使い魔のくせになまいきだ。 ~ マガマガしい使い魔 ~   作:tubuyaki

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STAGE 7 振ってダメなら掘ってみな

 授業のその後について、特に語るべきことはない。

何せ、あったことといえばルイズがちょっと失敗したぐらいなものなのだ。

だから教壇が真っ二つになり、窓ガラスが全て割れ落ち、爆風を遮るものなく受けた

シュヴルーズと生徒一名が医務室へ運ばれたことなど些細なことだと言える。

 

 今、教室ではルイズとその使い魔だけが残り、後片づけをしていた。

もっとも手を動かしているのは魔王だけで、ルイズはうつむきながら

何かをずっと考え込んでいる様だった。

しばらくの間、魔王はこなれた様子でイソイソと窓ガラスの破片や木片を

集めるのに精を出していたが、ルイズのぽつりと零した小さな声に顔を上げた。

 

「何で……」

 

「……」

 

「何で何も言わないのよっ!」

 

「……」

 

従順な彼女の使い魔は、返事をするではなく言葉の続きを待った。

 

「どうせ、私のこと馬鹿にしてるんでしょ!」

 

「……」

 

「昨日から、あんなに偉そうにしておきながら、ろくに魔法が使えないんですもの」

 

「……」

 

「どうせ、心の底で私のことを嘲ってるんでしょう?」

 

「……」

 

「何とか言いなさいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プハァーーーーーーーーー!!! 息止まるかと思いました!

 ルイズ様、ありがとうございます。さっきからなんか黙ってなきゃダメな雰囲気だったんで、

 結構苦しかったんですよね」

 

「     」

 

「いや、それにしてもここの使い魔どもは緊急対応がなってませんな。

 爆発が起きた程度であそこまでアワてフタめくとは、あんなんじゃ勇者のシューライに

 対応できません! 使い魔になって早々にヤセイのカンを失ってしまったのでしょうか?

 ナゲかわしい限りです……

 それはそうとルイズ様、見ましたか? あの太っちょの生徒、マルコリヌ……あれ?

 マリコルヌ…… どっちでしたっけ? どっちでもいいですね、とにかく彼のあのブザマな

 転びっぷりを!「いい加減にしてっ!」

 

ルイズの大声を聞いて、魔王は再び黙り込んだ。

 

「どうでもいいことをペラペラと、誤魔化すつもり!?

 あんたも見たでしょあの散々な失敗を!

 私は、どうせ落ちこぼれのルイズよ! ゼロのルイズなのよ!」

 

ルイズはそう捲し立てるなり、再び黙りこくってしまった。

 

「……」

 

魔王はルイズが自分からはもう喋りそうもないのを見て、とつとつと語り始めた。

 

「……辛かったでしょう。悔しかったでしょう」

 

「……」

 

「ルイズ様のことです。これまでどれだけ苦しくともキボウを捨てず、

 地道な努力を積み重ねてこられたことでしょう。

 それなのに、その成果がこんな爆発にしかならないとは!」

 

「ッ……!」

 

「本当はルイズ様は、もっと素晴らしい魔法を解き放ちたいんですよね」

 

「……」

 

「持てる全ての魔力を解き放ち、学院まるごとエクスプロージョンさせたいんですよね!」

 

「ぶち殺すぞ」

「  」

 

ルイズは呆れたようなため息をつくともう一度、今度は沈み込むような深い深いため息をついた。

 

「……あんたは私のこと、破壊神だって信じて慕ってくれてるみたいだけど……

 本当はそんなんじゃあない。さっきあんたが見たように、普通の魔法を失敗して

 物を壊してるだけの…… ただの落ちこぼれなのよ」

 

そう言うなり、ルイズはまた黙りこくってしまった。小さく肩を震わせ、何かを堪えるように

唇を噛みしめている彼女を見て、魔王は再び語り掛けた。

 

「ルイズ様は誤解されております」

 

「……」

 

「私がルイズさまを破壊神さまとお呼びするのは、何も魔法で爆発を振りまいているからでは

ないのです」

 

「……」

 

 彼女は俯いたまま何も答えなかったが、それでも耳を傾けてくれていることを信じて、

魔王は話しを続けた。

 

