ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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連続投稿3話目です


第21話

「ただいま~」

 

あの日、ゲンさんにビーフシチューを試食してもらってからしばらく経ち

ベルメールさんが無事にココヤシ村に帰ってきた

 

なぜか子供を2人連れて…

 

「お帰りなさい、ベルメールさん」

「お帰り、ベルメール…ところで、その子供達は?」

 

俺と一緒に出迎えたゲンさんがベルメールさんに一緒にいた子供達の事を聞いた

 

それを聞いたベルメールさんは満面の笑みで答えた

 

「拾ってきたわ」

 

ベルメールさんの言葉に俺とゲンさんは顔を見合わせる

 

拾ってきたって…

 

「あっはっはっは!2人とも、なによその顔」

「笑い事じゃないだろ、ベルメール」

 

俺達の反応に笑いだしたベルメールさんに、ゲンさんは真剣な顔で返す

 

「それで、その子達をどうするつもりなんだ、ベルメール?」

「どうするって、うちの子にするのよ」

 

ベルメールさんの言葉にゲンさんが目を見開く

 

「うちの子にする…?」

「そうよ、私がこの子達の母親になるわ!」

 

そう満面の笑顔でベルメールさんは宣言する

 

アカリママが亡くなってから、どこか沈んでいたように見えたベルメールさんだが

どうやら、あの子達のおかげで元気を取り戻したようだ

 

うちの子にする宣言には驚いたけど、なんともベルメールさんらしいと思う

 

あの笑顔を取り戻してくれた、あの子達に感謝だ。ありがとう

 

しかし、どこかで見たことがある子達だな…

 

アカリママと勉強して、この世界の知識を得てからは前世の記憶が

かなり曖昧になってしまっているからな…

 

おそらく、この既視感はそのせいなんだろうな

 

ココヤシ村、ゲンさん、ベルメールさん、そしてこの子達に感じた既視感…

 

これが、何を意味しているのかはわからない…

 

そもそも、俺は前世の記憶と経験がある以外は凡人なんだ

なら、出来る範囲で…わかる範囲でやっていくしかない

 

とりあえず、今はベルメールさんに笑顔が戻ったことを喜ぼう

 

お帰りなさい、ベルメールさん

 

 

 

 

「そうよ、私がこの子達の母親になるわ!」

 

あの日、村が焼けたことで親を亡くしたこの子達を引き取ることを決意し

私の故郷であるココヤシ村に連れて帰ってきた

 

部下達には反対されたけど、私も引かなかった

 

あの村が焼けたことは私の責任じゃないと、何度も説得されたけど

私は、私の心を救ってくれたこの子達に恩返しをしたい

 

「無理だベルメール!」

「何が無理なのよ、ゲンさん」

 

なんとなく、ゲンさんには反対されるだろうと予想していたから

ゲンさんのこの反応には驚かない

 

シュウは…手を顎に当てて何か考え込んでいるみたいね

 

「子育てはそんな簡単なものじゃない!誰もが、シュウのように

 手のかからない子というわけじゃないんだぞ!」

「わかっているわよ、そのくらい」

 

私は子供を産んだことはないけど、それでもシュウが特別だというのはわかる

 

アカリが散々、天才だって自慢していたものね

 

「ならば、無理だとわかるはずだ!」

 

ゲンさんが唾を飛ばしながら私に訴えてくる

 

ゲンさんの言うことも理解はできるけど、私の頭には

あの時のアカリの言葉が響いている

 

―――なってみないとわからないわよ、ベルメール―――

 

うん、そうよね、アカリ…

 

私はしっかりとゲンさんを見て、言葉を告げた

 

「なってみないとわからないわよ、ゲンさん」

 

 

 

 

「なってみないとわからないわよ、ゲンさん」

 

ベルメールさんのこの言葉に、アカリママの姿を幻視した

 

アカリママも俺をお腹に宿した時、そう言ったのだろうか…

 

でも、ベルメールさんのように暖かさを感じる笑顔で

言っていたんだろうと思う

 

さてと、あの子達を迎えるとして、何が必要なのかを考えなければな

 

これでも、元は三十路を過ぎた社会人だったんだ

 

ある程度は生活に必要な知識はある

 

なら、その知識をこの世界のものに置き換える感じで

曖昧になった前世の記憶から搾りださないとな

 

もしかしたら、子供らしからぬ知識を持っているからと

よく思われないかもしれないが、それがどうした!

 

自由に生きると決めたんだ、約束したんだ!自重なんてしてられるか!

 

それに、ベルメールさんやゲンさんなら受け入れてくれると

信頼している、不安なんてこれっぽっちもないさ!

 

俺は思考を巡らしていく、ベルメールさんの為に、あの子達の為に

 

そして、これから一緒に暮らしていく家族の為に…

 

 

 

 

「なってみないとわからないわよ、ゲンさん」

 

私の言葉にゲンさんは陸に挙げられた魚みたいに口をパクパクさせている

 

そんなに驚くような言葉だったかしら?

 

「あ、う、シュウは、シュウはどう思う、無理だと思うだろう?」

 

ゲンさん…子供に助けを求めてどうするのよ

 

その言葉に反応したのか、シュウは考え込むのをやめてこちらを向く

 

「そうですね、まずはその子達の名前を教えていただきたいですね」

「えっと…シュウ?」

「これから一緒に暮らしていく家族なのですから

 名前を知ろうとするのは当然ではありませんか?ゲンさん」

 

その答えに慌てる様子のゲンさんに、シュウは言葉を続ける

 

「それに、アカリママもそうでしたが、こうなればベルメールさんも

 意思を曲げないのではないでしょうか?」

 

さすがシュウね、ゲンさんよりも私の事をわかっているわ

 

「だが、ベルメールは海軍の仕事で村を離れるのだぞ。その赤ん坊は

 まだ乳飲み子だろう?誰が世話をする?」

「それは、ちゃんと考えてきたわよ」

 

私の言葉に2人がこちらを向く

 

「私、海軍を辞めるわ!」

 

その一言に、ゲンさんとシュウがまた顔を見合わせる

 

私がいない間に随分と仲良くなったものね

 

また笑いがこみあげてきた

 

それに釣られたのか、私の腕の中の赤ん坊も笑った

私のズボンを掴んでいる女の子も笑顔だ

 

それを見たゲンさんが諦めたように項垂れていた




これで今週の連続投稿は終わりです

また来週お会いしましょう^^

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