ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

48 / 162
本日投稿4話目になります


第45話

父さんと会ったあの日から2年程経った

 

太極で学んだ博士の知識を用いて死病の特効薬を造ったのだが

その道のりはトライ&エラーの繰り返しだった

 

薬や成分などの名前が違ったりと調べることが山ほどあり

予想以上に時間がかかってしまったが楽しい時間でもあった

 

それに知識を用いることの難しさを知ることができたのも良い経験だった

 

修行の合間に研究をしていたのも気分転換になりよかったと思う

 

修行の方は能力を使い熟すことを中心にやっていった

 

現在ではあの老人に求めた能力をほぼ使えるようになっている

 

自身にかかる重力を増やし、空気を濃くすることで修行の効率をあげている

 

空を飛ぶこともできるようになっているし凄く便利な能力だ

 

だが一部の能力はある程度の制限のようなものがある

 

ワームホールによる長距離転移は私が能力を得た後に、私が行ったことがある場所にしか

転移することが出来ないのだ

 

短距離転移は俺が視認している範囲内ならばできる

 

湾曲フィールド…所謂バリアは正直使えない

 

いや、使えないことはないのだが戦闘においてバリアの役割は果たせない

というのが正しいだろう

 

日光や風を遮ったりすることで比較的に快適な空間を作るのがバリアの役目だ

 

能力は現在のところこんな感じだ

 

覇気に関しては武装色以外は大きな成長は感じられない

 

無意識に纏っていた武装色を意識的に使えるようになった程度だ

 

レイ養祖父さんや父さんは今の年齢でそれだけできれば十分だと言ってくれるが

周りにいるレイ養祖父さんや父さんとどうしても比べてしまうので

まだまだ足りないと思ってしまっても無理もないだろう

 

私の近況としてはこんな感じだ

 

そして、特効薬を造ったことで世界会議に参加することになった

 

そろそろ迎えがくるはずだ

 

噂をすればなんとやら、酒場の入り口が勢いよく開かれた

 

 

 

 

「シュウはおるか―――!」

 

2年前と変わらず壮健そうに見えるガープさんが勢いよく酒場に入ってきた

 

「あら、いらっしゃいガーさん」

「おぉ!シャクヤク、元気にしとったか!」

 

シャッキーさんとガープさんはどうやら顔見知りのようだ

 

「お久し振りです、ガープさん」

「久しいのぉシュウ。しかし、とんでもないことをやらかしおったな」

「悪いことをしたように言わないでいただきたいですね」

「ぶわっはっはっは!」

 

私の言葉をガープさんが豪快に笑い飛ばす

 

恩人の変わらぬ姿に安堵する

 

「相変わらずだな、ガープ」

「おぅ、レイリー!お前は少し若返ったんじゃないか?」

「張りのある生活をしているからな。それに、お互いに老け込むのはまだ早いだろう?」

「その通りじゃ!ぶわっはっはっは!」

 

老いて益々盛んという言葉がよく似合う2人だ

 

「ガープさん、お聞きしたいことがあるのですが」

「ん?なんじゃ?」

「今回、私が世界会議に呼ばれることになった経緯です」

 

ガープさんが渋面をする

 

ガープさんにとっては面白くないことのようだ

 

「グランドラインに医療大国と呼ばれるドラム王国があるのじゃが、知っとるか?」

「名前だけは知っていますね」

「そこの国王が『医療大国の我が国で特効薬の確認を~』とかなんとかごねおったのが

 今回の事の発端じゃのぉ」

 

ガープさんの言葉に私とレイ養祖父さんは顔を見合わせる

 

「レイ養祖父さんの予測が当りましたね。お見事です」

「シュウもあの国の情報を持っていれば予測できただろうね」

「その知識や情報を持っているかも当人の器量ですからね。私もまだまだです」

 

私達の会話をガープさんが呆れた様子で聞いている

 

「相変わらずじゃのう、お主らは」

 

頭を掻いているガープさんを見て私とレイ養祖父さんは笑った

 

「さて、そろそろ行くぞい、シュウ」

「ガープ、シュウの帰りはワノ国に送ってくれ」

「ブンタの所か?」

「あぁ、シュウの基礎も出来上がってきたからな」

 

ブンタ…私の祖父ですか

 

「わかったわい。それでレイリー、お前はどうするんじゃ?」

「私は一足先にワノ国に向かうとするさ」

 

ガープさんは肩を竦めて答えるレイ養祖父さんから私に目を移した

 

「しかし、残念じゃのう」

「なにがでしょうか?」

「特効薬じゃよ。シュウの思う通りに製法は広まらんじゃろう」

 

ガープさんの言葉に私は笑いで答える

 

「なんじゃ?」

「ククク…失礼しました。実は特効薬は1年前には出来ていたのですよ」

 

ガープさんが目を見開いて驚いている

 

