ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿5話目です


第61話

「おや、珍しいお客だね、シュウ」

「お帰り、シラカワちゃん」

 

ミホークを連れてシャボンディ諸島に転移した私は、

そのままシャッキーさんの店まで案内していた

 

「ただいま、レイ養祖父さん、シャッキーさん」

 

店に入ったミホークはレイ養祖父さんの顔を見て固まっている

 

「シャッキーさん、糸と針をお借りします」

「どうぞ、シラカワちゃん」

 

今も武装色の覇気で止血しているがミホークの一太刀の傷の処置を

終えたわけではないのだ

 

「ふむ、見聞色で観たところ全身18箇所の軽い切り傷に、腹と胸に大きな傷か…

 どうやら想像以上にシェードに苦戦したようだね」

「胸の傷はそこの御仁との手合わせで負ったものですよ、レイ養祖父さん」

「…ほう?」

 

レイ養祖父さんが眼鏡を光らせながらミホークを見る

 

その視線を受け固まっていたミホークが動き出した

 

「赤髪の子よ、貴様は冥王の縁者か?」

「レイ養祖父さんは私の養祖父であり、師でもありますね」

 

私はカウンターに入り針と糸を消毒しながらミホークに答える

 

「シャッキーさん、ミホークさんに酒をお願いします」

 

針と糸の消毒の合間に塩を取り生理的食塩水も作っていく

 

「わかったわシラカワちゃん。鷹の目さんはワインでいいかしら?」

「あぁ、構わん。馳走になるぞ、店主」

 

シャッキーさんが棚から取り出したワインは私のワームホールで10年程熟成させた物だ

 

ワームホールでの転移以外でも倉庫のように使えるようになり

今回のシェードとの戦いの後のように傷の処置の為の道具を持ち運ぶ事が出来るようになった

 

他にも食糧や飲料等も私のワームホールに入れてある

 

このワームホールはある程度だが中の環境を選ぶ事が出来るので非常に便利だ

 

但し、完全な時間停止などは出来ないので一定期間事に

ワームホールの中を整理する必要がある

 

現状で出来るワームホール内の環境設定は太極と同じ時間の流れ

もしくはその逆の流れと気温や湿度ぐらいだ

 

「…そう言えばワインを息子にプレゼントされたと赤髪が自慢していたな」

 

父さんが喜んでくれるのは嬉しいが酒の席で話題にされるのは恥ずかしいものだ

 

「さて、鷹の目のミホークだったね。飲むのならこちらに来てはどうかな?」

「…よかろう」

 

やや剣呑な雰囲気を醸し出すレイ養祖父さんに臆せずミホークはカウンター席に座った

 

「シュウが世話になったようだね」

「暇潰し程度のつもりだったが、想像以上にやる男だった」

 

グラスを打ち合わせ飲みながら2人が話していく

 

そろそろ消毒もいいでしょう

 

私はカウンターの奥で上着を脱ぎ生理的食塩水で傷口を洗っていく

 

「あの齢でやるものだと思ったが冥王の弟子だったか」

「あぁ、自慢の養孫さ」

 

傷口を洗い終わった私は傷口の癒着後に筋肉や皮膚に影響が出ないように

気を付けて傷口を縫い合わせていく

 

「…顔色一つ変えずに自ら傷を縫い合わせるか。大した胆力だ」

 

ミホークの称賛は嬉しいですがただ慣れているだけの事です

 

傷口縫い合わせた私はワームホールから予め作っておいた軟膏を取りだし塗っていく

 

そして、清潔な布を処置した部位に当てて包帯を巻いたら処置完了だ

 

軟膏には薬効成分を染み込ませてあるので後は能力で空気を濃くして休めば

3日程で傷は完治するでしょう

 

「シャッキーさん、今回はそれなりに血を流してしまったので

 何か食べるものをお願いします」

「ふふ、わかったわ、シラカワちゃん」

 

シャッキーさんに食べるものを頼んだ私は紅茶を淹れてカウンター席につく

 

「ワインの味はいかがですか?ミホークさん」

「旨いな…もしや、貴様が何か手を加えたのか?」

「おや、察しがいいですね」

 

私の言葉を受けても顔色を変えずにミホークはワインを味わっている

 

「そのワインは10年程熟成させてあります」

「10年?それも貴様の能力か?」

「ククク、さて…どうでしょうかね?」

 

深く突っ込んで聞く気が無いのかミホークはワインを飲み干しお代わりを頼んだ

 

「店主、もう一本頼む」

 

ミホークの注文を受けてシャッキーさんがワインを出す

 

「はい、シラカワちゃん」

 

どうやら食事も出来たようですね

 

胃袋が早く栄養を寄越せと煩いのでさっそく匙を持ち食べていく

 

その食事の途中で私はミホークに尋ねた

 

「ミホークさん、一つ聞いてもいいですか?」

「…なんだ?」

 

私は紅茶を一口飲んでから話を続ける

 

「以前、父さんからミホークさんが壁にぶつかっていると伺いましたが

 それは今も変わらないのでしょうか?」

 

