ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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予定より早く出来ましたので投稿します


第1話

夢を見ていた。とても暖かい夢だ

 

紫色の髪の美女に抱き上げられ、話しかけられている

何を言っているのかは解らないが、とても優しく嬉しそうな表情をしている

 

ふと感じるのはこの人が母親だということだ。

記憶にある母親はこんなに若くないし、美人でもなかったはずだが

俺はこの人が母親なのだと感じている

 

―――あぁ、これは夢なんだ―――

 

そんなことを微睡みながら思っていると

誰かの声らしき音が聞こえる。どうやら母親に声をかけたようだ

 

刈り上げた独特な髪形の女性がこちらに歩いてきている

この女性も凄い美人だ。制服のようなものを着ているが何の制服だろうか?

彼女の髪形に既視感があるが思い出せない…どこかで会ったのだろうか?

 

母親に抱かれているせいかとても暖かく、幸せなのだがとても眠い

もう少し考えたいことがあるのだが眠気に抗えない

 

もどかしく感じて少し身悶えするように身体を動かすと

母親があやすように軽く揺り動かしてくる

 

もどかしく感じていた心が安心に満たされていく

 

―――あぁ、今はこの暖かさに身を委ねよう―――

 

俺は眠気に身を任せ眠りにつく

 

紫色の髪の女性が赤ん坊をあやしていると、独特な髪形をした女性の声が大きく響いた

 

 

 

 

「アカリ―――!!」

「ちょっとベルメール!静かにしてよ!赤ちゃんが起きちゃうでしょ!」

「はっはっは!ごめんごめん」

「もう…大佐になったのなら少しは落ち着いたら?」

「そんなことしてたら海賊にやられちゃうわよ」

 

わたしの友人、ベルメールが快活に笑い答えてくる

 

「でも、昇進もここで打ち止めでしょうね」

「どうしてよ?」

 

快活で男勝りで強気な親友にしては珍しく弱気な発言だ

 

「六式は《剃(ソル)》を体得したし、他も手応えはあるんだけど

 あんたも使っていた覇気がちょっとね…」

「海軍本部女性士官で悪魔の実の能力を持たずに最速で

 大佐になった天才のあなたが随分と弱気ね」

「天才とかアカリに言われたくないわ。嫌味に聞こえるわよ」

 

笑顔のままベルメールが答えるが言葉に力がない…本当に少し気が落ち込んでいるようだ

 

「そんなに弱気じゃあ覇気は身に付かないわよ」

「わかってはいるんだけどね…どうにもやる気がね…」

「…《オハラ》のこと?」

「…アカリ。その事は他で言ったらダメよ」

「わかってるわよ。この子とまだ別れたくないもの」

 

少し前に小さな島が1つ海から消えた

海軍はその事を秘匿しているがわたしは昔のツテで知っている

ベルメールはその時に現場にいたことで大きなショックを受けたようだ

 

話は変わるがこの世界には貴族や天竜人といった特権階級が存在する

その貴族や天竜人が一般の人に酷いことをしても海軍の軍人は

見て見ぬ振りをしなければならない

 

わたしも昔は軍人だったけどそのことで自分の在り方に疑問が出来ていた時に

ロジャー海賊団と戦闘することになり、あいつと出会った。

それがきっかけで海軍を除隊して、そしてロジャー海賊団に入った

 

同期で親友だったベルメールと敵対することになったけど

今でも親友であることに変わりはない。

数年前にロジャー船長が処刑されてからは、あいつが海賊団を作ると言うので

それに入ったのだけど少ししてから訳があって、あいつの一味を抜けた

 

その後にこの子を妊娠していることに気付いて落ち着ける場所を探していたら

彼女が笑いながら自分の故郷のことを教えてくれて迎え入れてくれた

あの時は本当に助かった。気っ風が良くてもの凄く美人なのになんで恋人が…

 

「ちょっとアカリ?なんか変なこと考えてないでしょうね?」

「ん?ベルメールに恋人ができたらなぁと」

「自分に子供が出来たからって余計なお世話よ!」

 

抱いていたわたしの赤ちゃんがむずがる

 

「ベルメール!しー!起きちゃうでしょ!」

 

小声で叫ぶという我ながら器用なことをする。母は強いのだ

 

「あぁ、ごめん。でもね、私だってその気になれば男の1人や2人

 すぐにだってできるんだから。試しにゲンさんでも誘惑してこようかしら?」

「からかい過ぎたら可哀想よ。ゲンさん、純情そうだし」

「い~や、ゲンさんは結構好き者よ。顔を赤らめはするけど嫌がらないしね」

 

ゲンさんとは今、わたしがいる村である《ココヤシ村》の駐在さんだ

顔は強面だがとても優くていい人だ

 

強面で思い出したが、ロジャー船長が処刑される日にローグタウンで会った

あの子供らしからぬ強面をしていた男の子はどうしているのだろう?

