ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿2話目になります


第58話

シャボンディ諸島に戻った私はレイ養祖父さんに休養を言い渡された

 

私は抗議したが受け入れて貰えなかった

 

休養も成長する為には必要だと言われたので渋々することにした

 

もっとも、実戦をしないだけで今まで通りに修行は続けていった

 

無人島で身体能力向上に励み、ワノ国でシオリ御祖母さんに剣の型を見てもらいながら

休養を過ごしていく。その合間にレイ養祖父さんとチェスもしていくが

精神的に参っていたのが影響したのか連敗してしまった

 

その事で私は改めて自分の状態が良くない事を認識した

 

こんな事ではアーロンに勝てないと更に修行にのめり込んでいく

 

そして1ヶ月程たった頃、シャボンディ諸島のシャッキーさんの店に

父さんが一味を率いて宴をしに来たのだった

 

 

 

 

「シュウ、飲んでるか?」

 

父さんがジョッキを片手に私に絡んでくる

 

「出来れば修行をしたいのですが」

「そう言うな、たまには付き合え」

 

紅茶を飲んでいた私に父さんはエールが入ったジョッキを渡してくる

 

「…仕方ないですね」

「そうだ!時にはパーっと騒がないとな!」

 

父さんが店に響き渡る大きな声で笑う

 

その声に煽られるようにして私は一気にエールを飲んだ

 

…苦い

 

ワノ国で祖父母と飲んだ時はもう少し旨く感じたはずだが今日のエールは苦く感じる

 

「レイリーさんから聞いた。賞金首を斬ったってな」

 

父さんの言葉にあの時の感触が甦る

 

「…父さんはどうやってこれを超えたのですか?」

「俺は超えてないな」

 

その言葉に私は父さんを見る

 

「だが、付き合い方はわかったつもりだ」

「付き合い方…ですか?」

 

父さんは私にジョッキを掲げてみせる

 

「あぁ、こいつを飲んで、騒いで、忘れる…それだけさ」

 

そう言った父さんは一気にジョッキを飲み干す

 

「プハー!ほら、シュウもやれ!」

 

そう言って父さんは私のジョッキにエールを注ぐ

 

「乗り越えるだの、抱え込むだの、小難しい事は俺にはわからない

 だがな、敵を倒さなきゃ大事な奴等は守れないんだ」

 

そして、父さんは自分のジョッキにエールを注ぐ

 

「だから戦う、それだけの事さ」

 

父さんはまた一気にジョッキを飲み干す

 

「シュウ、難しく考えるな。何が一番大切なのか…それだけを理解しておけばいい」

 

何が一番大切なのか…

 

「そうすれば、自然とその感情との付き合い方もわかってくる…

 そして、それが出来ればお前も一人前の海の男さ」

 

ニッと笑った父さんが私の頭を撫でてくる

 

「だから飲め。今は飲んで忘れろ。そして、明日からまた大切なものの為に頑張ればいい」

 

私は父さんの言葉を受けてジョッキを飲み干す

 

…変わらず苦いが先程よりも飲みやすく感じた

 

「今日はたっぷりと酒を持ち込んできたからな、幾らでも付き合ってやるさ」

 

そして、父さんは私と自分のジョッキにエールを注ぐ

 

2人でジョッキを掲げる

 

「「乾杯!」」

 

父さんと交わしたジョッキに注がれていたエールは苦く、そして旨かった

 

 

 

 

ジョッキを干していくシュウを見る

 

…少しは気が晴れたようだな

 

20日程前に、レイリーさんからシュウが人を斬ったと連絡がきた

 

シュウがかなり参っていると知った俺は、一味の仲間たちに話をして

こうしてシャボンディ諸島までやってきた

 

思わぬ形で息子と飲むことになったが、父親として少しは

シュウに何かをしてやれたことで今日のエールは一段と旨く感じる

 

「父さん、遅くなりましたが、《四皇》になった事、おめでとうございます」

「あぁ、ありがとうな、シュウ」

 

2年前に俺達、赤髪海賊団はグランドラインの後半の《新世界》において

その頂点の一角である《四皇》になることができた

 

