ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です


第59話

シャッキーさんの店での宴の翌日、父さんは二日酔いの頭を抱えながら出航した

 

どうやらレイ養祖父さんからの連絡で私に会いに来てくれたらしい

 

おかげで気持ちの整理ができました

 

2人には頭が上がらない思いですね

 

父さんが出航してから3日程が経ち、私は賞金稼ぎの活動を再開した

 

斬ることへの嫌悪感のようなものは相変わらず無くならないが

少なくとも戸惑うことは無くなった

 

父さんの言葉通りに何が一番大切なのかを考えるようにしたからだ

 

うん、ナミやベルメールさん達に比べれば賞金首の事など、どうでもいい

 

そうやって気持ちに折り合いをつけていけるようなってからは

精力的に実戦の経験を積んでいった

 

そして、賞金稼ぎとして活動を始めてから2年程経ち、私は17歳になった

 

 

 

 

「ぎゃあぁぁああ!いってぇ―――!」

 

叩き斬った賞金首の左前腕が甲板に落ちる

 

これで、やっと五分に持ち込めたといったところですね

 

私は今、賞金首の《千剣》のシェードと戦っている

 

シェードはグランドラインにデビューして間もないルーキーだが

その賞金額は5000万ベリーになる大型ルーキーの賞金首だ

 

「くっそぉ、てめぇ、俺になんの恨みがあるってんだ!」

「やれやれ、貴方は自身が賞金首だという事を忘れているのですか?」

 

戦いが始まった時は高笑いをしながらこちらを攻撃してきたというのに…

 

「くっそ!ふざけんな!モブ如きが俺に逆らうんじゃねぇ!」

 

そう叫んだシェードはその身体中に剣を生やす

 

「串刺しになれや!」

 

その言葉で身体中に生やした剣を私に向けて飛ばしてくる

 

事前の情報ではシェードの能力は超人系《ブキブキの実》のモデル《剣》との事

 

その情報通りに多くの剣を自在に生み出し、こうして私に飛ばしてきている

 

私はこの2年で使えるようになった《剃》を使い甲板を所狭しと動き回る

 

―――転移が使えればもう決着がついているのですがね…―――

 

今回、私がシェードと戦う前に私はレイ養祖父さんから一つ枷をつけられた

 

それは能力の使用禁止だ

 

私の能力は重力を操るものだがその中でもワームホールを開き転移する事は

距離の概念を無視する事が出来るので戦いにおいて大きなアドバンテージとなる

 

それが出来ないことがシェードとの戦いで苦戦する要因の一つになっているが

シェードの能力で行われているこの剣群による物量戦もやっかいなものだ

 

「モブ如きが避けてんじゃねぇ!」

 

間断無く射出され続ける剣群は船体を破壊しながらも海に投げ出されていく

 

そして、海に入った大量の剣は泡のように消えていく

 

そんな不思議な光景を横目にしつつ私はシェードとの間合いを詰めていく

 

「くそっ!来るんじゃねぇ!」

 

間合いに入った私は直剣を振りかぶる

 

対してシェードは幅広の短剣を片手に受けようとしてくるが

私は短剣ごとシェードを叩き斬る

 

バキンッ!

 

短剣の砕ける音と共にシェードに袈裟懸けの傷が走る

 

ガキッ!ガキッ!

 

残心しつつシェードから距離をとった私が耳にしたのは

鉄が打ち重なるような音だった

 

「くそっ!いてぇ!ふざけんじゃねぇよ!」

 

袈裟懸けに斬った傷は鉄色に覆われシェードの出血が止まっていた

 

よく見るとシェードの左腕の傷の出血も止まっている

 

「ぐっ!いてぇ!こんな事させやがって…絶対に許さねぇ!」

 

どうやらシェードは能力を用いて傷を剣で覆い出血を止めたようだ

 

「貴方に限った事ではありませんが能力者というのは存外しぶといものですね」

 

私は脇腹に刺さっていた剣を抜く

 

出血するが武装色の覇気を使い傷を締め付け止血する

覇気は意思の力でもあるからか傷の痛みも緩和されていく

 

「くそっ!なんで腹を刺されて普通に動けるんだよ!」

 

シェードの能力で負った傷は腹だけではない

 

直撃はしなかったものの全身に切り傷が出来ている

 

「この程度の傷には慣れていますので」

「ふざけんな!モブは大人しくやられていろよ!」

 

アーロンの銃撃以外にもこの2年の賞金稼ぎ生活で多くの傷を負っていった

 

楽な戦いばかりではなかった…その経験が私の血肉となりこうして立っている

 

「さて、そろそろお仕舞いにしましょうか」

「くそっ!くそっ!モブが俺のハーレム計画を邪魔しやがって!」

 

そして、シェードの全身から撃ち出される剣群に向かって私は踏み込んでいった

 

 

 

 

「よう!そろそろ来ると思ったぜ、シュウ!」

 

シェードを討伐した証拠を持ち海軍本部に転移した私をライトが出迎えた

 

「ライト、最近よく私を待っているようですが、なにか根拠があるのですか?」

「漁師の勘だ!」

 

胸を張って言い切るライトに私はため息を吐く

 

「シュウ!釣竿一本で日々の糧を得ていく漁師の勘を舐めるなよ!」

「舐めているわけではありませんよ、ライト」

 