「出来上がってから1年…父さんに頼んで知己を得ている医者の方々に

 特効薬のサンプルと製法を記した資料を届けてもらっています」

「…レイリー、お前の差し金か?」

「まさか、シュウが考えたことだ」

 

ガープさんの反応にレイ養祖父さんは愉快そうに笑っている

 

ガープさんはジト目で私を睨んできた

 

「それでは行きましょうか、ガープさん」

「はぁ~…レイリー、シュウを借りていくぞ」

「あぁ、いってらっしゃいシュウ」

 

こうして私はガープさんの案内で世界会議に赴くことになった

 

この世界を統べる王族や貴族がどういった者達なのか…

 

私は少しの楽しみを胸に船旅を楽しんだ

 

 

 

 

医療大国と呼ばれるドラム王国に、かつて西の海で大盗賊と呼ばれた男がいる

 

その男の名はヒルルク

 

盗賊として多くの富を集めた男だが、その身に起きた奇跡により改心

 

無償で患者を治療する心優しき医者へと転身した

 

もっとも、その腕前は患者が治療を拒否する程のヤブなのだが…

 

そんな心優しきヤブ医者のヒルルクは、かつて己が身を蝕んだ病に

再びその身を侵され、死期が迫っていた

 

 

 

 

「俺ぁ、死ぬだろう?」

 

ヒルルクが己の手にベッタリとついた血を見て呟く

 

「ヒーヒッヒッヒ、死ぬねぇ」

 

ヒルルクの呟きに応えたのは魔女と呼ばれる名医くれはである

 

このくれは、名医であるが莫大な治療費を要求してくることで

ドラム王国では有名な老婆である

 

顔に刻まれた年輪は年相応だが、その身体は非常に若いことも

彼女が魔女と呼ばれる所以の1つだろう

 

「もって3カ月ってところか…」

「おや、死期がわかるなんて腕をあげたねヒルルク、ヒーヒッヒッヒ!」

 

くれはの物言いにヒルルクが驚く

 

「お前が誉めるなんて珍しいな、上機嫌だが何かあったのか、くれは」

「ヒーヒッヒッヒ!」

 

くれはが笑いながら何かをヒルルクに放り投げる

 

「ん?新聞か?」

 

ヒルルクは手についた血をハンカチで拭ってから新聞を開く

 

「ほ~、10歳で博士号たぁ凄い坊主だな」

「そこじゃないよ、もっと先さね」

 

ヒルルクが新聞を読み進めていく

 

「え~と、2年の歳月を研究に費やし、三大死病の特効薬を…特効薬!?」

 

驚愕のあまりに叫びながらくれはを見たヒルルクが目にしたのは

ガラスの小瓶を上機嫌に持っているくれはだった

 

「これがその特効薬のサンプルだね」

「くれは…何故お前がそれを…」

 

くれはが『ヒーヒッヒッヒ!』と上機嫌に笑う

 

「古い知り合いの所で見習いをやっていた男が、このサンプルと

 製法が書かれた資料を持ってきたのさ」

 

彼女は上機嫌に言葉を紡いでいく

 

「あたしが調べた所、この資料に間違いはないね…つまり、これは本物の特効薬さ」

 

僅か12歳の少年が、目の前の天才でも造れなかった薬を造り出す…

その事実をヒルルクは正確に認識出来ているのか自信がなかった

 

「それで、どうするヒルルク…この薬、試してみるかい?」

「あ、あぁ…」

 

心此処に在らずといった具合のヒルルクを見てくれはが笑い出す

 

「そうだ、あんたの所のトナカイ、文字の読み書きぐらい仕込んであるんだろう?

 あたしの手伝いをさせるから連れてきな」

「チョッパーをか?どういう風の吹き回しだ?くれは」

 

ヒルルクの知るところでは少なくともくれはが自分から弟子をとるような

性分ではないと思っている

 

そこに自分の息子のように思っているチョッパーを連れてこいと言われたのだ

 

ヒルルクの疑問も当然のことだろう

 

ちなみに、チョッパーとは《ヒトヒトの実》を食べた青鼻のトナカイである

 

その容貌などからトナカイ、人間共に仲間外れにされていた所を

ヒルルクが引き取り一緒に暮らしているのだ

 

「なにせ世界初の新薬だからね、経過観察を余すところなく取らないとね

 あたしの研究の為に、ヒーヒッヒッヒ!」

 

またも上機嫌にくれはが笑い出す

 

医者をしていることから彼女も心優しい人間なのだが、如何せん素直ではない

 

「ハッピーかい?ヒルルク」

 

死期が迫り、残される養息子であるチョッパーのことを真剣に

思い悩んでいた日々に再び舞い降りた奇跡

 

ヒルルクは呆然とするしかなかった

 

「若さの秘訣かい?」

「いや、聞いてねぇ」




次の投稿予定は15:00です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。