使い魔のくせになまいきだ。 ~ マガマガしい使い魔 ~   作:tubuyaki

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祝! 勇なまV!R発売!
お知らせ
読者の皆様、何時もご愛読頂き有難うございます。前回投稿から1か月余り、感想欄でもご期待の声が上がった魔界の超人気者、グータレーデーもん氏に本作へご出演頂くべく、ワレワレは鋭意努力を続けて参りました。しかし誠にザンネンながら、オファーを試みた当初より異種のデーもん類による徹底した妨害を受け、氏の出演には至りませんでした。ここに深くお詫び申し上げます。デーもん類の種族間における排他性は魔界全土でも有名であるとはいえ、今回の様な悪質な行為には断固として抗議せざるを得ません。本来、デーもん類の肌の色の違いで、このような差別・迫害が起きて良いはずはありません。差別していいのは勇者共だけです。今回、妨害行為を働いたメーラーデーもん氏には遺憾の意を表明致します。ところで、選挙って大事ですよね。自分たった一人の影響なんて、等と思わずに是非是非、投票所へと足を運びましょう。そして投票用紙には、『魔王ちかお』、いいですか、『魔王ちかお』とお書き下さい。皆様のマガマガしき一票をお待ちしております!
魔物いちばんの会 後援会会長 魔王

追伸 連立先のピーエス党候補、VRかぶ郎氏のことも併せてヨロシクお願います。



選挙広報
地下から地上へ! 魔物いちばんの会
国会:議員定数を削減し、しがらみのない魔王一人による政治を実現します。
経済:魔クロ経済政策に力を入れ、不透明を超える真っ黒な財政出動を行います。
外交:魔王間でのトップ外交で、主要同盟国との関係強化と勇者対策の共有を図ります。
エネルギー政策:エレメント無限増殖炉を活用し、CO2排出量を倍増させます。
社会保障:一日一個のしもふり肉を保証します。
厚生:一カ月300時間以上の穴堀りで不健康社会を目指します。
ねんきん問題:問題を放置し続け、肥え太ったコケが生まれるのを待ちます。
憲法:勇者に押し付けられた憲法を改正し、自由に侵略できる国家を目指します。
国防:魔王軍が全てを守り、滅ぼします!
領有権問題:『国王のものは魔王のもの、魔王のものは魔王のもの』を貫きます。
農業:ガジガジムシを基本とした昆虫食を広げ、食糧危機に備えます。
水産:魔グロの漁獲枠超過を防ぐため、魔王だけが食べられるよう規制を導入します。
破壊神生前退位について:エ、それってまさか中古に売■■■■■!
何か一言:VR値下げ隊のこともよろしくお願いします!ウフフ
更に一言:公約(ルール)は破るためにあるのです!
最後に一言:あなたの一票が世界を滅ぼす!皆様の投票をお待ちしております!



STAGE 13 あなたは / 好きですか?

「うーむ、マモノたちは出そろってきましたが、

 あの二人を相手にするにはまだちょっとモノ足りないですね。」

 

ルイズと魔王の二人は、地下の奥底で必死に頭を悩ませていた。

 

「そうは言っても、もうマモノを強化する余力なんてないわよ?それにどうせ、

 あの二人に同時に攻撃されたら、どんなマモノもすぐにやられちゃうじゃない」

 

ルイズはやっぱり勝てないのかしらとため息を吐いた。

 

「おや?ルイズ様がお悩みになってること、別にどうにか出来ないこともありませんよ?」

 

「え!?一体、どうするっていうのよ!」

 

彼女達に残された時間は少ない。ルイズは魔王に話を急いた。

 

「先ずは戦略的な話からしましょうか。確かにルイズ様のケネン通り、あの二人にマモノを

 同時攻撃されたら、今いるムシやトカゲ男たちではひとたまりもないでしょう。

 しかし、そういう二人同時攻撃という事態は、結構カンタンに防げるものなのです。」

 

それを聞いてルイズは首を横に振った。

 

「信じられないわ。あいつ等を離れ離れにさせられるほど強いマモノがいたら、

 今頃苦労してないわよ。それともあいつらに一人ずつ戦って下さいなんてお願いするわけ?」

 

「いえいえルイズ様、チョット視野が狭くなっていませんか?

 見て下さい、この広々としたこの地下を!

 いくらでも穴を掘り広げられる、この空間を利用するのです!」

 

ルイズは改めて辺りを見渡した。今まで掘ってきた穴が脈々と続いているが、

まだ掘っていない場所もたくさん残されている。

 

「何か考えがあるって訳ね?言ってみなさいよ。」

 

「・・・お願いします(プリーズ)は?」

 

「いいから早く言いなさい!!」

 

「ああスミマセン!だからツルハシで突かないで!

 ちょっとした場を和らげるジョークなんで「早く言う!」

 

息も絶え絶えな魔王は、胸を押さえながら話を続けた。

 

「確かに我々のマモノは彼女らに比べて遥かに弱いです。マモノの力だけであの二人を

 引き離すのはムズカシイ。でもダンジョンとはマモノだけで成り立つものではありません。

 今までに掘ってきた穴の形、すなわち地形も重要な要素なのです。

 地形を上手く活かせば、マモノたちが有利に戦いを進めることも出来るようになるのです。

 とはいえ、今回必要なのはそんな大層な仕掛けじゃありません。

 ダンジョンの入り口近くから、こうビビビッと分かれ道を掘る。

 そうすれば我らをシラミツブシに探してでも追い詰めようとする彼女らは、

 作業を分担すべく勝手に二手に分かれてくれるハズ。

 そうして一人になったところをワレワレは各個撃破していけばよいのです!」

 

敵のむれを引き剥がすのに大仰な戦力なぞ必要ないのです!と、自信満々に魔王は語った。しかし、尚もルイズ顔は晴れない。

 

「分かれ道を掘るって言っても、相手は一人でさえ強いトライアングルなのよ?

 今さらそんなにマモノを増やしてられないわ」

 

「まだまだ頭がカタイです、ルイズ様。例え掘る土がシカクくとも、使うアタマは

 マルくしておかなければいけません。別に、新しく掘った別れ道はダミーでも

 構わないのです!最悪マモノが居なくても、ナガナガと道を掘っておけば相手の往復で

 時間が稼げます。一方でワレワレが控えている本命の道に十分な戦力を置いておけば、

 一人ずつやってくる相手を順次、フクロのネズミにしてしまえるというわけです。」

 

いや何ともマガマガしい作戦ですな、と自慢げに語る魔王に、ルイズは疑問を投げかけた。

 

「あんたの言いたいことは分かったわ。でも本当にそんな都合良くいくかしら?

 もしあいつらが用心深くて、全員まとまってやってきたらどうすんのよ?」

 

「そうですね・・・運が良ければ無駄なルートをタンサクしてくれる分、時間稼ぎが出来ます。

 それにブッチャケ、魔法に失敗しまくりでイロイロと軽んじられ気味なルイズ様相手に、

 自信マンマンな彼女らがそんな手間ヒマ掛けるとは思えませ「よ、よくも言ってくれたわね!!」

 

そうしてルイズが魔王に掴みかかろうとした時、遠く上の方から、彼女の最も聞きたくない声が響いてきた。

 

「ねえ、まだなのー? 私たち、もうそろそろ入ってもいいかしら?

