ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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あと2、3話で過去編は終わると思います


第6話

ガープさんに海軍に勧誘されてから3日経ち、治療した軍人さん達の状態が安定してきたので

後を村のみんなと軍医さんに託したわたしは父と一緒に一度実家に帰ってきた

 

「お帰りなさい、アカリ」

「ただいま、お母様」

 

わたしと同じ紫色の髪をしたこの女性が今生でのわたしの母親だ。

 

「もう、お母様じゃなくてママでしょう?寂しいわぁ」

 

そう言って着物の袖で目元を押さえる仕草をするお母様なのだけど…

お父さんといいなんでパパ、ママ呼びにこだわるのかしら?

 

「それで、お母様…」

「ママよ、アカリ」

「お母…」

「ママよ、アカリ」

「…ママ」

「何かしらアカリ?」

 

…このママ呼びの強制さえなければ綺麗で完璧なお母様なのにと思うが、

ため息をつきたいのを堪えて、わたしはガープさんに海軍に誘われたことを話すことにする

 

「わたし、海軍に誘われたんだけど…」

「ダメよ」

「そんな、ママ」

「ダ~メ」

 

そんな可愛く言われても…

 

「ブンタさんから聞いたけど、アカリは海軍の中将さんとブンタさんの

 戦いをどう思ったのかしら?」

「…凄かったとしか」

「ブンタさんの剣を見せてもらったのだけど、打ち直しをしなければいけないほど

 剣にダメージを受けていたわ。その中将さんの拳でね」

 

さすがはゲンコツのガープと言われるだけはあるのね…って

 

「素手で剣にそんなにダメージを与えたの!?」

「ブンタさん曰く、最初の一撃以外は手加減されていたみたいね」

「そんな…」

「本当なのだアカリ」

「邪魔しとるぞお嬢ちゃん」

 

そう言ってお父さんとガープさんが煎餅を齧りながら部屋に入ってきた。

…行儀悪いわよ2人とも

 

「拙者とガープ殿の武装色の覇気では差があるのだ。故に手加減されていなければ

 拙者は剣を折っていたかもしれないのだ」

「ぶわっはっはっは!折らぬように打点をずらし打ち込んできていただろうが」

 

…武装色の覇気

 

「アカリは物心ついた頃から見聞色の覇気を使えるけれど、武装色の覇気はどうかしら?」

「お母様…」

「ワノの国の外…海に出ていけば様々な能力者と出会うでしょうね。その時に

 自然系能力者と出会ってしまったらアカリはどう戦うのかしら?」

 

わたしはお母様に言葉を返すことができない

 

「だから、1年我慢しなさい」

「え?」

「1年でシラカワ流の基礎と武装色の覇気を最低限使えるように鍛えてあげるわ」

 

お母様は笑顔でわたしに告げる。嬉しいのだけど…本当にいいの?

 

「アカリがブンタさんと船で近海に出た時に凄く嬉しそうにしていたのは知っているわ。

 だからブンタさんとアカリの将来のことを前から相談していたのよ」

「そんな時にアカリに見合いの話しがきたのだ。拙者はアカリが外に行くのに

 反対だったから見合いを受けようと方々に話しをしに行っていたのだ」

 

そんなことがあったんだ…

 

「ブンタさんがアカリを追い出してもアカリは泣き言も言わずに自活してしまったでしょう?

 それでブンタさんもアカリが外に行くのを覚悟したのよ」

「お父さん…」

「すまなかったのだアカリ。拙者はもっと家族で一緒にいたかったのだ」

 

わたしはこの世界に転生する前にどういったところなのかある程度知っていたから

色々と楽しみたいと考えていた。それが自然と海への憧れとして出ていたのかもしれない

 

前世では一人暮らしをしていたから今生でも家を出ることを当たり前に考えていた…

それを察した両親はわたしのことを考えてこの世界で生き抜くために必要な技術を

教えようとしてくれている…わたしはあまり両親のことを考えてなかったのに…

 

「ごめんなさい…」

「何を謝ることがあるのかしらアカリ?」

「わたし、お母様やお父さんのことを考えてなかった…」

 

お母様がわたしに近づき頭を撫でてくる。とても優しいお母様の手だ

 

「…確かにアカリが家を出るのは寂しいわ。でもね、いつか子供は巣立つものよ」

 

お母様の言葉と手の暖かさに顔が熱くなってくる…涙が溢れそうだ

 

「だからあと1年思いっきり鍛えてあげるけど、そのかわりに思いっきり甘えてねアカリ」

 

わたしは今度こそ涙を流した。声をあげて泣いてしまった。

そんなわたしをお母様は優しく抱き締めてくれた

 

 

 

 

「ふふふ、泣き疲れて寝てしまったわね」

 

私の娘、アカリが私の胸に抱かれて眠っている。歳に似合わず大人っぽいところも

あるけれど、寝顔もとても可愛い自慢の娘よ

 

