異世界転生すると美少女になれるって本当ですか!? 作:DENROK
メカ書きたい作者の趣味回
あとコキュートス可哀想 ちんぽこ可哀想
11,10,2018
加筆修正
剣と魔法が支配する世界に、我々は科学で立ち向かう。
あちらが魔法によって体格に見合わない力を行使するのであれば、こちらは科学技術が生み出した巨人の力を持った外部骨格で立ち向かおう。
超常の炎には、プラズマ銃で対抗し。
翼もなく空を駆けるのであれば、スラスターの超絶の推力で空を切り裂く。
科学の灯火で、剣と魔法の世界を明るく照らしだそう。
最後の1機になったとしても。
「いくわよ」
「ハイ」
巨大な機械の獣を身に纏ったインランは、常よりも二回りは巨大に見える。その重量は対峙するコキュートスに匹敵するか凌駕さえしているだろうか。
平時は姿を隠して侍っている自律型のパワードスーツが、今は主人の衣となりて牙を剥いていた。
冷気を操る異形種として熱に敏感なコキュートスは、目の前で対峙する存在が熱を放ち始めていることに気づいている。
至高の存在の最強の鎧の目覚めをそこから感じ取り、一層腕に力が漲っていった。
先制したのはインラン。
莫大な熱を後方に撒き散らし、後ろの観客席を余波で吹き飛ばしながら突進したのだ。
「グゥオッ!!!!」
「まだまだいくわよ?」
防御は出来ている。だが攻撃が重すぎてカウンターまで繋げられずに苦悶の声が漏れる。
熱と光を纏い一瞬で距離を詰めたインランの突きをコキュートスは真正面から受け止めていた。
受け止めた四つ腕が痺れたように動かない中で、ぎこちなくも爪を弾き返すようにしてコキュートスはインランと距離を取る。
素直にインランもその反動で後方に跳躍した。
最初と同じ距離感。
仕切り直しのようだが違った。
その性格から重い攻撃を正面から受け止めたコキュートスの腕は痺れたように動きが鈍くなっている。
そして、インランは焼き直しのように突進、熱と光を後ろに放ち距離を無視するように一瞬で近づき、インパクトに会わせて腕を振り抜くように正面に突き出した。
「ゲボッッッ」
金属の様な光沢をもった外殻に覆われた分厚い胸部に、深々と刺さった機械の腕に氷点下の凍てつく体液がボタボタと吐き出される。
四つの腕から力が抜け、胸に生えた機械の腕を挟むように重ねられていた武器達がずるずると地面に向けて下がっていく。それでも武器を手放さないのは戦士の意地だった。
「速さも重さも威力もあるから、この突進を防御するならマトモに受けずに反らさないとダメよ。コキュートス」
「リ、了解シマシタ……覚エテオキマス……」
「じゃあ回復したらもう1回ね。やれるわよね?」
コキュートスの鎧の様な光沢を持った胸部に突き刺さった機械の腕を引き抜きながら、インランは天使のように無垢な微笑みを浮かべた。
「勿論デス…… 是非……!」
闘志に燃えた返答にさらに笑みを深める。
「ならば、次は俺がコキュートスに加勢しよう」
「……は?」
インラン声のした方に意識を向ければ、観客席から人影が飛び降りてくるところであった。
人影は豪奢なローブを身に纏い被ったフードで影が差した顔は不敵に笑んでいる。
この第六階層があるギルドのギルドマスター、モモンガであった。
「何、たまにはコキュートスにも華を持たせてやらんとな?」
モモンガは不敵に青年の顔で笑うと、《
「ナント……! 有リガタキ幸せ!」
プルプルと巨体を震わせ跪くコキュートス。モモンガは慣れた手つきで華美な装飾の施された薬瓶を取り出すと、中身を跪く巨体に振りかける。
するとコキュートスの胸に開いた大きな穴が時間が巻き戻るように塞がり、それを受けて跪く姿勢のままさらに頭部を低く下げ感極まったように感嘆の声を漏らす。
そんな震える虫を無視するようにインランは目の前の男に短く問う。
「マジ?」
「ああ、マジだ。安心しろ、ギルド武器も使って全力戦闘を楽しませてやる」
