ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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しばらくは主人公の母親の回想、過去回になります


過去・アカリ編
第3話


わたしシラカワ・アカリは所謂転生者だ

 

もう、ほとんど思い出せない記憶だけど、前世では看護師で25歳ぐらいまでは生きたはず

たしか最後は夜勤明けで急患が入ったからと電話がかかってきて、

それにヘルプに入ったことまでは僅かながら記憶に残っている。

 

その後はあの白い場所で女神様に会って転生することになった。

なんかもの凄く待たされたけどわたしは女神様とお話しをしながらゆっくりと待った。

 

どうやら転生者の1人が今起きたばかりで、担当の神様に色々と質問していたらしい

 

わたしは死んだことを聞かされて取り乱したのだけど、その人は煙草を吸って落ち着き

神様に質問をしては考えてと、現状の理解と納得に努めているみたいだった。

 

女神様が言うには、他の人達は罵倒、暴言は当たり前だったのにこれは珍しいとのこと。

そういった女神様の言葉に興味を持ち、その人の神様とのやり取りを

実況中継してもらうことにした

 

自身が死んだ理由から始まり、並行世界などのことなど質問は多岐に渡る。

抑制のことで涙を流しはじめたと聞いた時は吃驚した。

 

わたしも生前は異性に興味が無かった理由がわかり納得できたのは良かった。

今度こそは恋人を作ると女神様に宣言した後に、女神様と好みの異性について

ガールズトークをしたのはとても楽しかった。

 

その後は、転生特典を決めて転生をした。転生した先は《ワノ国》だ

 

 

 

 

ワノ国の九里にある《シラカワ家》に生まれたわたしは《神童》と呼ばれた。

 

女神様に願い、望んだ覇気を生まれながらに使えるようにしてもらったからだ。

他にも転生者なので前世の知識などが有り、周囲の子供よりも賢かったというのもある。

 

でも、それらよりも一番大きかったのは、前世の経験で血に慣れていたことかもしれない 。

おかげで、戦う際の所謂覚悟を決めるのにあまり時間はかからなかった

 

シラカワ家はわたしの曾祖父が剣術の一流派を興してその腕を認められ

姓を名乗ることを認められた家だ。わたしも4歳の頃から剣と覇気の手解きを受けている。

 

7歳の頃には覇気を扱うのにも慣れて、父親と近海に出るようになった。

その頃に海賊から手に入れた悪魔の実を食べて、女神様に望んでいた力を手にした

 

動物系《ウマウマの実》モデル《一角馬(ユニコーン)》

これがわたしが望んだ悪魔の実だ

 

変身能力は角を生やす以外は無しにしてもらった代わりに、癒しの力に特化させた。

涙や血液などの体液に癒しの力を付与させることが出来たりとかなり便利な力だ

 

角を生やし癒しの力を振るうわたしはやがて周囲の人に

《一角姫のアカリ》と呼ばれるようになった

 

わたしが8歳になったらシラカワ家にわたしを嫁に欲しいといった話しがくるようになる。

正直、8歳の幼女を嫁にくれってどうなのよ?とも思ったが、海賊などがいて

いつともしれない命となれば結婚の話しが前世に比べて早くても仕方ないのかもしれない。

 

ワノ国は長い間、鎖国をしているので海賊?などと思うかもしれないがそれでも一部貿易が

認められている場所もあるので海賊や海軍、商人といった者達が立ち寄る港があったりもする。

前世の日本での出島のようなものかな?

 

でもわたしは、旦那様は自分で決めたかったので全ての話しを断った。

ワノ国の大名である光月家に仕える重臣からも話しがあったがそれも同じく断った。

父は大名家の臣に名を連ねるとあって乗り気で、わたしを説得してきたがそれでも断った

父は家族の縁を切るとかも言ってきたがわたしは受け入れない。

 

母はわたしの味方をしてくれたが、やがて父に家を追い出された。

 

それからわたしは1人で生きることになった。まぁ前世では一人暮らしをしていたので、

家事などは問題が無かったし、既に実戦を経験していたので賞金稼ぎをすることにした。

 

船を手にいれるのは苦労したし、航海術もなかったので近海にしか行けなかった。

そうなると実入りが少なく割りに合わないと感じたわたしは、癒しの能力で医者の

真似事をして稼ぐことにした。そのおかげで暮らしていく分程度には稼ぐことができた。

そんなわたしを見て宛が外れたのが父親だ。

 

泣きついてきたら婚約を結ぼうとしていたようだが、それができない。

しかも、口約束だがわたしと話しをつけると言ってしまっていたようで、

わたしを追い出しても、わたしが自活してしまったことで家での立場が無くなったみたいだ。

婿養子だから色々とあっていいところを見せたかったみたいなんだけど…

 