 いくら待ったところで私の勝ちは揺るぎないし、意味ないわよね?おっほっほ!」

 

ルイズの顔はそれを聞いて真っ青になった。

 

「・・・大丈夫です。まだあともうちょっとは時間を稼げるはずです。」

 

ルイズは肩を震わせつつ魔王に返事した。

 

「て、敵の敵は味方、って言うしね。今回はトクベツよ!今だけは特別に許してあげるわ。

 分かれ道を掘っておくのね、これで負けたら承知しないわよ!」

 

「何言ってるんですか、ルイズ様。これだけで勝てる訳がないじゃあないですか」

 

「あんたねえ!!!」

 

怒りで頭がフットーしそうになるルイズをなだめつつ、魔王は言葉を続けた。

 

「ルイズ様の方が良くご存じな様に、彼女らはトライアングル。並ではない実力者です。

 デスガジガジやトカゲ男の相手が二人から一人になろうと、すぐやられてしまうことに

 変わりはありません。パララメリカのマヒ攻撃でも当たれば少しは相手に隙が出来る

 でしょうが、それも当たらなければどうということはないのです。やっぱりコケはコケですし、

 そうそう上手く行くとは限りません。そうなると、精々マモノ一匹が一撃を加えられれば

 イイトコで、攻撃がかすりもせずに倒れるマモノが大勢出ることでしょう。

 我々は、そんな状況を少しでも改善すべく、マモノを強くしなければならないのです。」

 

「でもこれ以上どうすればいいのよ?

 もう今以上に強いマモノを出す力は残ってないし、突然変異も時間が掛かるんでしょ?

 もうどうにも出来ないじゃない!」

 

すると魔王は、途端にニヤケ顔で笑い始めた。

 

「フハッ!フハハハハッ!」

 

「・・・・言いたいことがあるなら早く言いなさい」

 

ルイズは殴りたい気持ちを我慢しつつ、魔王の言葉を待った。

 

「ルイズ様、ちょっと勘違いしてませんか?マモノの強化というものは、

 何も必死になってワンランク上のマモノを作るばかりではないのです!」

 

「へ? それって、どういうことよ?」

 

「いいですか、魔王軍の編成には3つの要素が大事なのです。

 より強いマモノを、より多くというところまではルイズ様も分かっておいででしょう。

 ですがこの先、幾多の戦いを勝ち抜いていくためにはもう一つ、しっかり覚えておいて

 頂きたいことがります。それが、マモノの特性を活かすというです。」

 

「マモノの特性? それって、コケが相手をマヒさせるとか、そういうことかしら?」

 

「もちろんそれもですが、マモノの移動の仕方や繁殖の仕方などなど、多岐に渡るのが

 特性というガイネンです。マモノたちの特性をしっていればこそ、ワレワレの

 戦い方の幅は広がり、魔王軍はより強くなっていくのです。さあそれではルイズ様も

 マモノの特性を学んでいきましょう!先ずはコケとスライムがどう違うのかという

 専門家でも頭を悩ませる難問について・・・」

 

「ちょっと、今急いでるのよ!そんな話、悠長に聞いていられないわ」

 

「む、そうでした。残念です。セッカク、マイ雑学を披露出来るかと思ったのに・・・」

 

ルイズは魔王に、豚を見るような冷たい視線を向けた。

 

「いやルイズ様、そんな目で見ないで下さい。まじめな話、本来こういうお勉強には

 しっかり時間を割くべきなのです。 世の中、すぐに役に立つ知識というものは

 すぐに役に立たなくなるというのがマモノ教育の考え方でして・・・」

 

「時間が無いって!言ってるでしょ!」

 

「・・・ハイ。仕方ありません。今回は特別に、聞いてスグに役立つ、

 この状況にピッタリな知識をデンジュしましょう。」

 

ルイズは、ようやく魔王が本題に入ることにふんと鼻を鳴らした。

 

「テーマはズバリ、マモノを強化するマモノです。」

 

「マモノを強化するですって? それって、ムシやトカゲ男じゃあないわよね。

 もしかして、私の知らないマモノかしら?」

 

「イエス、その通りです。今回紹介するのは、なんと!

 ただそこにいるだけで、ダンジョン内のマモノ全ての防御力を高めるという

 フシギなチカラを持ったマモノなのです!!」

 

「防御力ですって? つまりマモノが倒れ難くなるってこと?」

 

「イエース!!」

 

「そんなことが出来るの!しかも全てのマモノに!?

 近くにいるマモノだけとかじゃなくて?」

 

「オウ、イエーース!!」

 

「何よ、その夢のようなマモノは! 

 ・・・あ、分かったわ。どうせアンタのことよ、何か裏があるんでしょう!

 どうせダンジョン中のマモノを食べ尽したり、とんでもなく悍ましいマモノなのね!」

 

ルイズは未だにデスガジ大繁殖のショックを忘れてはおらず、慎重になっていた。

だが魔王は、そんな彼女の不安を吹き飛ばすように明るく話を続けた。

 

「いえいえとんでもない! 確かに普通、上手い話には裏があるものです。

 褐色美女の誘いに乗ってみたら、お預けの上に鞭打ちが待っていたり、

 カッコいい3千エキューの剣を貰ったら、ポッキリ折れて命の危機に晒されたり、

 お宝を夢見て冒険に出かけたら、オーク相手に怖い思いをするだけだったり・・・」

 

「まさか、あんたの体験談じゃあないでしょうね?」

 

「でもこのマモノは違う、本当にスゴイんです!

 元々体力があるマモノなので、ちょっとエサを食べないぐらいは大丈夫!

 じゃあ体力が減ったらどうかですって?それも大丈夫なんです!

 このマモノは、好物のエレメントというマモノ以外を滅多に食べたりはしません。

 トカゲ男の群れに放り込んでも、本当にお腹が減った時にちょっとだけ

 食べるだけなのです。繁殖したりもしないので、ムシのようにいつの間にか

 増え過ぎてた、なんてこともありません。大変環境に優しいマモノなのです!」

 

「・・・本当、よね?」

 

「そうなんです!すごいでしょう? それに見た目だって、と~っても可愛らしいんです!

 このマモノ、のっそり動き回る姿がラブリーチャーミーだということで、

 魔界全土に根強いニンキを誇っています。女性受けの良い赤いカラーリングに、

 男性受けも悪くないジト目、そうジト目なんですKAWAII!疲れた時には

 このマモノを眺めて癒されるといいでしょう!」

 

「・・・良いじゃない。使える上にかわいいなんて!

