個性以前に個性的な奴等ばかりなんですけど   作:ゴランド

52 / 61
【注意!!】
風都編において天倉君は重症を負った為ステイン編は飛ばされました!!
あーんステ様の出番が無くなった!

本当にすまないと思ってる。

ぜってぇ許さねぇ!
ゆ゛る゛さ゛ん゛!!


【結論】色々と申し訳ありませんでした。


第48話 さらば風都よ明日もまた風が吹く

カタカタ……カタン…

 

 タイプライターを打つ音が響く。左翔太郎と言う探偵は事件が終結した際に報告書を作り事件を振り返るのがお決まりとなっている。

 

そんな彼の報告書を覗いてみよう……。

 

 

『こうしてガイアメモリ……いや、ガイアメモリを模したD(ダミー)・ガイアメモリ事件は幕を閉じた。

見値子は義理の父親である最上魁星を逮捕した後、ヒーロー活動は休止する事にしたそうだ。しばらく心の整理をしたいだそうだ。

 

 一方、逮捕された最上魁星はあの厳重監獄であるタルタロスに収容される事となった。それもその筈、奴は無関係な人々を利用し実験体として扱った。

 

……妥当な判断だと俺は思う。

 

 救出された古明地さとりの妹、古明地こいしはしばらくして目が覚めたが今まで何があったかは知らないらしい。だが彼女にとってそれが一番だ。何も知っていなくて幸いと言ったところだろう。

 警察関係者は重要参考人として、さとりと天倉にまた事情聴取をする事となった。取り調べの担当はジンさんらしいが……まぁ、大丈夫だろう。

 

問題なのは────』

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 どうもこんにちは。前回、マグマエクシード(仮)の限界を迎え自滅オチを迎えました天倉孫治郎です。ハイハイ、いつも通りいつも通り。

 どうせこの後、謎のバナナKと対話(物理)したり、謎の自称女神の所に行って追い出されたりするパターンなんでしょ?

 最近、死の淵を彷徨う事に慣れてきている自分がいるけど、そこら辺は気にしないで行こうと思う。

 

……で、いつも通りなら謎空間に立っている筈なんだけれど。

 

 

「さぁ、もっと力を入れて回さんかーーっ!」

 

「手を休めるな!もっと掘れーーっ!」

 

「現世で戦いに破れ殺され死人となった超人にはこの終わりなき労働が続くんだーーーっ!もっと根性入れてやれーっ!」

 

「うっす!分かりました!」

 

「働くぞ♪働くぞ♪毎日毎日ドラマティック♪」

 

 

 目の前には鬼(?)達にしごかれながら屈強な者達が謎の石臼を回す、採掘、砂利等を運ぶなどの労働を強いられている光景が広がっていた。

 

 

「……いや、待って。ここ何処?」

 

 

 俺が唖然としながら呟くと、それを偶々聞いていたのか一体の鬼がこちらに怒鳴りながら寄ってくる。

 

 

「ここは超人墓場だーっ!分からんのか!」

 

「いや、知らないんですけど」

 

「貴様ーーっ!それでも超人か!」

 

「いや、違う…ってイッタァイッ⁉︎」

 

 

 何で⁉︎何で金棒で殴ってくるの⁉︎おかしくない?俺、超人じゃなくてヒーロー志望なんだけど。

何で俺、超人カテゴリに分類されてんの?

 

 

「さっさと働けーっ!」

 

「分かった!分かりましたから!金棒はヤメロォ!」

 

 

 ちくせう……、何で俺がこんな事を……。俺って、何か悪い事でもしたの?なんか地獄に行くような大罪でも犯したっけ?いやいや、そんな訳でない。あったとしても傷害罪とかそんなくらいで……。

 

……ちょっと待って?今思うと俺って免許も無しに敵と交戦したよね?え、駄目じゃね?それってどう考えてもアウトだよね?て言うか絶対それだ。それしか心当たりが無い。うわぁ、最悪だ。

 

って言うかさっさと戻れないかな?そろそろ現実に戻っていい頃なんだけど。照井さん達に土下座…いやジャンピング五体投地して謝ると言う使命があるんだけど。

……これってどうすれば目が覚めるの?

