ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

43 / 162
本日投稿6話目になります


第40話

「どうやら目を覚ましたようですね、我が半身」

 

その声に振り向くと、俺は驚愕のあまりに動きが止まる

 

俺と同じ波打つ紫の髪と白衣を思わせる服装

 

美男子としか形容出来ない容貌に特徴的な低い声

 

二次元と現実の違いはあれども間違う筈がない…

 

「シュウ・シラカワ博士…」

 

俺は無意識に博士の名を呟いていた

 

「やはり、私を知っていましたか…いえ、まだ覚えていたというのが

 正しいのでしょうね」

 

博士が発していく言葉は、俺の少しばかり残っている前世の記憶に

あるように、少々謎めいた表現をしてくる

 

だが、何故か心当たりがあるのが面白い

 

「その言い方ですと、私の前世の記憶が薄れている理由をご存知なのですか?」

「えぇ、それはあらゆる世界に共通する事象ですからね」

 

博士の言葉に知的好奇心が刺激されていく

 

「我が半身、貴方の記憶が虚憶へとなったのは、世界の防衛本能によるものですね」

「虚憶?世界の防衛本能?」

 

「虚憶は前世や並行世界の記憶が既視感や既知感となることですね…心当たりがあるのでは?」

 

心当たりどころか、俺に起こっていることそのものである

 

「はい」

「世界の防衛本能ですが、これは世界の存在意義にも関係していますね」

 

「存在意義…」

「えぇ、世界は例外なく魂の輪廻を受け入れる存在です。故にその魂が無ければ

 世界も又存在し続けることが出来ないのです」

 

ふむ、つまりは…

 

「前世の世界と比較して里心のようなものを出され、別世界に転生されると

 世界にとっては困ることになる…といったところでしょうか?」

「ほう…中々の理解力ですね、我が半身」

 

やばい、博士に誉められてめっちゃ嬉しい!

 

でも…

 

「ところで、先程から私を半身と呼んでいますが、どういうことでしょうか?」

「それは、貴方を此処に喚ぶことが出来たことにも関係しているので

 簡単にですが教えて差し上げましょうか」

 

是非とも教えて差し上げて下さい

 

「貴方は、前世での生き様から私の因子を魂に生じさせた希有な存在なのです」

「…?」

 

うん、わからん

 

「我が半身、貴方は前世において、その多くの時間を私と関わった筈ですよ」

 

俺は何とか記憶を搾り出していく

 

…もしかして、あのゲームのシリーズを全部やっていたことか?

 

「どうやら心当たりがあるようですね」

「はい…ですが…」

 

確かに博士はあのゲームのシリーズに登場するキャラで一番好きだったし

使い込み、やりこみもしたけれど…

 

「博士、因子とやらが生じたと言われましたが…私はどういった

 存在になったのでしょうか?」

「言葉通りに我が半身、もしくは並行世界のシュウ・シラカワたる存在ですね」

 

いやいやいや、俺は博士のような天才じゃないよ!

 

「ですが、貴方はあくまで貴方であり、私とは別の人間ですよ」

 

そう言われて正直、ほっとした

 

博士のような人類最高峰の天才と同じだと言われてもどうしようもないのだから

 

「さて、貴方に私の因子が在るが故に、此処に喚ぶことが

 出来たことは理解できましたか?」

「はい…ですが、此処はどこなのでしょうか?」

「ククク、何処だと思いますか?」

 

む、ここにきて逆に問い返されるとは…

 

今までの会話に何かヒントでもあるのかな?

 

今生、前世の記憶を掘り返しても確信となるものは出てこないが…

 

「…太極でしょうか?」

 

あのゲームのシリーズの1つでそんなワードがあった気がする

 

正直なところ、勘で答えただけだ

 

「ほう、見事ですね我が半身。正直なところ、貴方を見誤っていました」

 

…え?マジで?

 

俺は博士の反応に周囲を見渡す

 

此処は本当にそうなのかと確認するように何度も見渡す

 

「ククク、では理解できたところで、貴方を喚んだ理由を話しましょうか」

「あ、はい、お願いします」

 

博士は上機嫌に笑いながら話を続ける

 

「一言で言えば、あの老人に頼まれたからですよ」

 

あの老人って…

 

「貴方は私の知識を望んだのでしょう?」

「そうですが…」

 

「少なくとも、私の知識は一朝一夕に理解出来るほど軽いものではないと自負しています

 故に、私の知識を得るのならば、相応に学んで頂かなければなりません」

 

博士が俺を見据えてくる

 

「ですので、私自ら貴方に講義をして差し上げましょう」

 

Oh…

 

「…宜しいのですか?」

「えぇ、それがあの老人からの依頼ですからね」

 

あの時言っていた優遇ってこういうことか!

 

「ですが、1つ問題があります」

「何でしょうか?」

 

「我が半身、貴方は今、魂だけの状態で此処にいます」

 

魂だけ?

 

「魂がその器たる肉体から離れていられる時間は限られています。

 それ故、貴方にはその有限の時間で知識を学んで貰うことになりますね」

「…どれぐらいの時間でしょうか?」

 

博士は一度目を瞑り、俺の質問に答えた

 

「此処は貴方の世界と時間の流れが異なりますが、およそ10年が限度でしょうね」

「10年…」

「えぇ、貴方の世界では10日程になります。それ以上は貴方が戻れなくなりますので…」

 

10年で博士の知識を学ぶ…高校を赤点ギリギリで卒業した俺に出来るのか?

 

「ククク…心配せずともいいですよ。私が貴方に知識と其れを活用するための

 知恵を叩き込んで差し上げましょう」

 

こうして俺は、特典で望んだ知識を得るのではなく学ぶことになった

 

憧れたシュウ・シラカワ博士本人の講義によって…




次の投稿は19:00を予定です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。