「中将さん、お話しを聞いていたと思いますが、本当にアカリを海軍に誘うおつもりが

 あるのなら、1年後にアカリを迎えにきていただけますか?」

「…本当にいいのかの?」

「はい、航海術も持たずに海に出て迷子になるよりはいいですから」

「ぶわっはっはっは!確かにその通りじゃの!」

「静かに!アカリが起きてしまいます!」

「おっと、すまんすまん」

 

トテトテと部屋の外から可愛らしい足音が聞こえてくる。

どうやらあの子達がきちゃったみたいね

 

「お母様、アカリは外に行ってしまうのですか?」

「アカリお姉ちゃん、行っちゃうですか?」

 

私の娘達が不安そうに訪ねてくる。後でちゃんと説明しないとね

 

「このお嬢ちゃん達は?」

「アカリの姉のユカリと、妹のヒカリなのだ。お前達、お客様に挨拶するのだ」

「姉のユカリと言いますわ」

「妹のヒカリなのです!」

 

元気に挨拶をする娘達がとても可愛いわね。後で誉めてあげなくちゃ

 

「儂はガープじゃ、お嬢ちゃん達も海軍に入らんか?」

「私はアカリと違って覇気をまだ扱えませんから無理ですわ」

「ヒカリはまだママと一緒にいたいから嫌なのです!」

 

今日はヒカリの好きな物をいっぱい作ってあげないとね♪

 

「う~む、残念じゃのう」

「ガープ殿、あまり簡単に娘達を連れて行こうとしないでほしいのだ」

「海軍も人手不足でのう、機会があれば勧誘せねば休暇もまともにとれんのじゃよ」

「それほどに海賊が増えているのであるか?」

「正確には大物に対処できる者が少なくてな、後進の育成に手間取っているのが現状じゃわい」

 

成る程、だから才ある若手を求めているのね

 

「それがアカリを誘った理由ですか?」

「それもあるのじゃが…まぁほとんどは儂の直感じゃな。ぶわっはっはっは!」

 

私の問いにガープさんが笑いながら答える。なんとも憎めない人柄の方ね

 

「さて、そろそろ失礼するとしようかの」

「水くさいのだガープ殿、シオリの作る昼飯を食べていくのだ。絶品なのだ」

「そうしたいところだが、そろそろ報告書やらを書かねば副官のボガードに

 どやされるからのう、ぶわっはっはっは!」

「残念なのだ」

 

ブンタさんはガープさんのことが本当に気に入ったみたいね

 

「それではな、アカリには見送りはいいから修行に励めと伝えておいてくれ」

「任せるのだ」

「お嬢ちゃん達もまたな」

「まだアカリが出ていくと決まった訳ではありませんわ」

「アカリお姉ちゃんを連れていこうとする悪い人なのです!」

 

あらあら、ガープさんはユカリとヒカリには嫌われちゃったみたいね

 

「奥方もまたな」

「ええ、航海の無事を祈っています」

 

そしてガープさんは部下の方々の元に戻っていった。さて、2人にアカリのことを

説明しないといけないのだけど、その前にお昼ご飯を作らないとね

 

 

 

 

「ガープさん行っちゃったわね、お父さん」

「うむ、気持ちのいい気性をした御仁だったのだ」

 

わたしとお父さんはガープさんの船がワノ国から離れていくのを見送っている

ガープさんからは見送りはいいって伝言をもらったけど、どうしても見送りたかったからだ

 

「あと1年、シオリに本気で鍛えてもらうのだ。泣き言は聞かないと思うのだ」

「わかってるわよお父さん。でも、お母様が師範だからというのはわかるけど、

 なんでお父さんじゃないの?」

「覇気の使い手はそれぞれ得意な色があるのだ。そして拙者の得意な色は見聞色なのだ。

 故に、武装色を教えるのならばシオリが適任なのだ」

 

得意な色ね、わたしは見聞色の筈だけど…他の色も使えるようになるのかしら?

 

「本当に1年で武装色の覇気を使えるようになるの?」

「普通は無理なのだ。才能をもった者が数年かけて修行をしてやっとなのだ。

 でも、アカリは既に色は違えど覇気を使えるので可能性は高いのだ」

 

本来なら数年かかるのね…使えるようにしておいてよかったわ

 

「それに…」

「ん?どうしたのよお父さん?」

「シオリが一度口にした以上は無理にでも修得させる筈なのだ…」

「…あのお母様が?」

「シオリは剣に関しては一切妥協しないのだ…」

 

わたしとお父さんの間に沈黙が流れる

 

「大丈夫よねお父さん?」

「頑張って生き抜くのだアカリ」

 

それからのわたしはお父さんの言葉通りにお母様の修行によって毎日地獄の筋肉痛に

悩まされる日々を送ることになる。でも、そのおかげでわたしはお母様の言葉通りに

1年で武装色の覇気を使えるようになった。

 

そして1年後、約束通りにガープさんがワノ国に訪れる。

いよいよ、わたしがワノ国の外に出る時がやってきた


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