読者の皆様には感謝御礼申し上げます
「それじゃ、半年は帰ってこれないから。無理しちゃダメよ」
ベルメールがココヤシ村に戻ってきて２週間ほどたった
そして、村の沖合いに迎えの船がきたので、ベルメールの休暇は終わりになったのだ
「半年かぁ、今度は結構長いわね」
「金獅子のシキがインペルダウンから脱獄したから色々と忙しくなっちゃったのよ」
「ちょっと、それをわたしに教えていいの？」
「どうせ《冥王》から手紙がきて教えてもらえるんでしょ？ならいいじゃない。
オハラのことといい、さすが《冥王》よね」
《冥王》シルバーズ・レイリー
元ロジャー海賊団の副船長だ。わたしは３年ほどしかロジャー海賊団にいなかったけど、
育ての父のように感じている。なので一度、お養父さんと呼んだら
レイリーさんが顔を真っ赤にしてしまい、それをロジャー船長に大笑いされて
大喧嘩になってしまったことがある
その後は、宴をして仲直りをしたんだけど、その宴でロジャー船長がわたしに
レイリーさんを父親と呼んであげてほしいと言ってきた
レイリーさんは顔を赤らめて否定してきたのだけど、ロジャー船長が頭を下げて
わたしに頼んできたのでわたしは快諾した。それ以来わたしは
レイリーさんのことを《レイ養父さん》と呼んでいる
そのレイ養父さんから先日、オハラのことに関する手紙がきて
オハラが海から消えた事の詳細を教えてくれたのだ
オハラは学者の人達が集まる島で、その島では皆で何かを研究しているらしい
そのオハラでは今年、８歳と６歳になる姉妹がいて、その２人が今年
博士号の試験に合格して、考古学者になった
姉の名前はニコ・ルビーで妹は《ニコ・ロビン》というみたいだ
ニコ・ロビンの名前には既視感を感じている…
多分だけど、もうほとんど思い出せない《前世の記憶》に関係しているのだろう
その姉妹が考古学者になったことで海軍の注目が集まり、オハラの人達が研究している
何かに気づいた海軍が《バスターコール》を発動してオハラの島を海から消した…
オハラで研究されていたのは禁忌のもので海軍や《世界政府》が
見逃すことができない類いのものとレイ養父さんは手紙に書いていた
老若男女を問わずにバスターコールでオハラごと海から消したことで
今は政治的な根回しをしている段階なので秘匿しているらしい
もう少ししたらオハラのことを悪魔の島として発表するみたいだ
それに合わせて生き残りを賞金首として登録、発表するみたいだけど
その生き残りがあの天才姉妹だと書いてあったから驚いた
なにやらその姉妹が生き残ったことに《青雉》こと海軍中将のクザンさんが関わっているらしい
そういったことが手紙に書いてあったのだけど…
本当にレイ養父さんはどこから情報を手に入れているのだろうか？
「ゲンさんとDr.ナコーにアカリとシュウのことを頼んであるからね。
遠慮せずにこき使ってやりなさい」
「ありがとう。ところで、ベルメール？沖合いに来ている船って…
もしかして、ガープさんの船？」
「あら、よくわかったわね。実はね、今回ココヤシ村に帰ってくる時に、
ガープ中将が同じ東の海（イーストブルー）にあるフーシャ村に帰るっていうから
私もガープ中将の船に乗せてもらったって訳なのよ。私の船よりも足が速いからね」
「《英雄》ガープを足に使うだなんて…相変わらずねベルメール」
「あっはっはっは！これもいい女の特権よ♪」
ウインクをしながらそう言い切る親友に思わずため息がでる
《英雄》モンキー・D・ガープ
海軍の英雄で階級は中将。本来ならば大将や元帥にだってなれる
実力や実績を持っているのだけど、本人がこれ以上の昇進は断っているらしい。
大将や元帥に昇進すると責任やらなにやらで今ほど自由に動けなくなるから
というのが昇進を断っている理由みたいだ。
ちなみに海軍時代のわたしの上司だった
ガープさんはロジャー船長の無名時代からの好敵手でその因縁は深い。
わたしもレイ養父さんからの又聞きだからあまり詳しくはないけど
個人としての実力は《白ひげ》や《金獅子》と並び世界最強の一角だ。
しかも、悪魔の実の能力を持たずに拳１つで渡り合う本物の化け物なのだ
ロジャー船長やレイ養父さんはガープ中将を相手によく生き残り続けたと思う
まぁ、わたしにしてみればロジャー船長もレイ養父さんも同じ化け物なんだけど
「それじゃ、そろそろいくわ。本当に無理したらダメよアカリ」
「そっちこそね、ベルメール。グランドラインの連中の力は天井知らずなんだから、
