個性以前に個性的な奴等ばかりなんですけど   作:ゴランド

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今更ながらけもフレに嵌ったので更新が遅くなりました。
2に関しては内容以前にツイッターの荒れ具合でやばい(確信)と思った。
頼むからもう争うのはやめてクレメンス。「たーのしー」「すっごーい」とかのコメントが恋しい……。とりあえず新しいけもフレ(仮)に期待するばかりです。次は優しく世界が待っていると良いなぁ。


とりあえず……かばんちゃんを返して(懇願)



54話 音響兵器のヤベーやつ

「出来たーーーーッ!」

 

「手応え有りッッッ!!!」

 

 

 筆記試験終了と共に生徒達は解放感を噛み締める。後列にいる天倉もグッと背伸びを行いつつも、その表情はやり切ったと言う喜びで溢れていた。

そんな喜びを隠せない彼の元に飯田達が歩み寄って来る。

 

 

「どうやら天倉君も心配なさそうだな!」

 

「いやぁ、これも全部。隅から隅までみっちりと勉強を教えてくれた爆豪君のおかg──「オマエヲコロス……!」──ヒェッ」

 

 

背後に回って来た爆豪の殺気に天倉は思わず声を漏らす。

そんな彼等を無視して緑谷達は話を続ける。

 

 

「問題は実技なんだよね」

 

「いやいや…、入試みたいなロボット相手みたいだからな」

 

「それならラクショー!」

 

「え?違うと思うケド」

 

 

すると爆豪から解放されたのか、もしくはボコられた後すぐに復活したのか天倉が話の途中から割り込んで来る。

 

 

「え、いや……だってBクラスの人がそう言ってて……」

 

「えっ、イヤイヤ。それはBクラスであって相澤先生相手に限ってそんな簡単な実技試験はナイナイ」

 

「いやそんな事───

 

 

「先生がする筈が無い」と言いかけたクラスメイト達だったが、瞬間脳裏に映ったのは彼等の青春の日々(数ヶ月間)だった!

 

 

『残念、それは嘘だ』

 

『合理的虚偽だ』

 

『突然だが───』

 

 

((((…うん、あり得そう……!))))

 

 

 今までの事を思い返すとあら不思議。相澤先生がギリギリになって実技試験を変更する筈が無いと言おうとした過半数の生徒達が口を閉じる結果となる。現在に至るまで、あの人が内容が分かっているであろう試験をマトモに行う筈が無い。

 

数ヶ月の付き合いだが、先生の性格を知っているクラスメイト達は最悪の未来を予想してしまう。

 

 

「ちなみにだが、天倉君的に何が来ると思う?」

 

「それは────『突然だが君達には……殺し合いをしてもらう。最後の1人になるまで戦え……脱落した者は内容関係無く赤点だ。タタカエ…タタカエ……』───まぁ、こんな感じにはなると思う」

 

((((((お前は先生を何だと思っているんだ……⁉︎))))))

 

 

 天倉のネガティブ寄りの考えに先生への評価が気になるところだが、そんな事をしでかしそうな先生だと言うことも事実である。

 

 

「ば、バトルロイヤル……!成る程、厳しいかもしれないがヒーローになる為には他より優れる事を証明しなければならない……ッ!」

 

((((((飯田、お前……!))))))

 

 

 どこに関心を示したのだろうか、委員長である飯田の前向きさにツッコミを入れている事は言わずもがな。

その後、実技試験が始まるまで各々、イメージトレーニングや談話などで時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして時は午後へ差し掛かり、各々はコスチュームに身を包み実技試験を行う会場へ集合する。

そこにはプロヒーローである教師と、その下で授業を受けるヒーローの卵達と言う圧巻な景色が広がっていた。

 

遅れた生徒が1人も居ない事を確認すると教師の1人である相澤先生(イレイザーヘッド)が口を開く。

 

 

「揃ったな。それじゃあ、演習試験を始めていく。この試験でも勿論、赤点はある。林間学校行きたけりゃ、みっともねぇヘマはするなよ。もっとも、諸君なら事前に情報仕入れて、何するか薄々分かっているとは思うが……」

 

「諸事情あって、今回から内容を変更しちゃうのさ!!」

 