第八階層に厳重な警備のもとで安置されているはずの、レプリカではない本物のギルド武器スタッフオブアインズウールゴウンがその手に握りしめられていた。
抑えきれないとばかりに、不敵に笑みを顔に浮かべていたモモンガは遂に高らかに笑い声を上げる。
「くふふ! わはははは! インランぅうううう!! 日頃お前のせいで! 溜まりに溜まったストレスを! 思い知れ!」
「ギルド長にとって異世界生活がそんなにストレスだったなんて、あたし知らなかったわ。まぁ模擬戦は娯楽にピッタリだし、いいわ。纏めて相手をしてあげる」
言葉を返したインランの輪郭が眩く輝きだす。それに合わせるように全身に纏った装甲が金色に染まり光を放ち出した。
お互いに本気で戦うためにスイッチを切り替えた二人は、言葉も攻撃的なものに変わる。
「先に言っておくけど、ユグドラシル時代の感覚だと足元を掬われるわよ?」
「舐めるなよ
「あらあら、余裕ぶっちゃって、その顔が屈辱に歪む様を拝ませて貰おうかしら。良いわよねこの世界だと表情が見れて」
「くふ!くはははは!同じ言葉を返そうじゃないか!愉快だ!実に愉快だぞ!合法的にお前の鼻っ柱をへし折れる機会を得られたことが実に愉快!」
ゆらゆらと金色の杖から黒い靄を漂わせ、今は漆黒のガウンに黒い髪と目を持つモモンガが青年の顔に酷薄な笑みを浮かべ、目の前に立つ虫の異形の巨体越しに眼前の機械の獣を纏う少女を睥睨する。
「たっちゃんとかウルちゃんならいざ知らず、ドリームビルダーの後衛如きがあたしに敵うと本気で思ってるのかしら?」
「お前もドリームビルダーだろうが、ああそういえば、棚ぼたで手に入れた虎の衣を着込んで仮初めの力を手に入れていたのだな。どうだ? 仲間達の血と汗と涙で出来た衣を着る気分は?」
「ぐっ、あんたしつこいわよ、ずっとネチネチネチネチと」
「アバターまでそんな内面を隠すような見目麗しい小娘のものとは、虎の威を借る狐とはお前にふさわしい言葉だ」
瞬間、閃光と轟音が生まれた。
蒼い光沢を放つ巨体が地面を削りながらモモンガの眼前まで後退し、組み合う形でそれを為した少女が吠える。
「お前ぇ! 殺してやる!」
「インラン様! マダ開始ノ合図ハ……!」
「うるさい!!」
「ふん、PvPは怒った方が負ける。冷静な判断が出来なくなるからな。もう戦いは始まっているんだよ」
PKKギルドを纏めあげる立場である青年は、怜悧な視線を巨大な虫の異形越しに少女に向けていた。
「邪魔」
冷ややかに告げられた言葉と共に、一瞬で腕を取られ荒々しく力任せに投げ飛ばされたコキュートスが瓦礫を作りながらスタジアムの壁にめり込む。
そして今しがた消えた存在を無視するように、インランは可憐な少女の顔で正面を睨み付けた。
鋭い視線を受けながらもモモンガは飛ぶように消えた前衛を全く気にしていないかのように不敵に笑んでいる。
「《
インランが玉を転がすような綺麗な声で詠唱すると、模擬戦会場であるコロシアムの天井に届きそうな巨人であるデイダラボッチが二体、地面に生まれた2つの巨大な魔方陣から這い出すようにして出現する。
半透明な粘土質の体を持ったデイダラボッチはその輪郭が溶け出したような姿でインランの正面で強固な壁となるべく立ち上がった。
「《
だが、モモンガが蕩々と魔法を唱えると、2体の巨人はあっさりと掻き消えるように消滅する。
「ちくしょう!」
「頭に血が上っているようだなぁインラン。実に戦いやすいぞ」
「うっさい! だまりなさいよ!」
「はははは! だったら黙らせてみろ! 俺はここだぞ!」
両手を横に広げるとモモンガは高らかに笑う。そこは空中であり、魔法で浮き上がっていた。
それを完全に据わった目で睨み付けながら、吐き捨てる様にインランは言葉を発する。
「さすがにキレたわよ。手足を引き千切って内臓全部引き抜いてポーションかけて生かしながら目の前でソレを喰ってやるわ」
