"全て私の子供計画"の全容がわかり次第
それらをいれた単語集を書きますね
早苗は紅の幽霊を自分なりに調べていた
自分の血をあれほどたぎらせる者は久しぶりで、興味があった
ただ早苗は孤児院を経営している
そう長くは空けられない
そこで久しぶりにとある友人に情報収集を依頼した
その友人から連絡が届き早苗は急いで待ち合わせ場所である酒場を訪れた
酒場
店主がカップを念入りに拭いている
他の常連客もベロベロに酔って暴れたりする客はおらず
誰もが沈黙の中でゆったりと時間を過ごしていた
その中で一際目立つ女性がいた
彼女の手前からは煙が上がっていた
恐らくタバコの物だろう
彼女は白紙の手帳を前に悶々と何か考えて事をしていた
そこへ早苗がやってくる
「文、久しぶり」
文と呼ばれた彼女は早苗の方を見て
タバコの火を灰皿で消す
「半年も連絡をくれないで…一瞬、どっかで野垂れ死んだんじゃないか、と思いましたよ…まぁその線はありませんか、貴方、異様にタフネスですし」
「急に毒舌だな…まぁ変わらなくて安心しましたよ」
「貴方こそ、あの頃のまま縦に伸ばしたみたいですね」
早苗が嫌そうな顔をした
「そうですか?成長してないみたいで嫌なんですが…」
「私なりに誉めたつもりだったんですけど…まぁいいです、ともかく、久しぶりに貴方と飲めて嬉しいです」
「私もです」
早苗と文は静かに乾杯する
グラス通しがぶつかり合い透明な音を店内に響かせる
「で?例の件はどうなりました?」
「紅の幽霊ですか…見つかりましたよ、少し掘ればもう山ほど…出てきたものの殆どが血と闇のリストでしたがね」
早苗の表情が曇る
「そんなにヤバい組織なんですか?」
「本部はどうか知りませんが、本部から枝分かれした支部が凶徒と化しています、麻薬、人身売買に臓器売買、そして武器の違法輸入…闇社会といえばこれ、というものは全て揃っています」
「…今回も支部が関わっていると?」
文が眼鏡をかけた
「いえ、おかしいのはここからです、確かに凶徒と化した支部は暴走し、本部は見てみぬふりをしていました…が二人の異能力者が幹部に昇格したとたんに全ての支部が断罪の名目で処分されました…支部の基地は燃やされ証拠も生存者も資料も全部、灰になりました…本部もそれを黙認しています…す…家族のしたいことをさせてあげるとね」
「そんな事が…新しい幹部が二人…」
「えぇ、その幹部は保守派の幹部を蹴落とし上にあがりました…保守派が居なくなった今、恐らく暴徒と化するでしょうね…その瀬戸際が今なのかもしれません」
文は新たなタバコに火をつけた
「タバコには200種類の毒の塊ですよ?寿命を縮めるだけです、そして主流煙にはフィルターが着きますが副流煙にはフィルターがついてなくて200種類の毒を周りにばら蒔いているんです」
「…化学式を理解しても社会論を語っても…タバコの良さは分かりませんよ…お子ちゃまにはね」
文がニヤリと笑ってタバコの煙を吐いた
「酷いですね…お子ちゃまは…もう二十歳は越えてるんですよ?」
「貴方の心は少女ですよ…だからタバコは吸わないでください、早苗なら未成年喫煙法に触れそうだ」
早苗が頬を膨らませた
「言い過ぎました、謝ります」
「貴方は学生時代からそうですね…非を認めるのが遅いです」
文がタバコをくわえたまま手帳のページを開く
「非を認めるのが遅いのはご愛嬌です…最後の情報ですが…紅の幽霊の幹部と首領の異能力と名前だけですね」
それを話そうとしたとたんに酒場のドアが蹴り破られた
「射命丸文という情報屋は居るか!?」
紅の集団がバーを囲う
数は十数人
落ち着いたようすで早苗は告げる
「お客さんですよ文」
「あやや…私の異能力はこういうやつら向きじゃないんですよ…任せますね」
「無責任な…」
早苗は紅の集団の発砲を蹴りで止めた
その間、バー自体は不気味な位静かだった