((((((((((やっぱりか……))))))))))

 

 

 ヒョコッとマフラーの様に首に巻かれたイレイザーヘッドの武器である捕縛布から雄英高校のトップである根津校長が顔を覗かせる。

しかし事前に天倉の発言から察していたのか、それとも予想が当たって欲しく無かったのか、リアクションが薄い上にテンションも低い。

 

 

「これからは対人戦闘・活動を見据えたより実戦に近い教えを重視するのさ!」

 

「というわけで諸君らにはこれから2人1組でここにいる教師1人と戦闘を行ってもらう!」

 

「先生方と!?」

 

「そうだ。尚、ペアの組と対戦するヒーローは既に決定済み。ペアに関しては動きの傾向や成績、親密度……諸々を踏まえて独断で組ませて貰ったから発表していくぞ」

 

「知ってるよ。どうせ俺、3人1組のペアになるんでしょ?花京院の魂も賭ける」

 

 

 遠い目をしながら天倉が呟く言葉を尻目に次々とペアと対戦する教師であるヒーローが発表される。

 

 

「……で、轟と八百万がチームで俺とだ。そして緑谷と爆豪がチーム。で、相手は……」

 

「私がする! 協力して勝ちに来いよ、お二人さん!!」

 

 

 緑谷と爆豪のペアに加え相手がオールマイトと言う隙を生じぬ二段構え。そんな彼等に天倉は思わず肩に手を置く事となった。

 

 

「2人の事は決して忘れないよ………」

 

「負けた事にしてんじゃねぇぞコラ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 各々組み合わせが決定し、自分の番が来るまでペア同士で作戦を練る、鍛錬を行う等と言った様に時間を潰す事となる。

尚、実技試験の内容だが根津校長先生が言うには、

 

『試験の制限時間は30分!君達の目的はこのハンドカフスを教師にかける or どちらか1人がステージから脱出することさ!』

 

との事。

ちなみに俺の場合、耳郎さん、口田君の3人組でプレゼントマイク先生と対戦する事になっている。

ほーらね、だから3人組になったよ(投げやり)

 

 

「こん中で1番ヤベーのはオールマイトだろ」

 

「確かになー」

 

「それに二対一に加えて逃げるor捕まえるで合格だろ?」

 

「ラクショーでしょ!」

 

 

 そんな中、皆の声が俺の耳に入って来る。確かに試験内容を見ると俺達(生徒)側が有利だろう。片方が囮になっている間にステージの外へ、又はハンドカフスを嵌めるだけなのだから。

すると皆の発言に便乗して耳郎さんがコチラに話し掛けて来る。

 

 

「その分、ウチらは楽そうだけどね」

 

「えっ、そうなの?てっきり1番難しいヤツだと思ってたけど……」

 

「考えすぎだって!お前の方が何万倍もツエーだろ。何つーかさ、蹴りを1発喰らっただけで倒せる感じがするからさ」

 

「えー、でもさ。プレゼントマイク先生の"個性"はさ、多分先生達の中でもかーなーり、強いよ?と言うか一二を争う」

 

「いやいや、そんな事……」

 

「とんでもない爆音に加えて、複数の敵を失神させる程のボリュームと衝撃。あれってどうやって防げばいいの?」

 

 

 俺の発言にその場の皆が押し黙る。と言うか、雄英高校の教師を任されている以上、問題児とか生徒指導とか高レベルで可能な人材を選び抜いている筈だからそこら辺のヒーローと比べちゃダメだよね?

そう思っていると隣の耳郎さんが目を見開きながら口を開く。

 

 

「……あれ?なんかそう言われると強そうに思えて来たんだけど……マジ?」

 

「先生達は格上(プロヒーロー)でしょ?……え、いやいや簡単に勝てる訳ないでしょ?」

 

 

相手はえっと……ほぼ無限に壁を作り出せる人(セメントス先生)ブラックホール製造機(13号先生)百発百中の超ガンマン(スナイプ先生)問答無用で睡眠導入のヤベー人(ミッドナイト先生)。……あれ?過半数の教師、ハンデの意味を成してない気がするんだけど……?

 

………あれ?これって詰んでね?

