Roar!   作:渋川 武志

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SCENE-12 放課後⑤ 戦隊ごっこだったはず・・

戦隊ごっこをするにあたって戦隊役がいないという重大な欠陥に気づいてしまった永井。

 

たまたま廊下を横切ってしまった不運な男:中島は

この不毛で生産性のない戦隊ごっこに巻き込まれてしまうのであった・・・。

 

 

 

教室の真ん中に4人は集まっている。

午後4時半のこと。

 

 

永井「じゃあ私は戦闘員」

 

愛川「私は夜道端を・・」

 

篠田「はいはい、怪人ね。で、うちが悪の総統?」

 

中島「で、俺がレッドね」

 

永井「よし、じゃあ始めよう!」

 

この状況を疑問に思った中島、颯爽と挙手!

 

中島「ちょい待ち!え?俺戦隊一人?一人戦隊?」

 

すると急に永井は真顔になった。

 

永井「そうだよ、なんか文句ある?」

 

中島「誘っておいてなんだよそれ・・。この人急に態度豹変しすぎじゃね?」

 

篠田「いつものことなの」

 

中島「大変だな」

 

真顔から急転、永井は焦った顔になった。

 

永井「あ!!ナレーションがいない!?」

 

篠田「必要なのそれ!?」

 

愛川「語り部は重要だよ。ナレーションがいるといないとでは

   ロールプレイへの入り具合が段違いだよ」

 

中島「そういうもんなのか?」

 

篠田「しらなーい」

 

永井は教室の扉から廊下を覗いた。

 

永井「誰か来ないかなー・・・・」

 

篠田「もうこれ以上犠牲者を出さないでよ・・・」

 

愛川「じゃあ私がナレーションもやる」

 

永井「じゃ、始めよ!!」

 

愛川「昔昔あるところに・・・」

 

篠田「これって昔話なの?」

 

愛川「悪の秘密結社とたった一人で戦う勇敢なる男がいました。

   彼はこう呼ばれていた。DKと!」

 

篠田「DKって何!?」

 

中島「男子高校生じゃねーの?」

 

永井「え、違うでしょ、ダークカイザーじゃないの?」

 

中島「それ思いっきり悪役の名前じゃんか。えーっと・・」

 

篠田「この子楓って名前」

 

中島「楓ちゃんって・・・中2病?」

 

また永井は真顔になった。

 

永井「それはない」

 

篠田「厳密にいうとBHP病ね」

 

中島「何それ」

 

篠田「ブラックヒストリープロダクション、黒歴史量産病。

   まぁあれね、わかりやすく言うと痛い子」

 

中島「あーそういうことね、納得した」

永井「私は痛い子ではありませんけど・・・・」

 

篠田「ちなみに変わってるねって言ってあげると喜ぶよ」

 

中島「ガチな人じゃん!!」

 

 

 

愛川「話進めていい?」

 

永井「で、結局DKって何なの?」

 

愛川「ダルそうな高校生」

 

篠田「どんな世界だよそれ!なんでダルそうな高校生が悪の秘密結社と戦うんだよ!」

 

愛川「ナレーションは私。つまりこの世界の設定を生み出すのも私。

   この世界の創造神は私」

 

中島「この子も痛い子なの?」

 

篠田「いや、この子はいい子。ちゃんと楓に乗ってあげてるの・・・たぶん」

 

中島「あ、そういえばフィフティフィフティって言ってたな・・・飯島が」

 

篠田「ちなみにあの子はランラン、うちは恵ね」

 

愛川「ある日、悪の総統はこういいました」

 

愛川がどうぞのジェスチャーを出す。

 

 

篠田「え!?この世界の創造神が仕事を放棄した!?」

 

愛川「違う、ここからはめぐみのセリフだから。役には干渉しないの」

 

篠田「神の手の及ぶ範囲狭っ!!」

 

篠田「えぇ・・・ふふ・・・ははははは・・・。

   この頃の高校生は何と愚かなことか・・。

   人間の三大欲求を満たすためだけに

   日々を生きているような愚者ばかりよ!

   食欲!性欲!睡眠欲!!

   今こそ!綱紀を正す時が来たではないか!

   悪の秘密結社の総員よ!