「確かに今のルイズ様は、杖を振り回し呪文を唱えてやるよーな魔法が

 カケラも使えないのかもしれません」

 

「ッ!」

 

「ですが、その一方でルイズさまにはご自身で気付いておられない、ルイズさまだけの

 特別な才能がおありなのです。私はそれを見込んだ上で破壊神様とお呼びしておるのです」

 

「慰めのつもり? 例えそんな才能があったとして、破壊を振りまくんじゃあ

 しょうがないじゃない」

 

そういってルイズはそっぽを向いたが、それに魔王はヤレヤレと首を振って応えた。

 

「まったくニンゲンどもは、破壊と聞くととかく悪いイメージを持ちがちです。

 ですが破壊は創造と共に、この世界を形作るダイジなプロセスなのです。

 例えばこの机、元は立派な木であったものを切り倒して、切り刻んで、削って、

 そんでもってナンヤカンヤ組み上げることで今のカタチが出来上がっています。

 またこの学院を建てる時だって、まず初めに巨大な石を叩き壊す工程があってこそ、

 割った石を四角くきれいに削り、積み上げることが出来るのです。

 ワレワレが何かを作るとき、その材料は何かを壊すことで得られたものなのです。

 ワレワレ自身の体ですら、元を辿ればイノチあるものを食べる、

 つまり他のイキモノをコワすことで成り立っているのです。

 この世はそうした諸々の破壊と創造が組み合わさって成り立っているのです。

 どうですか? 何となく壮大なカンジがするでしょう!」

 

「私の魔法で何かが壊れても、何の役にも立たないわ」

 

「だから違うのです! ルイズ様には単に壊すだけに留まらない、

 トクベツなチカラがおありなのです!」

 

「そんなの信じられないわよっ! 今まで一度も魔法に成功してないのよっ!

 どれだけ杖を上手く振ろうとしても、スペルを完璧に唱えようとしても、

 なんの効果も現れない。挙句、大きな爆発までして終わってきたのよ!

 他の人が失敗してもこんな迷惑な爆発なんて起きないのに!」

 

気色ばむルイズに対し、魔王はそんなことかとでもいうように自信満々にほくそ笑んだ。

 

「ルイズ様、ソコですよソコ。そういう細かなトコロこそがジューヨーなのです。

 東の方に住むという高名な魔女も言っていました。すべての物事に意味があるのだと!」

 

「そんなもの、自分の境遇に疲れた人を元気づけるためだけの、ただのまやかしよ。

 一体私の爆発のどこに意味があるっていうのよ!」

 

「ありますとも! ルイズ様が魔法を使おうとするとき、ただのしょぼっちいミニマムな

 魔法が起きるのではなく、豪快な爆発が毎度引き起こされる。

 まさにそういうトコロにこそ、フカイ意味が隠されているのだと魔王は思うのです」

 

「……どういうこと?」

 

ルイズは魔王の自信ありげな態度が気になり、少しだけ顔を上げた。

 

「ルイズ様の魔法は必ずバクハツに終わりますよね。つまりルイズ様は少なくとも、

 その爆発を引き起こすだけの力は持っているということです。

 しかもそのチカラは、この教室の惨状を作り出した様にケッコウな規模のものです。

 このことからも、ルイズ様に溢れんばかりの膨大なチカラが

 ネムッていることは明らかです。

 これはゼロの一言で済ませていい問題じゃあありません!」

 

「……わたしに凄い力が?」

 

「ジブンの力が信じられませんか? それは今のルイズ様が大きな失敗をして

 弱気になっているからです。さあいつものジブンを取り戻すのです!

 ……ブッチャケ、ルイズ様、普段は自分に偉大な才能があるとか思ってませんか?

