ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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第9話

「どうやら無事みたいだねお嬢さん。シャンクス、バギー、お前たち2人が言い付けを

 破ったことは彼女を助けたことで今回は免除としよう」

 

眼鏡を掛けた壮年の男性がそう言うものの、シャンクスとバギーと呼ばれた少年2人は

頭に見事なタンコブができており、しかも正座をさせられている。

こういった事は海軍とあまり変わらないみたいね

 

「はい、助けていただきありがとうございます」

「うん、礼儀もしっかりとしているようだね。こいつらにも見習わせたいところだ」

 

少年2人は素知らぬ振りをしている。まぁこのぐらいの年齢なら仕方ないわよね

 

「自己紹介がまだだったね、私はシルバーズ・レイリーという。そちらの赤髪が

 シャンクスで、もう1人がバギーだ」

「ご丁寧にありがとうございます、わたしはシラカワ・アカリです」

 

わたしが名前を言うとレイリーさんは顎に手を持っていき、少し考えるようにして話してきた

 

「その腰の物とシラカワの姓から察するに、ワノ国にあるシラカワ流の関係者かな?」

「はい、よくご存知ですね。ワノ国は鎖国していてあまり外には知られてないのに…」

「私も剣士の端くれだからね、それにワノ国の事で少々調べたことがあるんだよ」

 

調べたこと?鎖国をしているから入港出来る場所でも調べたのかしら?

 

「さて、アカリお嬢さんをすぐにガープの元に帰してあげたいところなのだが…

 我々海賊と海軍は敵対している間柄なのでね、互いの安全のために少々面倒な手順を

 踏んで取り引きをしなければならないんだ。もちろん、その間の君の身の安全は

 私が責任を持って保証しよう」

「面倒な手順ですか?」

「一言で言うならば、政治的な証明のために必要な形式的取り引きだね。我々海賊との

 取り引きで非合法な事をしていないと証明するために必要な行動なのだよ」

 

なんというか…

 

「部下を…仲間を引き取るのにそんなことをしないといけないんですか?」

「ふふふ、馬鹿馬鹿しく感じるかもしれないが、正義を自称する組織故に相応に

 世間に配慮しなければならないのだよ」

 

この2年程で海軍のことをそれなりに理解できたと思ってきたのだけど…

シャボンディ諸島の事も含めて、合わないと感じてきているわたしがいる

 

「まぁ、しばらくゆっくりとしていてくれれば、それでいい」

「はい、それではしばらくお世話になりますね」

「では、シャンクス、バギー、2人に彼女の世話を命じる。私は海軍とのやり取りを

 しなければならないからね。ロジャーに任せては日が暮れてしまう」

 

そう言うとレイリーさんは歩いて行ってしまった。それを見送った後に

シャンクスとバギーの2人が話し出した

 

「おいシャンクス、その女はてめぇが拾ったんだからてめぇが世話をしろよ」

「それはわかってる。でも、手伝ってくれよバギー」

「やなこった、まだ甲板の掃除が残ってるんだよ」

 

そう言うとバギーという少年は手をヒラヒラと振りながら行ってしまった…

レイリーさんに命じられていたはずなのだけど、いいのかしら?

 

「あー…なんだ、その、水でも飲むか?」

 

頭を掻きながら困ったように言う彼の仕草が面白くて思わず笑ってしまう。

彼に水をお願いして、わたしはゆっくりとすることにした

 

 

 

 

「ふ~ん、それでシャンクスはロジャー海賊団に入ったのね」

 

彼女に飲み物を持ってきてから俺達は世間話をしている。

歳が近いということで今ではお互い名前呼びになっている…海軍だから堅苦しい奴かもと

思っていたけど俺の思い込みだったようだ。

 

「今は見習いとして副船長のレイリーさんに剣とかを教えてもらっている」

「サーベルでの剣技かぁ~、わたしは直剣だから一度見てみたいわね」

「なら、見てみるか?」

「流石に海軍との話し合い中に剣を振り回すのはダメなんじゃない?

 レイリーさんに怒られるわよ?」

 

確かに怒られるかもしれないな…しかし、海賊の船にいるっていうに物怖じしないなアカリは

 

「俺の事を話したんだ。今度はアカリの事を教えてくれよ」

「あら、お姉さんのことが知りたいの?まだ子供なのにませてるわね」

「まだ子供って3つしか違わないだろ」

「ふふふ、まぁいいわ。それじゃ教えてあげるわね♪」

 

アカリは俺の事を子供扱いしてからかってくるから少し苦手だ…

でも、彼女の笑顔は悪くないと思っている俺がいる…なんだろうなこの感じは

 

そして、アカリが過去の事を話し出した

 

4つのころから見聞色の覇気を使い、家で剣を教えてもらっていたようだ。

7つのころには近海の海賊と戦い二つ名をもらっている…とんでもない女の子だ

 

