるのだ。

 

 

「エヴァ、お前本気でアカメを見殺しにするつもりか?」

 

「見殺しとは聞き捨てならんな、生きるも死ぬのもアカメ次第だ」

 

「しかし・・・」

 

「他に妙案があるのか?」

 

「・・・ないな」

 

ナジェンダは表情には出さなかったが内心腹が立った、アカメが生き残るためにマシロを殺すかどうかはかなり微妙である、恨みを晴らさせるためにあえて殺される道を選ぶ可能性も少なくないのだ。

 

 

「心配するなよナジェンダ、アカメは絶対殺させない、あいつらを皆殺しにしてもだ」

 

「レオーネ!?」

 

「言いたいことはわかる、私はお前に非はないというつもりはない、私はお前が好きなんだ、みすみすお前を見殺しにするわけにはいかない」

 

「だが・・・」

 

「私は正義なんかじゃない、だから私は私の好きにやらせてもらう」

 

 

こうなったらレオーネは聞かない、知り合って日は浅いがレオーネの人となりはわかっているつもりだ。

 

 

「とにかく今は何とかなった、あいつらのことは帝国打倒した後に考えようぜ」

 

 

アカメはわずかに笑みを浮かべた、レオーネの前向きな所に感心しつつ短絡的な所に呆れつつもあるのであるから。

 

 

「・・・そうだな、まずは帝国の打倒を最優先に考えるべきだろう」

 

「そうこなくっちゃ」

 

 

初めてレオーネと会った時はいい加減な奴だと思ったが、今はとても頼もしく感じるのであった、どれだけ困難が阻もうともレオーネがいれば乗り越えられる、そうアカメは強く思うのであった。

 

 

 

 

 


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