 

 

 

「「…………」」

 

 

 

しばしの沈黙が周囲の空気を重くする。

……いや、誰か喋ってよ。せめて茶化してくれない?怖いんだけど!ねぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、ここまでが走馬灯である。

 

 

 

「もういいですかァァァァァァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」

 

「───「天倉しっかり!」──ッはぁっ!?」

 

 

 気が遠のき意識がブラックアウトする直前、全身にドクン!と言った音響がビリビリと伝わり意識は無理矢理現実に引き戻される。現在、俺と耳郎さん口田君の3人組でプレゼントマイクとの実技試験を受けていた。

 

 一筋縄ではいかないとは思っていたけど、プレゼントマイクの実力は予想以上だった。接近戦に持ち込もうと勢いよく突っ込んでみたものの、"個性"により俺は吹き飛ばされ聴力が強化された変身後の所為なのか何度も頭の中が真っ白になりかけている。

この凄まじい音量により近づくどころか動く事すら出来ない状況だ。

 

と言うかさっきまで見ていたのって走馬灯だったのか。

すごいなぁ。人間、限界ギリギリまで凄まじい音を聴き続けていると走馬灯が見えるんだね(遠い目)

 

 

「ハンデの意味ぜんっぜんっ無いよねッ!プレゼントマイクの個性は謂わば固定砲台。捕まえる逃げる以前の問題だよ!」

 

「完全にウチの上位互換…!とにかく……相殺ッ!」

 

 

すると耳郎さんの脚に装備されたスピーカーから音波が発生され、先程よりは楽に感じた。……しかしあくまで楽に感じるだけであって状況がマズイ事に変わりは無い。

 

 

「……ッ、ありがとう耳郎さん……。口田君、鳥とかを操って妨害はできる?」

 

「……!」

 

「えっ、何?ごめん耳郎さん。口田君の翻訳お願い」

 

「あまりの声量で命令が掻き消されるって!」

 

「え、何だって?ごめん。もう一回言って!……あぁ、クソ。耳がおかしくなった!」

 

 

 とりあえず、2人には申し訳ないけど今の俺は本当に役に立てない。"個性"を使えば強化された聴覚により耳へのダメージが倍増され、生身のままだと近づく事すら出来ない。

 

更にあまりの音量……いや声量により2人の個性も掻き消されてしまう。……コレもしかしなくても詰んでるよね。

 

 

「こ、こうなったら…相討ち覚悟で猪突猛進作戦を発動するしか……」

 

「要するに行き当たりばったりの特攻だろ!無理だからな!と言うかコレ試験だから確実にアウト!」

 

「だよね……」

 

 

 こんな事になるなら遠距離攻撃が出来るようになるまで特訓しておけば良かった。俺と耳郎さんが駄目なら、せめて口田君の"個性"で何とか出来れば……あ。

 

 

「ねぇ、ほらダンゴムシ!」

 

「……腹減ったなら終わってからにしときなよ」

 

「食料的な意味で見せたワケじゃないよ!虫!口田君の個性なら虫操れるんじゃない?」

 

「あー、成る程ね!そこんとこどうな……の…」

 

 

俺と耳郎さんが振り向くと、そこには木の陰で震える口田君の姿が……。え、これって俺?それともこっち()に怯えてるの?

 

 

「ねぇ耳郎さん。俺と虫ってどっちが怖い?」

 

「とりあえず、アンタがものすっごくショック受けてる事は分かった」

 

「うん、久しぶりに怯えられると思ったから吐血しそうになったよ」

 

 

流石に体育祭とかで俺の姿が変貌するのを見慣れたからなのかな?

