ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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第97話

「…っ!?クソジジイ!」

 

高速で飛来した何かがバラティエに直撃し、轟音と衝撃をもたらしてから直ぐに

金髪の青年が走り出した

 

「…聞こえた音から察するに大砲の弾だと思うけど、大丈夫かしら?」

 

ベルメールさんが元海軍軍人らしく、落ちついた様子で言葉を発する

 

「えぇ、上部で音がしたので沈む事はないでしょう」

「そうね、じゃあ続きを楽しもうか♪」

 

女は度胸とでも言うように、ベルメールさんはグイッとワインを飲み干す

 

そんなベルメールさんを見たノジコとナミは、肩を竦めてから同じようにワインを飲み干した

 

ドタバタとバラティエのコック達が店内を動き回っているが、我関せずとばかりに

私達はワインの味を堪能していく

 

そうしてしばらく飲んでいると、頭に包帯を巻いた老人と金髪の青年が私達の所にやってきた

 

「あんたがあのワインを店に卸してくれるんだって?」

「えぇ…それより怪我の方は大丈夫でしょうか?」

「この程度でどうにかなるほど海のコックは柔じゃねぇさ」

 

大きなコック帽を被った老人は、ニヤリと不敵に笑う

 

「お客人方!迷惑をかけちまったな!詫びに店から一品奢らせてもらうぜ!」

 

老人の言葉に店内にいた客達から拍手が起こる

 

だが、手にゴテゴテと宝石をつけた男が立ち上がり怒鳴り声をあげた

 

「この店では埃が入ったスープをそのままにその程度の詫びしかないのか!」

「あ?それはクソすいませんでしたねお客様」

 

怒鳴る男に金髪の青年が対応するが、その言葉遣いは謝罪というよりも

喧嘩は買うとでもいうようなものだ

 

「客に向かってなんだその態度は!」

 

ドンッ!

 

男が拳をテーブルに叩きつける

 

すると、叩きつけた衝撃でテーブルの上の料理が床に落ちた

 

金髪の青年が落ちた料理を見つめている

 

「詫びに膝をついて頭を下げろ…そして店で一番上等な…」

 

男の言葉が金髪の青年の蹴りで遮られる

 

「食い物を粗末にしてんじゃねぇよ、クソ野郎!」

 

腹を蹴られた男が床に膝をつきそうになるのを堪えて拳を振るう

 

だが、あっさりと回避され今度は顔を蹴られる

 

金髪の青年は崩れ行く男の胸ぐらを掴んで引き寄せる

 

「海の上でコックに逆らうんじゃねぇ!」

 

そう言った金髪の青年は、男を店の外へと叩き出す

 

それを見ていた店内の客達は喝采の声をあげた

 

「悪いな客人、この程度はうちの店じゃあ日常茶飯事なんでな」

 

老人は客を叩き出した青年を咎める様子を見せない

 

そして、店内の客達もまるで見世物が終わったかのように食事を再開していた

 

「それで、例のワインなんだが…1樽これでどうだ?」

 

そう言って老人が指を一本立てる

 

周りにいる客に配慮して、百万ベリーの値段を指で示したのだ

 

「安過ぎますね」

 

そう言って私は指を五本立てる

 

「それじゃうちの大損だ」

 

老人が指を二本立てる

 

私は無言で指を四本立てると老人が指を三本立てた

 

「交渉成立ですね」

 

本来ならこの値段はあり得ないものだが、この世界ではワインは腐りにくい事で

水以上に常飲されるので安く、このぐらいでも利益が出るのだ

 

「サンジ!この客人を倉庫まで案内しろ!」

 

サンジと呼ばれた金髪の青年がこちらに歩いてくる

 

「あ?クソジジイが命令してんじゃねえよ」

「それと、あの見習いも適当にこきつかっておけ」

 

そう言って老人は店の奥へと歩き始める

 

「サンジ、そこの客人達に振る舞う例のワインに合わせる料理…任せるぞ」

 

背中を向けたまま言い放つ老人の言葉にサンジが驚く

 

だが、次の瞬間には不敵に笑った

 

「上等だ…クソジジイはのんびりと静養してやがれ」

「ふんっ!」

 

老人は1つ鼻を鳴らすと足早に去っていった

 

「そういう訳で悪いが、あんたにはちょいとご足労願うぜ」

「わかりました」

 

私は席を立ってサンジについていく

 

「ワインを倉庫に置いたらすぐにクソうめぇ料理を作ってやる」

「ククク、楽しみにしておきましょう」

 

紫煙を吐き出しながら歩いていくサンジについていきワインを倉庫に置く

 

そして席に戻って行くと、そこには見覚えのある麦わら帽子を被った男がいた

 

「ん?ようシュウ、元気だったか?」

 

 

 

 

「なるほど、それで借金を返すためにバラティエで働くわけですか」

 

なぜかエプロンをつけたルフィと再会したので理由を聞いてみたのだが、

自業自得としか言えないものだった

 

ルフィ達はシロップ村を出航した後、ウソップが四苦八苦しながら本で航海術を学び

なんとか航行していたようだ

 

その途中でゴーイングメリー号の大砲を試し撃ちすると、大砲の目標にした

岩場で休んでいたゾロの知り合いを巻き込んでしまったらしい

 

その巻き込んだ相手の1人が、原因不明の病だったので取り合えず栄養を

とらせようと、比較的近くにあったバラティエに進路を変更したそうだ

 

ゴーイングメリー号がバラティエの近くまで来ると、海軍の船と遭遇して戦闘になったのだが、

その戦闘でルフィが大砲を使うと、目標を外して別の場所に着弾してしまったらしい

 

その着弾したのがこのバラティエだったようで、店の修理費と先程の老人、オーナーのゼフの

治療費を払う事を要求されたのだが、金が無かったのでルフィが働いて返す事になったそうだ

 

「博士!相棒を助けていただきありがとうございやした!」

 

そう言って賞金稼ぎのジョニーが、土下座をして床に頭をつける

 

「礼ならばライムの絞り汁を用意してくれたバラティエの方に言って下さい」

 

ジョニーの相棒であるヨサクは原因不明の病ではなく、壊血病になっていたので

ビタミンの補給が必要だった

 

なのでそれを店に伝えてライムの絞り汁を飲ませたのだ

 

「あんた達…海に出るならそのぐらいの知識は最低限必要なのよ」

 

ナミが呆れながらそう言うが、隣のテーブルで食事をしているゾロとウソップは

聞く耳を持つ様子は無い

 

「じゃあ次に仲間にするのはコックだな」

 

ルフィがウソップとゾロの料理を盗み食いしながらそう言う

 

「てめぇ、なにサボってんだコラァ!」

 

私達のテーブルに、サンジが料理を運びながらルフィを注意する

 

「…どうだ?」

 

私達がテーブルに置かれた料理を口にすると、サンジが私達に問いかけてくる

 

「うん、美味しいわね」

「そうね、初めて食べるけど凄く美味しいわ」

 

ベルメールさんとノジコの言葉に、サンジはホッと一息つく

 

「本当に美味しい。でも、わたしはシュウが作ってくれるビーフシチューの方が好きだわ」

「ビーフシチュー?」

 

ナミの言葉に反応してサンジが私の方を見てくる

 

サンジに答えようとしたその時

 

バンッ!

 

店のドアが勢いよく開け放たれ、痩せ衰えた男が姿を見せる

 

足早に店内に入ってきたその男は、椅子に座ると両足をテーブルの上に投げ出したのだった




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