サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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花粉が控えめになり過ごしやすくなっています。


第百三話

 脱走兵を斬る(後編)

 

 

 

マシロはエヴァと対峙していた、わずかな隙を見つけるためである、エヴァをどうにかしなければこの場を離れることはかなわないからである。

 

 

コイツには全く隙がない、倒すのは至難だ、やはりあの時強引にでもナックルのケガの治療をしておけば・・・

過ぎたことを悔やんでも仕方ない、今はコイツをどうにかしなければ・・・

 

 

 

マシロの目の前にいるのは元帝国軍人で将軍になれるほどの功績をたてた人間なのである、まともに戦えば勝ち目はほとんどない、それでもなんとかしなくてはならないのである。

 

 

「私の隙を探しているんだろう?」

 

「さあな」

 

 

実際そのとうりなのだがマシロはごまかした、それでもエヴァに通用しないのはわかっていた。

 

 

「一発殴らせてやる」

 

「何だと!?」

 

 

左の頬を左の指で指している仕草を見てマシロはア然とした、とても信じられなかったからである。

 

 

「いつまでもらちがあかないからな、手っ取り早くすまそうと思ってな」

 

「・・・ナメてるな」

 

 

正直ナメられて腹が立ったがチャンスでもあった、この一発でエヴァをぶちのめすことができればここを立ち去り復讐に向かうことができるからである、ただ・・・

 

 

「それを信じろと?」

 

 

それをあっさり信じるのは馬鹿である、疑うのは当たり前のことである。

 

 

「好きにしろ」

 

 

危険ではある、だが絶好の好機でもある、一発でぶちのめすことができれば勝ちである、マシロは腹をくくることにした。

 

 

「くらえ!」

 

マシロは間髪入れずにエヴァの左の頬に全力の一撃をくらわせた、時間をかければ不利になるだけであるから。

 

 

とった、と思った瞬間腹に熱いものを感じ、何かが込み上げてきた、それは自分自身の血であった、エヴァは殴られた瞬間にカウンターでマシロの腹に一撃をくらわせたのである。

 

 

ばかな・・・マシロはその言葉にすることができずに地面に伏した、そのまま一切身動きできずにいた。

 

 

「なかなかの一撃だったぞ」

 

 

エヴァはマシロの一撃で折れた奥歯を吐き出した、その奥歯は虫歯であった。

 

 

「うっとうしかったからな、ちょうどよかった」

 

 

この化け物が・・・マシロはしゃべることができず心の中で罵った、私の一撃などコイツにとってその程度でしかなかったのだ。

 

 

マシロの心中を察したかのようにエヴァは見下した笑みをマシロに向けた。

 

 

「なぜお前が及ばなかったかわかるか、憎しみが足りなかっんだよ、人の身を捨ててでも復讐を果たす、お前にはその覚悟が足りなかっのだ、あのガキ共を見捨てなかったのが全てだ」

 

 

もちろんマシロにも自分は甘いという自覚はある、だが女として見過ごすことができなかったのである。

 

 

「どのみち今のお前では復讐を果たすことはできんだろう、一人くらい仕留めることはできるかもしれんが」

 

 

マシロは何も言えなかった、しゃべれる状態ではなかったこともあるがしゃべることができても反論はできなかっただろう。

 

 

「さて、そこのプトラの奴、どうする?」

 

 

「どうするも何も、今の私にどうしろと?」

 

 

マシロでも敵わない相手に自分がどうしろと?ナックルが動けない今何もできないのは明らかである。

 

 

「だろうな、おまえの戦闘力はゼロに等しいからな」

 

「そうですよ、ですがそれ以外のことに関してはそれなりに自信があります」

 

「ならば取引しないか、私の役に立てば復讐の機会を与えてやるぞ」

 

「それはどの程度ですか?」

 

「将軍の首か帝具一個だな」

 

「・・・それはそれは」

 

 

ムディにはそれがどれだけ困難なことかわかっていた、この女は最初から機会を与えるつもりはないのか

それともそれだけの対価が必要と思っているのかムディにはわからなかった、だが選択の余地はなかった。

 

 

「・・・わかりました、取引に応じます」

 

 

たとえどれだけ時間がかかろうとも復讐を諦めるつもりはない、この女を利用して機会を得るまでだ、そうムディは決心するのであった。

 

 

「ところで一つ相談が・・・」

 

「わかっている、そいつの腕のことだろう、腕を切り落とした後は試作品の義手をくれてやる、せいぜいこき使ってやるんだな」

 

「もちろん」

 

 

 

言われるまでもない・・・コイツは復讐すべき連中の一人なのだから、徹底的に利用してやりますとも、無論あなたもですがね、私を利用するつもりでしょうがそれ以上に利用してやりますとも・・・

 

 

エヴァは強い視線を感じ振り向いた、そこには憎しみを込めて睨みつけているミーラとロリスであった。

 

 

「私を憎むのは筋違いだぞ、お前達が弱いから痛い目にあったのだ、裏の世界では当たり前のことだ」

 

 

もちろんそのことも恨んでいるのだがそれ以上に許せないことがあったのである。

 

 

「私達が一番許せないのはメラ様を侮辱したことだ!」

 

「メラ様が無能だということを取り消せ!」

 

 

怒りに満ちた双子をよそにエヴァは涼しげな顔をしている。

 

「何を言っているお前達、奴は依頼を失敗したのだ、それを無能と言わず何という」

 

「それは・・・」

 

「メラ様は命をかけて・・・」

 

「過程などどうでもいい、成功という結果が全てだ」

 

 

双子は何も言い返せなかった、プロは結果が全て、彼女もよく言っていたことである。

 

 

「とにかく、お前達には無能なボスの尻拭いをしてもらうぞ」

 

「な、何を言って!?」

 

「ふざけるな、そんなの誰がするか!」

 

 

断固拒否する双子を見てエヴァは平然としていた、こうなることを予測していたからである。

 

 

 

「やりたくないのならかまわんぞ、そのかわりこの大陸中にメラルド・オールベルグは無能低能だと広めるまでだ」

 

 

その瞬間双子の表情がこわばった、大好きなメラ様が無能の烙印を押されてしまうからである。

 

 

「やめろ!」

 

「そんなマネしてみろ、ぶっ殺すぞ!!」

 

「それはお前達次第だ」

 

 

双子に選択の余地はなかった、実力ではエヴァに敵わない、メラ様の名誉を守るためには一つしかなかった。

 

 

「・・・何をすればいい?」

 

「決まっているだろう、私の手駒となり私の役にたてばいい」

 

「・・・革命軍じゃないの?」

 

「私の役に立つということが大事なのだ」

 

 

双子は理解した、目の前にいる人間がどういうものか、改めて痛感したのである。

 

 

「言っておくがメラ様の名誉を守るためであって、お前のためじゃないぞ!」

 

「別にかまわん」

 

「全てが終わったその時にはお前を殺してやる、徹底的に酷くにだ!」

 

「楽しみにしているぞ」

 

 

こうして双子のもうひとつの復讐劇が開始したのである、それぞれの思惑を抱えて。

 

 

 

後日

 

 

 

マシロは復讐の機会を得るために過酷な任務に挑む日々を過ごしていた、そんなある日・・・

 

 

 

「今、なんて言った!?」

 

「もう一度言ってやる、そいつは革命軍の新たな一員、元暗殺部隊の一員、名はアカメだ」

 

 

マシロは混乱していた、目の前にいるのは10代半ばの長い黒髪の少女、それが復讐の標的、暗殺部隊の一員、

頭を整理するのに一時の時間が必要としたのである。

 

 


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