   全国の高校生の性根を叩き直せ!どんな手を使っても構わん!」

 

中島「うわー結構入ってんなぁ・・・」

 

愛川「悪の秘密結社は文科省だった・・?!」

 

永井「ははーっ!!!」

 

中島「(さぁ・・・どう出る・・・。

   ここから先の展開を決めるのはお前だぞ痛娘!)」

 

 

 

永井「そこの女子高生!!ちょっとこっちに来い」

 

愛川「知らない人には付いて行っちゃだめってママから言われてるから行かない!」

 

篠田「おいおい何歳児だ、高校生っつってんだろ」

 

永井「そうか・・なら少々手荒な方法に及ぶとするかな・・・」

 

中島「しゃべり方が明らかに戦闘員とは一線を画すレベルだぞ・・・

   こいつ実は幹部だろ」

 

永井「相手の秘孔を突き、身動きを取れなくする・・・・」

 

篠田「それなんていう神拳奥義だー?」

 

愛川「あたしをただのJKとでも思ってるわけ・・?

   そんなんだからあんたは戦闘員どまりなのよ・・」

 

永井「何を?」

 

中島「おいおいどういう展開だよ?お前夜道を歩いてる一般人役じゃねーの?

   そんなしゃべり方して戦闘員煽るのがあなたの中の一般人像なの!?」

 

愛川「あたしはJK・・そう”ジョーカー”。あたしとあったが運の尽き。

   あんたはここで私の腕の中で息絶える・・・。この先の運命はそれ一筋」

 

永井「ほう・・・。威勢のいいJKね・・・。でも

   所詮は膜も破れていない青いガキよ。大人の恐怖を刻み込んでやるわ・・・・。

   その体にな」

 

篠田「ちょっと待ってレベルが高すぎる!?下位の戦いのレベルが高すぎる!」

 

愛川「切り刻んでやる・・・ザクザクキリング!!」

 

中島「なんか鋏の商品名みたいだな・・もうちょっと捻れよ」

 

永井「はぁぁぁ・・・・・・悪の神拳奥義!点穴貫通突き!!!」

 

 

愛川「ぎゃああああああ」

 

篠田「ただの浣腸じゃん!!!!」

 

中島「え?これマジで当てていくの?今の完全に入ってたよ!?

   ぜってー痛い奴だよアレ!?」

 

 

愛川「ぐああぁぁ・・・・・」

 

※本当に悶絶中

 

永井「くくく・・・大人を甘く見るからこうなるのだ・・・・。

   だが安心しなさい。

   大人の私たちがあなたたちを正しい方向へ導いてあげる」

 

篠田「言ってることは間違ってないのがまたなぁ・・・・」

 

永井「総統!一人捕まえました!改造手術の準備を」

 

篠田「うん、わかった・・・」

 

篠田「ねぇ・・・トイレ行く?」

 

愛川「・・・ヴ…ん」

 

 

篠田は愛川を抱えてトイレに行った。

 

 

中島「俺今日無事に帰れるかな・・・・」

 

永井「は・・・・・・わたし大事なこと忘れてた!!」

 

中島「それは・・・役でのセリフ?それともマジ?」

 

永井「マジな方!今日早く帰って家の洗濯物取り込まなきゃいけないんだった!!

   今親2人とも出張中でいないんだー!!ごめん帰るね!続きはまた今度!!」

 

 

中島「・・・・超急展開だな」

 

篠田「あれ?楓は?」

 

 

中島「家の用事があるって帰った」

 

篠田「ええ!?あいつマジでなんなんだよ!」

 

中島「どうする?続ける?

   ぶっちゃけ戦闘員とかいなくてもできちゃうけど・・・」

 

篠田「いや帰る」

 

中島「やっぱりそう来るか・・・・」

 

篠田「じゃね」

 

中島「あの地雷3姉妹はマジで約束だけの関係なんだな・・・」

 

中島「俺も帰るか・・・・・」

 

 

 

数十分後

教室に戻ってきた愛川

 

 

愛川「あれ・・・・・・・」

 

愛川「・・・・・・・・・」

 

愛川「あいつら覚えとけよマジで・・・・っち・・・」

 


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