 いや、でもそんななマモノ、どうせ養分たくさん集めなきゃ作れないんでしょ?」

 

「いえいえ、こちら大変オモトメやすい養分値になっております。

 全てのマモノの防御力上昇と、多彩な癒し効果!いざとなったら勇者との戦いにも

 赴いてくれる、これら全てがセットになってお値打ちなんとトカゲ男と同じ、

 トカゲ男と同じだけの養分で作ることが出来るんです!」

 

「ええ、ウソでしょ! こんな凄そうなマモノを、そんなお手軽に作れるっていうの!?」

 

「ハイ、そうなんです!こんなスバらしい話、滅多にありません!

 さあ、このお得なマモノを作れるのは、今がチャンス、今がチャンスです!

 さあ今すぐツルハシを! 掘り方はこちら、養分の溜まった土の周りをぐるっと8マス、

 いいですか、養分の溜まった土の周りをぐるっと8マス掘ってください!

 最後に、残った土を一堀りすれば準備は完了です。簡単でしょう?

 養分の溜まった土には限りがありますので、ご要望の方は今すぐお求めください!

 ツルハシお待ちしております!」

 

「今すぐ掘らないと!!」

 

ルイズはワクワクしてくる便利道具を目の前にしたような高揚感と共に、養分が溜まって真っ白になった土の周りを掘り始めた。

 

「ぐるっと8マス、これでいいのよね。 じゃあ最後の一掘りいくわよ!」

 

ルイズは期待に胸を膨らませて、ポツンと残された最後の1ブロックを掘った。

すると突然、ドーーン!!という奈落の底に突き落とされるかのような響きと共に、

地面へと大きな魔法陣が刻まれた。その中心には、目玉のような文様が刻まれており、きらりきらりと怪しい光を放っている。事ここに至ってルイズは、猛烈に嫌な予感がし始めた。

 

「ねえ、これから呼び出すマモノって・・・」

 

「ああ、そういえば言い忘れておりました。

 一つの土の周りをぐるっと掘ってから出すタイプのマモノは少々特殊で、

 皆このような魔法陣から呼び出されるのです。魔法陣からマモノを呼び出したい時には、

 この上をツルハシで軽くノックしてやって下さい。

 まあ、彼らを呼び出す上でのレーギというやつですな。」

 

「高い知性を持ったマモノなのね」

 

ルイズの不安そうな呟きに、魔王はこくりと頷いた。

 

「彼らにもフツーのマモノとはチガウんだというプライドがあるのでしょう。

 ですが勇者に困っているマモノ全てに守りの力を授ける奇妙奇天烈摩訶不思議なマモノ、

 味方にすれば心強いなんてもんじゃありません。

 勇者にいじめられたときはいつでも泣き付くと良いでしょう!」

 

「それで、そのマモノの名前はなんて言うのよ?」

 

聞きたいような、聞きたくないような思いがしつつも、ルイズは答えを促した。

 

「地下帝国で知らないものはいない国民的人気マモノ!

 That's all I want! その名はDeeEeeMooooooNです!!!」

 

Ya Ya Ya Ya Ya!とテンションを上げる魔王とは裏腹に、ルイズの顔は蒼白になっていった。

 

 

「で、デーモンですって!!!」

 

ルイズは思わず立ち眩みしそうになりながら、何とか足に力を込めて踏ん張った。

 

「デーモンって言ったら、つまり悪魔のことじゃない!!

 悪魔を召喚だなんて、亜人を使い魔にしたどころの話じゃないわ!」

 

「いや私、魔王なのでイマサラなのですが「ジョーダンじゃないわよ!!」・・・そうですか」

 

残念ながら、魔王の儚い主張が興奮したルイズに届くことはなかった。

 

「あんた、また私を騙したわね!何が素晴らしいマモノよ!!

 教会に見つかったら一発で破門じゃないの!」

 

「落ち着いてください、ルイズ様。デーモンではありません。デーもんです。」

 

「何が違うっていうのよ!」

 

「そりゃあ、こうチョット、なんかニュアンス的なモノが心なしか違います。

 それがどうしたとか思われるかもしれませんが、案外そういう小さな違いが

 世の中大きく響いてくるものではないでしょうか?」

 

ルイズは魔王の煮え切らない返事に対し、彼女にとっての譲れない一線をハッキリ確かめにかかった。

 

「・・・悪魔(デーモン)じゃないのよね?」

 

「はい。彼らとて、誇りを持って否定することでしょう!」

 

「ツノとか生えてないわよね?」

 

「おお!よくお分かりになりましたね。オマケに一つ目です!」

 

「やっぱり悪魔なんじゃない!!魔法陣から召喚って時点でおかしいと思ってたのよ!」

 

そう言うとルイズは頭を抱え込んだ。

 

「ああもう、杖に頼らない召喚ですって?

 しかも呼び出すものが悪魔だなんて、ブリミルに仇なす邪法だわ!」

 

だが魔王は怪訝そうな顔をして、彼女に残酷な現実を突きつけた。

 

「ルイズ様、そうは言ってもこの局面、彼らのチカラを借りなければ切り抜けられませんよ?」

 

「う、うぬぬぬぬ。いや、私だってメイジの端くれよ!

 始祖ブリミルの信徒として一線を越えたりはしないわ!!」

 

「これはヒトリゴトですが、ここは地下です。

 当事者以外、何が起ころうがワカラナイに違いありません。」

 

「い、いや、それでも!」

 

「それにルイズ様。彼女たちに簀巻きにされてもいいんですか?」

 

「え? 別にあんたが簀巻きにされたところで知らないわよ」

 

お前は何を言っているんだという表情で、ルイズは魔王を見返した。

 

「・・・ちょっと傷付きました。

 それはともかくルイズ様、私は見ました。

 彼女たちが長々としたロープを携えているのを・・・『2本』、ありました」

 

「そ、それって、どういうことよ!?」

 

「まあ、つまりは『そういうこと』なんじゃあないでしょうか。

 ショージキ、簀巻きにされる破壊神さまというのは聞いたことがありませんが、

 この世界ナンでもありでしょう。モグラがダンジョン掘るぐらいですし」

 

「わ、私が簀巻きですって!」

 

ルイズは思わず身震いした。かつて見た簀巻きの魔王は、グルグル巻きにされてなお、イモムシみたいにうねうねもぞもぞ動き回っていた。ルイズは自分も一緒に縛られ、魔王の隣へ並べられることを考えるだけで、死にたく思えてきた。

 

「そ、そんなの冗談じゃないわ!!!」

 

そこからの彼女の決心は早かった。

 

「分かったわよ!デーもんとやらを呼べばいいんでしょ!呼べば!」

 

「ご決断頂きナニヨリです。ついでに言うと、サッサとたくさん召喚して下さい。

 時間が無いので、今すぐにでも養分をかき集めて頂けると有り難いのですが」

 

それを聞いたルイズは身体を固まらせた。

 

「・・・え?1匹呼べばいいんじゃないの・・・?」

 

魔王はやれやれとため息をついた。

 

「ルイズ様、ブッチャケこのマモノは1匹だけ召喚しても大して役には立ちません。

 複数召喚して、その効果を重ね掛けしてこそのマモノなのです。

 しかもコイツ、繁殖はしないので地道にツルハシで数を増やしていく必要があります。

 戦闘でもあまり大きな期待は出来ないんで、早々に倒されてマモノの防御力が落ちぬよう、

 ダンジョン後方での召喚をおススメします。」

 