……見慣れたから怖くないって、それはそれで何か複雑。

 

 

「ほっ、ほら!ダンゴムシだよ!今は丸まってるから全く動かn「イヤァァァァァァッッ!」………」

 

「あー、駄目みたい……」

 

「……口田君。俺と虫のどっちが怖い?」

 

「ソレ、怪奇現象と不審者のどっちが怖い?って言ってるのと同じだから意味無いよ」

 

 

「そこかああああああああああああああああああ!!!」

 

 

「ぐっ、ヤバイよ…時間も無い……!」

 

「……ッ!それじゃあ!もう、選んでいられないな……変身(アマゾン)ッ!」

 

 

 ドライバーを起動させ変身を完了させた俺はクラウチングスタートの体勢に入ると共にエクシード形態へ身体を変化を行う。そして断続的に森の中に響くプレゼント・マイクの声が耳から脳内へビリビリと響き、頭の中がグチャグチャに掻き回されるような感覚が俺を襲う。

ちょっとでも気を抜いたら気絶しそうだ。

 

 

「あっ、ぐ……ぅう……ッ!」

 

「ちょっと!何やってんの天倉!」

 

「耳塞いで正面突破行く!」

 

「そんなんでやれるわけ無いだろ!「Yeeeeeeeeeeeeeah」───ッ!耳がぶっ壊れる!」

 

「ッ〜〜〜〜〜!このままだと時間切れで俺達は不合格。せめて突破口を切り開くしか無い!」

 

 

 そんな俺の姿を見てアタフタと戸惑う口田君。俺の事が心配だろうが、問題は無い。俺は脚に力を込めたまま彼に声を掛ける。

 

 

「口田君が虫が苦手ならしょうがない。…だけど、それはいつか乗り越えなきゃダメな壁なんだ。……もし俺が先生へ突っ込んで行く途中にダウンしたら………耳郎さんと一緒に絶対に合格して欲しいんだ」

 

「……!」

 

 

 俺が溜めに溜めたパワーを解放しようとする直前、口田君の手が俺の肩にポンと置かれた。振り向くと、そこには酷く怯えながらも目の奥に光を宿した口田君が居た。

 

 

「口田君?……"できるの"?」

 

「………」

 

「……分かった」

 

 

 口田君の覚悟を見届けた俺はすぐそばにあった岩をひっくり返した。そこにはミミズ、ムカデ、アリ、etc、etc……虫の大群がうじゃうじゃと集まっていた。

それを見て、思わずビクッと身体が動いてしまうのは仕方の無い事だろう。予想以上にアレな光景だったので俺も耳郎さんもビクッとしてしまった。

 

口田君はブルブルと震えながらも、虫達に近づき膝をつくと無理矢理吐き出すように口を開いた。

 

 

「お行きなさい小さき者どもよ騒音の元凶となるその男討ち取るは今ですいいですか…」

 

「「超喋るじゃん!」」

 

 

 普段無口な分、口数が多く素早く喋るその姿がシュールに見える。

そんな俺達の耳に先生の悲鳴が森全体に響き渡った。

これ、見えないけど絶対に悍ましいヤツだと言う事は分かる。

 

 

「……音が消えた……」

 

「よ、よし!早くゲートを通ろう!」

 

「……あ、ごめん2人共。先行ってて」

 

 

 2人はその場で全く動けない俺に視線を向ける。それも仕方ない事だろう。聴力が増強された上にプレゼントマイクの凄まじい声量が脳にダメージを与えたのだ。寧ろ、さっきまで動けていた事に自分自身ビックリしている。

 

そんな俺を放っておいて2人は……あれ?

 

 

「……何やってんの、ほら行くよ」

 

「え?いやいや、もう時間無いよ?早くしないと……」

 

「………」

 

「2人で肩貸すから問題無い…って、口田も言ってるよ」

 

 

 耳郎さんはそう言いながら口田君と一緒に引きずるような形でゲートへ向かって行く。予想と違った展開に困惑する俺に耳郎さんは苦い顔をしながら口を開く。

 

 

「あぁ、もう重いなぁ……天倉、体重いくつ?少しは運ぶ側を考えろよな……」

 

「あ、ごめん……」

 

「いや、そこは"ごめん"じゃないだろ」

 

 

 一瞬、耳郎さんの言う事を理解出来なかった俺だが、耳郎さんと口田君の表情を見て俺はこの後、言うべき言葉がすぐに見つかる。

 

 

「……ありがとう2人共」

 

「そ、ネガティブな所は直しなよ天倉」

 

 

『天倉・口田・耳郎チーム条件達成‼︎』

 

 

 そしてゲートから鳴り響く音声に、合格したと言う喜びが心の底から湧き上がる瞬間だった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 所変わって教室。そこには意気消沈したクラスメイト4名が居た…ッ!試験に合格して今すぐでも飛び出したい気分だった俺も自重し、着席している。

