個性以前に個性的な奴等ばかりなんですけど   作:ゴランド

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「ヒーロー予備軍である仮面ライダーアマゾンこと天倉孫治郎は謎の天才科学者、葛城巧が行う未来へ繋がる輝ける科学実験にその身を投じたのであった!」

「何が投じてだよ、ほぼ騙して人体実験させたんじゃねーか。あと、謎のって言ってんのに名乗っちゃ意味ねーだろ」

「うるさいよ馬鹿。細かい事は気にしないの。……と、そんな事よりもハザードレベル、2…3…4……まだまだ上昇しているぞ……!」

<出してぇぇぇぇええええッッ!

「悲鳴上げてるけどいいのかよ。俺達どう見ても悪役じゃねぇか」

「大丈夫、そう言う時は『おのれディケィド!』とか『乾巧って奴の仕業』って言っとけば大抵は許されるんだよ」

「赤の他人の仕業にしてんじゃねぇよ!」

「とにかく、どうなる第56話!」






第56話 新・姿・変・身

【I・エキスポ】

最新のアイテム実演、サイン会、展示会等のヒーロー関係の催し物が一通り存在するソレはヒーローを志す者にとっては夢のような場所である。

 

エキスポが開催されている人工島I・アイランドにてオールマイトの付き添いとしてやって来た緑谷もソレに含まれ、目を輝かすばかりである。

そんな彼はオールマイトの旧友兼個性研究トップランナーの天才発明家【デイヴィット・シールド】の娘である【メリッサ・シールド】と共にエキスポを回っていた。

 

すると予定調和の出来事のように緑谷のクラスメイト達も招待チケットやヒーロー関係により合流する形で続々と姿を現したのである。

 

 

「まさか、こうして皆で会えるとは思わなかったよー!」

 

「そうそう、なんやかんやでヒーロー関係者多いからね」

 

「ウチら付き添いだけど……」

 

 

 オールマイトと秘密の関係にある緑谷出久。スポンサー関係の八百万、ヒーロー"一家"である飯田天哉。と言ったように雄英にはI・エキスポの招待状を貰える者がかなりの数で存在する。

 

現時点では一般公開前の為、少人数だが翌日になればホテルに滞在している他のクラスメイト達も合流する事となるだろう。

 

 

「付き添いの形か。そう言えば切島君が爆豪君に付き添うとか言っていたが……」

 

「もしかして、コッチに来てるとか?」

 

「まっさかー、ここまで皆が揃うのは流石に無くない?」

 

「あーあ、これなら天倉に声掛けとけば良かったな」

 

「あー、でもよ?アイツの親って元ヒーローだろ?だったらエキスポの招待状でも貰っていてもおかしくねぇだろ?」

 

 

 天倉の父である天倉大河。何らかの理由でヒーローを引退されたと言われているオールマイトやエンデヴァーと同時期に活躍されたヒーローだが、オールマイトのインパクトが凄まじいのか、大河こと【フィッシュタイガー】については謎が多い。

 

 

(天倉君に聞きたいけど絶対嫌がるよなぁ……)

 

 

 親子関係が上手くいってないであろう天倉を刺激しない為にも何も聞かないようにしている緑谷は複雑な表情を浮かべる。

 

前日に何か忙しそうだった為、コッチに来るのは難しいだろうなと緑谷は天倉に対して同情する事となった。

 

 

「あ、そう言えばさ。昨日、天倉君から連絡来てたの知ってた?」

 

「マジで?俺ら飛行機ん中居たからなー……ほら、飛んでる時にスマホ弄っちゃダメだろ?」

 

「うん、でも内容が『ボケステ』の一言なんだよね」

 

「「「ボスケテ?」」」

 

「ボスケテ、ボスケテ……うーん、ボクをたすけて?」

 

「何かの誤字なのかな?」

 

「コラそこーーーッ!ちゃんと仕事をしたまえ!」

 