 

 

──ポン

 

 

 そんな事を考えていると背後から肩を叩かれる。後ろを向くとそこには謎の黒いマスクとヘルメットを付けた不審な筋肉モリモリマッチョマンの変態が謎の玉を差し出して来ると言う謎の光景が視界に飛び込んで来たのだ。

 

「オレの生命の玉をやろう。あいにくここには3つしかないがコレで超人墓場の出口の扉の半分ぐらいは開くだろう」

 

「……いや、誰だよッッ!?」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「…………」

 

 

 目が覚めると、そこは見覚えのある部屋だった。「まただよ(笑)」と呟きながら身体を起こそうとするが天倉はドッと来る空腹と疲労に溜息をつく。

 

 

「最悪だ……」

 

「そんな事を言ってられるのは余裕である証拠だよ」

 

 

 突如として聞こえて来た声の方向に顔を向けると、医者だろうか?白衣を着た高齢の男性が立っていた。天倉は人が居た事に気が付かず少し驚いた表情を見せる。

 

 

「……すみません。親族の方で蛙吹梅雨って女の子が居ませんか?」

 

「君は何を言っているんだい?」

 

「あ、すみません。気にしないでください」

 

 

 カエルのような顔をした医者に尋ねる天倉だったが、「気の所為か」と呟きながら二度目の溜息をつく。

 

 

「三日」

 

「はい?」

 

「三日間。君は悶絶と気絶を繰り返しながら寝ていたよ」

 

「マジか」

 

「それはコッチの台詞だよ。君は本当に人間かい?」

 

「少なくとも心はそのつもりなんですけど……本当に人間離れしてます?」

 

「してるね」

 

「マジか……」

 

 

 受け入れられない現実に遠い目をする天倉。ヒーローを目指す身として人間離れした力を手に入れる事は悪い事では無い。ただ、彼にとって人間離れ=ゾンビのような公式が頭の中で出来上がってしまっているのだ。「本格的にゾンビにならないとダメなのかなぁ」と呟いている天倉にカエル顔の医者は声をかける。

 

 

「そうそう、お見舞いを希望している人が来ているから私は失礼するよ」

 

 

 そう言い残しカエル顔の医者は病室から出て行く。天倉自身、どうせ照井さん辺りかなぁと考えていると、廊下から聞こえる足音が大きくなって来るのを感じる。ガララと景気良く開かれる扉から現れたのは

 

 

 

 

「わーたーしーがーーッ!天倉少年のお見舞いに来たァ!!!」

 

「うるさッ⁉︎静かにして貰えません⁉︎」

 

「あ、ごめんね……」

 

 

 

 病室にやって来たのは金髪のVサインのようなヘアースタイルと筋骨隆々な肉体で今にもスーツが弾けそうなNo.1ヒーロー『オールマイト』であった。天倉から注意されショボンとしているが、そのオーラは凄まじいものだ。

 

 

「所で何でオールマイト?ここは……その、相澤先生辺りが来る流れじゃ……」

 

「あぁ、いや、あのね。相澤君、ベストジーニストに補修の申し込みをして忙しいそうだから…その、めっさ怒っていて……」

 

「ガッデムッ!!どうせ俺も問題児の1人ですよ!」

 

 

 天倉は両手の拳をベッドに叩きつけながら叫ぶ。その様子を眺めるオールマイトはフフと笑った後、口を開く。

 

 

「いや、だけど君はヒーローとして良く頑張ったそうじゃないか。照井君そう言っていたよ?」

 

「照井さんが?」

 

「あぁ、この事件については色々と聞かせて貰ったけど……良くやったじゃないか」

 

 

 オールマイトの言葉に天倉はやや驚いた表情を見せるが、ふぅと息を吐き目を伏せながら応える。

 

 

「……でもオールマイト、俺がやったのは敵と変わりない事ですよ?そんな俺を褒めるのはNo.1ヒーローとしてやっちゃダメなヤツですよ」

 

 

 その目には哀愁が漂う。彼にとって、その言葉は自身への慈悲。ヒーローとしてでは無く、学生として、子供として…自分はヒーローでは無い。この経験で彼はそう感じたのだ。

 

 

「オイオイ、天倉少年。相変わらず後ろ向きな発言だな。もう一つ、ピンク髪の少女から伝言だ」

 

「伝言って……古明地さんから?」

 

 

 笑い飛ばすオールマイトは天倉の肩に彼の頭程の大きさもする手を置く。

 

 

「『家族を救ってくれてありがとう』だってさ。確かに、君のした事は敵と変わらないかもしれない。けどな、君は1人。たった1人……、彼女をヒーローとして救う事が出来たんだ。少しくらいは誇っても良いんじゃないか?」

 

「俺が……?」

 

 

 天倉に対する確かな感謝の言葉。誰かのヒーローになれたという事実に彼は、実感を持てずにいた。

 

本当にそうなのだろうか?自分は本当にヒーローだったのだろうか?