緑谷君が慰めているが、放っておいた方が心へのダメージが少なくて済むんだよなぁ……あ、目潰しされた。

 

 

「分かんねぇのは俺もさ峰田のおかげでクリアはしたけど寝てただけだ」

 

「あ、……そう言われると俺もほとんど役に立ってなかったような……。 と言うか完璧に足手纏いだったよ? アレ?俺もしかして赤点じゃね?」

 

「同情するならなんかもう色々くれ!!」

 

「………はいコレ。俺の秘蔵の一品」

 

「レーション渡されても困るんだよォ!!」

 

 

 渡されたレーションを八つ当たりと言わんばかりに上鳴君は床へ叩きつける。

ああ!食べ物を無下に扱っちゃ駄目って学校で習ったでしょ!!

 

 

「予鈴が鳴ったら席につけ」

 

 

 そんな事をしている俺達の元に相澤先生がやって来る。1秒も掛からない内に静かとなる教室内に先生の声が響く。

 

 

「残念ながら赤点が出た。したがって……林間合宿は全員行きます」

 

 

「「「「どんでんがえしだぁ!!!」」」」

 

 

「筆記の方はゼロ。実技で切島・上鳴・芦戸・砂藤あと瀬呂が赤点だ」

 

 

 怒涛の展開にクラス内が一気に騒がしくなる。かと言う俺も心の内ではものすっっっごく騒がしくなっている。

 

この場で踊っても良い程だ。もう何も怖くない。なんなら相澤先生の目の前で裸一貫でブレイクダンスを披露しても……あ、やっぱりやめておこう。相澤先生は怖いわ。

 

それと先生が言うには今回の試験は生徒に勝ち筋を残しつつどう課題と向き合うかを見るように動いていたらしい。林間合宿も赤点を取った生徒に力をつけて欲しいらしく、要するにいつもの"合理的虚偽"と言うやつである。

 

 

 

 よく考えてみると俺の場合、試験に出された課題は……多分、だけど…。仲間と協力する事だったのかもしれない。

 

プレゼントマイク先生の前で俺は手も足も出なかったが、口田君に任せる事によって試験に合格できた。そう考えると、まだまだ俺は見直す点がボロボロと出てくる。ヒーローになる為にも、林間合宿でも気張る必要があると俺は再確認した。

 

そんな俺の元に葉隠さんが声を掛けて来る。

 

 

「天倉はどーする?明日、A組のみんなで買い物しに出掛けるんだけど?」

 

「……えっ?お、俺!?」

 

 

 葉隠さんの言葉に俺は動揺を隠す事が出来なかった。

マジで!?クラスメイト達と共に買い物!?おっ、おおお落ち着け!こ、コレはあくまで林間合宿用の用品を購入するだけだから別に疚しい気持ちなんて無いッ!

 

 

「い、行きます!行かせてください!と言うか見捨てないでくださいッッ!」

 

「重ッ!?めちゃくちゃ重いよ天倉君!」

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

県内最多店舗数を誇る木椰区ショッピングモール。

ここではA組の生徒達が買い物に来ていた……!

 

 

「体育祭ウェーーーーイ」

「燃えてるかーーい!雄英高校ーーー!!」

「サイン!サインくれ!」

「おいデュエルしろよ」

 

 

 それにしても、騒がしい。テンションが高い人達が沢山に加え雄英高校の生徒である俺達は顔を知られている。凡ゆる方向から突き刺さる視線でプレッシャーが凄まじく俺の胃はデッドゾーンに突入しつつある。

 

 

(し、心の臓がはち切れそうだ……ッ)

 

「とりあえずウチ、大きめのキャリーバッグ買わなきゃ」

 

「俺、アウトドア系の靴ねぇから買いてぇんだけど」

 

 

 さすがは耳郎さんと上鳴君。こう言ったナウでヤングな最先端ショッピングモールには慣れているのだろうか。臆する事もなく目的の物を買おうとしている。控えめに言ってすげぇ。

 

 

「ピッキング用品と小型ドリルってどこ売ってんだ?」

 

(ピッキング?ドリル?)

