ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です


第65話

「おう、あんたがシラカワ博士か?」

 

目の前に立派な白ひげを生やした偉丈夫がいる

 

身の丈はガープさんやセンゴク元帥と同じくらいでしょうか?

 

だが、その身に刻まれている数多の傷がこの偉丈夫の戦歴を物語っている

 

「初めまして、私はシラカワ・シュウです」

「俺はエドワード・ニューゲートだ。白ひげの方が通りがいいだろうな、グララララ!」

 

少し特徴的な笑いかたで白ひげが笑う

 

「息子達から聞いた、お前ぇの薬で俺の病が治ったってな、礼を言うぞ博士」

 

流石に大人物である白ひげ

 

頭を下げるその姿も威厳に満ちています

 

「久しいな、ニューゲート」

「おう、まだ生きていたかレイリー」

「先が楽しみな若者と出会ったからな、そう簡単に死ねんよ」

「そうか!グララララ!」

 

かつては覇を競った間柄の2人だが、こうして見る限りではそうとは見えない

 

「新酒のビールをたっぷり用意してある。浴びるほど飲んでいけ」

「ほう?ビールは市場に出回ったばかりの筈だが…流石だなニューゲート」

「ビールを知っているか、相変わらず耳が早いなレイリー」

「ビールはシュウが発案者だ。知っていて当然だろう」

 

レイ養祖父さんの言葉で周囲の視線が私に注がれる

 

白ひげも私を興味深そうに見てくる

 

「特効薬に続いてビールもか…海にはこういった天才もいるもんだな、レイリー」

「あぁ、自慢の養孫さ」

 

そして顔を見合わせたレイ養祖父さんと白ひげが笑いあう

 

「よぉ―し!息子達よ!宴だ!」

「「「おぉ―――!」」」

 

白ひげの大号令で一味の者達が一斉に動き出す

 

そして、白ひげの完治を祝う大宴会が始まった

 

 

 

 

「ぷは―――!腹に染みる!やはり酒はこうじゃねぇとな!グララララ!」

 

白ひげがビールを大樽のまま豪快に煽っていく

 

彼の体躯を考えれば不思議ではないが、それでもこうして目の前で

見せられると圧倒されるものがある

 

「その言い方だと酒を飲んでなかったのか?ニューゲート」

「飲んでたぜ、レイリー。だが、病の痛みを誤魔化すだけの酒で旨いとは感じなかった」

 

白ひげが大樽を置いて私の方を向く

 

「こうしてまた酒を味わう事が出来るのもお前ぇのおかげだ。改めて礼を言うぜ博士」

 

私は手にしている杯を干してから声をあげる

 

「ではその礼として一杯いただきましょうか」

「グララララ!おう、飲め飲め!まだまだたっぷりあるからな!」

 

豪快に笑いながら白ひげの手で私の杯に酒が注がれていく

 

私は注がれた酒を一気に飲み干す

 

「ふぅ、これで礼は受けました。ここからは堅い事を言わずに楽しみましょう」

「グララララ!このふてぶてしさは誰に似たんだろうな、レイリー!」

「さて、父親のシャンクスではないのかな?」

 

白ひげの問いにレイ養祖父さんは惚けて答える

 

「息子達よ!じゃんじゃん酒を持ってこい!今日は倉に酒を残さねぇぞ!グララララ!」

 

大人一人が簡単に入れる大きさの樽が所狭しと積まれている

 

あれを全部飲み干すとでもいうように白ひげはどんどん飲み進めていく

 

酒だけでなく、豪快な海賊料理もどんどん並べられていく

 

心の底から楽しんでいる白ひげ一味の雰囲気にあてられ

私とレイ養祖父さんも酒が進んでいく

 

そんな中で不意に白ひげが私に言葉を投げかけてきた

 

「博士、酒の席の戯れとして聞いちゃくれねぇか?」

「何でしょうか、白ひげさん」

 

「さんなんざいらねぇよ。恩人のお前ぇは気軽に白ひげと呼んでくれ」

「わかりました。それでは改めて、何でしょうか白ひげ?」

 

大樽を煽り一つ間をとってから白ひげが話しを続けた

 

「お前ぇ、俺の息子にならねぇか?」

 

レイ養祖父さんだけでなく白ひげの言葉を聞いた一味の者達も私を見てくる

 

今日はよく注目を浴びる日だなと思うと笑いが込み上げてくる

 

私も白ひげに習い杯を飲んで一つ間をとってから言葉を返す

 

「お断りします」

「そうか、グララララ!」

 

私の返事を白ひげが笑い飛ばす

 

この話はあくまで酒の席の戯れとして流すためだ

 

白ひげの一味の者達も酒を飲みながら笑っている

 

だが、唯一人だけ私に噛みついてきた者がいた

 

「なんで断るんだシュウ!親父に恥をかかす気か!」

 