「それって、結局養分たっぷりいるんじゃない!どこがお得よ!!」

 

「まあ、ダンジョン全体で見れば防御力がソコアゲされて、

 チョッピリお得になるんじゃないでしょうか。

 1匹呼ぶだけなら繁殖出来る分、トカゲ男を呼んだ方がマシです。多分。」

 

「あんたの話を信じた私がバカだったわ!」

 

邪教認定必須の悪魔モドキ一匹を召喚するために大きな決心をしたと思っていたら、

結局何匹も召喚する羽目になっていた。ルイズはもう涙目だった。

 

「ああ、始祖ブリミルよ!私の罪深い行いを、どうか今ばかりはお目溢しください!」

 

そう言ってルイズは魔法陣にツルハシを振り下ろした。

魔法陣が扉のようにパカッと開く。

ルイズは恐る恐る、中から出てくるデーもんを見つめた。

それは、一言でいえば赤いずんぐりむっくりといった姿であった。

 

「か、かわいい?かしら」

 

デーもんは、確かに角の生えた一つ目の異形である。しかし眠たそうな眼をしつつ、大手を振ってのっそのっそ歩く姿には、どこかしら愛嬌が感じられた。それでいてルイズには、デーもんの赤い体躯をじっくり見つめていると、何だか自分の心が不安定になっていくような気もして、その胸中はますます複雑になっていった。だがキュルケたちにおめおめと負けるわけにはいかない。彼女は気乗りのしない心を奮い立たせて、少しずつ魔方陣を作り出していった。

 

 

「ム?そういえば相手はメイジなので魔法攻撃がメインになるのでしょうか?・・・・」

 

魔王はしばらく考え込むと、冷や汗をダラダラ流し始めた。

デーもん、それは確かにマモノたちの防御力を高める頼れる味方ではあった・・・物理的な意味で。

 

「どうしたのよあんた、何か顔色が悪そうな・・・いや、何時ものことだったわね」

 

「そうです!この頭痛や吐き気がしてきたような顔が、

 マモノにとってのハイって奴なのです!!」

 

「・・・あんた、何か隠してないでしょうね?」

 

「まさか!そんなことよりルイズ様! あなたは好きですか?」

 

「何のことよ・・・って、そうよデーもんよ!たくさん作らなきゃいけないんだし、

 あんたと話してる暇なんてないのよ!」

 

ルイズはぷんぷん怒りつつも、再びツルハシを振るう作業に戻っていった。

そうしてまた一人になった魔王は、しばらく考え込み、やがて結論を出した。

 

「まっ、最近は魔法でも物理がハヤリみたいですし、ヘーキでしょう!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「さあ行くわよタバサ、それにフレイム!」

 

「・・・」 「キュルッ!」

 

無言のうなずきと短い鳴き声を確認したキュルケは、

学院の中庭に突如として現れたダンジョンへと足を踏み入れた。

 

「うわっ!早速なんかいるわね」

 

彼女の目の前にはつやつやした塊やら巨大なムシたちが数多く蠢いていた。

 

「初めだし、派手に行こうかしら?」

 

キュルケはスペルを素早く唱え始めた。

沢山のコケやムシたちが迫りくる中、彼女は落ち着いて詠唱を唱え続け、最後に杖を一振りした。すると一気に、通路を埋め尽くさんばかりの大きな火の玉が現れた。火の玉は通路を真っすぐに飛んでいき、マモノに当たる度に轟という音を立て、より一層明るく燃え上がった。やがて形を保てなくなった火の玉は、奔流となって通路に広がり、物陰にいたマモノたちまで巻き込んで、炙り出した。地面には融けたコケが湯気を立てながら染み込み、宙にはムシたちの残骸が火の粉となってゆらゆらと揺れた。僅かばかり生き残っていたムシにも、須らく火が燃え移っていた。羽を燃やされたデスフライがボトリボトリと地面に落ちていく。中には地面に落ちてなお歩き出すムシもいたが、身体に付いた火が全身に回ると、やがて動きを止めた。キュルケたちの目の前にひしめいていたマモノは、もはや見る影も残っていなかった。

 

「んーーーっ!やっぱ全力で放つのは気持ちいいわね!」

 

「魔法は温存するべき・・・どれだけ長引くか分からない」

 

「キュル!」

 

「それもそうね。じゃあしばらくはフレイムに頑張って貰おうかしら。

 トカゲがムシに負ける訳ないものね」

 

「キュル~ッ!」

 

張り切って先を行くフレイムに続き、キュルケとタバサはその後ろをてくてくと歩いて行った。しかしそう時間も経たない内に、フレイムはピタリと歩みを止めた。訝しんだキュルケは、照らし出された道の先を見て唸った。

 

「この場合、どっちに進むのが正解なのかしら?」

 

彼女の目の前には、どちらが本道かも分からない二手に分かれた道が、見通せないぐらい遠くまで、延々と続いていた。

 

「ねえタバサ、この先がどうなっているか分からないかしら?」

 

キュルケは、風メイジの耳の良さを頼りに出来ないかと彼女に期待を寄せた。

しかしタバサは静かに首を振った。

 

「音が土に吸収されている。奥の方まで分からない」

 

「あら残念。じゃあどっちにルイズがいるのかしら?」

 

そうしてキュルケがしばらく悩んでいると、地を這ってひっそりとデスガジガジが近付いてきた。

 

「キュル~!」

 

だがデスガジガジは、辺りに目を光らせていたフレイムに啄まれると、そのまま口の中でバリバリと音を立てることになった。

 

「よし、二手に分かれるわよ!」

 

「危険・・・戦力が分散する」

 

「それはそうだけど、ルイズ相手にビクビクするのもしゃくじゃない」

 

タバサは非難するような眼差しでそれに答えた。

 

「油断大敵」

 

「分かってるわよ。でもギーシュだって途中までは一人でそれなりに戦えたって話よ。

 馬鹿にするわけじゃないけどドットの彼でもそうなんだから、

 トライアングルの私たちはもっと上手くやれるはずよ。違うかしら?」

 

「・・・」

 

「夜は短いわよ。ささっと勝って、ささっと帰りましょ?」

 

タバサはしばらく考え込んでから、こくりと頷いた。

 

「ありがと、タバサ。じゃあ私はどっちに進もうかしら?」

 

また時間を掛けて悩みそうになったキュルケを差し置き、タバサは手にした杖をすっと傾け、左側へ続く道を指し示した。

 

「私はこっち」

 

「そう?じゃあ私は右ね。フレイムもそっちに付けようかしら?」

 

何かと便利よというキュルケの提案に、タバサはふるふると首を振った。

 

「気を使わなくていい」

 

「でも、折角来てくれたのに悪いわ」

 

「使い魔は主を守るもの。そしてフレイムの主はあなた。

 使い魔もあなたといた方が連携を取れるはず」

 