「わ、悪ぃ……」

 

「それに見てみろ!あそこにもお客さんが居るじゃあないか!」

 

 

 まるでいつも通りの教室内のノリで会話して盛り上がる上鳴達に飯田が呼びかける。

彼の指をさす方向にはサングラスを掛け、帽子を深く被りやや不機嫌そうにも見える男性客の姿がおり、迷惑になってしまったのだろうと上鳴達は黙ってしまう。

 

 

(この人………)

 

 

 緑谷は、この人から発せられる得体の知れない何かを感じる。こちらを見ていない。もっと別の何かを見て────

 

 

「………」

 

「す、すみませんでした……」

 

「気にするな。子供が騒がしいのは何処も変わらない」

 

 

 サングラスから透けて見える瞳が合わさった気がした。一般公開前である今日この日に来る人は限られるが、もしかしたら凄まじいVIP待遇を受けている人なのかも知れないと思いやや気不味くなった緑谷は委縮してしまう。

 

 そんな彼等の元にキンキンに冷え、3、4個の氷が心地良い音を奏でるジュースが置かれた。上鳴達と同じ格好をしたウェイターらしき人物は笑みを浮かべながら口を開いた。

 

 

「こちら、冷たいお飲み物になります。ゆっくりして行ってくださいね」

 

「あ、すみません……って、飲み物多くないですか?」

 

「上鳴君と峰田君の分も含めてだよ。友達が来てるならちょっとくらい休憩挟んでも大丈夫だよ」

 

「「恩に着りまーーすッ!」」

 

「あ、どうも。上鳴君達がお世話になっています。此処の助っ人で来ました沢木哲也って言います」

 

 

 行儀良くお辞儀するウェイターに戸惑いながら緑谷達も返すようにペコリとお辞儀を行う。

 

 

「いやぁ、この人の賄い飯が美味くてさ!」

 

「ランチラッシュの飯も美味いけど、この世には上が居るもんだなぁ……」

 

「ははは、俺これでも料理には自信があるんですよ!夕食のディナーでは俺が一から育てた野菜で作った料理を出すんで楽しみにしていてください」

 

「自家製!ディナー!」

 

「麗日さん!垂れてます垂れてます!」

 

「だから静かにしないか君達!!」

 

 

 麗日の涎を口端からダラダラと垂らす様子に八百万はハンカチを創造すると彼女の口元を拭く。そこに独特な動きをしながら委員長らしく叫ぶ飯田。雄英と変わり様の無い光景に緑谷は思わず「ハハ……」と苦笑いを見せる。

 

そんな彼等だが、ズンッ!と近くの建物から大きな破壊音と衝撃を感じ、視線の先には爆煙が天高く上がっていく光景が広がっていた。

 

 我々はこの聞き慣れた爆音と力強さを知っている!いや、この爆音と衝撃の原因を知っている!

嫌な予感がしたAクラスの全員はその会場へ足を運んでいったのだった。

 

 

「行っちゃったか……っと、すみません御注文をお伺い……あれ?さっきまでここに誰か居たはずなんだけどなぁ……?」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 結果的に、爆煙の原因は爆豪だった。アトラクションの1つであるヴィラン・アタックに挑戦した彼はクリアタイム15秒とトップの成績を叩き出したのだ。

 

幼馴染である緑谷は相変わらずの凶暴さに引き攣った笑顔を見せるが、狂犬の如く噛み付いてくる彼のストッパーの役割として切島が着いて来てくれたのは正直助かったと思っている。

 

 

「いやぁ、体育祭で優勝した爆豪の付き添いとして着いて来たけど、すげぇなココ。なに?これから皆でアレ、挑戦すんの?」

 

「やるだけ無駄だ!俺の方が上に決まってんだからな!」

 

「うん、そうだね、うん!」

 

「でも、やってみなきゃ分からないんじゃないかな」

 