オレンジ色の帽子と顔にそばかすが目立つ青年…エースが私に噛みついてきたのだ

 

「よせよいエース。お前、親父の恩人である博士に噛みついて親父に恥をかかせるのかよい」

「離せ、マルコ!」

 

私に近づこうとしていたエースをマルコが掴んで止めている

 

エースを見ると顔を赤くしていて目も垂れぎみになっている

 

どうやらかなり酔っているようですね

 

「シュウ!なんで親父の誘いを断るんだ!答えろ!」

 

酔っている事もあるのだでしょが、拠点の前で話した時のエースとは大分様子が異なる

 

何かエースの琴線に触れることがあったのでしょう

 

「エース…どうやら貴方にとって白ひげと家族達はとても大切な方達のようですね」

「当たり前だ!」

 

エースがはっきりと私の言葉に答えてくる

 

エースを抑えているマルコはまるで手のかかる弟を見るような目でエースを見ている

 

「ですが、私にも何よりも優先する人達がいるのですよ、エース」

「うっ…だけどよ…」

 

私の言葉でエースの体から力が抜けるのが見える

 

そして、エースはマルコに抑えられながらも目を伏せて何かを考え始めた

 

私はビールを飲みながらエースの言葉を待つ

 

これで素直に収まってくれればいいのですが…

 

「決闘だ!」

 

…はい?

 

私は杯を口につけたままエースの方を向く

 

「決闘だシュウ!俺が勝ったらお前は親父の息子になれ!

 俺が負けたらならなくていい!」

 

揉め事を解決する手段として決闘を提案するのは悪くないのですが…

 

「どうだ!受けるかシュウ?」

「…私にその決闘を受けるメリットがありませんね」

 

エースが提案した条件では私は失うものがあるのにエースは何も失わない

 

そして、白ひげは笑って流しているのでこの決闘を受けずとも何も問題がない

私に決闘を受けるだけのメリットはないのだ

 

「あ~…そうだ!俺が負けたら養兄弟になってやる!俺が弟でいい!どうだ?」

 

ふむ、エースと縁が出来れば身内を大事にする白ひげ一味との繋がりにもなります

 

まだ一味に入ったばかりのエースに提示できる最大の条件なのでしょうが…

 

エースが改めて出した条件にも正直な所魅力を感じていない

 

私が最優先するものはココヤシ村の解放とアーロンへの報復を自身の手で成し遂げる事だ

 

エースには悪いですが…この決闘は断りましょう

 

ドンッ!

 

腰抜けだと罵られても構わないと思い定め口を開こうとした時

白ひげが飲み干した大樽を床に大きな音をたてて置き注目を集めた

 

「博士、2億ベリーでどうだ?」

 

白ひげの言葉を聞いてそちらを向くと、白ひげは新たな酒樽を掴み

一口煽ってから話を続けた

 

「エースの首には1億8000万ベリーの賞金がかけられてる…そいつに色をつけて

 2億ベリーで決闘を受けてやっちゃくれねぇか?」

 

なるほど、今の私は賞金稼ぎです。その事を踏まえれば

賞金分の金を出すというのは悪くない提案ですね

 

それに、私の拒否を一度は笑い飛ばした白ひげがこうしてこの話に絡んでくる事は

自分の手で顔に泥を塗るような行為

 

それを承知の上でエースに助け船を出している

 

…ここら辺が落としどころですね

 

受ける気はなかったが白ひげの顔を立てて決闘を受けるとしましょう

 

「私が勝てば2億ベリー…その条件でお受けしましょう」

「なっ!?待てシュウ!親父は関係ねぇ!これは俺とお前の…!」

 

エースの抗議の言葉は白ひげの一睨みで止まった

 

おそらくは覇王色の覇気で威嚇したのだろう

 

「マルコ、エースに酒でも飲ませて頭を冷やさせておけ」

「わかったよい、親父」

「待ってくれ親父!離せよマルコ!親父!親父―――!」

 

エースはマルコに首根っこを掴まれ、部屋の外に引き摺られていった

 

「すまねぇな博士、喧嘩の売り方も知らねぇバカ息子でよ」

「いえ、気にしていませんよ」

 

私は白ひげが注いでくる酒を杯で受ける

 

「それで、静かにしていたが博士が決闘を受けてもよかったのか?レイリー」

「2億ベリーが手に入るのだから構わんさ」

 

不敵に笑うレイ養祖父さんに白ひげも笑って応える

 

「グララララ!俺の息子は強ぇぞレイリー!」

「私の養孫だって負けてないさ、ニューゲート」

 

若者の話を肴に老人達が酒を飲んでいく

 

そして、白ひげ一味の者達が決闘の勝敗に賭けを始めた事で宴はまた盛り上がっていく

 

そんな楽しい宴も酒が尽きて終わりを迎える

 

翌日、夜が明けて拠点の外に出た私が見たものは

 

土下座をして私を待っていたエースの姿だった




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