それに加えて、タバサはこう返した。

心配ない。一人で動くのは慣れてるから・・・

 

「・・・そう。 ならこっちは遠慮なくフレイムと一緒に行かせて貰うわ。

 あなたのことだから大丈夫だとは思うけど、気を付けなさいよ」

 

タバサは再びこくりと頷いた。

 

「あなたも気を付けて」

 

そう言うなり、タバサはとてとてと先を歩き始めた。

キュルケは、タバサの言葉の意味について、深く立ち入ることはしない。

それが彼女たちの関係の取り方だった。

キュルケには、親友のタバサが何事か事情を抱えていることは分かっていた。

しかしタバサは話してくれない。きっとこちらから聞いたところで、同じことだろう。

自分には力にもなれない程に、大きくて、深い事情なのかもしれない。

それでも、いつか話して貰える仲になれたら・・・

彼女はそう思わずにはいられなかった。

 

「ねえ、いいこと思いついたわ!」

 

キュルケの大声にタバサはぴたりと立ち止まった。

 

「ルイズを捕まえられなかった方は、今度街に出たとき奢りよ!」

 

「・・・絶対に負けない」

 

そう言ってから二人は別れ、地中深くに続く道を突き進んでいった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「さあ、気を散らさずにどんどん魔法陣を作るのです。余所見している暇なんてありませんぞ。」

 

「分かってるわよ。デーもんをたくさん出して、今よりもっと強くなったマモノたちを

 あいつらにぶつければいいんでしょ」

 

ルイズはツルハシを握りしめつつ、ふと疑問に思ったことを魔王に尋ねた。

 

「ねえ、デーもんって土から生み出したわけじゃなくて、どこかから召喚してるのよね。

 じゃあこの魔法陣って、一体どこに繋がってるのよ?」

 

ルイズには、この真っ赤で奇妙なバケモノたちがどこかの山や森に住んでいる姿を、到底想像することが出来なかった。

 

「まさか・・・地獄とかじゃあないでしょうね」

 

「とんでもない!」

 

魔王はけしからんとばかりに首を振った。

 

「それはデーもんを舐め過ぎというものです。あなたたちニンゲンはとかくマモノを

 野蛮な存在と思いがちですが、彼らとて立派な文化人なのです。

 地獄なんて辺鄙なところにいると本気でお思いですか?」

 

それを聞いてルイズは、一応悪魔ではないのかしらと、僅かばかりの安心を得た。

 

「この魔法陣は、当然彼らの自宅に繋がっているに決まっています!」

 

「・・・え? 自宅ですって!?」

 

「何がおかしいんですか。」

 

「え、だって、マモノでしょ? あ、分かったわ!

 家って言っても、穴倉の中だとか、巣みたいなものなんでしょう!」

 

それを聞いて、魔王は更に不快そうな顔をした。

 

「赤い悪魔の異名で莫大な年俸を稼ぐ彼らが、そんな暮らしをしているはずがありません。

 彼らだって立派にマイホームを持って暮らしていますとも」

 

「そんなの想像できないわよ!」

 

「ダメですねえ。ダンジョンの主たるもの、想像力が豊かでなくては務まりません。

 思い浮かべてみるのです。デーもんは赤いものが大好きなんです。

 深紅のふかふかな絨毯に、朱色の家具の数々。当然、壁紙もクリムゾンです。

 そうやってお気に入りのものばかりで出来た、赤い部屋の中で彼らは暮らしているのです。」

 

ルイズは困惑を隠せなかった。

この赤いデカブツが、安心できる自分の家の中でゆったりソファに腰かけたり、ごろんとベッドに寝転んだり、おなかが減ったらふらっと台所に立ったりするのだろうか?

彼女がいくらデーもんを眺めてみても、そこから生活感を感じ取ることは出来なかった。

 

「何なら魔法陣に耳でも近づけてみてはどうですか?

 もしかしたら音の一つでも聞こえるかもしれません」

 

ルイズは不気味に思いつつも、好奇心に負けて魔法陣に顔を近づけ、そっと耳をそばだてた。

 

「・・・・」

 

何も聞こえない。

ルイズは諦めて、顔を元に戻そうとした。

 

「あなたは好きですか?」

 

「・・・ッ!!!!」

 

ルイズはいきなり聞こえてきた、小さくも甲高く無機質な声に跳ね上がった。

 

「い、今、何か聞こえたわよ!だ、誰かが喋ったわ!!」

 

「ふむ?おかしいですね。デーもんってニンゲンの言葉を喋れたでしょうか?

 いや、もしかしてあの部屋でシェアルームしている・・・」

 

魔王がしきりに首を傾げる中、ルイズは本当にデーもんを呼び出してしまってよかったのか、改めて悩み始めた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「フレイム!また奥から出て来るわ!」

 

「キュルーッ!!」

 

トカゲ男たちはキュルケ達の姿を認めると、鳴き声を上げながら突進して来た。

しかし彼らの刃が、キュルケに届くことはない。

群れの先頭を走っていたトカゲ男たちは、フレイムの吐き出した炎に包まれ火達磨になった。そうしてしばらくは誰もフレイムに近寄れず倒れていったが、次第に火の息が弱まると、後続のトカゲ男たちが距離を詰め始めた。彼らは懸命に剣を突き出しキュルケに襲い掛かかろうとするも、フレイムはその巨躯を活かして道を塞ぎ、彼らの侵攻を食い止めた。加えてフレイムは、引っ掻いたり、噛み付いたりして、トカゲ男たちを翻弄し続けた。そうして彼らが戦っている隙にキュルケは魔法を唱え終わり、トカゲ男たちを炎の渦に巻き込んだ。魔法の炎は辺りを焦がしつくし、やがて掻き消える。その時、既にフレイムは大きく息を吸い込んで、次なる敵に備え終わっていた。しかしもうその場には、彼が火の息を吹き付けるべき相手は何処にも残っていなかった。

キュルケとフレイムのコンビは、こうして強固なトカゲ男迎撃体制を確立していた。

しかし全く問題がない訳ではない。

当然のことながら、この体制は前衛のフレイムの消耗が激しいものとなる。

またキュルケはキュルケで、魔法力の消耗に気を使わなければいけなかった。

初めはムシやコケも大きな炎で焼き払っていた彼女たちだったが、その数の多さを認識してからは必要に応じて火を弱め、時にはフレイムの打撃によってマモノたちを退治していた。

 

「もっと楽勝かと思ってたけど、結構大変ね。

 ムシも話と違って、赤くて速いし、どうなってるのかしら?」

 

彼女らにとってはトカゲ男こそが一番の強敵であったが、他のマモノも脅威であることに変わりはない。キュルケはお見舞いと称してギーシュに情報収集を行ったとき、青銅のゴーレムに歯形を残すムシの話を聞いており、決してマモノたちを自分に近付かせないよう意識していた。そんな彼女から見て、小さい身体ですばしこく動き回る赤いムシたちは、加減した火の魔法を当てるには難しく、大きな炎で焼き払うには力を使い過ぎるという、十分に悩ましい存在であった。