１人で突っ込み過ぎないようにね…コホッ、コホッ」
「もう、Dr.ナコーが出産で体力を失った女性がそのまま亡くなるって話しは
珍しくないって言っていたんだから。本当に気をつけなさいよ」
「わかってるわよ」
この世界は海軍や海賊が１年中戦っているからか、外科技術はかなり高い。
前世での現代医療のように多くの医療器具、検査器具がないので
医者当人の知識、診察眼、外科技術に頼らなくてはならないからだ
その反面、内科のほうは時代相応というか、前世では完治可能な病気でも
この世界では死病だったりもする。…まぁ、貴族や天竜人といった
特権階級がいるおかげなのか、その…そっち方面の薬は充実していたりする…
「なに急に顔を赤くしているのよアカリ？」
「な、なんでもないわよ」
「ふ～ん…怪しいわね～？」
「…医者の話しを聞いて外科技術は高いのに内科技術はねって思っただけよ」
ベルメールが首を傾げながら話してくる
「外科っていうのは外傷とかを治療するものだったっけ？で、内科は薬とかのことよね？
どこに顔を赤くする理由があるのよ？」
「…その薬のことで、その、あっち方面の薬は、じゅ、充実しているなって…」
「ふ～ん…で、あっち方面ってどの方面のことかしら？」
察しているはずのベルメールが顔をニヤニヤさせながら聞いてくる
「もう！わかっているなら聞いてこないでよ！」
「あっはっはっは！相変わらずアカリは変なところで初心よね～」
前世に比べて命が失われやすいこの世界では、比較的に積極的な人が多いと思う
もちろん、恥じらいをもった人もいるがどちらかと言うと少数派のように見える
「いいじゃない別に。おかげで素敵な旦那様を捕まえて子供だって出来たんだから」
「それは、私に喧嘩を売ってるのかしら？アカリが元気になったら、いつでも買うわよ」
「１年以上もブランクがある状態で、ベルメールに勝てるとは思えないからやめておくわ」
「よく言うわね。海軍時代の手合わせで私に８割は勝ってるじゃない」
「悪魔の実の能力と覇気も有りの状態でじゃない。素のままじゃ勝てないわ」
「実戦ではなんでも有りなんだから、その状態で勝てなければ意味がないわよ」
なんて事のない、いつものやり取り…船出前の寂しさを隠そうとどちらともなく
おどけたように言葉を重ねていく。さぁ、親友の船出を祝福しないと
「いってらっしゃい、ベルメール」
「いってきます、アカリ」
その言葉と共に踵を返す親友を見送る。旅立ちは笑顔でというのが船乗りの礼儀だから
◆
「行っちゃったわね」
親友を乗せた船が帆を張り進んでいく、英雄が率いる船だが航海の無事を祈る。
見送った後に間借りをしているベルメールの家に戻った
「ふふふ、よく寝てるわね」
ゲンさんが村の大工さんに頼んで作ってもらったベビーベッドで、
わたしの息子であるシュウが気持ちよさそうに眠っているのをわたしは眺めた
「少し前にベルメールが言っていたけど、この子は本当に泣かないのよねぇ～…」
わたしの息子はお腹がすいた時と、おしめを取りかえて欲しい時ぐらいしか泣かない。
とてもいい子なのだが、もう少し甘えてくれてもいいのにと思ってしまう
「シュウ？もう少し甘えてくれてもいいのよっと」
そんなことを言いながら、柔らかい頬を軽くつつく
少しむずがったと思ったら、その小さな手でわたしの指を掴む
そして、安心したようにまた眠る我が子に、わたしの顔は緩んでしまう
「…カワイイ！」
空いている手で拳を握りしめ、小声で歓喜の気持ちを表す
これぞ母親の特権！この子のためならば白ひげにだって喧嘩を売れる！
…売るつもりはないけどね
にやけながらも、可愛い息子の顔を改めて眺める。
わたしと同じ波打つ紫の髪と紫の瞳だけど、切れ長と言える目と
すっと通った鼻はあいつに似ているかな？
そんなことを思いながら、すやすやと眠る我が子の頭を撫でる
「素敵な恋人が欲しいとは思っていたけど、母親にまでなれるとは思ってなかったなぁ…」
既にほとんど思い出せなくなっている前世の記憶だが、それでもわかることがある
少なくとも、前世ではこれほど幸せな感情を抱いたことはない
「…まだ２０年近くしか生きてないけど、色々あって楽しかったなぁ」
そう呟いたわたしは、この世界での人生を思い返すのだった
うろ覚えの人物名や地名を修正するためにw〇kiとにらめっこをする毎日です
投稿感覚が安定しませんがこれからもお付き合いください