これで、俺達は《白ひげ》に並ぶ大海賊になったわけだ

 

「そう言えば、最近は《鷹の目》との決闘の話がありませんが…どうしたのですか?」

 

…そんな事まで知っているのか

 

息子に気にしてもらえている事が素直に嬉しい

 

「鷹の目が言うには、俺は壁を超えたらしいな」

「壁…ですか?」

 

シュウが不思議そうに首を傾げている

 

特効薬を作っちまう程の天才の息子にもわからない事があるとは、世の中面白いものだ

 

「海軍の三大将やガープ、そしてレイリーさんやロジャー船長のような大物達…

 それらと他の連中には一線を画す壁があるらしいな」

 

シュウが興味深そうに聞いている

 

レイリーさんも興味を引かれたのかこっちに向かってきた

 

「鷹の目曰く、超一流の壁らしいが、俺がそれを超えたことで

 俺と決闘の決着をつけるなら自分もそれを超えないといかんのだとさ」

「超一流の壁…」

 

シュウが顎に手をやり考えている

 

…ベックマンも時折する仕草だが、頭のいい連中は皆こうなのか?

 

「面白そうな事を話しているね」

 

レイリーさんが俺とシュウがいるテーブルの椅子に座った

 

「レイ養祖父さんは今の話、わかりますか?」

「…わかるというよりは、実感があるといったところだね」

 

俺自身はその実感がないからレイリーさんの言葉に興味があるな

 

「私が昔、ガープやロジャーの戦いについていけなかったと話した事があるだろう?」

「はい」

 

へぇ…俺は初耳だが、レイリーさんにもそんな時期があったんだな

 

「冒険を続けていく中で、私も三種の覇気を身に付けていったが、ロジャーとガープは

 いつも私の一つ先を進んでいった」

 

レイリーさんが懐かしむ様に話していく

 

「ニューゲートやガープと渡り合うロジャーは自慢の相棒だったが

 その相棒の戦いについていけない己にどこか後ろめたさを感じていた」

 

白ひげをニューゲートと、その名前を呼ぶのは広い海でもロジャー船長やガープ

そしてレイリーさんぐらいだろう

 

「ロジャーはそんな私の感情に気づいていたようでな…その事でちょっとした口論になり

 そして、本気の喧嘩になってしまったんだ」

 

俺の知るロジャー船長とレイリーさんの喧嘩はアカリが止めていたが…どうなったんだ?

 

「その時の喧嘩は、昼に始めて、翌日の朝日が昇るまで続いたんだ」

 

ロジャー船長と一昼夜喧嘩し続けたのか…すげぇな

 

「お互いに顔がボコボコになっていてな。夜が明けるまで気づかなかったんだが

 朝日にお互いの顔が照らされてね、2人で大笑いしたんだ」

 

レイリーさんがジョッキを傾けて喉を潤していく

 

一息吐いたレイリーさんが続きを話し出す

 

「そしてロジャーが言ったのさ…

『俺とこんだけ殴りあえるんだ!引け目を感じてるんじゃねぇ相棒!』とね」

 

レイリーさんの話に、俺は改めてロジャー船長のデカさを感じる

 

「思えばその時からだろうね…目の前が晴れたように感じた私は

 ガープやニューゲートとも渡り合えるようになったんだ」

 

「そして、気づけば《冥王》等という二つ名で呼ばれるようになっていた」

 

レイリーさんがエールを飲み干す

 

「こんなところが私の経験談だが…少しは役立ったかな?」

「はい、ありがとうございます。レイ養祖父さん」

 

シュウだけじゃない、俺もレイリーさんの話は為になったと思う

 

「年寄りの昔語りはここまでにしようか。今は酒を楽しもう」

 

そして、レイリーさんが俺とシュウのジョッキにエールを注いでいく

 

俺は返礼としてレイリーさんのジョッキにエールを注ぐ

 

「さぁ、乾杯しようか」

 

レイリーさんが音頭をとる

 

「「「乾杯!」」」

 

打ち鳴らされる三つのジョッキ

 

そして、飲み干していくエールは一際旨い酒だった




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