 

「しかもあのスライムがイヤらしいのよね。

 火で倒すには弱すぎるし、触れるとたまに身体が痺れるみたいだし・・・

 フレイムが動けなくなったときは焦ったわ」

 

今のところ、彼女たちはまだまだ安定した戦いを進めているが、この先どれだけのマモノと出くわすかによって、彼女らの有利な戦況はひっくり返ってしまうだろう。

 

「・・・思った以上に手強いじゃない。

 物量でも攻めてくるなんて、ルイズのくせにナマイキよ」

 

そう言う彼女の顔には、獰猛な笑みが浮かんでいた。

彼女は、使い魔の一件での意趣返しに挑むというだけでなく、純粋に好敵手が力を付けたこと、その彼女とこうして全力でぶつかり合えるようになったことを喜んでいた。

 

「ゼロの癖に誇りを失わないあんたは、いつかきっと化けるって思ってたわ。

 でも・・・私に勝てるなんて思わないことね、ルイズ!!」

 

微熱は情熱となって燃え上がり、ダンジョン内のマモノを焼き尽くしていった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ふにふに。

 

タバサは通路に屈んでオレンジ色のぴちょんとした塊を杖で突っついていた。

触ればヒンヤリして気持ち良さそうにも思えるが、とある事情から毒に詳しくなった彼女は、決して安易に素手で触れたりはしなかった。野生には、無害そうな姿とは裏腹にとんでもない毒を持った動植物がいることを、彼女はよく勉強していた。だがこのイキモノは動物と植物、どちらに近いのだろうか?彼女の興味は、そんな学術的な方面へも刺激されていた。彼女がそうやって初めて見る奇妙で貧弱なイキモノを観察していると、闇に紛れてひっそりと、微かな羽音を立てて飛ぶデスフライが現れた。デスフライは静かに少女の頭上まで近付くと、コケを見つめる彼女の首筋目掛けてゆっくりと降下していった。そしてかのムシが着地の姿勢を取り、喉の渇きを赤き血で潤そうと鋭く硬いアゴをぱっくり開きいたその瞬間、大きく開かれた口には氷の杭が突き刺さっていた。屈みこんだタバサのマントの下からは、いつの間にか杖先が覗いていた。地面にボトリと落ちたデスフライは、しばらく身体をピクピクさせていたが、次第にその動きは鈍くなっていった。

 

「紅色の体色、毒性は不明」

 

しばらくムシを見下ろしていた彼女は、ふいに耳をそばだて始めた。風メイジ特有の優れた耳を持つタバサは、今いる道の曲がり角を進んだ先に複数のマモノどもがいることを聞き取った。彼女は静かに詠唱を始めつつ、逃げも隠れもせずに道を進んでいった。そしてついに青色のトカゲ型亜人と出くわすと、彼女は淀みなく杖を振り、彼らに鳴き声を上げる暇すら与えず氷漬けにした。彼女は何事もなかったかのように氷のオブジェの脇を通り過ぎた。

 

「楽勝」

 

その時、凍ったはずのトカゲ男の瞳がギョロリと動いた。

 

 

「「「クァワァアアーー!!」」」

 

タバサの行く道は、ダンジョンの奥の方から這い出てきたトカゲ男たちによって、再び塞がれていた。しかしやることは変わらないとばかりにタバサが杖を振りかざしたところで、彼女の背後からパキパキという音が鳴り響いた。急いで彼女が振り返ると、『殺した』はずのトカゲ男たちが、全身を覆う氷を打ち砕いて、のろのろと歩き始めていた。

 

「・・・」

 

今やタバサは完全に囲まれていた。だんだんと足を速め近づいてくるトカゲ男たちを前に、彼女は顔色一つ変えずに手を懐に差し込み、あるものを取り出した。

 

「「「クァ!?」」」

 

トカゲ男たちは発達した嗅覚で彼女が取り出したモノを察知した。そして目でそれを確かめると、興奮したように鳴き声を上げて騒ぎ始めた。彼らはもっと距離を詰めた。近付いて見ても間違いない。やはりそこにあったのは、見るからに美味しそうな、こんがり焼けたグレートなお肉であった。トカゲ男たちがじゅるりとよだれを垂らす中、タバサは突如として肉を道の端へと放り投げた。

 

「「「クァワワァー!!!」」」

 

一斉にトカゲ男たちは肉目掛けて殺到し、仲間同士での醜い争いを始めだした。餌を与えられた魚たちがバチャバチャと水面を波立たせるがごとく、トカゲ男たちは代わりに剣と盾をガチャガチャとぶつけ合わせた。幾重にも及ぶ激しい剣戟の末、ついに一匹のトカゲ男が雄たけびを上げた。そのトカゲ男は、仲間たちの恨めしそうな視線を一身に集めながら、手にした戦利品を豪快に頬張った。

 

「グワァッ・・・!?」

 

彼は短く叫んだ後、動かなくなった。周囲の仲間が何事かと見つめる中、彼の体はさらさらと、砂塵のごとく崩れ始めた。呆気に取られたトカゲ男たちは、ぐるっと首を回して肉の出どころを見つめた。彼らは、少女が身の丈ほどもある長い杖を掲げた姿を、そしてそこから幾百もの鋭く尖った氷が雨あられと飛んでくるところを見た。タバサはトカゲ男たちの断末魔を耳にしながら、メモを取った。

 

「偽装性良し。効き目も甚大、即効性あり」

 

彼女はお手製のお肉の評価を詳細に書き込んでいった。料理は、ここ最近の彼女の趣味であった。彼女は無口な態度であるために、よく周りから冷たい人間と誤解されるが、決してそうではない。その証拠に、彼女はとある切っ掛けで仲違いした親戚のおじさんに美味しく食べて貰おうと、天にも昇るようなレシピを作り上げるべく、日夜努力を重ねているのだった。

 

「・・・」

 

タバサがメモに夢中になる中、いつの間にかその背後では、橙色の塊がニョキリと幹を伸ばし、葉っぱのようなものを生やし始めていた。しばらく何かを吸い込むように脈打ったパララメリカは、やがてその先端につぼみのような膨らみを付けた。そしてついに、そのつぼみが開こうとしたとき、長い杖がヒュッと風を切り、それを打ち据えた。開花寸前まで成長したパララメリカはみるみると茶褐色に変わり、最後はバラバラになって崩れ落ちた。タバサはパタリとメモを閉じた。

 

「調査終了」

 

彼女はそう呟くと足を少しずつ速めていき、通路の奥へ奧へと消えていった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ウヌヌヌヌ!あの身のこなし、あの青い小娘タダモノではありませんな。」

 

「それよりもこっちよこっち!トカゲ男がどんどんやられてちゃってるじゃない!」

 

「いや、キュルケ嬢の方は既に結構魔法を使っている様子。

 もう辺りを焼き尽くす程の大きな炎は出せないのではないでしょうか。

 次なるトカゲ男の一団をぶつければ、きっと倒せるハズです!」

 

「あ、ぶつかったわよ!」

 

「それっ!いくのですっ!」

 

「「「ギュエーーーェエエエ゛エ゛エ゛!」」」

 

間も無く、遠くからトカゲ男たちの悲鳴が響いてきた。

 

「あ、アレ?」

 

「やられちゃったじゃない!どういうことよ!?」

 

「・・・もしかして、いやもしかしなくても

 あの一帯にムシが居なくなっているではないですか!