「お、おう…… 猟奇的だな……」
その声音から本気を感じ取り、モモンガの気勢が削がれていった。
そして、さらに追撃で放たれた言葉で完全に萎縮してしまう。
「ついでにちんこの皮を剥いで竿を摺り下ろしてやるわ」
「ファッ!? やめろよ! 怖いこと言うなよ!」
股間を両手で押さえながら、モモンガはただでさえ青白い顔をさらに青くして震え出す。
「絶対やってやるからね。せいぜい今のうちに後悔しておくことね」
最高品質のエメラルドの様に透き通った色彩を持っていた瞳を怒りで真っ赤に充血させたインランが、食いしばった白い歯を剥き出しにしてモモンガを憎悪を込めて睨めつけて力強く宣言した。
その凄まじい剣幕に冗談ではないと理解したモモンガは、縋るように手に持った最強の杖を起動させる。
「ひぃっ!? こ、根源の精霊達よ!《
漆黒のアカデミックガウンを翻しモモンガは涙目になりながらも、手に持った比類無き性能を誇る杖の機能を解放し、その先端に留められた五つの宝玉に封じられた強力無比な精霊を立て続けに召喚した。
召喚した主の意志を汲み取り、整列するようにして精霊達がインランとモモンガの間で壁となる。
殺意が充満しお互い全力攻撃のための予備動作に入ろうとした時、それを遮るような気迫の漲った絶叫が轟いた。
「ウォオオオオ!!!」
精霊と機械の獣を纏った少女が睨み合う横合いから、土埃を巻き上げ雄叫びを上げる存在が居る。
それは巨体に見合わぬ速度で突進し速度と体重を乗せた見事な斬撃を放った。
鬱陶しげに顔を歪め、少女はそちらに顔を向け叫ぶ。
「うっさい! 邪魔すんな! あと連携しなさいよ馬鹿!」
不意打ち気味だったにも関わらず、少女は危なげなく突進に反応すると、豪腕でもって振るわれた刀を機械の手で
「ナニ!?」
「手加減してやってたって言ってるでしょーが! せめて攻撃スキルを使いなさいよ!」
機械の腕で刃先を握り絞めた刀を凄まじい膂力で力任せに引き寄せれば、それを握るコキュートスの巨体も釣られるように引き寄せられる。
「衝撃砲!!」
切っ先を握った腕とは反対の機械の腕をコキュートスに向けると、腕に内蔵された噴射口から妖しく輝く粒子が吐き出され閃光を発しながら大爆発を起こした。
太陽のような光量が生まれ闘技場内の全ての者の視界が白く塗りつぶされる。
「グバッッ」
引っ張られよろけてたたらを踏んでいたコキュートスは、目と鼻の先で起きた凄まじい衝撃を受けて地面に一切触れることなく水平に吹き飛び、転移の魔法を使ったような速度で闘技場の壁に達してそのまま壁を貫通すると闘技場の外の森の木々を薙ぎ倒していった。
衝撃砲で放たれた運動量がそのままインランにも返ってくるので、かぎ爪を地面に突き立て爪痕を残しさらに背部のブースターの推力も併用してなんとか闘技場の壁の手前まで滑るように移動して止まる。
「モモンガァアアア!! あんたのせいでコキュートスがボロボロじゃないの!! ちゃんと使ってあげなさいよ!!」
機械の腕で刃先を握り絞めた刀剣には蒼い光沢を放つ異形の腕が根元から千切れて付いていた。千切れた筋繊維が腕の切断面から垂れている。それをブラブラと振って宙に浮かぶモモンガに見せつけ、インランは怒り顔で叫ぶと刀剣を地面に優しく置く。
「容赦なさすぎて怖い……マジだ……本当にヤる気だ……」
その余りの容赦のなさにモモンガは目深に被ったフードの下で震えていた。
「まぁいいわ、3回くらい殺したらさっきの暴言は許してあげるわよ! あひゃひゃひゃひゃ!! 1回殺すのに3日はかけてあげるわ!! ついでにプレイヤーの蘇生実験も出来て一石二鳥じゃない! あは! あひゃ! いひひひひひ!!!」
完全にイっちゃった目をしているインランの顔を見て、モモンガは心底後悔していた。
「PvPは怒った方が負けるんだよ」
「ブッコロ」
「怖い」
描写に力入れたら書いてて疲れたけどスゲー楽しい
でも読んでてスゲー疲れる