「うん、そうだねっ……って麗日さん⁉︎」

 

「だったら、早よ出てミジメな結果出してこいやクソナードが!」

 

「は、はいっ!」

 

 

 

「なんか、いつも通りって感じだな」

 

「おう、此処で天倉が『はい、爆豪君落ち着いてどうどう』って言って逆上した爆豪から逃げる形でアトラクションに参加する流れだろ?」

 

「でも、アイツ居ないんだよな。どうしたんだろ?」

 

「あぁ、せめて俺になんか連絡残してくれば良かったのに……」

 

 

 轟は少し悲しそうな表情を浮かべ呟く。ウンウンと同情の意を見せるように切島は頷くが、直後とある違和感に気がつく。

……あれ、轟って俺達と居たっけ?

 

 

「って、轟お前、シレッと入って来たなオイ!」

 

「テメェ!半分野郎!いきなり出てきて俺すげーアピールするつもりか!」

 

「……何のことだ?」

 

「おまたせ……って、轟君!?」

 

「彼もクラスメイト?」

 

「はい、そうです!轟君もアトラクションに?」

 

「いや、俺は出ねーぞ」

 

「マジか!」

 

「なら、こんな所に来てんじゃねぇよ!だいたいテメーどうやって来やがったッッ!」

 

「招待を受けた親父の代理で。天倉も誘おうと思ったんだが断られてな………」

 

((((うわっ、めちゃくちゃテンション低くなってる⁉︎))))

 

 

「ところで、緑谷の記録は2位か…凄いな」

 

「えっ、ありがとう轟k「俺が上だがなッッ!」かっちゃん⁉︎」

 

「爆豪は……緑谷の記録より()()()()1()()早かったのか」

 

「────」

 

 

瞬間、爆豪の頭に一気に血が流れ込んだ。

幼馴染である緑谷出久。今まで底辺と見てきた彼と自分の差がギリギリ1秒と言う事実に彼は我慢ならなかった。

デクが速い?いや、そんな筈は無い。アイツはノロマだ。

それじゃあ俺が遅い?スロウリィ?

 

圧倒的な差を見せつけ、1番となる彼にとって轟が口にした言葉は屈辱と同等、或いはそれ以上のモノとなったのだ。

 

 

「もう一回だ……!デクとの差を見せてやらぁ……ッッ!」

 

「あのー、アトラクションの時間はそろそろ終了になりますので……」

 

「うっせぇッ!次は俺だッッ!!」

 

 

 アトラクションのMCと揉め事を起こし始める爆豪に向かって飯田を筆頭にクラスメイト達は駆け出した。

 

 

「皆!止めるんだ!雄英の恥部が世間に晒されてしまうぞ!」

 

「う、うん!」

 

「お、おう!」

 

「なんだてめぇら、放せ!燃やすぞ!」

 

「あっ!クソッ!力強ェ!天倉はいつも1人でこうやってんのか!」

 

「かっちゃん、落ち着いて!」

 

「これ以上、恥を晒すのはやめたまえ!」

 

「誰が恥だ!」

 

「ここは語ろうぜ、爆豪!」

 

 

耳郎はチラリと横に居る八百万と麗日を見る。

 

 

「見て!アレが男と男の因縁!燃えるシーンってヤツだよ!」

 

「男と男の因縁……そういうのもあるのですね」

 

「天倉ーーー!早く来てくれーーーーッ!そしてコイツ等を止めてくれーーーーーッ!」

 

 

 耳郎は何処に居るか不明の天倉に向かって叫ぶ。ただ願うのはコイツらを黙らせて欲しい。それだけであった。頼むから私ばかりに負担をかけないでほしいと

そんな彼女の隣でメリッサは「あっ」と何かを思い出したように呟く。

 

 

「あ、皆!そろそろ()()が始まるわ」

 

「あ、()()ですか?」

 

 

