ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です


第90話

「使えない奴等だ…俺自らの手で計画を修正しなくちゃならねぇとはな…」

 

手の平で眼鏡を押し上げながらクロが話す

 

「ウソップくん、特に君には念入りにお礼をいたしましょう」

 

執事としての礼をとりながらクロが言い放つ言葉に、ウソップが顔を青くする

 

そんなウソップを庇うように、ルフィが指の骨を鳴らしながら前に出る

 

「ししし、悪ひつじ!俺が相手だ」

 

クロは眼鏡を手の平で押し上げながら斜に構える

 

対してルフィは腰を落として構えた

 

クロの姿が音も無く消えて見えるほどの速さで動き出す

 

六式の剃に匹敵する速さでルフィに近づき猫の手のような武器で撫でるように斬る

 

斬られたルフィは歯を食い縛って反撃するがクロは持ち前の速さですぐに距離をとる

 

「な、なんだ~?何が起きたんだ?」

 

ウソップが目を見開き驚いている

 

「シュウ、今のクロの動き…剃かしら?」

 

ナミが首を傾げながら私に聞いてくる

 

「おそらくは剃とは別のものでしょう。剃はその性質上、地を踏む音がしますが

 クロの移動術にはそれがありませんからね」

 

暗殺術の類いだと思うが正確な所はわからない

 

「おいおい、ルフィの奴…大丈夫かよ?」

 

ウソップが顔を青くしながら言葉を溢す

 

「心配はいらないですよ、ウソップ。一見しただけですがあの移動術には

 デメリットもあるようですから」

「デメリット?」

 

ウソップが疑問の声をあげるとナミとゾロも私を見てくる

 

「初動が小さく音も出さずに動くあの移動術を見切るのは難しいですが、その反面として

 あの移動術は体重を乗せた攻撃には向いていないようですね」

 

その事から首等の急所を防御しておけば早々にやられることはない

 

ルフィが素早いクロの動きを捕らえようとするが、中々上手くいかない

 

そして反撃で殴りかかったルフィの手に、クロが乗り悠々と立って見下ろした

 

「そこのお前の言う通りに俺の攻撃には重さが欠ける…だが、それがどうした?」

 

クロがルフィの顔面を蹴り飛ばして音もなく地面に下り立つ

 

「麦わらは俺に一撃も当てることが出来ずに翻弄されている…格が違うということだ」

 

クロの言葉を遮るように、ルフィが足を伸ばし鞭のように使いクロの体を薙ぎ払う

 

だが、クロはルフィの足に乗って駆け寄り二度ルフィの顔面を蹴り飛ばす

 

「麦わらが終われば次はお前達だ…覚悟しておけ!」

 

クロの言葉にウソップの膝が震える

 

そして、蹴り飛ばしたルフィにクロが追撃しようとした時、坂に少女の声が響き渡った

 

「クラハドール!」

 

坂の上の少女に注目が集まる

 

「カヤ…なんで…?」

 

ウソップの呟くような声が私の耳に届く

 

「これはカヤお嬢様…そのような格好で外に出られては風邪をひいてしまいますよ」

 

クロが執事としての礼を取るが、その顔は海賊としての凄みを持ったままだ

 

「…メリーを斬ったのは本当に貴方なの、クラハドール?」

 

カヤという少女の言葉をクロが鼻で笑う

 

「そんな…」

 

クロが崖の方を見て声をあげる

 

「ジャンゴ!何をしている!さっさと計画通りに動け!」

 

クロの言葉に反応してジャンゴが動こうとするが、私の能力により地面に這いつくばる

 

「…ダメだ!紫の髪の男のよくわかんねぇ能力で動けねぇ!」

 

ジャンゴの言葉でクロが私の方を向く

 

「…そうか、ならばてめぇから…っ!」

 

クロの言葉を遮るようにルフィの伸ばされた拳がクロの顔に叩き込まれる

 

「お前の相手は俺だ!悪ひつじ!」

 

ルフィの拳により割れた眼鏡をクロが投げ捨てる

 

そして、両手をダラリと下げて体の力を抜く構えをとった

 

「「「うわぁあああ!助けてくれぇえええ!」」」

 

クロの構えを見た海賊達が叫んだ

 

「…杓死!」

 

クロが今まで以上の速さで動き出す

 

ガリッ!

 

ザリッ!

 

その速さのまま所構わずに斬っていく

 

地面に這いつくばる自分の仲間達までも…

 

「ぎゃあぁぁぁああ!」

「いでぇぇぇえええ!」

 

斬られた海賊達から悲鳴があがる

 

「お、おい、あいつら助けなくていいのか?」

 

ウソップが私にそう言ってくる

 

「別に能力を解除しても構いませんが…そうしたら坂の上のお嬢さんが狙われますよ。

 それでもよろしかったら能力を解除しましょう」

 

私の言葉にウソップが唇を噛む

 

「シロップ村を襲おうとしなければこうはならなかったんだから、あいつらの自業自得よ」

 

ナミの言葉に私は頷く

 

だが、ウソップは納得がいかないようだ

 

キンッ!

 

こちらまで流れてきたクロの攻撃をワームホールから取り出した剣で弾く

 

それを見たゾロが驚いた様子を見せる

 

「…見えてるのか?この動きが」

「この程度でしたら知覚することは可能ですね」

 

キンッ!

 

またクロの攻撃が流れてきたので剣で弾く

 

「お前!仲間をなんだと思ってるんだぁぁああああ!」

 

ルフィの怒りの声が響き渡る

 

その時、ルフィの体に斬り傷が出来るがルフィは手を伸ばして

クロの体を掴み地面に投げ飛ばす

 

「ぐっ!?」

 

地面に投げ飛ばされたクロが苦悶の声をあげる

 

「お前!なんで仲間まで斬るんだ!?」

「…仲間?あいつらは只の駒だ」

 

投げ飛ばしたクロにルフィが馬乗りになり殴っていく

 

だがやられっぱなしとはいかないとばかりに、クロがルフィの脇腹を撫でるようにして斬る

 

「いぎっ!?」

 

一瞬動きが止まったルフィの隙をついて、クロが馬乗り状態から抜け出し立ち上がる

 

高速で動き続けた事と、ルフィに何度も殴られた事で体力を消耗したクロが肩で息をしている

 

「杓死!」

 

またもや高速で動きながらクロは周囲を斬り刻んでいく

 

背中を斬られたルフィは手を伸ばしてクロを掴むと、両手両足を使い

しがみつくようにしてクロを拘束する

 

「ゴムゴムのぉ―――!」

 

その態勢のままルフィは首を伸ばす

 

そして…

 

「鐘!」

 

ルフィがゴムの収縮の勢いを利用してクロの顔に頭突きをする

 

その一撃で意識を飛ばしたクロは、地面にゆっくりと倒れていった




次の投稿は11:00の予定です

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