ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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第4話

「医者はおるか———!」

 

その大きな声と共に、3メートル近くはあるだろう長身の

短髪の大男が診療所に入ってきた。

 

「ぬ?」

 

大男が目にしたのは10歳ぐらいに見えるかもしれない可憐な美少女のわたしと

そのわたしに向かって剣を抜き放っている父だ…どう見ても危険な情況じゃないのよ!

 

「むん!」

 

その言葉と同時に大男が父を殴り飛ばし、診療所の窓から外に父を叩き出す。

いや、正確には殴り終わった所しか見えなかったから、そこから判断したに過ぎない

 

―――この人、凄く強い!―――

 

「大丈夫じゃったかお嬢ちゃん?安心せい、儂がすぐに終わらせてくるからな」

 

そう言うと大男が外に出ていった。咄嗟のことだったのでわたしは反応が遅れてしまった

 

「あ、ちょっ、ちょっと待ってください!あの人はわたしの父で!」

 

わたしの声は空しく響く。止めないと、と思い急いで外に向かった。

 

 

 

 

「儂の拳骨を防ぐとはお主やるのぉ。海軍に入らんか?」

「先程の拳の一撃はお見事だったのだ。名を聞かせてもらいたいのだ」

「儂の名前はモンキー・D・ガープ!海軍本部の中将じゃ!」

 

外に出たわたしが耳にした大男の名前は鎖国しているワノ国にも

聞こえてくる有名人のものだった。

 

―――《ゲンコツのガープ》がなんでこんなところに?―――

 

そう疑問に思うわたしだが彼の名前に既知感を感じている。

悪魔の実を食べた頃から少しずつだけど思い出せなくなっている前世の記憶…

もしかしたら、その記憶に関係しているのかもしれない

 

看護師として日常的に関係があったことはまだ思い出せるのだけど、

そうでないことは思い出せなくて、今回のように既知感として感じるようになった。

 

「ほう、音に聞こえしゲンコツのガープ殿であったのか、鎖国をしていて外の事に疎い

 ワノ国でも貴殿のことは伝わってきているのだ」

「ぶわっはっはっは!そうかそうか!」

「先程は貴殿の拳を馳走してもらったのだ。ならば今度は拙者の剣を馳走するのだ!」

 

その言葉と共に踏み込み、剣を上段から振り下ろす父と、拳骨で剣を迎え撃つガープさん。

 

―――は?なんで剣を拳で弾けるの?―――

 

あまりの光景にわたしは唖然としてしまう。1合だけでなく2合、3合と

2人の剣と拳が交わる。剣が鳴らす金属音が辺りに響き渡る。

 

わたしの父は180センチを超える長身痩躯な体格だけど、鍛え抜かれた体の持ち主だ。

だけどガープさんはそれを遥かに上回る3メートル近い身長に筋骨隆々の体だ。

そんな2人が戦う光景にわたしは魅せられてしまう。

 

―――お父さん、あんなに強かったんだ―――

 

普段は子煩悩でお母様に頭が上がらず、道場でもお弟子さん達と和気藹々な雰囲気で

剣の修練をしている父だが、一緒に近海に出て海賊と戦った時は少しだけ格好良かった。

 

でも、二つ名を持つ相手にこれだけ戦えるとは思ってなかった…

家の道場の師範はお母様だし、家の道場の流派が使っている武器は…

 

「しかし、刀でもサーベルでもなく直剣とは珍しい!」

「拙者の学ぶ流派は初代が不器用な御仁だったようでな!刀やサーベルを用いて、

 引き斬る、撫で斬るといったことが苦手で、ただひたすらに

 叩き斬ることを突き詰めた結果、直剣に行き着いたようなのだ!」

 

そう、家の流派は当世で流行している刀やサーベルではなく直剣を使っている。

 

船の上という不安定な場所で武器を用いる場合、力任せに振るえば体勢を崩しやすい。

他にも直剣の形状から突き攻撃がやりやすいのだけど、点での攻撃は能力者、覇気使い、

人以外の種族などの生命力の強い人達には効果が薄い…。

 

そのため、線での攻撃となる斬ることに特化した刀やサーベルが流行しているのがこの世界だ。

そして、その流行に反する直剣を使っているのが家の流派なのだ。

 

正直な所、わたしは前世の記憶というか馴染み深さから刀に対する信仰のようなものがあり、

わたしの曾祖父が姓をもらえたのは物珍しさからだと思っていた。

 

でも、わたしの父は海軍本部の中将と互角に渡り合えている。

 

「…お父さん、凄い」

 

思わず称賛の言葉が口から出てしまう。

 

―――いけない、わたしは止めにきたのに!―――

 

「ちょっと、2人ともやめ…」

「ぶわっはっはっは!儂の拳骨とやりあって剣を折らぬのは

 《冥王》以来かもな!海軍に入らぬか!」

「愛する家内と娘達を置いて行くわけにはいかぬのだ!お断りするのだ!」

 

止まってよ2人とも!