私の言葉にミホークはグラスを置きこちらを見てくる

 

「それを知ってどうする、赤髪の子よ」

「…私は、ある目的の為に強さを欲しています。それ故の疑問といったところですね」

 

ミホークがワインが入った瓶を掴みそのまま飲みだす

 

「…今だ壁にぶつかったままだ」

 

あれ程の強さなのにまだ壁にぶつかっているのですか…

 

私は先の見えない強さにため息が出そうになる

 

「冥王よ、貴様はどのようにして先へと至った。俺と赤髪の何が違う?」

 

ミホークがワインを煽りながらレイ養祖父さんに問う

 

その言葉には静かながらも強い感情が込められていた

 

「私とシャンクス、そして君の強さは種類が違う。残念ながら君の

 参考にはならないだろうね」

「種類?」

 

ミホークと同じく私も疑問を頭に浮かべる

 

レイ養祖父さんがワインで喉を潤しながら言葉を紡いでいく

 

「私やシャンクスの強さは海賊としての、海の男としてのものだ。対して君の求めるものは

 純粋に剣士としてのものだろう?故に種類が違うといったのだ」

 

なるほど、完全に理解ができたわけではないですが納得しました

 

私はミホークや賞金首と戦った時、剣技だけで勝とうとは思わなかった

 

剣技も使って勝とうとはするがそれはあくまで選択肢の1つとしてだ

 

「…そうか」

「だが、君が先に至る為の手伝い程度なら出来ないこともない」

「なに?」

 

ミホークがレイ養祖父さんを強く見つめる

 

「シャンクスは壁を超えたがそれでも一歩程度…まだロジャーやニューゲートの

 領域には遠く及ばない」

 

レイ養祖父さんがグラスのワインを飲み干しミホークへと顔を向ける

 

「故に、シャンクスが更なる成長を遂げるためには、好敵手の存在は欠かせないだろう」

 

レイ養祖父さんはまるで試すような目をミホークへと向ける

 

「私の頼みを聞いてくれるのならば、その手伝いをしよう」

「…よかろう、望みを言え、冥王」

 

レイ養祖父さんは小さく笑いを溢す

 

「なに、大した事ではないよ。時折で構わない、シュウと手合わせをしてやって欲しい」

 

レイ養祖父さんの言葉に私は目を見開く

 

「その礼として、私が君と立ち合おう」

「冥王が?」

「私はシュウの師だが、シャンクスの師でもある…

 君にも得られるものは十分にあると約束しよう」

 

ミホークが鋭い目のまま口を吊り上げる

 

「受けよう」

「そうか、それはありがたいね」

 

レイ養祖父さんが笑顔のまま私を見る

 

「シュウ、そういうわけで、君の修行に鷹の目との手合わせを追加だ。頑張りなさい」

 

ミホークが獲物を見つけた鷹のような目で私を見据えてくる

 

私は突然降りかかった新たな試練に冷や汗が止まらなかった

 

 

 

 

東の海のとある海域で、小船が海賊船に追われていた

 

小船に乗るのは1人の可憐な少女

 

絶望的と言えるような光景だが、小船は海賊船をどんどん引き離していく

 

少女は海流を、風を的確に読み小船を操ることで常識では考えられないような

速度を小船で出し、海を進んでいく

 

遂には海賊船を水平線の彼方へと振り切り、少女は見事に逃げ切ったのだった

 

 

 

 

「ふう、しつこい連中だったわね」

 

少女は1人、言葉を溢す

 

太陽に照らされるその美しいオレンジ色の髪と健康的な体は

少女の容貌も相まって世の男達を振り向かせる事は間違いないだろう

 

だが、侮るなかれ…この可憐な少女は非常に強かな女性なのである

 

「さて、今回の収穫はどうかしら?」

 

小船に乗せていた宝箱を少女が慣れた手付きで開けていく

 

「あら、50万ベリーの海賊にしては溜め込んでるじゃない、ラッキー♪」

 

そう、この少女…海賊船から宝を盗み出して追われていたのだ

 

「う~ん…これで合計3000万ベリーは集まったかしら」

 

少女の故郷は海賊に襲われ、支配されてしまっている

 

その故郷を買い取り戻すために、こうして少女は日々奮闘しているのだ

 

「あと7000万ベリー…頑張らないと」

 

少女は言葉と共に決意を露にする

 

その目には強い覚悟があった

 

「あと3年か…」

 

少女は新聞を手に取り拡げる

 

その新聞には、波打つ紫の髪が特徴的な若い男性の写真が掲載されており

グランドラインの大型新人海賊を討ち取ったと書かれていた

 

「ふふふ♪」

 

微笑みながらその新聞の人物を見る少女の目は、間違いなく恋する乙女のものだった

 

「私も頑張るわ…だから、無事に帰ってきてね、シュウ」

 

海上に暖かな風が吹く

 

その風を受けた小船は、少女を応援するかのように力強く海を進んでいった




これで本日の投稿は終わりです

また来週お会いしましょう^^

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