「世話になったのぉ、それじゃこれで失礼するぞい」
害獣駆除をした翌日、ココヤシ村に後発していたガープさんの船が訪れたので
ネズミ大佐を船に放り込んでからこうして出航前の挨拶をしている
「もう少しゆっくりしていっても構いませんよ、ガープさん」
「いや、ネズミの後始末やらをせんといかんからな、そうゆっくりとしておれんのじゃ」
面倒そうに鼻を鳴らしながらガープさんがそう言う
「それに、シェルズタウンにも顔を出さんといかんからな」
「そうですか…ガープさん、良い旅を」
私はガープさんと握手を交わす
「出航じゃ―――!」
ガープさんの号令で船は東の海の海原へと旅立っていった
◆
明けて翌日、私は想定している船の完成の為に試作品の制作に取りかかっていた
もっとも、賞金稼ぎをしていた時の休息の時に暇潰しである程度作っていたので
組み立てて試用してみるだけだった
「あはは!面白―い♪」
試作品の試験運用をナミがしている
その様子はとても楽しそうだ
ナミが方向を切り替えてこちらに向かってくる
近付くに従って独特な駆動音が聞こえてくる
ザバッ!
ナミはドリフトをするようにして海水を飛ばし、その抵抗力で船体にブレーキをかける
そして、飛ばされた海水はシャワーの様に私に降り注いできた
「ふふ、シュウごめ~ん♪」
バリアを張ったので濡れてはいないが、まったく悪いと思っていない
ナミの口調に苦笑いをするしかない
「いかがですか、その試作品は?」
「最高よ!すっごく面白いわ!」
私が作ったのは電動機式の水上オートバイクだ
金属の加工は私の能力で重石となる部分の重量を増やすことで、簡易的にプレス成形を
することが出来たのでそれほど苦労する事はなかった
この時は過去の私によくこの能力を選んだと喝采を送ったものだ
それと動力を得るのに問題となった電力の確保はこの世界特有の物で解決ができた
その物の名称は《衝電貝(エレパクトダイヤル)》である
この衝電貝は衝撃を吸収、放出する《衝撃貝(インパクトダイヤル)》の亜種で
衝撃を電気へと変換する特殊な貝である
これは賞金稼ぎをやっている時に手に入れたものだ
私が試作した水上オートバイクは、稼働前に衝電貝に衝撃を与えて蓄電する必要があるが
稼働してからは電動機の震動等で蓄電出来る様に設計したのである種の半永久機関となった
もっとも、金属疲労やらを考えるとそうもいかないのだが…
「ねぇシュウ、もう一回りしてきてもいい?波のリズムが掴めてきた所なの」
「えぇ、いいですよ。楽しんできてください」
ウインクを1つしてからナミはハンドルを捻り、水上オートバイクを走らせる
後で点検して色々とデータを取る必要があるが、これで私とナミの船に
目処が立ったと思うと自然と笑顔になる
そして、楽しんでいるナミを見て私もまた楽しむのだった
◆
「ねぇ、たまには外食でもしない?」
水上オートバイクの試験を終えて家に戻ると、ノジコが新聞を片手にそう言ってきた
私はナミと顔を見合わせてから口を開く
「それは構いませんが、どこに行くのですか?」
「ここよ」
そう言ってノジコは持っていた新聞を突き出してくる
「「『海上レストランバラティエ』?」」
私とナミの言葉が重なる
「前々から行ってみたいと思ってたんだけど、アーロンのせいで行けなかったのよね」
ノジコの言葉に私とナミはまた顔を見合わせる
「ベルメールさんはどう思いますか?」
私は煙草を吸って一服していたベルメールさんに話を振る
「いいんじゃないかしら」
フーっと紫煙を吐き出してからベルメールさんが言葉を続ける
「宴の準備は粗方終わったけど、残りは明日商人が来るまで買えないからねぇ」
会場の準備は終わっても食料やお酒が揃ってないのでまだ宴を出来ないのだ
「それに、シュウの能力を使えば日帰りできるし問題ないでしょ?」
ウインクをしながらそう言ってくるベルメールさんの言葉に頷く
「確かにその通りですが、バラティエの場所を知らないので転移出来ませんよ」
私の言葉にナミがテーブルの上に新聞を拡げる
「シュウ、新聞に載っている海図に印があるわ」
ナミの言葉で新聞に目を向けると確かに印がある
「シュウ、ちょっと待ってて」
ナミが自室に小走りで向かう
戻ってきたナミは手にしていた自筆の海図をテーブルに拡げた
「シュウ、ココヤシ村がここだからバラティエはこの辺りよ」
ナミが自筆の海図に指で指し示す
一見で位置を把握するナミの能力に私は称賛の言葉を贈る
「ナミ、お見事です」
「5年も東の海で海賊相手に泥棒をしていればこのぐらいはね♪」
そう言って微笑むナミに惚れ直す思いだ
「それでは、私が一度バラティエの場所まで飛んでいき確認をしてくるので
皆は出掛ける準備をしていて下さい」
私の言葉にナミ達は喜びの声をあげながらハイタッチをする
そして、シャワーを浴びに行ったり服を選んだりと各々出掛ける準備に取り掛かる
そんな皆の様子に笑いを堪えながら私はバラティエに向かって飛び立ったのだった
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