 

「どうしたのよアカリ?」

「ん?あのね、ゲンさんの強面顔で思い出したんだけど、あの日に

 ローグタウンで会った子供はどうしているのかなって」

「あぁ、スモーカーのこと?元気に海兵をやっているわよ。

 最近、初戦闘を経験してちょっと参ってたけどね」

「そうなの?」

 

どうやらあの子は元気にしているようだ

 

「ちょっと見ていられない状態だったからね、酒で潰して連れ込んでやったわ」

「連れ込んだって…あの子、まだ15にもなってないでしょう?」

「大丈夫よ。服をひん剥いて朝まで添い寝してあげただけだから。あっはっはっは!」

「もう…男の子の純情を弄んで…」

 

ベルメールは世話焼きでもあるが時折とんでもない悪戯をしたりする

今回のようなことはこれが初めてではない…スモーカー君、御愁傷様でした

 

「あいつがいつまでもマックスのことで遠慮するからね、

 私はもう気にしてないのに」

 

マックスとはベルメールの元恋人のことだ

彼はロジャー船長の処刑の日に、処刑を止めるために襲来した

金獅子のシキとガープさん、センゴクさん達との戦いの余波から

スモーカー君を庇い亡くなったのだ…

 

「ベルメールは気にしなくなったとしてもスモーカー君にとっては

 命の恩人の元恋人なんだから、仕方ないんじゃない?」

「そういうけど、軍人なんてやってるんだから顔見知りが死ぬことなんて

 珍しくもなんともないじゃない」

「なら、少しでもスモーカー君を安心させるために新しい恋人をつくったら?」

「軍人を現役でやっている間は、もう作る気はないわよ」

 

手をヒラヒラさせながらベルメールが答えてくる

海軍軍人の家族が海賊に人質にされるという話しは珍しいものだけど

無い訳ではない。それを気にする軍人も少なくないのだ

 

「そういう訳で、私は恋人が出来ないんじゃなくて作らないのよ。

 そこのところ、間違えるんじゃないわよアカリ」

 

そう言いながらベルメールが軍服の胸ポケットから煙草を取り出す

マックスが吸っていたものと同じやつだ

 

「気にしてないって言いながらも彼と同じ煙草を吸ってるじゃない」

「これ?一度やってみたら癖になっちゃってね。手放せなくなっちゃったのよ」

 

少しおどけた様子でそう告げてくる。本当に吹っ切れているように見えるのは

やはり彼女が強い女性だからだろう

 

「健康に良くないわよ?」

「板子一枚下は地獄っていう海兵をやってるのに、いちいちそんなの気にしちゃいられないわよ」

「まったく…それはともかく赤ちゃんの前では吸わないでよ。

 ベルメールはいいとしてもこの子まで不健康になっちゃうからね」

「別にいいじゃないの、海の上だと火の始末とかで船内では好きに吸えないんだから」

 

文字通りに命に関わるので木造船では火の始末は非常に厳しい

甲板ではともかく船内では禁煙どころか灯りとなるランプ1つの

扱いにだって海軍では大きな制限がかかるのだ

 

「軍は色々と厳しいからねぇ~。その点、海賊は自由で楽しかったわよ」

「宴なんかも自由にやれるんでしょ?そこだけは素直に羨ましいわ」

「あはははは…コホッ、コホッ」

「ちょっと、大丈夫?」

 

空咳が出る、最近は落ち着いていたんだけど…

 

「う~ん…出産で体力使っちゃたからなぁ。風邪でもひいたかな?」

「ちょっと、本当に大丈夫なの?その子に移すんじゃないわよ」

「わかってるわよ」

 

大人気ないところもあるがこういったところでは本当に優しいのが彼女なのだ

わたしの自慢の親友だ

 

「《一角姫のアカリ》なんて二つ名を持つあんたがそこまで消耗するなんてね

 そんなになってまで産むほど母親になるってのはいいものなの?」

「…なってみないとわからないわよ、ベルメール」

 

そう、好きな人の子供を宿すことの嬉しさ、暖かさはなってみないとわからない

それは女の…母親の特権なのだ

 

「ところでアカリ。その子の名前は何て言うの?」

「ちょっと、ベルメール?確かあなたが戻ってくる前に手紙で伝えたはずだけど?」

「ごめん、間違ってスモーカーの件で始末書を書けっていう命令書と一緒に

 捨てちゃったわ、あっはっはっは!」

 

わたしの親友はこういったところでは大雑把なのだ。でも、こう見えて料理が上手だったりと

何気に女子力が高い。こういったギャップもベルメールの魅力の1つだ

 

「アカリ?」

「何でもないわよ」

「そう?それじゃその子の名前、教えてよ」

 

腕に抱いている我が子を見てベルメールに告げる

 

「この子の名前は《シュウ》…わたしの愛する息子、《シラカワ・シュウ》よ」

 

潮風がこの子を撫でる、ココヤシ村の潮風だ。まるで、シュウを

祝福してくれているようで嬉しくなる

 

こうして、わたしが穏やかな時間を過ごせるのもココヤシ村に誘ってくれた

ベルメールと、海賊だったことを気にせずに、笑いながらわたしを

迎え入れてくれたココヤシ村の人達のおかげだ

 

また1つ潮風が吹く…

わたしは潮風に乗せるようにココヤシ村の人達へ心の中で感謝を捧げた

 




女性の言葉遣いって難しいですね…
原作のキャラの口調も怪しいのですが…この作品の仕様ということでご勘弁を

時系列がずれているかもしれない原作の出来事もございますが
そこら辺もこの作品の仕様ということでご容赦ください

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