ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です


第50話

シオリ御祖母さんの指導で剣の修行が始まったが言葉通りに容赦ないものだった

 

「どんな場所でもしっかり踏み込めるようにならないとダメよ。

 それが剣士の生命線になるんですからね♪」

 

八方向への踏み込みをひたすらに反復していく

 

少しでも形が崩れたり手を抜けば

 

「ダ~メ♪」

 

と、可愛い言葉と共に木剣で軽く打ち据えられる

 

もっとも、軽くなのはシオリ御祖母さんにとってなので

もの凄く痛い一撃だ

 

おかげで毎日青痣が増えていっている

 

剣の指導以外にもこれまでの身体能力の向上、覇気の修行も続けているので

毎日疲れきって泥のように眠っている

 

チェスでレイ養祖父さんと勝負もしているので体だけでなく

頭も疲れきってしまう毎日だ

 

半年ほどは木剣を持つことも許されず只々踏み込みを続けていく

 

能力を使って身体にかかる負荷を増やしているおかげか踏み込みの形が出来てきた

 

「そろそろ木剣を持ってもいいかしらね」

 

シオリ御祖母さんの許可が出た時は感慨深いものがあった

 

「シラカワ流は基本的に突きは使わないけど、それも含めた9つの斬撃を

 体得してもらうわ。使えないのと使わないのは大違いだからね♪」

 

それからは踏み込みに加えて9つの剣の振りをしていくことになった

 

鉄芯が入った真剣と同じ重さの木剣をひたすらに踏み込みながら振っていく

 

足の裏は皮が捲れて血塗れになりながらも止めることは許されない

 

「身体のどこかが痛いからって敵は加減してくれないわ。むしろ好機だと

 攻めてくるでしょうね。だからこそどんな状態でも動けるように心も鍛えないとね♪」

 

それはもう楽しそうに笑うシオリ御祖母さんの笑顔が印象的だった

 

ブンタ御祖父さんとレイ養祖父さんはチェスをしてこっちを見ないようにしている

 

「あいや!その一手待って欲しいのだ!」

「ふふふ、もう五回目の待っただけどね、ブンタ殿」

 

…楽しそうでなによりです

 

それからは只々剣を振る毎日を繰り返していった

 

足の裏だけでなく、木剣を握っている手も皮が捲れてボロボロになっていった

 

そんな手や足の裏が固まり始めて1年程

 

遂にシオリ御祖母さんから手合わせの言葉が出てきた

 

 

 

 

袈裟斬り、横凪ぎ、切り上げとしっかり踏み込みながら振っていく

 

頭で考えずとも行われていく剣撃はこの1年半で身に付いたものだ

 

素早く体を入れ替え今度は左足を前にして剣を振っていく

 

つばぜり合い等でこういった状況になるからと指導された成果だ

 

脚の後ろ側の筋肉を総動員して身体を前方に送り出す

 

踏み込み、足の裏で地面を掴んだ反動で股関節を回し

腹、背、胸の筋肉を用いて剣を振るう

 

ブンッ!

 

1年前にはどれほど振っても聞こえなかった風切り音がする

 

成長を実感して修行に熱が入っていく

 

そして、最後の1振りを終え残心をしていた時、私の耳に拍手が聞こえてきた

 

「この1年半で見違えるように成長したわね、シュウちゃん」

「うむ、修行を始める前にある程度の基礎が出来ていたが、それでも

 凄い成長なのだ。シュウ、見事なのだ」

 

祖父母の称賛が素直に嬉しい

 

「ありがとうございます、シオリ御祖母さん、ブンタ御祖父さん」

 

レイ養祖父さんは今、シャボンディ諸島でコーティングの仕事をしている為

ワノ国にはいない。私が月に一度、転移で送迎しているのだ

 

「シュウちゃんも、変に考えたりせずに自然と剣を振れるようになったから

 そろそろ手合わせも修行に加えていこうかしら」

 

…遂に次のステップですか!

 

「それじゃ、ブンタさんお願いね」

「任せるのだ、シオリ」

 

道場の中央でブンタ御祖父さんと対峙する

 

同じ構えだが急造の私と違い至極自然な形に見える

 

ブンタ御祖父さんの構える剣が不意に大きく見えた

 

「では、行くのだ」

 

ブンタ御祖父さんの言葉と同時に私の肩口に衝撃が走る

 

あまりに自然に振るわれたその一撃は私の未熟な見聞色の覇気では

起こりをも察することが出来なかったのだ

 

私は慌てて距離を取ろうとするが身体に力は入らず前のめりに倒れていく

 

そんな私をブンタ御祖父さんは優しく受け止めてくれた

 

「シュウ、海は広いのだ。レイリー殿やガープ殿のように、拙者では

 勝つ事はおろか、負けぬ事さえ難しい御仁達が当たり前のようにいるのだ」

 

ブンタ御祖父さんの話が続いていくが凄く瞼が重い…

 

「だから、焦らずに修行を重ねていくのだ。拙者も及ぶ限り力を貸すのだ」

 

ブンタ御祖父さんに優しく頭を撫でられた私はそのまま気を失ってしまった

 

 

 

 

腕の中に在る孫の寝顔に暖かいものを感じる

 

家内のシオリとの間に産まれた子供達を初めてこの腕に抱いた時も

このように感じたものだと懐かしく思う

 

今ではユカリもヒカリも嫁に行ってしまい寂しく感じていたが

シュウが来てくれたことで人生に張りが戻ってきた

 

もちろん、シオリと2人の生活に不満など微塵も無いが

それはそれ、これはこれなのだ

 

「あらあら、寝ちゃったわね」

「うむ、初めてにしては上出来なのだ」

 

拙者の一撃を受けても意識を保ち、反撃に転じようとしていたのは見事なのだ

 

流石は拙者の孫なのだ

 

「あの一撃を受けても意識を保つ…シュウの武装色の才はガープ殿に

 匹敵するかもしれないのだ」

「ふふ、そうかもしれないわね」

 

シオリも近付いてシュウの頭を撫でている

 

昔と変わらぬ優しい笑顔に惚れ直す思いなのだ

 

「ところでブンタさん?」

 

不意にシオリの雰囲気が変わる…これは、いかんのだ

 

「もう少し、シュウちゃんに加減してあげてもよかったんじゃないかしら?」

「いや、シュウに海の広さを知ってもらおうと…」

「あまりの力の差に、心が折れちゃったら意味無いわよね?」

 

ニッコリ笑っているシオリの笑顔に冷や汗が止まらない

 

「シュウちゃんを寝かせたら、少しお話しをしましょうね♪」

「…はい、なのだ」

 

その後、シュウが目を覚ますまでシオリのお話しは続き

正座による脚の痺れと共に拙者の心をへし折っていくのであった




次の投稿は11:00の予定です

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