ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

40 / 162
本日3話目の投稿です


第37話

「いってらっしゃい、レイさん、シラカワちゃん」

「行ってくるよ、シャッキー。1ヶ月もしたら一度戻るつもりだ」

「いってきます、シャッキーさん」

 

修業プランがある程度固まり、レイ養祖父さんの縄張りである無人島に行くことになった

 

そして、今はシャッキーさんが見送りに来ているというわけだ

 

「さぁ、行こうかシュウ。道中で航海術なども教えていくからね」

「お願いします、レイ養祖父さん」

 

俺とレイ養祖父さんは小舟で海に出ていく

 

波やら海洋生物やら大丈夫なのかと思うが、そこは歴戦の海の男であるレイ養祖父さんだ

天候を的確に読んだり、覇王色の覇気で海洋生物を撃退したりと大活躍である

 

それらの冒険的な光景に少し…いや、かなりはしゃいでしまったが仕方ないだろう

 

そんな感じで半日も船を進めていると、目的の無人島に到着したのだった

 

「さて、ここでシュウを鍛えていくのだが、まずは覇気を理解してみようか」

「覇気ですか?」

 

レイ養祖父さんの説明が続いていく

 

「覇気というのは《人の意思の力》だ。まずは私が手本を見せよう

 それで覇気のイメージを掴んでみなさい」

「はい」

「その後は、シュウの資質を確認してみよう。私が見たところ、シュウは3種類の覇気

 全てに資質を持っているが、どの系統が得意なのかまではわかっていないからね」

 

得意な系統…転生前にあの老人から貰ったものが確かなら武装色の覇気の筈だが…

 

「まずは、武装色の覇気だ」

 

袖を捲ったレイ養祖父さんの腕が黒くなっていく

 

ベルメール母さんは拳だけだったので、流石は《冥王》といったところだろうか

 

「その様子だと知っていたのかな?」

「はい、ベルメール母さんに見せていただきました」

 

レイ養祖父さんが頷きながら話を続ける

 

「そうか、武装色の効果は主に身体能力の強化だね。そして、自然系の

 悪魔の実の能力者への数少ない攻撃手段でもある」

 

俺はレイ養祖父さんの言葉に頷く

 

転生前にあの老人に聞いたことと同じだ

 

…ん?前世のことはあまり思い出せないのに、あの空間の出来事は思い出せるな

 

どういうことだろう?

 

今考えても仕方ないか…まずはレイ養祖父さんの話を聞いて強くなることだ

 

「なにか思考していたみたいだが、こちらに集中してくれたみたいだね

 それじゃ、軽く武装色の覇気を実践してみせようか」

 

そう言って、レイ養祖父さんは石を持つと握り潰してみせた

 

…マジですか?

 

「…凄いですね」

「私が得意としているのは覇王色の覇気だが、武装色でもこのぐらいは出来るね」

 

得意な系統だったらどうなるんだ?

 

「次は見聞色の覇気を使ってみようか…だが、これは見た目ではわかりにくいので

 シュウにも少し手伝って貰おうかな」

 

そう言って、レイ養祖父さんは手拭いを顔に巻き始めた

 

「見ての通り目隠しをした。シュウはそこらに落ちている石を拾って

 好きな場所から投げてきなさい」

 

そうは言うけど…大丈夫か?

 

「遠慮はしないでいい」

「…わかりました。では、失礼します」

 

俺は念のため足音を発てずに横へと回り込み、投げる態勢になった…すると

 

「左方向から投げようとしているね。しかも、手には小石を複数握り込んで

 散弾のように撒き散らそうとしている…うん、中々いい考えだ。素人とは思えない発想だね」

 

俺がいる方向までは、気配だのなんだのでわかるとして…それ以外はなんでわかるんだ!?

 

「あぁ、そのまま投げても構わないよ、シュウ。安心しなさい、これでも元は

 《海賊王》の相棒だったのだからね」

 

レイ養祖父さんの言葉に頷き、俺は小石を投げつける

 

だが、レイ養祖父さんは一歩その場から下がるだけで避けてしまった

 

「これで少しは見聞色を理解できたかな?」

 

目隠しを外しながらレイ養祖父さんが話すが、正直なところ凄いとしかわからん

 

「見聞色を得意とする者の中で、時には相手の心の声まで聞くことが出来る者がいるという…

 もっとも、それほどの才を持つものは私も数えるほどしか知らないがね」

 

リアル悟り妖怪がいるとおっしゃるのか

 

「さて、最後は覇王色の覇気だが…大丈夫かな、シュウ?」

 

憧れのファンタジーも目の前にすると動揺して心が追いつかないんだな…

 

俺は落ち着くために両手で顔を張る

 

「…お待たせしました」

「うん、まだ若いのに見事な気持ちの落ち着けようだね。それでは覇王色を使う。

 加減はするが、しっかりと腹に力を入れておきなさい」

 

俺はレイ養祖父さんの忠告に従い、腹に力を入れた

 

すると、急に空気が重たくなったように感じた

 

「ふむ、まだ大丈夫なようだね…では、もう少し強くしてみようか」

 

無意識のうちに汗が出てくる…冷たい汗だ

 

寒くないのに震えが止まらない

 

「ほう…これは予想外だが、さすがに死線を超えただけはあるということかな?

 では、また少し強くしてみよう…頑張りなさい、シュウ」

 

重圧が更に強まり、膝が笑いだす

 

アーロンの時の覚悟と、鮫との戦いの経験が無ければ間違いなく気絶していただろう

 

俺は歯を食い縛り耐える

 

「素晴らしいね、シュウ…今回はここまでにしておこうか」

 

レイ養祖父さんの言葉と共に身体に纏わりついていた重圧が消える

 

気が抜けた俺は地面にへたりこんでしまう

 

「よく頑張ったね、シュウ。覇王色の覇気がどういったものか、体験できたかな?」

「…はい」

 

なんとか返事をするのが精一杯な程に疲労してしまっている

 

「続きは一休みしてからにしようか」

「いえ、大丈夫です」

 

レイ養祖父さんは首を横に振る

 

「休むのも修業の1つだよ…焦らなくてもいい、一歩ずつ進みなさい」

 

その言葉に、俺は地面に身体を投げ出す

 

余程疲れていたのか、目を瞑った俺はすぐに眠ってしまった

 

 

 

 

「…眠ってしまったようだね」

 

私はシュウを持ち上げ歩きだす

 

「風邪を引かせてはアカリに申し訳ないからね」

 

拠点に向かう中で先程までの事を思い出す

 

養孫の想像以上の出来の良さに思わず笑みが浮かぶ

 

見聞色の時は点ではなく面で私を狙おうとしていた

 

この発想の良さは実戦でも役に立つだろう

 

そして、覇王色の時は私の想像を超える胆力を見せてくれた

 

かつて、アカリやシャンクス達を指導した時も同じようにしたが

2人は最後の時には膝をついていた

 

もっとも、バギーは2段階目で気絶していたが…

 

あの時の2人と同じぐらいの年齢のシュウがこれを超えたのは経験もあるだろうが

何よりも、既にある種の覚悟が出来ていたのが大きいだろう

 

だが、それでもシュウが見せた意思の強さは見事なものだった

 

これからが実に楽しみだ

 

拠点にたどり着いた私はシュウを下ろし、食事の準備を始める

 

ふと目に入ったシュウの寝顔に感じたものは、とても暖かいものだった




次は13:00に投稿予定です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。