 これではエサがなくてトカゲ男の体力が減る一方です!!」

 

「デーもん作るのに忙しかったのよ!ムシの面倒なんて見てられないわっ!」

 

「ああ、もう! 後に残されたトカゲ男は・・・いないではないですか!」

 

「何よ!あんたが倒せるって言ったんじゃない!」

 

「こ、これは・・・まさか・・・!」

 

「さ、さあアンタ、使い魔の甲斐性を見せるチャンスよ!

 先に行って足止めしてきなさい!」

 

「何をムチャな! ルイズ様だけ逃げようたってそうは行きません!」

 

「ちょっと!足引っ張るんじゃないわよ!いや!簀巻きはイヤあああ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

トカゲ男の一群を片付けたキュルケ達は、ふらふらになりながらも進んでいき、ついに開けた場所を見つけた。

 

「この奥にルイズ達がいるのかしら?」

 

キュルケは一歩足を踏み出し・・・そこで身を竦ませた。

その部屋は、蠢く巨大な『赤』に満ち満ちていた

トカゲ男も人と同じぐらいという意味では大きなマモノであったが、彼女が今目にしている相手は、まるで大熊のような体格をしていた。しかもそれが何匹ものっそのっそと歩き回っている。キュルケはそっと足を引っ込め、通路の土壁に隠れてから息を吐いた。

 

「あんなのがいるなんて聞いてないわよ!」

 

キュルケはギーシュに『お見舞い』に行った時のことを思い起こした。

 

『スライム、ムシ、トカゲ男。ルイズたちが操るマモノはこの3種類さ!

 彼女の目の前にまで辿り着いた僕が言うんだから間違いない。

 ああ、あと少しでも魔法を放つ力が残されていれば、

 勝っていたのは僕だったんだがね・・・』

 

『それ本当なの?』

 

『馬鹿にしないでくれたまえ。僕は負けた上に嘘を付くほど恥知らずじゃあないさ。

 本当に惜しかったんだ。何ならルイズたちに嘘かどうか聞いてみればいいじゃあないか』

 

『嫌よ、そんなの』

 

『君は僕に喧嘩を売っているのかね!?』

 

今から思えば相手はギーシュなのだから、ルイズたちが奥の手を隠していたとしてもおかしくはない。あるいはあの初戦を経て、ルイズたちも力を付けてきたということだろうか。

とにかく、これから戦うべき相手の情報がないのは問題だった。普段の彼女なら、正々堂々と正面から焼き払いに掛かっていただろう。だが生憎今の彼女は、ここに来るまでに大分魔法を使ったことから、あとどれだけ魔法を使えるか不安に思っていた。敵は大きい上に、悪魔と言って差し支えないような姿である。トカゲ男よりは幾分鈍そうであったが、単純に身体の大きさだけ見れば、驚異的な体力を持っていてもおかしくはない。しかもそういう相手が複数いる。動きが遅いからと相手を侮った挙句、じわじわと囲まれてなぶり殺しにされるのだけは避けねばならなかった。そしてそもそも、彼女は相手を倒せるとしても、ここで力を使い切るつもりはない。道半ば、考えなしに精神力を使い果たしたギーシュの二の轍を踏むつもりは、彼女にはなかった。

 

「帰りのことを考えられないなんて、ギーシュのおつむもドットよねえ」

 

クラスメイトの馬鹿さ加減を思い出しながらも、彼女は決断を迫られていた。

彼女にもあまり余裕はない。このまま進むか?それとも退くのか?

 

「ここまで来て引き返すのは嫌よねえ。この場所を突破したら、絶対に私の勝ちのはずよ」

 

「キュル?」

 

「あら、私の勘が外れた試しはないわ」

 

「キュー・・・」

 

キュルケはどうしたものかと考えを巡らせ始めた。

フレイムは暇そうに欠伸をした。息に乗って出た細い炎がチロチロと揺れた。

 

「そうだわ!」

 

突如、キュルケは声を上げた。

何だろうかと、フレイムはゆっくり振り向いた。

 

「ねえフレイム、ちょっと試してみたいことがあるのよ。協力してくれるかしら?」

 

「きゅる?」

 

フレイムはクイッと首を傾げた。

キュルケはフレイムの耳元にそっと口を寄せ、作戦を伝えた。

 

「!キュル!!」

 

「私は大丈夫よ。これでも自分の身は自分で守れるわ。それよりも危険なのはあなたよ」

 

「キュキュキュッ、キュキュー!」

 

「そう?やってくれるのね。ありがと、フレイム」

 

キュルケはそっとフレイムの頬に口づけすると、彼を優しく撫でて送り出した。

 

 

 

フレイムはただ一匹、すばしこく地面を駆け抜けた。如何に強い彼と言えど、大きな体格のマモノに複数囲まれてしまっては危うい。しかし彼は主の指示を忠実に守り、広けた空間の中央辺りまで、するすると立ち止まることなく突き進んだ。そこで彼はピタッと止まると、来るなら来いとばかりに頭をもたげ、周囲のマモノたちを睨み回した。その鋭い眼光には、例え囲まれようとも、他の赤いマモノに負けたりなんかしないという、強い意志が宿っていた。しかし周りの赤い奴らといえば、全く彼に見向きもせず、大手を振るって呑気に徘徊を続けていた。

 

「やっぱりね。予想通りだわ」

 

キュルケはフレイムを遠目に観察しながら呟いた。

 

「私が隣に付いていなければ、フレイムが敵か味方かなんてマモノたちには分からないのよ!」

 

そもそもフレイムは、つい最近まで野生に生きていたサラマンダーである。使い魔になったからといって身体の色が変わったりする訳でもないし、身体に刻まれたルーンだって傍目に分かるものではない。そもそもルーンが見つかったところで、マモノたちにその意味が理解できるか怪しいところだ。彼女の唯一の懸念は匂いだった。野生生物の多くは匂いに敏感だと言うし、特にキュルケはよく香水をつけているので、その匂いがフレイムに移っていないか、それが彼女には心配であった。しかし、未だあの赤い化け物たちが鼻を利かせている様子はない。そこまで見届けて、キュルケはほっと一息つくと同時に、勝利を確信した。これならフレイムだけを頼りにこの場所を突破し、ルイズたちを捕まえてこさせることが出来るだろう。キュルケの脳裏には、反則よ!と騒ぎ立てるルイズの姿がはっきりと目に浮かぶようであった。

 

「でもこれも勝負、言い訳するようじゃまだまだよね」

 

キュルケは半ば、既に勝った気になりながら、再びフレイムに目を移した。そこで彼女は奇妙なことに気が付いた。先ほどはまるで関心を示していなかった赤いバケモノたちが、いつの間にかフレイムの後ろへとのっそり近づいて来ていた。

 

「何よ!やっぱりフレイムが仲間じゃないって分かるわけ?

