ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です


第67話

「火拳!」

 

俺が放った火の大波がシュウがいた場所を飲み込んでいく

 

だが、目に見える光景と違って手応えは感じなかった

 

「流石に自然系能力といったところでしょうか。予想以上の規模の火でしたね」

 

後ろから聞こえた声に反応して、俺は素早く振り向く

 

そこには煤一つない無傷のシュウの姿があった

 

「あれだけの規模ならば小型船はおろか、中型船をも一息で飲み込むでしょうね」

 

右手を顎にあててシュウは考察を披露していく

 

よく見れば、その左手には決闘前にはなかった木剣があった

 

「勘違いするなよシュウ、本気でやれば大型船だって飲み込めるぜ」

「なるほど、エースが海賊となってから僅か1年で1億8000万ベリーもの

 賞金をその首にかけられた事に納得がいきました」

 

特効薬を造った天才だってのは知ってたが、本当に頭の回る奴だな

 

「ところで、その木剣はどこで調達したんだ?シュウ」

「ククク…さて、何処でしょうかね?」

 

不思議な所がある奴だけど嫌な奴じゃない

 

それに、教えないって事はこの決闘に本気で勝ちにきてるって事だ

 

そうこなくっちゃな!

 

「それでは、今度はこちらから行かせていただきますよ」

「おう!」

 

俺が返事をするとシュウの姿が消えていきなり目の前に現れた

 

そして、既に木剣を振りかぶっていたシュウはそのまま俺を叩き斬ってきた

 

ボッ!

 

俺の体は上下左右の4つに分断される

 

距離をとったシュウは油断なく俺を見据えている

 

「なるほど、情報では知っていましたが本当に効果がないのですね」

 

分断された俺の体は一つになり元に戻る

 

「正に攻防一体…最強の系統と呼ばれるにふさわしいものですね」

「あぁ、いい能力だろ?」

 

シュウが右手にある木剣を見て、その感触を確かめるかのようにして話ている

 

「えぇ、敵とすればやっかいな能力ですね」

 

そんな事をシュウは言うが、その表情は特に困った様子を見せていない

 

「諦めて俺の養弟になってもいいんだぜ?」

「それも悪くない提案ですが、もう少し足掻くとしましょうか」

 

またシュウの姿が消える

 

俺は直感に任せて横に拳を振るう

 

ガッ!

 

手応え有り!

 

だが、シュウは俺の拳を木剣で受けていた

 

「お見事です」

 

俺の拳はシュウの木剣に弾かれて無防備な状態になる

 

ボッ!

 

また体が分断される

 

俺は分断された体をシュウの近くに誘導して体を再構成してそのまま殴りかかる

 

殴りかかった右の腕を肘の辺りで断たれる

 

そして、そのまま首、腰と分断されていく

 

「おいおい、容赦ねぇなシュウ」

 

体を捻りシュウの頭上から右脚の踵を落とす

 

右脚を膝の辺りで断たれる

 

拉致があかないと思ったのか、シュウが一度距離をとる

 

「シュウ、こいつを忘れてるんじゃないのか?」

 

俺は右の拳を引き、突き放つ

 

「火拳!」

 

火の大波がシュウのいる場所を飲み込んでいくが、また手応えはない

 

俺は直感に従って右を向く、するとそこにはまた無傷のシュウがいた

 

「エース、私の動きが見えているのですか?」

「いや、見えてないぜ」

 

俺の答えにシュウが首を捻っている

 

「直感でわかるのさ、なんとなくだけどな」

 

俺の言葉にシュウが大きなため息を吐いた

 

「やれやれ、天才というのも面倒なものですね」

「お前が言うな!」

 

お前は特効薬だのビールだの造った天才だろうが!

 

「ところでよ、その動きってどうやってるんだ?」

「決闘が終わったら教えますよ、エース」

 

ケチンボめ

 

「しかし、能力だけでなく随分と戦い慣れているようですね」

「あぁ、ガキの時から鍛えてきたからな!」

 

フーシャ村で過ごした日々は俺の財産だ

 

「なるほど…ですが、その割りには防御がおろそかですね」

「効かねぇんだから別にいいだろ?」

 

何故か親父やマルコの拳骨は痛ぇんだけどな

 

「…その認識は友として正した方がいいでしょうね」

「友?義弟の間違いだろうシュウ」

 

シュウとは気が合うのか、決闘の最中だっていうのにどうにも話が弾んじまう

 

「ククク、それでは行きますよ。エース」

「おう!かかってこい、シュウ!」

 

シュウの姿が消える

 

だが、何度も見て慣れてきた

 

直感でどこに来るのかなんとなくわかる

 

シュウは動きだけじゃなくて剣もすげぇ

 

俺の攻撃を当てるには相撃ち狙いで行くしかねぇな

 

直感に従って拳を振るう

 

ガッ!

 

俺の拳はまたシュウに木剣で防がれたがこれは仕方ない事だ

 

拳がシュウの木剣で弾かれてまた無防備になる

 

本命はここだ!

 

俺は弾かれた拳を引き付ける勢いを利用して反対の拳でシュウを殴ろうとする

 

ゾクッ!

 

俺の全身に寒気が走る

 

何だ?

 

何がくる?

 

ここにいるな!

 

避けろ!

 

動け!

 

動け!

 

俺は直感に突き動かされるように横に跳ぶ

 

ドガッ!

