ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です


第62話

レイ養祖父さんがミホークとの手合わせの口約をしてから3日経った

 

ミホークはその間、シャッキーさんの店に入り浸りワインを飲んでいた

 

熟成させたワインが余程気に入ったのかレイ養祖父さんとの手合わせが

楽しみなのかはわかりませんが怪我が治ったばかりで

ミホークと手合わせをしたくないものです

 

そんな私の心の嘆きなど知ったことかと言わんばかりに

無人島でミホークと手合わせをすることになったのだった

 

 

 

 

「ご苦労だね、シュウ」

 

レイ養祖父さんが労いの言葉をくれるがまともに返事が出来ず

砂浜に横たわったままだ

 

「ふむ、どうやら鷹の目との手合わせは相当に消耗したようだね」

 

レイ養祖父さんのいう通りで体の疲れ以上に精神的な疲労で動けないのだ

 

互いに木剣、木刀を使って手合わせしたのだがこの手合わせを一言でいうならば

『死なない程度に手加減された』とでもいうべきでしょう

 

なんとか全力を懸けて頭への直撃は避けたのだが代わりに腕、腹、肩と

頭を除いて上半身を余すところなく打ち据えられたのだ

 

勿論やられるばかりではなくこちらからも打ち込んだのですが

結果は一発も当てることが出来ませんでした…

 

「枷をしたままでこの結果ならば上出来だよ、シュウ」

 

枷?…あ、忘れてましたね

 

「赤髪の子よ、貴様は俺との手合わせで手を抜いたか」

「いえ、全力で挑みましたよ…ただ、忘れてただけです」

 

何を忘れていたのかというと私の重力を操る能力で、

私は日常的に自身にかかる重力を増やしているのですが

 

それが当たり前になっていたので解除するのを忘れていたというわけですね

 

もっとも、枷を外しても然程結果に差は出ないでしょうが…

 

「次回からは枷の解除も選択肢に入れて挑もうか」

「はい、レイ養祖父さん」

 

私達のやり取りを不満気にミホークは見ている

 

「さて、待たせたね。それでは口約通りに相手になろうか」

 

レイ養祖父さんの言葉にミホークが口を吊り上げる

 

「この緑豊かな島が荒れることになるが、構わんのか?」

「あぁ、構わないよ。もっとも、今の私と君の力の差では問題ないだろうがね」

 

キンッ!

 

レイ養祖父さんの言葉を受けミホークが背負っていた黒刀を抜き打ちした

 

いや、正確には抜き終わっていたところしか見えていない

 

だが、そんな一太刀をレイ養祖父さんは微笑みながらサーベルで受け止めていた

 

「シュウ、今の君では参考にもならないほど力の差を感じるだろうが

 それでも、こういった世界があるということを学びなさい」

 

そこからは私には理解しきれない領域の戦いが始まった

 

ミホークが打ち込めばレイ養祖父さんが涼しい顔で受けミホークの腹を

蹴り飛ばして距離をつくる

 

レイ養祖父さんが打ち込めばミホークが歯を食い縛り受け止めていく

 

私が打ち込んだ時のように柔らかく流さないのだ

 

…いや、流せないのでしょうか?

 

瞬きすらもったいないと感じる高次元の戦いが眼前で行われていく

 

そして、それまで距離が離れてもすぐに踏み込み斬り結んでいた2人が

距離をとったまま動きを止めた

 

「流石だ、冥王。赤髪以上の力の差を感じる」

「それは光栄だね」

 

よく見るとミホークが汗を流している

 

ミホーク程の男でもレイ養祖父さんの相手は消耗するようだ

 

「そして、貴様の言葉に偽りはなかった。俺はこの戦いに手応えを感じている」

 

ミホークは左手を握り締め口角を吊り上げている

 

「だが、この世界最強の黒刀はまだしも、これ以上は俺が持たん。

 故に、次の一撃で終わりにさせてもらおう」

「あぁ、構わないよ」

 

ミホークが黒刀を両手で構えるがレイ養祖父さんは片手でサーベルを持ったままだ

 