 確かに失敗ばかりでみんなからゼロと呼ばれてはいるけれど、実は自分の才能は

 深く眠ってるだけなんじゃね? だとか、いざ自分のチカラが覚醒したら、誰よりも

 優れたメイジになっちゃうんじゃね? とか……」

 

「そそそんな妄想じみた子供みたいな妄想なんて、しししてないわよ子供じゃあるまいし!」

 

魔王はその様子を生温かい目で見守りつつ言った。

 

「いいんですよ、ルイズ様。そういうモーソーは誰もが通る道です。きっと。

 魔王的には、ルイズ様の魔法の失敗原因が誰にもに分からない辺り、

 そういう妄想じみた考えも捨てたもんじゃないと思っています。

 もしそういうことなら、ルイズ様は覚醒した途端に伝説のスーパーメイジとして

 宇宙に名を馳せても不思議ではないでしょう。

 実はルイズ様にはトンデモなくスゴイ潜在能力が眠っているけれど、

 身の危険がさし迫るまでは覚醒出来ないだとか、

 穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚めなければいけないだとか、

 実は火、水、風、土のどれにも当てはまらない隠された第五の系統の使い手だったとか。

 あ、いや最後のはノートにテキトーに書いた設定が黒歴史化するパターンなんで、

 あんまりマジにならない方がいいでしょう」

「虚無なんてあり得ないわよ」

 

「へ?虚無って何ですか?」

 

魔王は四大系統に当て嵌まらない、聞きなれない言葉にぽかんとした表情を浮かべた。

 

「あれ? 授業で言ってなかったかしら? まあ無理もないわね。

 虚無っていうのは始祖が使ったとされる伝説の系統のことよ。

 でも伝説だけあって、誰も使い手はいないし、呪文も残っていない、

 まさに話の中だけの存在なのよ」

 

「……なんだか熱く語ってきたジブンがバカらしくなってきました。

 もうルイズ様の系統、それってことにしたらいいんじゃあないでしょうか」

 

「人の失敗を軽々しく伝説と結びつけるんじゃないわよ!」

 

「まあ、しかしどうあれルイズ様にチカラが眠っていることは確かなのです。

 問題はそれでいてなぜ、上手く魔法が使えないのかということです」

 

「結局のところそこなんじゃない。皆、それで匙を投げてきたのよ。

 力がいくらあったんだとしても、それをコントロールできないんじゃあ意味ないわ」

 

そう言ってルイズはまた下を向いた。

 

「落ち込むことはありません! ルイズ様、正直に答えてください。

 今までこう思ったことはありませんか? 自分が魔法に失敗するのは

 自分が悪いからじゃあない。例えば杖が悪い、だとか、カンペキな詠唱を

 唱えてなお失敗する呪文の方が悪い、だとか」

 

「まさか! そんな責任転嫁みたいなみっともないことしないわ!」

 

「ルイズ様、モノゴトを見通すには、時にマガマガしく考えてみるのも一つの手段ですぞ。

 トモカク私が言いたいのはですね、つまりルイズ様の普段練習なさっている呪文や

 使ってらっしゃる杖、それらがルイズ様の溢れんばかりの魔法力を受け止めるには

 脆すぎるだとか、あるいはルイズ様の持つ魔法力に対し相性が悪いだとか、

 そんな可能性があって、だから爆発するんじゃないかということなのです。

 モットモ、私には思いもつかないような別の可能性だってあるのかもしれませんが」

 

「馬鹿なこと言わないで!今までに何人もの家庭教師が色んな呪文を試させようとしたわ。

 でも全てダメだった。そもそもライトの呪文にすら失敗する時点でおかしいのよ!

 それに、杖のせいでもないわ。私だってお父様やお母様に言われて、杖を変えて

 試したことがあるもの。でも、どんなに良い杖を使っても駄目だったのよ。

 なら、やっぱり私がダメってことじゃない!!」

 

「惜しいです。その考え方は実にオシイです。ルイズ様はそこからさらに

 もう一歩踏み込んで考えてみるべきなのです。

 どんな呪文を唱えてもダメだった。どんなに良い杖を振ってもダメだった。

 ならば、どんな呪文、どんな杖でさえそのチカラを受け止め切れないほど、

 ルイズ様のおチカラが絶大だったと考えてみるのです」

 

「まさか! そんなの妄想でしかないわ!」

 

「確かに根拠はありません。別の可能性だっていくらでもあるでしょう。

 ですがそのまさか、エーそんなのアリ?!ということが現実では往々にして

 起こるのです。 ラノベならナオサラです!

 そもそもルイズ様はヴァリエール家というかなりの血筋のお方とのこと。

 魔法の才能は血筋が大変重要と聞きました。ですから、それだけでもう

 ルイズ様は十分莫大なポテンシャルを持っていてトーゼンなのです!

