ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です


第68話

いい決闘だった

 

シュウの腕に抱かれているエースを見てそう思う

 

シュウは自然系能力者との戦いの経験を得た

 

そして、エースはこの決闘で一つ大きくなった

 

決闘前は覇気を扱うどころか、知識すらない未熟者だったが今後はかわることだろう

 

ニューゲートが私のところへ歩いて来ている

 

その歩みは老いによる衰えを感じさせない堂々たるものだ

 

「いい決闘だったな、レイリー」

「あぁ…だが、エースに対して随分と過保護だったように見えるぞ、ニューゲート」

「なに?」

 

「覇気を扱うどころか知識すら教えていないんだ。過保護と言って間違いではないだろう」

 

私の言葉にニューゲートが鼻を鳴らす

 

「エースは負い目を抱えていた」

「負い目?」

「あぁ、自分のせいで母親が亡くなったとな…」

 

…なるほど

 

「そのせいでエースは自分を信じきれず、覇気を教えても意味がなかった」

「だが、防御の必要性ぐらい教えてもよかったのではないか?」

「俺はただ息子達を背負うだけよ…どう育つかは息子達次第だ」

 

やれやれ、相変わらずの男だ

 

「レイリー、てめぇの方こそ養孫と呼ぶ男にどれだけの修羅場を潜らせてきたんだ?」

「さてな、100を超えてからは数えてないさ」

 

この3年、シュウが賞金稼ぎとして超えた修羅場は優に三桁に達している

 

六式も《剃》だけでなく《月歩》も身につけた

 

もっとも、シュウ自身の能力で飛べるので空中で踏み込むために

使う程度の意味合いしかないが…

 

「一体博士の何がそうさせる?博士は恩人だ、俺に出来ることなら…」

「シュウのやる事に手出しをするなら戦争だぞ…ニューゲート」

 

私は覇王色を込めてニューゲートを睨む

 

「…わかった、手出しはしねぇ。だが、何かあればいつでも言えレイリー」

「あぁ」

 

私との話を終えたニューゲートはシュウ達の方へ歩いていった

 

 

 

 

我が友ですか…

 

自然に口から出た言葉でした

 

実力差は明らかですがエースは諦めずに戦い続けた

 

勝機など欠片もないのに戦い続けたのだ…

 

私はエースの意思の強さに感動している

 

そして、私にも同じことが出来るだろうかと考えている

 

…ノジコやベルメールさん、そしてナミの為なら出来るでしょう

 

だが、私自身の意地を張っては出来ないと思う…

 

どこかで転移を使って逃げるはずです

 

私は腕の中で眠る友を誇りに思う

 

「息子が世話になったな、博士」

 

いつの間にか白ひげが側に来ていた

 

どうやら思考に没頭し過ぎたらしい…

 

これは後でレイ養祖父さんに説教されますね

 

「いえ、私の方こそ良い経験をさせていただきました」

「そうか…今の言葉はエースも喜ぶだろうよ」

 

白ひげが私の腕の中にいるエースを抱き上げる。まるで宝物のように…

 

「博士、帰る前に2億ベリーを受け取っていってくれ」

「…私とエースの約定とは違いますね」

 

私の言葉に白ひげが首を振って答える

 

「息子を成長させてくれた礼だ」

 

私は白ひげの腕の中で満足そうに微笑み眠っているエースを見る

 

「博士との決闘でエースは一つ大きくなった。親として嬉しい限りだ」

 

白ひげがエースを見るその眼は世界最強の名を冠する男とは思えない優しいものだった

 

「…わかりました。遠慮なく受け取りましょう」

「それでいい、グララララ!」

 

白ひげが豪快に笑う

 

そして、白ひげ一味の者達も家族の成長を喜ぶように笑うのだった

 

 

 

 

不意に目が覚める

 

体が怠い、あちこち痛ぇ…

 

俺は何とか体を起こすと周りを確認する

 

「ここは…拠点の中か?」

 

体を起こしたのはいいものの、まだ強烈な眠気が残っている

 

「何がどうなって…!?」

 

思い出した!

 

「シュウは…決闘はどうなった!?」

 

ガチャ

 

俺が寝ている部屋に誰かが入ってきた

 

「エース、目が覚めたかよい」

「マルコか!決闘はどうなったんだ!」

 

マルコが俺を宥めるように手を前に出す

 

反対の手には飯があるようだ

 

「落ち着けよいエース、決闘はお前の負けだよい」

「…そうか」

 

マルコの言葉で体から力が抜ける

 

「…シュウはどうしてる?」

「3日前に帰ったよい」

 

「そうか…って3日前!?」

「そうだよい。エースは3日眠ってたんだよい」

 

まさかそんなに眠っていたとは思わなかったので言葉が出てこない

 

「それとエース、博士から伝言を預かってるよい」

 

俺は頷いてマルコに続きを促す

 

「『機会があればまたやりましょう。我が友よ』だってよい」

 

我が友よ…

 

その言葉で拳にあの時の感触が甦る

 

だからこそ…置いて行かれる訳にはいかねぇ!

 

「マルコ…シュウの言ってた覇気ってやつ…出来るか?」

「出来るよい」

 

俺はベッドの上で土下座をする

 

「頼む!教えてくれマルコ!」

「よせよいエース、水臭いよい」

 

俺はマルコの言葉で顔を上げる

 

「まずは怪我を治すことだよい。そうすれば親父が教えてくれるよい」

「親父が?」

 

マルコが一つ頷いてから話を続ける

 

「そうだよい。俺はエースが得意な覇王色の覇気を使えないから親父が教えてくれるよい」

「覇王色?」

 

俺の言葉にマルコが笑う

 

「その事も含めて親父に教えてもらうといいよい。だから飯食って早く寝るよい」

 

そう言うとマルコは持っていた飯を俺に渡してくる

 

パンと肉だ

 

臭いで腹が鳴る

 

俺は早速かぶりついた

 

「それじゃ俺は行くよい。それを食ったら大人しく寝るんだよい」

 

俺はマルコの言葉に片手をあげて応える

 

「まったく…世話の焼ける弟だよい」

 

部屋を出ていく前にマルコが言った言葉を俺は聞こえない振りをして飯を食い続けた




次の投稿は11:00の予定です

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