ちょっと半月ほど大阪にいました。
あと今回は短いです。
それではどうぞ。
病院
「・・・ぅ・・?」
キラは不思議な感覚により目を覚ました。最初に見たのは白い天井だった。
「あ、目を覚ましたんだね!」
突如横から声が聞こえて来たので、キラは横に顔を向けた。そこには、紫色の髪に白いヘアバンドをつけた少女と、これまた紫色の髪をした妙齢の女性が立っていた。しかも良く見たらメイド服なのだ。
「ここ・・・は?」
「ここは病院でございます。貴方様が傷だらけで倒れていたところ、すずかお嬢様が見つけられたのです」
「・・そう・・・ですか。ありがとう・・・」
なにがどうなっているのか困惑しながらも、キラは目の前の二人にお礼を言った。
「それで、貴方はどうして傷だらけだったの?」
少し間をおいて、少女が尋ねてきた。
「それは・・・!?」
その問いにどう答えようかと思った瞬間、キラは今までのことをすべて思い出した。
「ぼくは・・・僕は・・・・」
いろんなことを思い出していくにつれ、キラの瞳から沢山の涙が溢れ出てきた。
『キラ』
「ぁああ・・・うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!」
「「!?」」
そしてフレイのことを思い出した瞬間、キラは我慢の限界になりそのまま泣き叫んだ。
その光景を、彼女達は泣きやむまで見ていることしかできなかった。
――――――――――――――――――――
「・・・落ち着きましたか?」
「・・・はい、すみません」
「ううん、私もノエルも大丈夫だよ」
しばらく泣いた後、キラは彼女達に謝罪をしたが、彼女達から大丈夫と言われて少し安心した。
「話を戻しますが、貴方様の様な小さなお方が、何故あのような場所に?」
「それに、貴方が着ていた宇宙服もぶかぶかだったし・・・」
「え?」
二人からの質問にキラは疑問符を浮かべた。
小さい?僕が?
宇宙服は多分パイロットスーツのはずだけど、ぶかぶかって?
そういえば先ほどから妙に視界が下にある感覚が・・・?
そのときキラは、近くにあった鏡に視線を向け、自分の身体にある違和感の理由に理解したと同時にわからなくなった。
その鏡に映っているのは、紛れもなく小さくなった自分なのだから。
――――――――――――――――
「おはようキラ君」
「おはようすずかちゃん、ノエルさんにファリンさんも」
「おはようございますキラ様」
「おはようございます♪」
あれから三日後、キラはパソコンを貸してもらいこの世界のことを調べた。先ず驚いたのはパソコンのスペックの低さだった。コズミック・イラではコーディネーターが居るため、パソコンのスペックも高くできている。そしてこの世界がキラ達の世界とは完全に違かったこと。
この世界には、『ホビーバトル』というフィギュアやプラモデルを使ったバトルシステムがあり、世界中で大ヒットしているのだ。最初こそは信じられなかったキラだが、ほっぺを抓ったり、テレビを見たりして現実だということに納得した。
「それにしても本当に凄いねキラ君。お姉ちゃんよりもタイピングが速い」
「う、うん」
すずかはキラが自分の姉である月村忍よりもタイピングが速いことに感心していた。
因みにキラは記憶喪失ということで、自分が別の世界から来たと言うことは皆には隠している。本当のことを言って話しをややこしくするのもあれなので、記憶喪失として隠したほうが得策だと思ったのだ。
「キラ様、記憶の方はいかがでしょうか?」
「はい・・・まだ思い出せません」
「そうですか・・・」
キラのことばにファリンが残念がったが、なぜ彼女が残念がるのかがわからずキラは苦笑いした。
「それで、キラ君はこれからどうするの?」
「・・・僕もわからないんだ。先生からは孤児院とかを紹介してくれたけど、どうすればいいのか・・・」