 アレとは何なのか、全員の頭の上に疑問符が浮かぶ。すると、先程までアトラクションとして存在していた山岳地帯を模したステージは沈む形で舞台から消えると、入れ替わる形で1人の男性と複数のロボットがステージ上に現れたのだ。

 

 

「それでは皆さん!お待たせしました!世紀のてぇんさぁい物理学者葛城巧が送るガジェットの数々をお送りします!」

 

「えーと、あの人は?」

 

「あの人は葛城巧さん。史上最高のIQの持ち主で警備セキュリティから個性強化用のコスチューム、サポートマシン。その他にも凡ゆる分野で幅広く活躍している人なの」

 

「へぇー、とても凄い人なんだ!」

 

「それに、とっても面白い性格をしているし」

 

「あ、なんかソレは分かります」

 

「アレだね、天才は頭のネジが何本か飛んでるってヤツ」

 

 

 

 

 

「市民の防衛、敵の撃退を大容量のCPUにより自動で行う【ガーディアンシリーズ】に加え災害発生時における市民の救出、ヒーローの支援を送る大型ビークル!【パワーダイザー】となりまーすッ!最高でしょ!天才でしょ!」

 

 

 マイクを手にする葛城。そしてその後ろで隊列を組むガーディアン部隊と巨大なパワーダイザーの姿に観客席の人々は「おおっ」と声を上げる。

 

 

 

「うむむ、アピールとしては正しいのだろうが……こう、脳裏に俺を騙した彼女の姿が……ッ!」

 

「あー、なんかサポート科に通じるものがあるよね」

 

 

「で・す・が!こう、あなた方はこうは思いませんか?もしも市民を守る為の発明品が我々に牙を剥いたとしたら?」

 

 

 ロボットの兵隊であるガーディアンの目に該当する部分がギラリと輝いたと思うと、兵達が銃口を葛城を囲む形で構えたのだ。

急な事態に緑谷達は機械の暴走か⁉︎と思い咄嗟に前に出ようとするがメリッサが「いつもの事だから大丈夫」と言う。

いつもの事とは?も疑問に思う皆を尻目に葛城は手を天に向け伸ばす。

 

 

「ご心配無く!そんな我々を守るヒーローは立ち上がる!俺達科学者はそんなヒーロー達を強くする為に日々、進歩を遂げている!ここに、希望の1つとなりうる星がまた生まれました!」

 

 

 余裕の笑みを見せ、パチンッ!と指を鳴らすとスピーカーから謎の音楽が流れ始める。

直後、会場のとある場所から声が響く。

 

 

「待ていッッ!」

 

『『『『!?』』』』

 

 

 その者は太陽を背にスピーカーが設置されてある鉄柱の上に立っており、かろうじてシルエットが見えるそれは機械相手に口を開き始めた。

 

 

 

「戦いの虚しさを知らぬ愚かな者達よ……戦いは愛する者達を助けるためにのみ許される。その勝利のために、我が身を捨てる勇気を持つ者……人それを英雄(ヒーロー)と言う

 

 

『だ、誰だ!』

 

 

 お前喋るの⁉︎とガーディアンの一体が流暢に言葉を発した事に驚くが、それ以上に露わになったシルエットの正体に緑谷達は驚愕する事となった。

 

 

「貴様等に名乗る名前は無いッ!」

 

 

「「「「何やってんの天倉(君)⁉︎」」」」

 

 

 

「とぁッ‼︎」と建物5階分は相当する高さから落下しながら、腰に巻いた見慣れない装備に注射器のようなツールを射し込むと彼は叫ぶ。

 

 

アマゾン(変身)ッ!」

 

ν(ニュー)・OMEGA』

 

 

 緑色の炎と共に、幾何学模様のオーラが出現。電光を纏いながらステージ中央に着地すると同時にその姿は先程とは全く別の姿へ変化していた。

 