8つのころには見合い話しがきていたらしい…これはなんか面白くないな…

そして、見合いを断って家を追い出されてからは医者の真似事をして暮らしていたらしい

 

そして9つの時にアカリの診療所にガープがきて海軍に誘われたのが

海兵になった切っ掛けだと話した

 

それからは親友だというベルメールという人の話しが中心になってきた

 

曰く、初めての手合わせでは完敗した

曰く、見聞色の覇気でも読めない動きをしてくる

曰く、恋人とのイチャイチャを見せつけられて妬ましい

 

そんな事を表情豊かに話していたアカリが不意に顔を曇らせた。

そんな彼女が話し出したのはシャボンディ諸島の事だ

 

副船長から聞いていたことだがあの島では色々と気にくわないことがあるようだ

その事を見逃がさないといけない今の自分の在り方に悩みがあると言っている

 

こんな時、副船長ならスパッと悩みに答えてくれるんだろうけど、

俺はそこまで頭がよくないから答えられない…

 

それでも、あんなに綺麗な笑顔ができるアカリがこんな顔をするのは間違っていると思う。

そう思ったら、俺は自然とアカリに向けて話していた

 

「アカリ、お前も海賊にならないか?」

 

 

 

 

あれから7日、わたしは海軍本部のマリンフォードに戻ってきたのだけど、

シャンクスに言われた一言がずっと頭に残っている…

 

『アカリ、お前も海賊にならないか?』

 

ガープさんに誘われ、家族に送り出されて海軍に入って2年…

仕事そのものは危険なものだけど収入は安定しているし、世間体がいい職業だ

 

でも、やる気はどうかというと正直なところ無くなっている…

親友のベルメールもいるしこのまま惰性で続けるのもいいかと思うけど…

 

気持ちは揺れている。違う。気持ちはもう海賊に向いてしまっている

 

「また随分と暗い顔をしているわねアカリ」

「ベルメール…」

 

そうだ…海賊になったらベルメールとも戦うことに…

 

「で、今度は何を悩んでいたのかしら?」

 

 

 

 

「なるほどね、海賊になりたい、でも故郷の家族やお世話になったガープ中将、

 ついでに私の事も気になって決心できないということね」

 

アカリがロジャー海賊団に助けられ、その時に勧誘されたことでアカリの心は

海軍から離れちゃったみたいね…まったく、世話が焼けるんだから

 

「海賊になればいいじゃない」

「でも…」

「でも、じゃないわよ。やらずに後悔するのなら、やってから後悔しなさい」

 

ずっと俯いていたアカリが顔をあげた…あと一息ってとこかしら

 

「それに、シャンクスっていう子に口説かれたんでしょ?」

「口説かれたんじゃなくて海賊に誘われたのよ」

「似たようなものじゃない」

 

そうして顔を見合わせた私達はどちらともなく笑いだした。

うん、調子が出てきたみたいね

 

「はぁ…なんか悩んでるのが馬鹿馬鹿しくなってきたわ」

「それでいいのよ。それにそんなに悩んでいると、また海に落ちるわよ?」

「う~ん、それはもうイヤね」

「今度は愛しの王子様が助けてくれないかもしれないものね」

「シャンクスとはまだそういうのじゃないわよ!」

「まだ~?」

「もう!そんなにからかわないでよベルメール!」

 

最近のアカリはあまり笑わなくなってしまっていたけど、やっぱりこうでなくっちゃね

 

「さてと、そうと決まったらアカリは辞表を書いてガープ中将に提出してきなさい。

 私はアカリの荷物をまとめておいてあげるわ」

「ありがとうベルメール」

「いいのよこれぐらい」

 

さてと、親友の船出を祝うのにマックスを巻き込まないとね。先日、大尉に昇進して

自分の船を貰えたとか言っていたからちょうどいいわ

 

「ベルメール、わたし海賊になってもあなたと戦いたくないわ」

「私も戦いたくないわね、落ち込んでいた時なら勝てたんでしょうけど、

 今のアカリには負けそうだわ」

「それと…」

「なによアカリ?」

「ガープさんと敵として会ったら、すっ飛んで逃げるわ」

「あっはっはっは!」

 

こうして私達はようやくいつも通りに笑いあうことができるようになった。

本当に世話が焼けるんだから…いってらっしゃい、アカリ

 

 

 

 

「やあ、14日ぶりだねアカリ。それで、こんなところに何をしにきたのかな?」

 

わたしはベルメールとマックスに、ロジャー海賊団がいるという島に送ってもらった

2人はそのまま有給休暇でデートするらしい。付き合わされる船員が哀れね…妬ましい

 

「お久しぶりです、レイリーさん」

 

心が昂るままに、わたしは声をあげる

 

「わたしを、ロジャー海賊団に入れてください!」

 

こうしてわたしは悪名高いロジャー海賊団の一員になった。

でも、わたしの心は前世も合わせて一番、高鳴っていた




ご一読いただき、ありがとうございます

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