 ああもう、フレイム! 気付いて頂戴!!」

 

いざとなれば自分が出ていくが、精神力の心許ない今、出来れば彼自身に対処して欲しい。キュルケは大声を上げることも出来ず歯噛みしたが、間もなくフレイムは背後から忍び寄る気配に気が付き、くるっと身体をバケモノたちへと向け直した。

 

「きゅる~~~~!!!」

 

さあ来いと、フレイムは気勢を上げた。赤きバケモノたちは、一切の動揺を見せず、歩み寄り続ける。いよいよ距離が詰まる。さあ戦闘かと、フレイムが身構えたところで・・・バケモノたちは彼を素通りした。

 

「・・・キュル?」

 

フレイムは訳が分からないよという風に首を傾げた。他のバケモノたちもフレイムを通り過ぎていく。そこでまたフレイムがくるっとダンジョンの奥の方へ体を向けると、丁度通り過ぎていった化け物たちが向きを変え、再び彼にむけて歩き出すところだった。フレイムは再び油断なく身構えたが、やっぱり赤い奴らはゆっくりと彼に近付いたかと思えば、そのまま彼に目も向けず素通りするのだった。

 

「キュルキュルキュル?!??」

 

フレイムは大いに困惑した。この先、どうすればいいのだろう?

バケモノどもを無視して進めばいいのか?それとも今戦うべきなのだろうか?

キュルケは物陰からその様子を眺めつつ、ある推察をしていた。

 

「もしかして、あいつらは火に誘き寄せられてるんじゃないかしら?」

 

あの赤いバケモノたちの動きは明らかにフレイムの影響を受けているが、しかしフレイム自身に関心があるようには見えない。となれば、やつらはフレイムの尻尾に灯る火に向かって歩いているのではないだろうか。

 

「明るい方に誘き寄せられるなんて、まるで虫みたいね」

 

人間にとっては鑑賞の対象となる成りの良いサラマンダーの尻尾の火も、野生生物にとってはただの明かりに過ぎないだろう。キュルケは、なんだか今まで自分が警戒していたのが馬鹿らしく思えてきた。火を見て引き寄せられる程度のおつむの相手であるなら、取り敢えずは一安心である。

 

「ああフレイム、薄暗い場所で見るあなたも美しいわ。

 あなたのキュートな尻尾の炎、まるで宙に浮かび上がった鬼火みたいで幻想的よ!」

 

デーもんが、揺れ動く『鬼火』をギョロリと目で追った。

 

 

初め、キュルケは目の錯覚を疑った。

フレイムの炎に照らされた赤いバケモノの、その大きなお腹を横切るように、

突如として真っ黒な線が現れた。その線は見る見る内に太くなっていき、

遂には腹がパックリと真横に裂けた。キュルケが動転している間にも

裂け目は広がっていき、やがてその中から幾つもの白い杭が覘き出した。

やっとその『杭』が歯で、『裂け目』が口だったことに彼女の理解が追いついたとき、

既にその口からは丸太の様に太い舌がベロンと飛び出していた。

デーもんは長く伸びた舌を器用に操り、瞬く間に『エレメント』らしきものを

尻尾ごと絡め取ると、一気に腹の中へ引きずり込んでバクンッと口を閉じた。

 

 

「ギュル゛ゥヴヴウヴヴウウヴウウ!!!!!」

 

「フレイムッーーーーー!!!!」

 

キュルケは叫ぶと同時に走り出していた。彼女はバケモノに近寄り急いで魔法を放とうとしたが、フレイムが大きく暴れまわるため、中々バケモノに狙いを定めることができなかった。彼女が二度、三度と、必死でファイアボールを当て、ようやくそのバケモノを倒した時には、既にフレイムはぐったりしていた。

 

「大丈夫!?フレイム!!」

 

「きゅる・・・」

 

小さくフレイムが鳴いた。普段は人魂のごとく見事に燃え盛る尻尾の炎もどこか弱弱しく、それは彼の不調を如実に表していた。サラマンダーの尻尾の炎、それは命のともしびでもある。尻尾の炎が消えるとき、その命は終わってしまうという。キュルケがしきりにフレイムを心配する中、急にぞわりと彼女の背中が震えた。

 

彼女が急いで振り返ると、部屋中の赤いバケモノがこちらを眺めていた。

彼女にも、今ならはっきりと分かった。

やつらは暗闇の中に浮かぶ炎、チロチロと燃えるフレイムの尾の先を

じっとりともの欲しそうな目で見つめていた。

同時に彼女は、自身に向けられ始めた殺気にも気が付いた。

ニンゲンという敵を見定めた彼らが、怒気を以って大手を振り上げ、叩き殺しにかからんとぐいぐい近づいて来る。デーもんたちは今や大きな赤い壁となって押し寄せ、キュルケたちを真っ赤に染め上げようとしていた。

 

「いやぁあああああ!!!」

 

キュルケはフレイムを必死に抱き寄せながら、這う這うの体でその場を逃げだした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「  な、な!」

 

ルイズが言葉に詰まる中、魔王は朗らかな笑顔で喋り出した。

 

「いやあ、デーもんの捕食シーンは豪快で、いつ見てもホレボレとしますね。

 しかし好物のエレメントとマチガえて飛びついたのでしょうか?

 何にせよ、デーもんグッジョブです!

 後は彼女らに追撃を加えて仕留めれば完璧です!」

 

「何なのよあれはぁああ!!!」

 

しかしルイズの叫びの意味は魔王には伝わらず、スゴイでしょう!等という返事が返された。

 

「ルイズ様も今の活躍を見ていたでしょう? まあ、ちょっと特殊な状況でしたけど。

 ズルしてラク~にダンジョンクリアしちゃおうなんて奴らには罰あるのみです!」

 

「いや、確かに助かったけど、そうじゃなくて! あんなのって!!」

 

それを聞いて、急に魔王は顔を強張らせた。

 

「んん?いやそんなまさか・・・あの赤い部屋からデーもんを

 召喚しておいて、それは・・・いや、しかし一応確認しておきましょうか。」

 

そう言うと魔王は、深紅の瞳でルイズを真っ直ぐに見据え、問いかけた。

 

「あなたは赤い・・・好きですか?」

 

「あんな赤いやつ、嫌いよっ!」

 




その途端、ルイズは空気が変わるのを感じた。
地面の魔法陣が、彼女を責め立てるかのように鮮烈な赤色で光り始めた。
魔王は、普段が嘘であるかのような無表情で、彼女をじっと見続けている。

「な、なによ!なんだっていうのよ!」

ふいにルイズは、背後に言いようのない気配を感じた。

何かがいる。
私の後ろに何かがいる!!
早く逃げ出したいがこの場から動けない・・・




そして彼女は、血のすえた匂いと共に、死霊渦巻く異界の声を聞いた。




「     は  い  ー   が  き    ? 」



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