 

その直後、シュウの木剣が横に跳んだ俺を捉えていた

 

 

 

 

木剣に武装色の覇気を載せてエースに打ち込んだのだがその手応えは浅いものだった

 

今ので決めるつもりだったのですけどね…

 

私はこれまでの攻防や会話でエースの対応を読んでいた

 

私の動きの速さ、剣の技量、そしてエースの立ち回りや防御の認識から

エースは相撃ちでのカウンターを狙ってくるだろうと予測した

 

だがエースは私が木剣を打ち込む瞬間、横に跳んでいた

 

天然物の天才の直感というのは本当にやっかいなものです

 

私の一撃で吹き飛んだエースが地面を転がる

 

すぐに追撃しようと構えるがエースは片手で脇腹をかばいながら

空いている手で拳を作り頭上へと振り上げる

 

…何をするつもりでしょうか?

 

「火拳!」

 

エースは拳を地面に叩きつけその場に火柱を巻き上げた

 

…なるほど、いい対応ですね

 

地面から20メートル程の火柱が出来ている

 

距離はそれなりにあるがここまで熱がくるほど凄いものだ

 

エースは直感がいいだけじゃなく咄嗟の機転の良さも持ち合わせている

 

私は少し思案する

 

この1年、ミホークとの手合わせのおかげか能力も強くなっている

 

その能力の一つである湾曲フィールド…つまりバリアならあの火柱の熱を

数秒の間遮断して追撃することも可能でしょう

 

…止めておきましょう、リスクが高い

 

それに、私はエースと決闘をしているのであって殺し合いをしている訳ではありません

 

大人しく火柱が収まるのを待つとしましょう

 

後でレイ養祖父さんから甘いと説教されそうですが…その時は仕方ないと割りきる

 

それから一分ほど経ったでしょうか、火柱は収束していきエースが姿を見せた

 

片手で脇腹を押さえ脂汗を流している

 

手応えは浅かったですがそれなりにダメージを与えられたようだ

 

「…すげぇなシュウ、どうやって俺を捉えたんだ?」

 

ダメージは伺えるものの見聞色で感じるエースの気勢は少しも衰えが見えない

 

「覇気と呼ばれるものですね」

「…覇気?」

 

エースが表情に疑問を浮かべている

 

…やはり知らなかったのですか

 

「えぇ、この海で強者と呼ばれる方々なら大抵は身に付けている技術です」

「そうか、やっぱすげぇなシュウは」

 

エースが賞賛してくれるが私などまだまだの領域です

 

「まだ続けますか?エース」

「さっきのシュウの言葉じゃねぇが、俺も少し足掻かせてもらうぜ!」

 

そう叫んだエースは拳を握り締め私に跳びかかってきたのだった

 

 

 

 

手、腕、脚、腹と全身余すところなくシュウに打ち据えられていく

 

頭だけは死に物狂いで剣を受けないようにしている

 

目の前がクラクラして立てなくなったり気絶したりするからな

 

俺の攻撃は一発も当たってない

 

シュウのすげぇ速い動きに直感で合わせて拳や蹴りをやるんだが

全部剣で受けられたり弾かれたりしている

 

火拳を混ぜたりしてるんだがそれも当たらねぇ

 

火の大波で見えねぇんだけど、シュウは消えてるんじゃねぇかと感じてる

 

それまで直感でどこにいるのかはなんとなくわかってるのに

火拳を避けられる時はたまにわからなくなることがある

 

そして、急に横や背後に現れたように直感が働くから混乱しそうになる

 

なんとなくだけど、シュウは能力者でそれが能力に関係あるんじゃねぇかな?

 

ここまで散々シュウにやられてわかったこともある

 

今の俺じゃあシュウに勝てねぇ

 

それでも、諦める訳にはいかねぇ

 

一発だ

 

たった一発でいい…シュウを殴らないといけねぇ…

 

そうじゃねぇと俺は…シュウと対等のダチになれねぇ!

 

膝が震える

 

目がチカチカする

 

それでも、俺は諦めずに拳を振るっていく

 

もうボロボロの状態の俺の拳にキレなんてものはない

 

ただ諦めずに振り回しているだけだ

 

そして、シュウ相手にそんな拳は当たるはずもなく…

 

バシッ!

 

鳩尾の辺りを強かに打たれたことで肺の中の空気が強制的に押し出される

 

俺の膝から力が抜けて目の焦点が合わなくなる

 

そして、俺の体はゆっくりと倒れていく

 

ギリッ!

 

歯を食い縛り左足を一歩前に出して無理矢理体を支える

 

もう体を起こすどころか、顔を上げる力も残ってない

 

それでも、直感はシュウが近くにいると教えてくれている

 

なら諦めるな!

 

手を出せ!

 

俺はただ拳を振り回す

 

ぺちっ

 

それはとても小さな音だった

 

子供だってもっとマシな音を出せるだろう小さな音

 

だがひどく耳に残るその小さな音ともに拳に残る確かな手応え

 

俺の拳は間違いなくシュウに届いた

 

全てを出しきった俺は自身の体を支えることが出来ずに倒れていく

 

ガシッ!

 

だが、誰かの手が俺の体を支えた

 

「お見事です、我が友よ」

 

シュウの言葉が耳に残る

 

その言葉が妙に嬉しくて、誇らしくて…

 

俺は満足感に包まれたまま目を閉じた




本日は6話投稿します

次回の投稿は9:00の予定です

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