わたしはヘリコプターとやらに乗って、大富豪達の住んでいる山へ向かった。
しかし、山の麓に着いた瞬間、突然ヘリコプターは墜落した。
運転手が突然苦しみ初め、そのまま息絶えたのだ
わたしは動揺した。
このDIOがあろうことか、動揺してしまったのだ。
ヘリコプターが墜落した程度では、このDIOはどうにもならぬ。
わたしはそのまま山を登っていった。
山を登ると、建物が見えて来た。
おそらく、そこが例の大富豪達の別荘地帯だろう。
わたしがその建物に近づくと、子供が中から出て来た。そして、わたしに言ったのだ。
「遠路はるばるようこそ、おいでくださいました。
ですが、無礼なる者に売る土地はございません。本日はお帰りください」
とたしかにわたしに言ったのだ。
その言葉で、わたしは意図的にヘリコプターが墜落させられたと確信を得られた。
わたしは一瞬この子供はスタンド使いなのだと思った。
だが、それは違うとすぐに分かった。
この子供からは精神のエネルギーを感じない。
とても、スタンドを操れるほどの精神力があるとは思えなかった。
それならば、この子供を操るスタンド使いとヘリコプターを墜落させたスタンド使いの2人がいるのだと思った。
事実は違ったのだが、わたしは相手をスタンド使いだと完全に思い込んでしまっていた。
「ほう、面白い。このDIO相手にどこまでやれるか試してやろう」
わたしはそう言いながら自分のスタンド『ザ・ワールド』を出した。
わたしは時を止めて、子供を無視して中へ入ろうとした。
だが、時を止めることは出来なかった。
まるで、最初から時を止めることなど出来なかったかのように。
わたしは恐怖した。
今度は動揺ではない。
恐怖してしまったのだ。無敵だと思っていた力が、容易く封じられたことに。
だが、それも一瞬のこと。
わたしはもとより、能力に頼り過ぎていた。
ただ相手の能力が、能力を封じるためのものだっただけだ。
わたしの持つ力はそれだけではない。
そう思ったのだ。
いや、そう思い込むようにしたのだ。
「小僧、何をした?」
わたしは駆け引きなど考えず、単純に聞いてしまった。
まだ、少し動揺していたのだろうか。
今、思えばそれは正解だったのだが。
その質問に対し、子供は少しも考える素振りを見せずに答えた。
「この山の土地に入る時、敬意無きマナー違反者は自信の大切なものを失います。マナーに寛容は無し。ひとつ得るか、ひとつ失うかそれだけです。」
このDIOはいまさらだが、この時点で敗北していたのだと思う。