 緑色と血の色の傷跡を模した模様に額に伸びた触覚。ここまでは彼等の知る天倉の姿だろう。しかし爆炎の中心には陽の光を反射させた銀のプロテクターを装着し、透明のバイザーから赤の複眼を覗かせる。

 

電光をバチバチと残しながら、天倉孫治郎ことアマゾンの新たな姿。

アマゾンver.【ν・Ω】がこの地に降り立った瞬間だった。

 

 

「それでは、新たな希望の実力。とくとご覧あれ!」

 

 

 指を鳴らすと共にガーディアン部隊の銃口から無数の弾丸が放たれる。天倉は宙を舞うように身体を捻ると、放たれた弾丸を悉く回避してみせた。

視覚情報から弾丸は効かないと判断したのか数体のガーディアンが近距離戦闘を仕掛ける為、天倉に向かって駆け出す。

 

 

「はぁッ!」

 

 

 しかしそれを物ともせず正拳突き、蹴り、チョップ、関節技。

凡ゆる方法でガーディアン部隊の無効化を行う。

 

 

『対象の危険レベルを確認。確実に排除する』

 

 

 後方のガーディアン達は一定の距離を保ちつつ銃器による遠距離射撃。近接で格闘を行うガーディアン達と連携を行いヒーローを徐々に追い詰めていく。

 

 

「確か……こうやって!」

 

『BLADE・LOADING』

 

 

 が、ベルトに備わった注射器のように見えるツールを操作した直後、熱量を持つ刃が腕に装着された。真っ直ぐに伸び形成された剣を携えた天倉はガーディアンの首、肩、胸を貫き次々と兵達を薙ぎ倒していく。

切り刻まれた残骸を踏み潰し、威嚇行動を行う荒々しい獣の如くアマゾンは剣を振るいつつ、再びベルトの操作を行う。

 

 

『CLAW・LOADING』

 

 

 装着された剣から鉤爪へ変形し足元に落ちているガーディアンの頭部を爪に引っ掛けると腕を大きく円を描くように振り回す。すると鉤爪はモーニングスターのように周囲の機械仕掛けの兵隊達を薙ぎ払っていった。

その光景を緑谷出久は常に持ち歩いてるノートを持ち出し目を輝かせていた。

 

 

「すごい!やっぱりアレは天倉君の"個性"で武器を形成してるんだ!サバイバル訓練の時に槍を作り出したのと同じ要領でサポートアイテムの強化で凡ゆる武器を形にしてるのかぁ〜〜〜!I・アイランドに来て良かったぁぁ〜〜〜〜!」

 

 

 天倉について書かれたページに新たな文を追加されていく。ブツブツと呟きながら筆を執る緑谷の姿に「フフッ」とメリッサは笑みを浮かべた。

 

 

「あっ、いえ!コレはその、僕の癖と言うか……!」

 

「大丈夫。その気持ち分かるかも。……実はね私、無個性なの」

 

「えっ、無個性って……!」

 

「うん。最初はヒーローになれなくて残念だったけど、ヒーローの支えになれればって、この道に進む事にしたの。けどやっぱりヒーローはどうしても諦めきれなくて色々と悩んだりもするの。当たり前のように持っているものが無いって言われて……」

 

 

 メリッサの言葉に緑谷は複雑な気持ちになる。元は無個性である自分は周りにあるものが無いと言うコンプレックスが痛いほど分かる。

そんな自分がワン・フォー・オールを継承し、雄英高校で勉学に励んでいる。

恵まれている自分が彼女に何を言ったとしても皮肉になる。自分を責める気持ちが大きくなる一方でメリッサは「でも……」と呟く。

 

 

「葛城さん。あの人だって私と同じ無個性なの」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「うん、いつも楽しそうに発明品を作ってるんだけど、あの人は個性の有無について気にした事なんて無いと思うわ」

 

 

