ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿5話目です


第39話

悪魔の実にかじりついた俺の口中は大惨事になっていた

 

苦い、酸っぱい等の酷い味が口の中で大戦争をしている

 

一言で言えばもの凄く不味いのだ

 

だが、2歳の時から決して裕福とは言えない家庭環境で育ち

身体作りの為に好き嫌いせずに、食べ物を残さずに食べてきた習慣が

この口中の物体を吐き出すことを拒否している

 

俺はなんとか咀嚼して悪魔の実を飲み込んだ

 

だが、手にはまだ悪魔の実が残っている

 

口直しをしたい衝動にかられながらも残った悪魔の実を口に押し込んでいく

 

そして、俺はこの戦いに勝利することができた

 

「うっ…予想もしなかった程に…酷い味でした…」

「言い忘れていたんだが…悪魔の実は一口食せば力を得られた筈だね…すまない、シュウ」

 

レイ養祖父さんの物言いに俺の奮闘は何だったのかと言いたくなるが

終わってしまったものは仕方がない

 

俺は口直しに水を飲んでから口を開いた

 

「…既に済んだことですから」

「そうか、改めてすまない、シュウ…さて、それでは外に出て能力を試してみようか」

「はい」

 

俺は口を濯ぎながらレイ養祖父さんについて外に出た

 

「それで、能力はどのように使うのでしょうか?」

「私自身は能力者では無いからハッキリとは言えないが…感覚的にそれが

 わかるというのが私の知るところだね」

 

感覚的か…

 

俺はその言葉に意識を自分に向けるように集中する

 

すると、なんとなくだが自分に今までと違うものがあるのがわかる

 

「…これでしょうか?」

「そういえば、能力も覇気と同じく、使用者の意思が大切だと聞いたことがあるね」

 

意思…要するにイメージするのが大切なのだろう

 

俺はあの空間で老人に求めた能力を思い出す

 

さて…何を使ってみようかな?

 

…よし、まずは使えたら便利なワームホールをやってみるか

 

「それでは、能力を使ってみます」

「あぁ、フォローは任せておきなさい、シュウ」

 

レイ養祖父さんの言葉に微笑みを返し、俺は直感的に手に意識を集中する

 

すると、身体の内側から何かが生み出されるような感覚が沸き上がってきた

 

…これか?

 

そのまま集中を続けていくと、手から紫を帯びた黒い塊が出現し

目の前の空間に穴のようなものを拡げていく

 

「…っ!?」

 

だが、その穴に身体の内側から何かを無理矢理引き出されるような感覚を感じた俺は

意識を失ってしまうのだった

 

 

 

 

倒れ行くシュウの身体を私は抱き止める

 

意識を失っているようだが、身体に怪我などはないようだ

 

私は安堵の息を吐く

 

おそらくだが、シュウは疲労の限界に達したのだろう

 

まだ子供の身体に慣れない環境下での修業…

 

私が想定していた疲労の限界に達する1ヶ月に近かったこともあるが

今回の能力の使用が引き金になったのだろう

 

しかし…あの黒い穴のようなものは何の能力なのだろうか?

 

知的好奇心を刺激されるが、今はシュウを休ませることを優先しようか

 

それに、私の予想が正しければ、そう遠くない内にシャンクスが

私を訪ねてくるだろう

 

ならば、シャボンディ諸島に戻るとしようか

 

私はシュウを拠点に寝かせた後に荷物を《箱貝》に収納していく

 

荷物を収納し終えた私は、シュウに負担がかからないように抱き上げ

《月歩》を使い空を駆け、シャボンディ諸島に向かった

 

 

 

 

「準備の方はどうだ、ベックマン?」

「《冥王》への土産に酒もたんまりと積んだ…いつでも行けるぞ、シャンクス」

 

グランドラインに戻り一稼ぎを終えた俺達は、シャボンディ諸島へ向けて

出航準備をしていた

 

「これを終えたら、いよいよ《新世界》だな、ベックマン」

「…《四皇》を狙うのか、シャンクス?」

「あぁ、シュウを散々待たせたからな…見せるのなら、大きな背中を見せてやりたい」

 

ベックマンが煙草に火を付け、話を続けてくる

 

「気が早いんじゃないか、シャンクス」

「今回は会える気がしているんだ」

「…根拠は?」

「勘だ」

 

ベックマンがため息をするように紫煙を吐き出す

 

だが、この海で生きるには勘もバカにしたものじゃないのは身に染みているはずだ

 

「…そうか」

「あぁ、それじゃ行くぞベックマン!出航だ!」

「あいよ、船長」

 

船は帆に風を受けて進んでいく

 

まるで俺の気持ちを表すかのように、船は軽快に波を掻き分けていった

 

 

 

 

意識が浮かび上がるようにして目を覚ます

 

まず目に入ったのは満天の星空だった

 

「綺麗なものですね…ですが、空が見えるということは拠点の中ではないのでしょうか?」

 

俺は体を起こすと周りを見渡す

 

そして、目にしたのは異常な光景だった

 

周囲全てが、足下までもが星に囲まれていたのだ

 

「…どういうことでしょうか?それに…この星々に感じる違和感は?」

 

俺は観察と思考を続けていく

 

そして気づいた

 

「これは…星が瞬いていない…」

 

地上では空気の層等の関係で星が瞬くと、何処かで聞いた覚えがある

 

そうすると、此処は宇宙である可能性がと考えるが、呼吸は出来ているし

何よりも無重力であるのならば浮遊感のようなものもあるはずだ

 

「…そうなると、此処はどこなのでしょうか?」

 

俺が一人言を話しながら思考を続けていると、不意に声をかけられた

 

「どうやら目を覚ましたようですね、我が半身」

 

その声に振り向くと、そこには波打つ紫の髪が特徴的な美男子が立っていた




次の投稿は17:00の予定です

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