ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日の連続投稿2話目です


第20話

あの後、しばらく話し込んでいた私達の所に私の部下が来たので

シャンクス達との会話は終わりとなった

 

私の制服がかなりボロボロになっていながら

無傷な私を見て部隊の軍医が驚いていたのだけど

友人の悪魔の実の能力で治ったというと納得していた

 

そして、今は燃えていた村の消火も一段落したため

赤髪海賊団が村を去り海に出るということで見送りにきていた

 

「わざわざ見送りすまないな、ベルメール」

「村だけでなく、私の命も救ってもらったからね」

 

お互いの立場もあるので総出で見送りとはいかない

その為、海軍は私、あちらはシャンクスとベックマンが

代表として最後の話し合いをしている

 

「それに物資まで分けてもらって助かった」

「さすがに燃えた村から出させるわけにはいかないからね」

 

書類上では燃えた村に支援したとなるがそこは建前上仕方ない

 

「それで、この後はどこに向かうの?」

「それを聞いてどうする?」

 

私の言葉にベックマンが反応する

 

シャンクスだと無条件で答えてしまうと思ったのでしょうね

 

「近海にいる海軍がこの村への支援物資を海賊との戦いで

 失わないように、その動向を知っておこうと思ってね」

 

もちろん、これは建前であり、恩人である彼等を一時的でも見逃すためだ

 

「そうか…」

 

そう呟いたベックマンはシャンクスに目配せをする

それを受けたシャンクスが私の質問に答えた

 

「俺達はワノ国に行く」

「ワノ国?アカリの故郷に何をしにいくのよ」

 

私の言葉にシャンクスは少し照れながら話す

 

「俺の息子に会いに行くんだ」

 

シャンクスの息子…って

 

「それってシュウのことかしら?」

「知っているのか!?」

「アカリを送っていったのは私よ」

 

目を見開き驚くシャンクスに私は笑いながら答える

 

ワノ国か…アカリはこのことを予測していたのね

 

アカリに手紙を預かった時に、もしも任務でシャンクスに出会ったならと

遺言を預かっていた…それを告げるなら、今しかないわね

 

「シャンクス、シュウはワノ国にいないわよ」

 

 

 

 

「シャンクス、シュウはワノ国にいないわよ」

 

ベルメールの言葉に思考が止まる

 

俺の息子が…シュウがいない?ならどこに…

 

「シュウを探すのなら東の海を探しなさい」

 

東の海…シュウはそこにいるのか

 

「ベルメール、アカリを送っていったあんたなら

 シュウの居場所を知っているんじゃないか?」

 

ベックマンがベルメールにそう問いただす

 

そうか、確かに彼女なら…

 

「その事で、アカリから遺言を預かっているわ」

「アカリから?」

 

アカリの名前が出たことで、俺は反射的に応えてしまう

 

「そうよ、アカリはこう言っていたわ、

『ヒントはあげたんだから、後は海賊らしく《宝》は自分で見つけなさい』ってね」

 

「「あっはっはっは!」」

 

彼女の物言いに俺とベックマンは笑ってしまった

 

あぁ、アカリならそう言うだろうな

 

「なんとも、アカリらしい遺言だなベックマン」

「あぁ、そうだなシャンクス」

 

顔を見合わせた俺達はまた笑いだす

 

アカリの言う通りだ、俺達は海賊だ。なら、宝は恵んでもらうんじゃない

冒険の果てに自分達で見つけだすものだ!

 

人助けなんてしたものだから、どこか調子が狂っていたのかもしれない

 

俺達は正義の味方なんかじゃない…自由に生きる海賊なんだ!

 

「アカリの言葉を伝えてくれて礼を言うよ、ベルメール」

「別にいいわよ、シャンクス。それじゃ、航海の無事を祈るわ」

 

そう言って彼女が敬礼をすると、それに倣い彼女の部下達も俺達に敬礼をする

 

「進路変更だベックマン!目指すは東の海!俺の《宝》を見つけ出すぞ!」

「あいよ、船長(キャプテン)」

 

ベックマンの言葉と共に赤髪海賊団の仲間達が一斉に出航準備に入る

 

頼りになる…自慢の仲間達だ

 

「出航だ―――!!」

 

俺の号令で船は動きだす

 

俺の《宝》よ、シュウよ、必ず見つけ出すからな!

 

 

 

 

「…行ったわね」

 

シャンクス達、赤髪海賊団の船が島を離れていく

さてと、私達は村の後始末をしないとね

 

「…はぁ」

 

ため息が出てしまう

 

海軍として仕事をしようとするが、どうにもやる気がでない

 

左腕を見る

 

アカリの能力のおかげで、傷1つなく治っているけれど

ティーチに踏み砕かれた痛みの記憶は色濃く残っている

 

身体が震える

 

少し違えば死んでいたかもれないという思いが頭を占める

 

こういったことは初めてではないけれど…心を奮い起たすものが見つからない

 

一緒に生きよう、戦おうと思った恋人、マックスはもういない…

 

一緒に頑張ろう、置いていかれたくないと思った親友、アカリもいない

 

元々、ココヤシ村を出たのも、小さいころは色々とヤンチャをしていて

それを見たゲンさんが、私に海軍を勧めたのが切っ掛けだ

 

もう、10年以上いるのでそれなりに愛着はあるけれど…

続ける理由が、戦う理由がない

 

心が沈んでいく…顔を上げられない

 

「…泣き声?」

 

沈んでいた私の耳に泣き声が…赤ん坊の泣き声が聞こえた

 

顔をそちらに向けると水色の髪の女の子が、その小さな腕で

赤ん坊を抱き上げていた

 

私は赤ん坊の泣き声に引き寄せられるように近づいていく

 

覗きこむようにして赤ん坊を見た…オレンジ色の髪の赤ん坊だ

 

「…キャハハ♪」

 

先程まで泣いていた赤ん坊が笑った

 

まるで、太陽のように明るい笑顔だ

 

「おねぇちゃん、だいじょ―ぶ?」

 

水色の髪の女の子が、まだ辿々しい言葉で私に声をかけてきた

 

「…大丈夫って、何のことかしら?」

「おねぇちゃん、ないてるよ?」

 

泣いている?

 

頬に触れると手が濡れる…私は涙を流していた

 

なぜ?

 

嬉しかったからだ、暖かかったからだ

 

あの赤ん坊の笑顔が…

 

この日、私は1人の海賊に命を助けられ、1人の赤ん坊に心を救われた

 

10年以上、海兵として生きてきた私が、新たな生き方を決意する運命の日だった




17:00にもう1話投稿します

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