 マイクを握り、天倉の戦いをまるで自分の事のように嬉しそうに解説している葛城に視線を送りメリッサは笑みを浮かべる。

 

 

「あの人はね、私にこう言ったの。『ヒーローと科学者も根は変わらない。愛と平和を胸に人々を導く存在だ』……って。だからこそ、私は身近な目標の憧れのパパのように。ヒーローを助ける存在になりたいって思ったの。それが私が目指すヒーローなの」

 

「ヒーローを助けるヒーロー……」

 

「……ねぇ、デク君。今夜、付き合ってくれない?」

 

「えっ」

 

 

 緑谷は思わず固まってしまう。童貞である彼は色々と勘違いされそうな言葉を囁かれ、脳のキャパシティがオーバーフローしたのは言うまでも無い。

 

 

 

 

(どう言う事ーーーーッ!?えっ?、何デク君て、え?メリッサさんも何言っとるん!?そう言う……え?そう言う事なの⁉︎べ、別に気にはしてないけど、まだ一日も経ってないのにそう言う仲って……⁉︎えっ、えっ?えっ!えっ⁉︎デク君!?どう言う事なのデク君ーーーーーーーーッ!?)

 

 

 ちなみに、その様子をちゃっかり覗いていた麗日も顔を真っ赤にして慌て脳のキャパシティがオーバーフローしたのも言うまでも無いだろう。

 

そんな2人はさておき、

 

 

「さぁ!最後の大仕上げ!果たして我々の希望の星であるヒーロー『アマゾン ニュー・オメガ』は暴走した巨大ロボ、パワーダイザーを止められるのかッ!」

 

「最後はコレか……ぶっつけ本番だけどやるしかないか……!」

 

 

 殆どのガーディアンを破壊した天倉は形成した武器に付着した兵隊の破片を払うとドライバーを操作し、右腕を前へ突き出す。

 

 

『ROCKET・LOADING』

 

 

 音声と共に右腕に巨大なブースターが形成。後方の噴射口(ノズル)から炎が吹き荒れ、グン!と前へ引っ張られる感覚を残し天倉はパワーダイザーに向かって突進を仕掛けた。

 

 

「うぉぉぉぉおおおおおおおッッ!!」

 

 

 雄叫びと共に上空へ持ち上げると、そのまま地に叩きつける形で勝負は決した。そして勝利を祝福するように天倉は再び上空を駆け抜け宙を舞い上がっていく。

 

 

「これにて、天才科学者こと葛城巧の世紀の大・発・明のショーを終了とさせていただきまーーーす!」

 

 

 パチパチと観客席から拍手の嵐が巻き起こる。高度なアクション、熱い解説、ヒーローファンに嬉しいサービスも充分な葛城の『大・発・明・ショー』は大成功を収める事となった。

 

 

「凄かったねデク君!」

 

「はい!天倉君の"個性"があそこまで昇華されるなんて思いませんでしたッ!」

 

「うん!うん!葛城さんの技術力の高さにはつくづく驚かされるわ!私も負けられない!時間になったら私の部屋にね!」

 

「はい、分かりました!」

 

「デクく〜〜〜ん、楽しそうやったね」

 

 

 緑谷とメリッサが楽しそうに話している空間に麗日が割り込む形で話しかける。彼女から威圧感が滲み出ている気がするが恐らく気の所為だろう。

 

 

「勿論!はぁ〜〜〜っ!メリッサさんがあそこまで話の分かる人だなんて……!それに天倉君のショーもテンション上がったぁ〜〜〜!最後の上空遥か彼方へ消える演出なんて圧巻の一言だよ……!」

 

「そ、そうやね……(どうしよ、最後の方、デク君に気ィ取られて見てなかった!くそぉ……見たかったなぁ……!)」

 

 

 よそ見していた事を悔やみながら麗日は緑谷の言葉に頷く。しばらくして、耳郎がジッと上空を見上げてるかと思っていると首を傾げながら口を開いた。

 

