ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です


第91話

「いてて…もっと優しく治療してくれよシュウ」

 

クロネコ海賊団の襲撃は失敗に終わり、キャプテン・クロを海賊達に引き渡して解放した後

カヤお嬢さんの屋敷で怪我人であるルフィと執事のメリーを治療している所だ

 

「治療終わりましたよ、ルフィ」

「ししし、ありがとなシュウ」

「私も改めてありがとうございます、シラカワ博士」

 

ルフィと共に執事で羊なメリーも礼を言ってくる

 

「シラカワ博士、メリーを助けていただきありがとうございました」

 

2人の治療を終えるとカヤお嬢さんも私に礼を言ってきた

 

「私は科学者ではありますが医者ではありません。ですので後で医者の方に

 診てもらった方がいいでしょう」

 

本来なら医者に診せた方がいいのだろうが、今回の海賊襲来を秘する為に

こうして私が治療することになった

 

「はい、重ねてありがとうございます」

 

お嬢様らしく清楚な振る舞いでカヤが礼を言ってくる

 

その姿は薄幸の美少女といった所だろうか

 

「ところでカヤ、クロの奴を逃がしてよかったのか?」

 

ウソップの言葉にカヤが頷く

 

「はい、ウソップさん。クラハドールが執事として私の世話をしてくれたのは

 打算があっての事ですが、それでも一緒に過ごした家族のような人でしたから…」

 

カヤお嬢さんの判断は甘いと思えるものだが今回の一件の当人がそれでいいと言うのなら

こちらが何かを言うのは不粋な事だろう

 

パンッ!

 

場の空気を変えるようにカヤが柏手を打ち話し始める

 

「そうだわ!皆さん、今日はお礼に夕食をご馳走させていただきますね」

「それは良いアイディアですお嬢様。このメリー、腕を振るわさせていただきます」

 

こうして、私達はカヤお嬢さんの計らいで夕食をご馳走になることになった

 

そして、夕食まで時間があるので私はナミと話し合う事にした

 

 

 

 

「この場で言うのはおかしいかもしれませんが…ただいま、ナミ」

「う、うん…おかえり、シュウ」

 

カヤの家で夕食をご馳走になるまでの合間にシュウと話をする事になった

 

シュウが笑顔でただいまと言ってくるとわたしの顔が熱くなる

 

「ナミ…アーロンは私が倒しました」

 

シュウの言葉にわたしの体が固まる

 

「そ、そうなんだ…」

「えぇ、ココヤシ村を始めとして支配されていた村の皆が解放の宴の準備をしています

 …夜が明けたら私と一緒にココヤシ村に帰りましょう」

「…うん」

 

わたしはなんとかシュウに返事をするけど体が震えてしまう

 

無力感が体を包み涙が溢れてくる

 

「…ナミ?」

「…ごめん、ごめんねシュウ…わたし、何もできなかった…」

 

ココヤシ村を買い戻す為に、シュウがアーロンと戦わずに済ませる為に

お金を集め続けて来たけれど…間に合わなかった

 

…わたしは、何もできなかった

 

そんな思いがグルグルとわたしの中を巡り感情を掻き乱していく

 

ギュッ

 

わたしの体が暖かい手と体に包まれる

 

シュウがわたしを抱き締めてくれている

 

「ナミ…貴方は何もできなかったわけではありません」

「でも…」

「ナミが8年もの間、皆の為に頑張っていたことはココヤシ村や

 他の村の人達もよく知っています」

 

わたしの言葉を遮るようにシュウがわたしの頭を撫でながら言葉を続ける

 

「ナミが頑張ってきたその姿を皆が見てきたからこそアーロンの支配に耐えてこれたのです」

 

顔を上げてシュウを見ると、シュウが指で優しく涙を拭ってくれる

 

「ナミ、良く頑張りましたね…ありがとう…」

 

シュウの言葉にまた涙が溢れ出す

 

報われたという思いがわたしの体を包み込む

 

わたしの涙が止まるまで、シュウが優しく抱き締めてくれていた

 

 

 

 

夜が明けて翌日、南側の上陸地点にキャラベル型の船の姿が見える

 

ゴーイングメリー号

 

それがこの船の名前だ

 

先日の一件のお礼としてカヤお嬢さんとメリーがルフィ達に贈った船だ

 

「なぁシュウ、ナミ、俺の仲間になれよ~」

 

ゴーイングメリー号の船上からルフィがそう話しかけてくる

 

シロップ村の青年、ウソップを仲間に加えたルフィとゾロが出航準備を整えたので

私とナミが見送りをしているのだ

 

「以前にも言いましたが、私は誰の下にもつく気はありませんよ、ルフィ」

「わたしは何度も海賊は嫌いだから仲間にならないって言ってるでしょう」

 

私が話した後にナミが呆れるような口調で話す

 

「それに、わたしはシュウと一緒に行くからお断りよ」

 

ナミが私の腕に体を預けるようにして絡みながらそう言い放つ

 

私の腕は幸せな感触に包まれている

 

「ちぇ~」

「ククク…そう拗ねなくてもいいではありませんか。航海術ならばウソップが

 持っていると言っているのですから」

 

私の言葉にウソップがビクッとしながら反応する

 

「お、おう!任せとけ!何故なら俺は…キャプテ―――ン・ウソップだからな!」

「…ねぇ、シュウ。ウソップは嘘をついていると思うんだけど?」

 

ナミが小声でそう聞いてくる

 

「例え嘘でも、己の言葉には責任を持っていただきましょう」

「…それもそうね」

 

私の言葉にナミは笑顔で頷く

 

「ルフィ、貴方達がココヤシ村に来たときは歓迎しますよ」

「おう!肉を一杯食わせてくれ!」

「ククク、わかりました」

 

一通り話を終えてルフィがゾロとウソップを見て声をあげる

 

「出航だ―――!」

 

ゴーイングメリー号が海原へと旅立って行く

 

それを見届けた後、私とナミはココヤシ村に転移した




次の投稿は13:00の予定です

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