紅の集団には目をくれず酒を飲み続ける常連客と慣れたように紅の集団を見つめるマスター
そして早苗が口を開く
「無粋…この静かな空間に音の出るような兵器を持ってくるとは…そのようなお洒落のおの字もないような人達には不向きですよ…ここは」
早苗は軽やかなフットワークで蹴りだけで紅の集団を次々と無力化していく
「立ち去りなさい…今なら殴り殺さなくて…済む…」
早苗の鋭い目線に紅の集団は後退りする
文と早苗のコンビの場合、後退りしたあとの自棄になった接近からの打撃は避けた方がいい
理由は後程…
が未熟な紅の集団の団員は早苗に殴りかかる
「…射程距離」
文はタバコの煙を吐く
早苗はその煙を避けるように文の後に下がる
「おぉ怖い、文の異能力は射程距離が分かりにくいですよね」
文が立ち上がる
そして紅の集団と向き合った
紅の集団は勿論、銃口を文に向ける
「そうですか?…まぁいいや、無粋な連中には退場願いましょう」
文は人差し指を上に上げた
すると紅の集団も宙に浮いた
「私の異能力は相手に恐怖や怒り等の負の感情の感情がある状態でタバコの煙を吸わせると相手の重力をコントロールできると言うものです…本当に使えない異能力ですよ、まずは怒らせたり怖がらせないと使えない…が皆さま方は実にシンプルでしたよ、強い早苗に恐怖してましたからね」
紅の集団の一人が呟いた
「うそ…だろ」
「それでは皆さんに為になる教訓を一つ」
文が煙を吐いた
「タバコは百害あって一利無しですよ…それではごきげんよう、皆さま方、またのご利用をお待ちしております♪」
そのまま、紅の集団はバーの外へ吹き飛ばされた
「…で話の続きですがね」
「何もなかったかのように続けるんですね…まぁいいや続けてください」
文は頷いて続けた
「幹部の名前は、リスト順に小悪魔、能力はパイロキネシス、相手の体をプラズマにして発火させる…紅美鈴、能力は体の変質化、コンクリートから木材まで変質することができます、ここまではあなた方、spadeやダイアモンド・クロウスが仕入れた情報ですよね?」
「はい、クラウドからそのように聞いています」
文が煙を吐いた
「ここからが私独自の情報です…と言ったって異能力に関しては一人しかわかりませんでしたが…紅の幽霊の首領の名前はレミリア・スカーレットそして彼女の実の妹、フランドール・スカーレット…この姉妹が組織を統率しています…そして私の仕入れた異能力の情報は彼女の従者、十六夜咲夜のものです…彼女は…"全て私の子供計画”の産物です…能力は彼の最強異能力者のリリーホワイトと同じ、物質を鎖に変化させる能力です」
早苗が驚いた
目が飛び出る勢いで目を見開く
「嘘…鎖…!?」
「えぇ、知りませんか?リリーホワイト…有名人ですよ?」
「…私の友人に鎖に変化させる能力を持つ人がいます…」
文がピクリと反応した
「次の依頼は決まりましたね」
文が立ち上がり酒場を出ようとする
「良いんですか?…貴方にも仕事が…」
文は振り替えってクスクスと笑った
「仕事より何より友達の頼みの方が大切ですよ」
早苗は安心したように微笑んだ
「なら頼みます
"全て私の子供計画"を調べてください」
「お安いご用です」
文が会計を済ませ酒場を出ていった
「…」
早苗はしばらくうつむき机を鋭く睨む
そして残っていた酒を口に運ぶ
「…"全て私の子供計画"…」
不穏で恐ろしいその単語をぼそりと口にした
「…霊夢…」
友の存在が危うい物になることを危惧して早苗は考え込む
酒も時間も彼女にとっては余るほどあった
一杯の酒と一時間に満たない時間が早苗にとって必要な物だった
じっくりと思考した後に早苗も立ち上がった
「時間はまだあります…今は文の情報を待ちましょう…そして目の前の問題に集中しなければ…」
早苗はそういうと会計を簡単に済ませ
酒場を出ていった