 それはもう空気を吸って吐くことのように! 鉛筆をペキッとへし折ることと同じように……

 まあ体重を乗せればできるんじゃないでしょうか。ササクレが怖いですけど。

 とにかくあってトーゼンと思うべきなのです! そして考えてみてください。

 ドラゴンの吹く炎でヤカンの水を沸かせますか? 巨人が小人と握手出来ますか?

 そういうものなのです! 大いなるチカラを発揮するには、それなりのチカラの使い道が

 必要になるのです! ルイズ様が魔法を使うのに、呪文を唱えながら杖を振るというのは、

 ラクダを針の穴に通す様なものなのです。たぶん。

 当然、ラクダは針の穴に通すものではありません! 乗って使うものです!

 ものの使い道が全然異なるのです!

 そもそもラクダを針穴に通そうとするなん「それ以上はやめなさい」

 

ルイズは困惑した表情で話した。

 

「本気……なの?」

 

「モチロンです! それを見込んで私はここにいるのです!」

 

「でも、もしそれが本当だとして、結局私に使える杖や呪文がないんじゃあ、

 しょうがないじゃない」

 

「フフフフフ…… ワタシにだってちゃんと考えがあるのです!」

 

「 ……まさか」

 

「ハイ!」

 

「あんたが私の力に期待するってことは!」

 

「ハイ!!」

 

「あるというの!私が力を振るうための方法が!」

 

「その通りです!」

 

「私の力を受け止めることが出来る最高の杖が!」

 

「違います」

 

「   」

 

「全然、違います」

 

「2度も言わなくていいわよ!」

 

ルイズはいつの間にか立ち上がって叫んでいたことに気付き、一瞬顔を赤らめると、

もう一度座りなおして心を落ち着かせようとした。

 

「一体どういうこと? 杖が無くてどうやって魔法を使うって言うのよ!

 あ、もしかして杖の代わりになるようなマジックアイテムでもあるっていうの?」

 

「さすがルイズ様、ご明察です。それもただのマジックアイテムじゃあありません。

 常人には決して扱うことのできぬ、トクベツな力を持った伝説のアイテムなのです!」

 

「そ、そんなにすごいシロモノなの!?」

 

「ええ、それはもう、このアイテムを手にしたものは、歴代の名立たる戦士や魔法使いにすら

 成しえぬ奇跡の御業を起こすことが出来るようになるのです。」

 

「そんな大層な道具を、本当に私が扱えるっていうの!?」

 

「私はそう確信しております。ソレを使うことで、ルイズ様は偉大なる一歩を踏み出すことに

 なるのです!」

 

「わたしが、ついに魔法を!?」

 

「覚悟はいいですか、ルイズ様。

 大いなる力には、大いなる責任が伴います。え!? これを言った怪人クモ男って悪の組織の幹部じゃないんですか!?

 良いことばかりでは無く、大きな災いがその身に降りかかることもあるのです。

 これを手にしたが最後、もう後戻りは出来ません」

 

魔王の真剣な言葉に、ルイズも誠意をもって答えた。

 

「覚悟ですって? そんなのとっくに出来てるわ。

 私は今までずっと立派な貴族であろうとしてきた。

 立派なメイジになれるよう、努力してきた。

 けれど、魔法だけがどうしようもなく足りなかった。

 私が、私の望む姿になることを阻んできた。

 だけど今、その欠けていたピースが埋まろうとしている。

 迷うことなんて何も無いわ。

 私は今日、この日を以って、真のメイジ、真の貴族としての道を歩み始めるのよ!」

 

「……ルイズ様のご覚悟、よく分かりました。

 それでこそ、私も安心してコレをお渡し出来るというものです。

 さあルイズ様、我らがマモノたちの秘宝を手にお取り下さい!」

 

魔王は懐からそれを取り出すと、恭しくルイズへと差し出した。

ルイズは決意に満ちた面持ちで、その道具を受け取った。

 

ルイズの手にずっしりと重みが伝わってきた。

ルイズは“それ”を手にしただけで、自分がそれをどう使えばいいのかが理解できた。

そしてそれが、どれだけ大きな力を発揮するのかを容易に想像することができた。

それを手に、今から何をすればいいのか、彼女にとっては自明のことだった。

 

 

 

「つまり、今からこれをアンタの頭に振り下ろせばいいって訳ね」

 

「お、お待ち下さいルイズ様! これは紛れもなくマジックアイテム、

 そうマジックアイテムなのです!!