 

 

 それに対して峰田君は合宿先で何をするのだろうか。そんな不安が募る中、タイムセールにより大勢の客がドッと押し寄せ、俺達を離れ離れにさせてしまう。

 

そんな中、切島君が放った言葉がクラスメイト全員を駆り立てた。

 

 

「まずは生き延びろッ!タイムセールが終わった時に必ずこの場所で会おう‼︎」

 

 

うーん、何故か嵐で散り散りになる海賊団が見えるぞ?

特に船長は体がゴムみたく伸びるかつ泳げない感じに思えるのは気のせいだろうか?

 

 

とりあえず、賑わった場所から落ち着いた場所へ移動した俺はピット器官を使い念の為、皆の居場所を把握する事にした。

 

えっと……緑谷君と麗日さんペアに切島君、耳郎さんペア。八百万さんと上鳴君のペアと……ん?

 

 

(これって……デート的なやつでは……⁉︎)

 

 

 

 誰とも組めず一人寂しく買い物って……。

あ、いや別に羨ましくなんてないからねッ!(強がり)別に女子男子関係無く皆と買い物したいワケじゃないんだからねッ!

………控えめに言って死にたくなって来た。

 

そんな俺の願いを叶えるかのように背後から俺に話しかける人物が現れる。

 

 

「おい、デュエルしろよ」

 

「…………」

 

 

……誰だこの人。

そんな考えが過ぎる中、この人の眼差しには緑谷君と同等、いやそれ以上の熱い光を感じた。

 

 

「「………」」

 

 

 この勝負……いや、決闘を受けなければデュエリストとして失格だ!手元にあったディスクと拾ったカードを構え俺と相手は高々に叫ぶ。

 

 

「「決闘(デュエル)ッ!」」

 

 

さぁ!俺達の満足はこれからだ!

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 

「……おい、着いてくんな」

 

「何でですかー?」

 

「チッ、コイツ……」

 

 

 敵連合での顔合わせ。それからこの"トガ"と名乗る女が金魚のフンみたくついて来るようになった。

人混みに紛れ何度も振り切ろうとするが

 

 

『来ちゃいました♪』

 

『』

 

 

 なんだコイツ。気配を消しつつ足が速い上にナイフをチラつかせて来る。もういっそのこと人気の無い場所で燃やしてしまおうか?

 

そう考えていると、俺のすぐ目の前を赤いバイクが通り過ぎ……。

……ん?ショッピングモールで赤いバイク?

 

 

「何故、バイクと合体しないんだ……?」

 

「バイク持ってないんだよ」

 

「何故、バイクを買わないんだ……?」

 

「そもそも免許を持ってないんだよ!クソ、普通二輪ならまだしも原付免許を早く取らなきゃ……!(使命感)」

 

「そうか……ならば、ランニングデュエル!アクセラレーション!」

 

 

 

「………!?」

 

 

なんだアイツ……⁉︎

いや、妙に噛み合わない会話のキャッチボールが不思議と成り立っている事じゃなく、あのガキ……。

 

"雄英高校の変身する奴"か!

 

体育祭じゃ変身した後の姿がインパクトが強い所為なのか変身前の姿が覚えてない奴等ばかりだ。しかし、俺はシッカリとアイツの顔を知っている。

 

 

「……離れるぞ」

 

 

 "挨拶"するのも良いが、ソレは連合に入った後でもできる。

今関わるのは得策ではないと判断し女を連れて此処から──いや、待て。あの女、どこに行っt……

 

 

「天倉クンですよね!血が凄いボロボロの天倉クンですよね!」

 

「え、あ、……誰?」

 

 

………あ、あのクソ女ァァァァァァァアアアッッ!!

連合に加入する前だってのに、なに接触しているんだ!?

 

クソ、頭のおかしい奴はこれだから……!とにかくこの場から離れる事に専念しよう。あの女は放っておく。どうせ気が済んだら戻って来るだろう。戻ってこなかったら、それはそれで気が晴れる。

 

そう言い聞かせながら足を運ぼうとした時だ。俺の肩をあの雄英生が掴んできやがった。

 

 

「えーと、……お連れの方ですか?」

 

「……いや、赤のt「えー?知り合いですよ」……」

 

 

この女ァ……、燃やしてやろうか……!