「…行くぞ、冥王!」

 

ミホークが袈裟懸けに、レイ養祖父さんが横に剣を振り抜いた状態で交差している

 

ミホークが剣を振り抜いた先に砂柱が、そしてその先の海にまで至り水柱も上がっている

 

「…見事!」

 

ミホークが一言発すると胸に一筋の傷が浮かび血を吐いた

 

そして、ミホークはゆっくりと砂浜に倒れていった

 

「若いというのは羨ましいものだ。僅かの間にこうも成長するのだからね」

 

レイ養祖父さんがサーベルを鞘に納めながら言う

 

「シュウ、鷹の目の傷の処置を頼むよ」

「わかりました」

 

「それと、《ビール》をくれるかな?久しぶりに動いて喉が渇いたからね」

「はい」

 

私はワームホールから小樽に入った冷えた《ビール》をレイ養祖父さんに渡す

 

「ありがとう、シュウ」

 

小樽を受け取ったレイ養祖父さんは木陰まで歩いていき一杯やり始めた

 

さて、私もミホークの治療に取り掛かりましょうか

 

私はワームホールを開き、その中から医療道具を取りだし

ミホークの治療に取り掛かり始めた

 

 

 

 

うん、旨い…やはり、エールとは一味違うな

 

私は一杯やりながら、鷹の目の治療をしているシュウを見る

 

我が養孫ながら不思議な子だと思う

 

少し前に、商人へと転身したかつてのロジャー一味の仲間が訪ねて来たのだが

その時にその仲間が『小麦が豊作で大麦がだぶついている』と嘆いたのが

この《ビール》が産まれるきっかけとなったのだ

 

かつての仲間の嘆きを聞いたシュウが『大麦を酒作りに使ってはいかがですか?』と

事もなげに言った時は仲間と顔を見合わせてしまったものだ

 

商機と感じたかつての仲間はだぶついていた近隣の大麦を買い占め

シュウのいう通りに酒作りに使った

 

これが大当たりだった

 

エールとは違う深い旨味にキレのいい苦味…新しい酒が誕生した

 

たまたまシャボンディ諸島に来ていたシャンクスが初生産分を

全て買い占めていった事からも《ビール》の旨さがわかるだろう

 

しかし、この酒の名付けも傑作だったな

 

シュウが『Aの次なのでBにでもしましょうか』等という理由で

《ビール》と名付けてしまった時は笑ったものだ

 

だが、この《ビール》という名称は妙にしっくりとくるものだった

 

シャンクスが買い占めた事でまだ市場には出回っていないが

いずれは名酒として広まることだろう

 

私はまた一口ビールを煽る

 

あぁ…この喉ごしがたまらない

 

よく冷えたビールが体の火照りを冷ましていく

 

一息ついた私は、シュウが治療している鷹の目を見る

 

まだ壁を超えたわけではないが、その縁に手をかけることは出来た

 

この先も精進を続けていけば、その先へと至るのもそう遠いことではないだろう

 

しかし、3日前のシュウと同じ傷をつけたのは少々大人気なかったかもな

 

シャンクスは息子と出会い、四皇へとなった事で最近落ち着きを見せている

 

そんなシャンクスの尻を叩くには今回の件は丁度良い出来事だった

 

鷹の目よ、すまないがシュウとシャンクスの成長に利用させてもらうよ

 

しかし、私も衰えたものだな…

 

あのまま戦いを続けていれば半日で息が切れていただろう

 

かつてはニューゲートやガープと一昼夜戦った事もあるというのに…

 

ガープも私と同じように衰えを感じているのだろうか?

 

いや、ガープはまだ現役を続けている

 

私程の衰えは感じていないだろう…

 

ふむ、シュウやシャンクスの成長は望むところだが、そう簡単に超えられるのも問題だな

 

鷹の目との手合わせもあることだ…少し鍛えなおすとしようかな

 

若者達の成長が刺激となり、この老骨の血を滾らせる

 

私はその滾りを冷ますようにビールを煽った




本日は5話投稿します

次回投稿は9:00の予定です

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