 

「アイツ、いつまで飛んでるの?」

 

 

 上空にはロケットブースターで空を飛び続ける天倉の姿が在った。しかもコントロール出来ていないのか宙で縦横無尽に振り回される形で飛行している。

 

 

「ちょっと!葛城さん!これどうやって止めるの!?」

 

「ノズルの噴射を止めるんだ!」

 

「どうやって止めるんですか!」

 

「知らないよ!やってる本人にしか分からない感覚なんだから自分でやれ!」

 

 

 宙にいる天倉のスピードは先程よりも増していき飛ぶ方向を急転換させたと思うと緑谷達が居る観客席に向かって落ちていった。

 

 

「なんかコッチ来てない!?」

 

「えっ、ちょっとやめてよ!」

 

「うわぁぁぁぁぁああッ!天倉が隕石として降ってくるぅぅぅううううッッ!」

 

 

「ああああああああ我が魂はゼクトと共にありぃぃぃぃぃいいいいいいッッ─────お゛ごぉッ!!!

 

 

 

 ゴシャッと天倉の腹部に観客席に設置された落下防止用の鉄柵へと引っかかる形で強打する。あまりの衝撃に死にかけの芋虫のように悶えるとそのまま意識を失ったのかその場でダラリと気絶してしまう。

 

 

「うわぁ、柵が腹へダイレクト当たった……」

 

「あれ、ぜってー痛い……むしろ痛い以外見つかんねぇ……!」

 

「内臓が……確実に内臓が潰れてるよアレ……!」

 

 

 ビクンビクンと柵の上で干された布団のように力無く垂れている天倉の姿を見てドン引きするクラスメイト達。しばらくして天倉は意識を取り戻したのか、ハッと緑谷達の姿にようやく気付く。

 

 

「み、皆どうして此処に!?まさか、俺の隕石特攻(ケタロスアタック)で皆は命を落として……!?」

 

「勝手に死んだ事にしないでくれる⁉︎五体満足だから!フツーに生きてるから!」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ヒーローの卵………」

 

 

 帽子とサングラスを外し、露わとなった瞳は空を舞っていた彼の姿を捉えていた。ヒーロー、今の社会に影響を与えるソレは自分にとってどうでも良い存在である。

 

 

「太陽の下で空を飛ぶのは実に楽しいだろうな」

 

 

そう言い残し、カツン…カツン…と足音を響かせた後、男は姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Q.前書きの会話ウザくない?
A.劇場版という事で許してクレメンス

Q.沢木哲也って?
A.あぁ!

Q.ロケットを形成して飛ぶのは無理があるだろ。
A.バルファルクと言うモンスターがいてだな……




『天倉孫治郎』

 主人公枠に収まったヤベーやつ。御都合主義展開でパワーアップする人の皮を被った何か。インチキ効果も大概にしろ!
ロム兄さんの口上を使ったが別にケンリュウ枠でタイムマジーンとかを呼び出したりはしない。

ちなみに葛城によってショー前日に徹夜で台詞や動きなどを仕込まれた。



《コスチュームver.【ν・オメガ】》

天倉が変身するΩ形態と比べて変身後の安定性が優れる。
装備に頼る面が多くなるが人命救助、敵との交戦をバランス良く行う事が可能な形態。

しかし新たに追加されたプロテクターは暴走による危険性を防拘束具(リミッター)の役割も果たす為、リスクの高い別形態への変身が不可能、また窮地に陥った際に生じる爆発力も抑えられてしまうとデメリットが存在する。

ちなみに何の為か不明だが宇宙空間での活動も可能。


 アマゾンズseason2での初登場では心が踊ったが、めぼしい活躍が全く無い可哀想な形態。なんでや!ニューオメガカッコいいやろ!
葛城の手によってフォーゼとバースのギミック要素をふんだんにブチ込み、超強化を図る(作者の願望)