 

「2人ともやめ…」

「しかし、ガープ殿も良き拳であるのだ!そこいらの海賊とは別格なのだ!」

「ぶわっはっはっは!愛ある拳骨に不可能はない!だから海軍に入らんか!」

 

話しを聞いて!

 

「やめ…」

「先程断ったのだ!だがその心遣いには感謝するのだ!」

「ぶわっはっはっは!ならば海軍に入れ!」

 

わたしは深く息を吸い込み全力で叫んだ

 

「いい加減にしなさい!」

 

 

 

 

「いい加減にしなさい!」

 

お嬢ちゃんの声が辺りに響き周囲の者達の耳目を集める

その烈迫の気合いにお嬢ちゃんの足下で微かに土埃が舞う。

 

―――今のは、まさか覇王色の覇気か?―――

 

好敵手であるロジャーや白ヒゲに比べれば児戯たるものだが、

儂とこの侍の戦いを止めるほどの注目を集める今の感覚は紛れもなく覇王色の覇気だ

 

「お嬢ちゃん…お主、今のは…」

「ガープさん!貴方は最初に医者はいるかって言いましたよね?」

「う、うむ」

「なら!待たせている患者さんとかいるんじゃないんですか?」

「…あ」

「その人の治療が間に合わなくなったらどうするんですか!!早く連れてきなさい!」

「は、はい―――!」

 

そう促され、儂は負傷している部下を連れてくるべく踵を返し走り出そうとする

 

「そもそもお父さん!お父さんが診療所で抜剣しなければこんなことには!」

「いや、アカリ…?」

「黙って聞きなさい!」

「はい!」

 

そう言って正座をする侍の姿がおかしくて笑いそうになる。

しかし、目敏く気づいたお嬢ちゃんが儂に噛みついてきた

 

「何をしているんですか!早く連れてきてください!」

「おう!急いで連れてくるわい!」

 

儂は今度こそ走り出す。しかし、頭に浮かぶのはお嬢ちゃんが魅せた才と胆力だ。

海軍では若手で自身の部下であるマックスしか持っていない覇王色の覇気と、

明らかに格上である強者達の戦いに割り込む胆力…正に得難き人材だ。

 

「思わぬ出会いもあったものじゃ!」

 

遠ざかる村を走りながら一瞥すると笑いが込み上げてくる。

あのお嬢ちゃんを是非とも海軍に誘わねばならぬと

 

「その前にお嬢ちゃんに言われた通り怪我人の治療が先だな、ぶわっはっはっは!」

 

最初はあのお嬢ちゃんを助けるためだった。だが思わぬ強者との出会いに心が昂り、

戦いにのめり込んでしまった。しかし、終わってみればあの侍はお嬢ちゃんの父親で、

こちらの早とちりだったのだ。後で謝らなければなるまい。

 

そんなことを考えながら走っていると入江に停めた船が見えてきた。

 

「負傷者の搬送の準備をせい!医者の所に連れていくぞ!」

 

慌ただしくも整然と動き出す部下達に笑みが溢れる。自慢の部下達だ。

 

「お帰りなさい中将!少し時間がかかっていたようですが何かあったのでしょうか?」

 

副官のボガードがそう儂に問い質してくる。

いかんな、言い訳を考えてこなかったわい…笑って誤魔化すか。

 

「ぶわっはっはっは!」

「一体何をやらかしてきたのですか貴方は―――!」

 

全く信用のない部下の物言いにさらに笑い声を張り上げて誤魔化す。

船から覗く部下達の目が青空に浮かぶ雲のように白かった




原作単行本を所持していないのでw〇kiなどに書かれている
人物像などを参考にして原作キャラのセリフを描いているのですが…
こんな感じで大丈夫でしょうか?もし、違っていてもこの世界ではそうなのだと
納得、脳内変換していただければとても助かります。

近いうちに原作単行本を大人買いしてこようか本気で迷っていますw
もしセリフが改稿されたら「あ、買ってきたんだな」と、思ってください

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