少なくとも私はそういった類いの勘を持っていないので理解し難いだけだ

 

「まぁいいか、シュウ!勝負だ!」

「それは構いませんが、先にこれを提出してからにしましょうか」

 

そう言って私は血が滲む皮袋を掲げる

 

「うぇっ!そんなもん見せんな!」

「以前に実戦を経験したと伺いましたが、ダメですか?」

 

ライトは少し顔色を悪くしている

 

「俺は基本的に素手だからな、そういうのは経験がねぇ…それに、海軍では

 相手をぶっとばせば海楼石の手錠で能力者も捕まえられるからな」

 

ライトが皮袋から目を反らしつつ私に答える

 

「なぁ…シュウはどうやってそれを超えたんだ?」

「超えてなどいませんよ」

「は?」

 

ライトが驚き目を見開いている

 

「父さんに助言を受け、何が一番大切なのかを考えるようにしました

 それで、折り合いをつけられるようになったのですよ」

「折り合いか…」

 

「誰もが、物語に語られるような英雄や偉人のように

 背負ったりできるわけではありませんからね」

「…確かにそうだよな」

 

「今でも完全に嫌悪感が消えたわけではありませんが、それでも戸惑わずに

 戦える程度にはなりました」

「すげぇな…はぁ、俺も頑張んねぇとな」

 

この2年の間に何度もライトとは手合わせを重ね友と呼べるぐらいには仲良くなった

 

そして、負けず嫌いのライトがこうして相手を認める事が出来るようになったのは

間違いなくライトが成長した証でしょう

 

「それで、今回の獲物は誰だったんだ?」

「《千剣》のシェードですよ」

「まじか!5000万ベリーの大型ルーキーじゃねぇか!」

 

ガープさん曰く、最近良く学ぶようになったライトはこういった賞金首の

情報にも詳しくなっているようだ

 

「たしか、ブキブキの実の能力者だろ?よく勝てたな」

「無傷ではありませんよ。腹を刺されてしまいましたからね」

 

そう言って私は自身で縫い合わせた傷をライトに見せる

 

「おい!何してんだ!早く医務室に行けよ!」

「処置はしてあるので問題ありませんよ。それに、外科処置の腕なら

 そこいらの医者よりも上だという自負はありますから」

 

この2年の賞金稼ぎ生活はこういった生傷が絶えない日々だった

 

その為、太極で学んだ知識を用いて自分で処置をしていく内に

レイ養祖父さんも認めるぐらいに外科処置の腕が上がったのだ

 

自身を処置していくのだから失敗など出来ない…そんな状況が

私の外科処置の腕を急上昇させた要因だろうとレイ養祖父さんが言っていた

 

「まったく…このチート野郎!絶対に負けねぇからな!」

「ライト…貴方は時折わからない言葉を使いますね…」

 

既知感は感じているのだが詳しくはわからないのでこう言っておく

 

「あ~…細かい事は気にすんな!」

「そうですか…ですが、シェードも似たような事を言っていましたね」

「…へ?」

 

ライトが面白い顔をしている

 

「貴方と初めてあった時のように、私の事をモブと呼称してきました」

「…マジか?」

 

驚いたライトは何やらブツブツと呟き始めた

 

「…シェードは転生者だったのか?そう思えばブキブキの能力って

 前世のアレに似ているよな?…それにモブとか言って…踏み台じゃねぇか…」

 

何やら思案しているようだが友として注意しておきましょう

 

「ライト、そのブツブツと呟く癖は止めたほうがいいですよ」

「ほっとけ」

 

そう応えるライトにため息が出る思いだ

 

気を取り直して私は周囲を見渡すといくつもの海賊旗を掲げた船を見つけた

 

「ライト、今日はなにやら海賊船が多いようですが…なにかあったのですか?」

「ん?あぁ、今日は《七武海》を招集して会議があったんだ」

「七武海ですか?」

 

七武海は父さんの好敵手である《鷹の目》も就任しているもので

海軍が海賊行為を公認している海賊達の事だ

 

「あぁ、最近の海軍は《革命軍》の相手で忙しくてな…それで、海賊達を

 適当に間引いてくれと依頼するってガープ中将が言ってたな」

 

革命軍は世界政府に反旗を翻す組織で最近の新聞をよく騒がせている

 

「それより知ってるか、シュウ!」

「何をですか?」

「ハンコックだよ!ボア・ハンコック!すげぇいい女だぜ!」

 

ライトは興奮したように私に言い寄ってくる

 

「顔も美人で背がスラッと高くてよ!しかもこう、ボン!キュッ!ボーン!」

 

テンションが上がり過ぎですよ…ライト

 

「ライト…貴方と話していると、時折貴方が私と歳が近い事を忘れそうになります」

「なんだよ!健全な十代なら、こういった話で盛り上がるだろうが!」

 

ライトが拳を握り力説してくる

 

「それを悪いとは言いませんが、もう少し周囲を気にしてはどうですか?」

「うぇ?」

 

ライトが周囲を見渡すと船を見張っていた女性海兵の白い目に気付き

冷や汗を流し始めた

 

「…やっちまったぁ―――!」

「やれやれですね…ん?」

 

私がライトに呆れていると海軍本部の建物の方から鋭い目付きの男が歩いてくる

 

そして男が私達に近付いた時、その背にある獲物を抜き放ったのだった




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