この世界にキラの知人はいない。それはそうだ、キラは異世界から来た存在なのだから。
そう・・・今のキラは一人なのだ。
今にも泣き出しそうなキラの姿を見たすずかは、余りにも見ていられなくなりあることをキラに話した。
「それならキラ君、私達のお家においでよ!」
「・・・え?」
すずかから発せられたその言葉にキラは一瞬理解出来なかったが、少し経ってすずかの言ったことが理解できた。
「ど・・・どうして?」
「だって、このままじゃキラ君寂しい思いをするんだもん」
この3日間、すずかとキラは色んな話をした。
記憶喪失とは別にゲームや機械関係のことで話が合い、先日すずかと一緒に来た忍ともPCの話で盛り上がったのだ。話していくたびに、キラは彼女達が優しい人達だと理解できた。
「それにね?なんだかこのままキラ君と離れたら、ずっと後悔しちゃうような気がするの」
「お嬢様・・・」
すずかは自分の思ったことをキラに話した。
すずか自身もどうしてかは解らないのだが、キラと離れてはいけないような気がしてきたのだ。
「だからキラ君、私の家においで」
その瞬間、キラの瞳から涙が溢れ出てきた。
見ず知らずの自分を受け入れてくれるすずかたちに対して感謝してもしきれないのだ。
「キラ君って泣き虫さんだね」
「うん・・・ごめんね」
「いいよキラ君」
謝罪するキラにすずかは笑顔でそう返事をする。
「それじゃあノエル、ファリン!早く帰って準備しなきゃね!」
「はい!」
「かしこまりました」
すずかはまた明日ねと言ってノエルとファリンと一緒に病室を去って行った。
そしてキラは、ふと窓の外を眺めた。
「今日は・・・暖かいなぁ」
それだけで、今が春だと解った。
「調子も良いし、外に出よ」
そう言ってキラは、松葉杖を持って外に出た。
―――――――――――――――――――
「はぁ・・・本当に気持ちい」
外に出たキラは、松葉杖を突きながら歩く。いくらコーディネーターと言えど、怪我をした箇所が多いため回復するのに時間が少し掛かるのだ。
「・・・皆、大丈夫かな?」
雲ひとつ無い青空を見ながら、キラは元の世界のことを考えていた。
「・・・アスラン」
その中でも一番脳裏に浮かんだのは、大切な幼馴染であるアスラン・ザラであった。
トリィを貰った小学生の頃
戦場と化したヘリオポリス
憎み殺しあったあの時
そして共に平和の為に戦った最後の戦場
思い出していく度に涙が溢れ出る。
「アスラン・・・僕・・・」
「まったく、何時になっても泣き虫だな?」
「え?」
突如聞いたことがある声がし、キラは一瞬幻聴かと思った。
彼にしては少し幼い感じだったが、小さくなった自分がいるのでもしかしたらと思うようになる。
そしてゆっくりを後を振り向いた。
「キラ」
「アス・・・ラン?」
そこには、あの時みたいに幼い幼馴染が経っていた。
「ほ・・・本当に、アスラン?」
「あぁ」
「アスラン!」
再会した嬉しさに、キラはアスランに抱きつく。
「アスラン・・・アスラン!」
「キラ・・・」
アスランは呆れながらも、キラを抱きしめ返す。
その光景を、
「キラ君、嬉しそう」
「あれがすずかの言ってたキラね?」
「アスラン君と仲良しさんなの・・・」
3人の少女が隠れて見ていた。
一人は勿論月村すずか。
もう一人は、すずかの親友である『高町なのは』
さらにもう一人は、これまたすずかの親友である『アリサ・バニングス』である。
なのはとアリサは、すずかとノエルと同時期に二人で散歩していたのだが、そのときに小さくなったアスランを発見、急遽病院に連れて行ったのだ。ちなみにアスランも、キラと同じ様に記憶喪失と言うことにしているのである。
「私キラ君とどういう関係なのか聞いてくる!」
「ちょっ!すずか!?」
「すずかちゃん!?」
その後3人の少女は、抱き合っている二人の少年の下に向かうのだった。