父は決して悪い人ではない、むしろ夫婦仲は口の中が甘くなるほど良いし、子煩悩と言える。

でも、なんというか…思い立ったら猪突猛進なのが今生でのわたしの父親なのよね…

 

今回の縁談の件もわたしの将来の安定のために色々と動いたりした結果の空回りなのだけど、

それ以外では特に悪い所はない…たぶん今頃、母親にこってりと絞られているだろう…

 

その後、実家がある村の隣村にある集会所に間借りして診療所モドキを開きご近所さんとも

顔馴染みになった頃、わたしの仕事場に山賊が来て荒らすようになった。

 

だけど、実戦を経験して、覇気と悪魔の実の能力が有るわたしは簡単に追い払った。

だが、何度も執拗に荒らしにくるので一度、ワノ国の番所(交番のようなもの)に

突きだそうとしたら、山賊が雇われただけなので見逃してくれと言ってきた。

雇い主を聞いてみたら、わたしの父だった。何やってんのよ糞親父…

 

暴走気味の父に色々と思うところはあったけど、山賊さんたちと話し合い、

彼らの報酬の一部で支払える程度に診療所を壊して依頼をこなしたことにしようと決めた。

別の山賊を雇われてわたしの手に負えない相手だったら困るからだ。

 

それからは定期的にやってくる山賊さん達がわたしの診療所の名物になった。

患者さんや村の人達は逞しく、その日に何が壊されるか賭けるようになったのだ。

 

山賊さん達も悪乗りして、ちょっとした演技をしながら壊す物を物色するようになり、

賭けをしている人達を一喜一憂させるようになる。わたしはまだ子供だからダメと

言われたので賭けてなかったけど、とても楽しい時間を過ごした。

 

そして診療所で癒しの能力を使っているうちに癒しの力の欠点がわかった。

わたしの癒しの力は怪我や毒は治せるが病気は治せなかったのだ。

いや、治せない病気があるというのが正しい…

 

一言で欠点を言うならば、ウイルスが原因の病気は治せないのだ

 

病気の症状そのものは能力で治せるのだけど、ウイルスを駆逐することができない。

そのため、表面上は治ったように見えてもまた再発するといった具合になる。

わたしはこの事に前世での経験や知識のおかげで気づくことができた

 

わたしは村の人達に正直に治せない病気があると言った。

すると、村の人達は医療大国でも治せないものは治せないのだから

気にしなくていいと言ってくれた。

 

わたしは今生で自意識が目覚めてから初めて泣いた。村の人達は笑っていた。

家を追い出され、母に会えなくなってから少し寂しく感じていたわたしは

村の人達の暖かさに触れて恥ずかしくも泣いてしまっていた

 

それまでも何かと村の人達にはお世話になっていたのだが、わたしの泣いた姿を見た後は

それまで以上のお世話を受けるようになった。

なんでも、子供らしいところを見られて安心したそうだ…

穴を掘って埋まりたいほど恥ずかしい…

 

暖かい村の人達に、陽気な山賊さん達と日々を楽しく過ごしていく。

そして、わたしが9歳になった頃、その生活に転機が訪れる。

 

わたしの父が剣を腰に帯びて診療所に乗り込んできたのだ

 

 

 

 

「たのも―――!!」

 

大きな叫び声とともに診療所のドアが勢いよく開けられる

聞き覚えのあるその声にわたしは頭を抱えたいと思いながらも声に応える

 

「ずいぶんと元気な患者さんですね。他の患者さんに迷惑なのでどうぞお帰りください」

「あ、いや、これは失礼いたしたのだ」

 

そう言った父は静かにドアを閉めて外に出る…

 

「なんでじゃ―――!!」

 

と、思ったら自分でツッコミをしながら戻ってくる。相変わらず愉快な父だ。

 

「なんでしょうか父上?用事が無いのならばさっさとお帰りください。

 あ、お母様にはわたしは元気にやってますとお伝えくださいね♪」

「うむ、家内にはしっかりと伝えよう…って、そうではない!用事があるからきたのだ!

 それとアカリ、なぜ拙者のことをいつものようにパパと呼んでくれぬのだ?」

「パパなんて呼んだことないわよ、糞親父!」

「ガ―――ン!!」

 

頭を抱えてそう言った父は膝を折り、手を着いた四つん這いの姿勢になり落ち込む

…人前じゃ恥ずかしくて呼べるはずないじゃないバカ親父!!

 

「うぅ…シオリ、アカリは反抗期になってしまったようなのだ…」

「わたしを放り出したのはお父さんでしょーが!わたしだって

 それなりに苦労したんだからね!」

「それはアカリが見合いを…」

「なんでお見合いを断っただけで家を追い出す必要があるのよ!