そんな考えが頭の中を過ぎるが、自身を無理矢理落ち着かせ、なんとかこの状況を穏便に解決させようと決める。

 

癪だが、このヒーロー生は見た感じは常識ありそうだ。ここは

 

 

「カップルですか?」

 

「えぇ〜〜〜?そう見えますかァ?」

 

「………」

 

 

be cool……be cool……be cool……be cool……!

落ち着け…、落ち着け俺……!

ここは外側だけでもカップルとして振る舞うんだ……!

 

 

「そ、その通りだ……実はデートでな……「えぇーー!荼毘君!そう思ってたんですか!?」……ッ!」

 

 

……よし、分かった。コイツ色々終わったら燃やす…ッ!絶対に燃やす!

 

 

「天倉クン!私、トガです!体育祭見て、ファンです!好きです!天倉君になりたいです!」

 

「えっ、あっ、ど、どうも……なりたいってどう言う?」

 

「おい、もう良いだろ。さっさt「血です!天倉君の血が見たいです!」おい!」

 

 

クソ、コイツ……!

もう雄英生ごと女を燃やして済ませるか…?

 

 

「え?血?……なんで?」

 

「血が好きです!私、血が好きなんです!」

 

「い、いや……所構わず血を出すってワケにもいかないし……」

 

「そう言っているんだ。さっさと行くぞ」

 

 

そう言いながら女の襟首を掴みこの場から去ろうとする。

 

 

『ファンサービスは僕のモットーですからね』

『熱いファンサービスだ。受け取れ』

『俺のファンサービスだ受け取れ!』

『さぁ、俺のファンサービスの始まりだ!』

『俺がたっぷりファンサービスしてやる!』

『俺のファンサービスは終わらないぜ!』

 

「……ファン……サー…ビス?」

 

 

……おい、なんだ?一瞬、コイツの頭ん中に変な電波が入っていかなかったか?そう思っていると目の前の雄英生はニコリと笑う。

 

 

「ファンサービスですね分かります……ゴフォッ!(吐血)」

 

「うおッ!?(こ、こいつ…いきなり血を吐き出しやがった!?)」

 

「……し、しゅごぉぉぉいいいいいいいいいいいいいいッッ!!血ィ!血がこんなにぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいッッッ!!」

 

「!!?!??」

 

(クッ……なんなんだコイツら……ッ!……待てよ……まさかッ!)

 

 

 周囲を見渡すとそこにはザワザワと騒がしくなっていく人混み。

俺らに奇異なモノを見るような視線が突き刺さる。

 

まさかこの天倉って奴は……最初から俺達が敵だと知ってて接触を!?周囲を一般市民で囲み、例え襲われても市民を人質にしようとも対処できる範囲まで近づいたのか!?

 

 

「あ、すみません。驚かせてしまいました……」

 

「……いや、気にするな」

 

 

 どうやら油断していたのは俺の方だったらしい。この天倉って奴は普通のヤツとは一味違う。……だが運は俺に傾いているらしい。

この場一帯を炎を撒き散らせば確実に他の奴らはパニックになる。その隙に離れれば良いだろう。

 

そう思い俺は手に炎を「楽しそうな事してんなぁ」───!?

 

 

「今の俺は機嫌が良いんだ。ここはお互い無かった事にしておこうじゃないか」

 

「……?え、あ、ハイ」

 

 

 死柄木……。いかれたコイツが此処に居るとは思わなかった。

黒いフードの下から見せる今まで見た事の無い不気味な程の無邪気な笑みをアイツは覗かせる。

 

 

「なぁ、お前等を歓迎するよ……。やっと見つけたんだ。俺なりの"信念"ってヤツをさ……!」

 

 

……コイツ、前と会った時と大違いだ。何があったかは知らないが好都合。こちらもこちらで収穫はあった。

 

天倉孫治郎。コイツは要注意だと言う事。他の雄英の生徒とは何が違う事を。

 

 

「それじゃあな、天倉孫治郎。また近いうちに顔を合わせよう……!」

 

 