《装備一覧》

【BLADE・LOADING】(ブレード)

 熱量を持った刃を形成。武器として扱えるが、本来の用途は災害時における救助口を作り出す、又は乗用車に閉じ込められた際に変形してしまった扉の破壊等のハンマー、バール、斧のような役割を果たす。


【CLAW・LOADING】(クロー)

 敵遠距離の敵を捕らえる、鉤爪として攻撃が可能な装備。
救助用としては運搬、引っ張り作業などのウインチとしての役割を果たす。


【ROCKET・LOADING】(ロケット)

 長距離飛行を可能とする装備。しかし反動や噴射する際の出力が強すぎる為、扱うのにかなりの時間を費やす。


【SHOVEL・LOADING】(ショベル)

 万力のように締め付け、敵を拘束するのにも有効。地面を掘り上げ、土砂、雪、瓦礫等を持ち上げ撤去を行う事を目的とした作業用の装備。


【SHIELD・LOADING】(盾)

 防御、打撃武器と言ったように敵の鎮圧として扱いやすい装備。左腕に形成されるので他の装備と併用する事も可能。


【DRILL・LOADING】(ドリル)

 回転式穿孔機による瓦礫撤去、地下に閉じ込められた市民の救出を目的として作られた装備。
ちなみに左脚に形成される。

「何で腕にドリルを取り付けないんですか⁉︎」
「腕より脚の力の方が何倍も強いからだよ!それに本来戦闘用じゃなくて災害での瓦礫撤去を想定したものだから脚で良いんだよ!」
「はっ、クソだわ。腕につけるのが1番だろJK(常識的に考えて)」
「は?」
「は?」

この後、無茶苦茶殴り合った。


《ネオレジスター》

 天倉が過剰にオーバーフロー状態にするもんだからアカン事に。
このままアイアンマン2のトニースタークの如く頭がハイになってヤベーイ事になるのを阻止する為、急遽改良型を無理矢理装着された。ちなみに内側にある針は一本に減らされ身体への負担も極力低くする事に成功。真木博士が一晩でやってくれました。

ちなみに相変わらずドーピング(オーバーフロー)は可能らしい。




『葛城巧』

 史上最高のIQを誇るてぇんさぁい物理学者。天才だが時々バカになる。ラブ&ピースを胸に日々研究を重ね、人体実験を容赦なく行ったりするマッドな面も……。
ガワは佐藤太郎。中身は桐生戦兎で名前が葛城巧。
または葛城巧と思い込んでる桐生戦兎(精神異常者)の可能性が……。


『被験者1号』

読者からは『プロテインの貴公子』や『歩く溶岩性単細胞』と呼ばれており正体はバレバレである。
意図して名前を出してないのにどうして分かったんだ……。

此処では葛城巧の人体実験のアルバイトとして住込みしている。ちなみにアルバイトの理由は彼女との生活費を稼いでいると言う。
筋肉馬鹿に彼女が居るのに俺らと来たら……。


『沢木哲也』

 とあるレストランのオーナー。その人柄の良さでレセプションパーティーの厨房の助っ人としてもやって来る。別に記憶喪失でもないので安心したください。

ところで、仮面ライダージオウのスタッフに絶対
アギトファン居るだろ……。


『謎の男』

サングラスに帽子と怪しい人物。
イメージ的にはグラサン掛けた
鬼舞辻無惨(パワハラの化身)じゃないっすかね?
何考えてるか分からない怪しい人。



『ガーディアン』

空気を読むようにインプットされている為、天倉の口上を最後まで待ってくれる。と言うかロム兄さんの口上でエヴァ量産型すら空気読むのって凄い(小並感)





新形態お披露目なのに、腹を打って気絶と言う微妙なオチ。
でもseason2の初登場時も大体こんな扱いだったなんて口にできない。

ニュー・オメガ初登場シーンをリスペクトした結果がこれだよ。

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