 自分は恋愛結婚だったくせに!」

「いや~、シオリとの馴れ初めはな?」

「人様の前で惚気ようとしてんじゃないわよ、バカ親父!」

「ガ―――ン!!」

 

漫才のような親子の掛け合いに周囲は笑いを堪える。

それに気づいたわたしは深呼吸をして落ち着きを取り戻し、父に問いかけた

 

「それで、本当になんの用なのよお父さん?」

「うむ…アカリ、その前にパパと」

「いいから早く言いなさい。また親父って呼ぶわよ?」

「はい…」

 

少し落ち込んだ父は姿勢を正してわたしに告げた

 

「戻ってきなさい、アカリ」

「だからわたしは旦那様は自分で選ぶって…」

「結婚の話しは受けずとも良い。なれど見合いで会うだけでもしてもらいたいのだ」

「なんでまだ8歳だったわたしを見てハァハァするような

 変態達に会わないといけないのよ!」

 

わたしは素敵な恋人が欲しいの!変態という名の紳士はお呼びじゃないのよ!

 

「いや、それには拙者も思うところはあるのだが…相手はこのワノ国の名家であるので、

 会わずに顔を潰す訳にはいかんのだ」

「…それはわかるけど、今のわたしにはこの村の人達を治すっていう仕事があるし…」

「一緒に帰るのだアカリ、また家族で一緒に仲良く暮らそう」

「お父さん…」

「アカリを連れて帰らぬとシオリが床を一緒にしてくれぬのだ!」

「9歳の子供相手になんてこと言ってんのよ!感動を返せエロ親父!」

 

わたしは顔を真っ赤にして父親に叫ぶ。

前世では下ネタをなんとも思わなかったのだけど、異性に興味が出た今生では

少し過剰に反応してしまうようになってしまった…。

看護師としての仕事だからと異性の裸だって気にしなかった

前世の図太さはどこにいったのだろうか…

 

そんな事を思っていたら集会所にいた人達が診療所に顔を出し、

わたしの背中を押すような言葉をくれた。

 

「アカリちゃん、お父さんと一緒に帰りなさい」

「そうでさぁアカリ先生!仕事するにもまだ早いってもんでさぁ!」

「村長、お頭さん…」

 

村長と山賊のお頭さんのその言葉にわたしは言葉を続けられない

 

「アカリちゃんはまだ若い、今のうちにいっぱい親に甘えておきなさい。」

「まぁ、俺らも割りのいい仕事がなくなっちまいやすがね。でも山賊には戻る気がねぇ。

 なら色々と情ができちまったこの村に骨を埋めるのも悪くねぇかと子分達と

 話してたところでさぁ!なあお前達!」

「「「応!」」」

「みんな…」

 

そんな村の人達の言葉にわたしも決心が出来たが、1つ疑問が残った

 

「ありがとう村の皆!この村を離れるのは寂しいけど…わたし、帰るわ!」

 

わたしの言葉に村の人達が口々にこっちこそありがとうと言ってくれる。

そして、一通りの言葉の掛け合いが収まった頃合いを見てわたしは父に問い質した。

 

「ところでお父さん?なんでこの診療所に山賊さん達を送り込んだのかしら?」

 

わたしの言葉に村の人達の視線が一斉に父に向けられる

 

「む?そのことか?なに、簡単なことなのだ。医者になって動かなくなれば剣の腕も

 鈍ってしまうと思ったのだ。それ故、手頃な輩を見繕ってアカリの剣の相手にしようとな」

「…それ、家の道場の門弟さん達を派遣すればすむことよね?」

 

診療所が痛いほどに沈黙する

 

「…あ―――!?」

「もう少し良く考えなさいよバカ親父!」

「う、うむ、それはそれとしてなのだ…」

「「「誤魔化す気だ―――!!」」」

 

村の人達の総ツッコミが診療所を含む集会所全域に響く

 

「アカリよ、剣の腕は鈍っておらぬだろうな?」

 

父はそう言うと腰に差していた剣を抜こうとする

 

「ちょっとお父さん!ここは診療所よ!剣を抜くなら外にして!」

「山賊だけでなく、海賊等もいる世の中なのだ、戦場を選べぬこともあるのだ!」

「もっともらしいことを言って誤魔化すにしても、もう少しやりようがあるでしょ!」

「ええい!アカリよ、お前も剣士の端くれならば、いざ尋常に勝負なのだ!」

 

そう言って父が鞘から直剣を抜いた直後、父が来たときよりも大きな声と共に

海軍の軍服を身に纏った大男が診療所に入って来た

 

「医者はおるか―――!」




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