 死柄木の宣戦布告とも言える言葉。それに対して天倉はどう応えるのか……。

 

 

 

「えっと……すみません。どちら様でしょうか」

 

「「「………」」」

 

「…………」

 

 

 その後、俺は死柄木と共に血をガンギマリさせた女を引きずりアジトへ戻って行った。何者か覚えられてなかった時の死柄木の複雑な表情は俺はいつまでも忘れる事は無いだろう。

 

控えめに言って良くやったと褒め称えたい。

 

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 

 緑谷君が敵連合のリーダーである死柄木と接触したらしい。俺が見ない間に一体何があったと言うのだろうか。と言うかうちのクラス敵とのエンカウント率高くない?

そんな事もありショッピングモールは封鎖。すぐに解放はされたものの、結局クラスの皆との買い物は無しとなってしまった。

 

おのれ敵連合許さん。

 

それにしても、買い物途中で会った血に飢えた女子高生(深い意味は無い)と肌がヤベー人やパーカーの知り合い面して来た人や謎の決闘者は無事なのだろうか。

 

………そう言えば謎の決闘者って誰だよ。

 

 

「……と、まあ。そんな事があって、ヴィランの動きを警戒し、例年使わせて頂いてる合宿先を急遽キャンセル。行き先は当日まで明かさない運びとなった」

 

「「「「「「「「「「えーーーーーーーーーーーッ!!」」」」」」」」」

 

「もう親に言っちゃってるよ……」

 

「故にですわね。話が誰にどう伝わっているのか、学校側が把握できませんもの」

 

「むしろ、合宿自体をキャンセルしないの、英断過ぎんだろ!」

 

 

 そんな出来事があったのにも関わらず、雄英側は合宿を続行すると言う神仕様。

もしも合宿も中止と言う流れだったら、自分の"謎人脈"を行使して、存在するだけでも不審者な一般市民達を敵連合に嗾け、突撃させていた所だった。

 

 

そう考えると、波瀾万丈な1学期だったと自分でも思う。

 

えーっとまず雄英が襲撃されて?お父さんと言う名のドクズが帰って来て?雄英体育祭で悪名が広がって?補修確定の職場体験先でヤベー事件に遭遇して?サバイバルで1人だけになって?

 

…………。

 

 

「俺、何やってんだろ………」

 

 

この時、改めて俺が常識の向こう側の住人と化している事を再認識させられた。

 

ホント、何やってんだろ。

 

 

 

 




1学期終了。



『天倉孫治郎』
主人公(笑)。最近、原付免許を取得する為、こっそり勉強中。
仲間との協力が意外と苦手。大体ソロでやって来たから仕方ないね。期末試験での結果は赤点が40点だとして、50点代。

相性の悪い相手と判断した時、仲間に頼るよりも前に自滅覚悟の特攻を仕掛けようとしたのが減点対象となった。最終的に口田のお陰で乗り越えた為、今後どのように成長するのだろうか。

今回、決闘者になったり謎の電波が届いたりと下手したらそこらの敵よりもヤバイ精神異常者に見えるが大体いつもこんな感じやろ(投げやり)




『皮膚がヤバイ人』
苦労人ポジション。原作とすまっしゅ!時空の間を彷徨っているキャラクター。敵側にもちょっと真面目な人が居ても良いと思うの。


『血大好きJK』
吐血がお決まりの芸と化している主人公に好意を寄せている?女の子。彼のファンサービスにより絶頂(深い意味は無い)に至ったと言う。

意外に主人公(笑)と良い相性なのかもしれない。


『黒パーカーの人物(たぶん初対面)』
このガキぜってーにぶっ殺すと誓った被害者(多分)。と言うか手のようなアクセサリー的なヤツで顔が分からないから仕方ないと思う。



『名も無きデュエリスト』
Dホイールを持ち出し天倉と対戦しようとするが、天倉自身バイクを持ってない為、ランニングデュエルで勝負をつける事に。

しかし彼は気づかないだろう。天倉がとうにデュエルの事を忘れている事など……!

彼はその事実に気がつくまで今も尚、走り続ける。
俺達の満足はこれからだ!




最近、スランプに陥りました。
え、次の更新?

そんなことよりおうどんたべたい。

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