 地下帝国最大の秘宝、それこそがソレなのです!」

 

「なんだってそれがツルハシなのよおおお!!!」

 

召喚の儀式以来、再びの登場であった。ツルハシのくせに柄の部分がきれいな紫色をしており、

ちょっぴり上品な感じを醸し出していることが、ルイズの神経を余計に逆撫でした。

 

「その発言はツルハシ差別です! ツルハシ、いいじゃあないですか!

 労働の尊さを伝えるシンボル的な感じで、国旗に使ってもソンショクない代物だと

 自負しております!」

 

「その労働って、肉体労働限定じゃない! それにツルハシがシンボルって、

 階級社会への挑戦みたいな不穏なイメージを感じるわ!

 私はメイジとして活躍したいのに、魔法使えない私への当てつけのつもり!?」

 

「いえいえ決してそのような、イテッ、ルイズ様そのツルハシで小突くのはやめてください。

 装備のおかげで大きなダメージこそ無いとはいえ、連続で突かれると地味に痛いです。イタタタタ!

 

「だったら! これ以外の! メイジに相応しい道具をだしなさいっ!」

 

「分かりました! 分かりましたから小突くのをやめてください!

 じゃあこんなのはどうですか?

 水のチカラを味方に出来るというマジックアイテムです!」

 

「良さそうじゃないの。さあ早く私に見せなさい!」

 

「とくとご覧あれ! 地下帝国の秘宝第二弾! ミズノ・ツルハシ!」

 

「またツルハシじゃない! ちょっと、持ってるもん全部見せなさいよ!」

 

「あ、ルイズ様、そういうのはちゃんと段階を踏んでからにして下さい!」

 

「うるさい! 杖! 杖はどこ!?」

 

ルイズはくねくねと抵抗する魔王のローブを引っぺがし、必死になって所持品を漁った。

だがその行動は、彼女から一縷の希望さえも奪い去るものだった。

 

「な、何よこれ! 全部ツルハシじゃない!!

 嘘よ、ウソだわ、これは何かの悪い夢なのよ……」

 

「ところがドッコイ、夢じゃありません!

 さあ覚悟を決めてツルハシを振るうのです。

 主にワタシの野望のために!

 いまこそハカイシンとして目覚めるのです!」

 

ルイズは放心した。

 

「    」

 

「    」

 

「    」

 

「……」

 

「………」

 

「……めしぬき」

 

「え?」

 

「めしぬき」

 

「メシヌキ? なんの呪文ですか?」

 

「相手を空腹にさせる呪文よ。

 つまりあんた、ひるの、ごはん、ぬき」

 

不満の声を上げる魔王を他所に、ルイズはよれよれと、今にも倒れそうな足取りで廊下に

向かった。ついに光り輝く立派なメイジとしての道を歩み始めるんだと思っていたら、

なぜかブルーカラーへの道が開けていた。何が何だか分からなかった。催眠術や超能力なんて

チャチなものじゃない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったような気がした。

グゥっとおなかが鳴った。

空腹がルイズの頭を支配していき、その内ルイズは考えるのをやめ、

食堂へふらふらと向かっていった。




次回…

ギーシュ「ガタッ」






ツルハシ「ガタッ」




おまけ

ルイズ「どうせ私はゼロなのよ!」
魔王「ルイズ様、失敗することは恥ではありません。魔法がメッキリ成功しないのは
   辛いことでしょうが、これもルイズ様に課せられた試練なのです。
   それに一度は成功しているじゃあないですか」
ルイズ「……え?」
魔王「お忘れですか?成功の証だってちゃんとあります」
ルイズ「どこにそんなものあるっていうのよ」
魔王「ほらここですよ、ここ!」
ルイズ「 ……本当にどこなのよ」
魔王「ホラ、ワタシという立派な使い魔が!」
ルイズ「……うん、きっと次は上手くいくわ。これ以上、下はないものね」
魔王「   」

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