side:ライト
たしぎを女として意識する様になったのはいつ頃だっただろうな?
海軍で初めてあいつと会った時、年上のあいつは当時の俺がまだガキだった事もあって、弟みたいな感じで接してきやがった。
それがムカついたから一言言ったんだが、あいつは変わらずに俺と接し続けてきた。
だから俺は意趣返しとしてあいつを女としてではなく同僚の一人として扱った。
でもそんな日々もある日を境に変わった。
あれは初めて一億ベリー超えの海賊の一団を討伐しに行った時だ。
あの戦いの時に俺は海賊の攻撃からたしぎを庇って海に落ちたんだ。
俺は悪魔の実の能力者だから海に沈んでいった。
乱戦の最中だったから海に落ちた奴を助けにいける余裕があるわけない。
それに船上から鉛弾の雨が降ってくる可能性だってある。
そんな危険な状況だったってのに、たしぎの奴は俺を助ける為に海に飛び込んできやがった。
最初は『せっかく助けたのに何を考えてんだこのバカ!』なんて思ったりしたが、そんな考えは直ぐに吹き飛んじまった。
何故かって?
海面に浮かびあがったらあいつがさ…。
「あっ!?人工呼吸を!」
なんて言って思いっきりキスしてきやがったからさ。
海に落ちて直ぐだったからまだ意識はあった。
だからあれは人工呼吸だってわかってるぜ?
でもよ…前世も含めて初めて女の子とキスしたからさ…。
あれだ、うん…こんなの意識しないでいられるわけねぇだろうが!
それからだ。
なんだかんだ理由をつけて、たしぎをデートに誘う様になったのは…。
助けてもらった礼だって言って誘ったり、手合わせで勝ったから飯を奢れって言って誘ったり、休みで暇だからつきあえって言って誘ったり…。
転生したばかりの頃はハーレムだなんだと考えていた俺が、気が付けばたしぎにベタ惚れさ。
ボーイッシュな顔立ちに女らしい身体付きは魅力的だし、刀バカなところだって表向きは呆れた様な事を言っているが可愛いもんだ。
いつかは結婚…いや、先ずは恋人になりてぇって考えていたんだ。
いたんだよ…シュウとナミの結婚式で酔い潰れちまったこの時までは…。
なんで目が覚めたらたしぎと一緒に裸で寝てるんだよぉぉぉぉおおお!?
直ぐ近くでたしぎの寝息が聞こえる。
ヤバイヤバイヤバイ!
と、とにかくベッドから出て服を着よう!
そう思って背を向けたその時…。
「う…ん。」
たしぎに背中から抱きつかれた。
わぁぁぁぁああああ!?なんか背中にやーらかいものがぁぁぁああああ!?
俺が抱き枕と言わんばかりに更に強く抱き締められる。
待って!ギア3してるから!ギア3しちゃってるからぁあああああ!
「…あれ?ライトくん?」
俺の心の叫びが聞こえたのか、たしぎが目を覚ました。
「め、目が覚めたかたしぎ?と、とりあえず離れ…って、なんでもっと強く抱きつくんだよぉおお!?」
頭まで俺の背中に預けられて、もうどうしていいかわかんねぇよ!
「ちょっ!たしぎ!離れろ!」
「嫌です。」
「なんでだぁぁぁあああ!?」
わけがわかんねぇよ!どうしたらいいんだよ!?
「ライトくんが恋人になってくれるまで離れません。」
…えっ?
「えっと、それはその…責任を取れとかそういうのか?」
「…ナミに言われてそうしようかと思いましたが、やっぱり初めてはちゃんとしたいなって思ったので、その…まだしていません。」
そ、そうか、よかった…。
「あっ?じゃあ、なんで俺に恋人になれなんて…?」
「…言わないとわかりませんか?」
…マジで?
「えっと…俺でいいのか?」
「…ライトくんがいいんです。」
ここで何もしなかったら男じゃねぇよなぁ…。
「なぁ、たしぎ。」
「はい。」
「俺はお前が好きだ。」
「はい。」
「だから…。」
そこで言葉がつまっちまう。
くそっ!
たしぎにあそこまで言わせたんだ!
あと少し頑張れよ、俺!
「だから、俺の恋人になってくれ!」
「…はい!」
大きな返事と共にたしぎがギュッと抱きついてくる。
「おいっ、ちょっ、たしぎ!当たってる!当たってるって!」
「当ててるんです。」
「待って!まだ出来てねぇから!まだそこまで心の準備出来てねぇからぁぁぁああああ!」
こうして俺とたしぎは恋人になった。
きっかけはあれだが、なんというか俺達らしいと思う。
その後、なんとか無事にベッドを抜け出て服を着ると、恋人のたしぎと一緒に飯を食う。
そして外に出るとそこには皆がいて、たしぎがピースサインを作ると皆から祝福の声が上がったのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
拙作をお楽しみいただきありがとうございます。