 

 そんな自問自答がしばらく続いた後、天倉はオールマイトに問う。

 

 

「オールマイトは……"個性"を持ってて後悔しませんでしたか?」

 

 

 彼はこの風吹く町で色々な人間を見たが、それは自分の考えを否定するものも多かった。

自分にとって"個性"は呪いであり、人を救う力である。しかし、他人から見ると"個性"はどう見えるのだろうか?

 

 三羽烏。彼等にとって"個性"は憧れの力だった。周りに有って自分達には無いもの。個性の無い人間は周囲の人物から無個性と罵られる人種……だが、

本来、無個性とは人間の在り方として正しい存在であり"個性"は人間に+αされた所謂おまけのようなモノだ。

 

 そう考えると、自分の考えは正しかったのだろうか?

……分からない。"個性"は人々の希望を与えるモノなのか?それとも絶望を与えるモノなのか?

 

 だからこそ。

 

 

「……あぁ、勿論───」

 

「本当にですか?」

 

 

 オールマイトの答えを聞きたい。自分には出さなかった解答を彼は知りたかったのだ。

 

 

「………私は」

 

 

 

 オールマイトの頭の中にヴィジョンが映し出される。

 それは、何十年も前の事。

 

 

────────

 

 

 

『お師匠──お師匠!!』

 

 

『オールマイト……後、頼んだ!』

 

 

 

────────

 

 

 敬愛する師との別れ。彼にとってのトラウマにして平和の象徴誕生のきっかけ。

この事を経験したオールマイトだからこそ、言える解答。

 

 

「───私はこの力を持ってしても救えなかった人が居る」

 

「オールマイト……」

 

「手を伸ばしても届かなかった。怖くなって、怖くなって…悲しい時もあった」

 

『どんだけ怖くても「自分は大丈夫だ」っつって笑うんだ』

 

 

 激しい後悔、怒り、悲しみ。少しでも奴の名前を聞いたら爆発してしまいそうな時、師の言葉を思い出す。

その言葉は彼にとって師の形見であり、自分(オールマイト)としての魂でもある。

 

 

『世の中笑ってる奴が一番強いからな』

 

「だからこそ、私は後悔しない為にも全てを(オール)救う力(マイト)で人々を笑顔にするんだ。世の中、 笑ってる奴が強いからな!」

 

 

 オールマイトは天倉の口端を大きな指で上げる。

 

 

「それがヒーローってもんだろッ!天倉少年!」

 

「ッ────はいッ!!」

 

 

 天倉の表情が笑みで溢れる。自分の理想が間違っていなかったから?いや、違う。ただ純粋に嬉しかった。認められた事が、こんな自分でもヒーローとして誰かを救えたのだと確信できた。

 

 

「やっぱり、No.1には敵わないな……」

 

 

 周りの人々を笑顔にしていくオールマイトの力に天倉は頭を掻きながら愛想笑いを見せる。自分とNo.1との間にある巨大な壁、いや崖と言った方が良いだろうか?改めてそれを認識させられる。

 

 そんな天倉だが、ふと思い出す。前回の最上との戦いの最後の瞬間、どうしても頭に残っている最上が呟いた一言。

 

 

「そう言えば最後に最上魁星が言ってたんです」

 

「ん、何かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、『全は一の為に…巨悪は近くに迫って来ている』って「他にはッ!?」うぉっ!!?」

 

 

「他に最上魁星は何て言っていたッ!!?」

 

 

 オールマイトは天倉に掴みかかる。その鬼のような形相は常に周囲にスマイルを送るオールマイトとは思えない表情だ。

まるで、USJ事件の時のオールマイト。敵を前にした時の憤怒の表情…否、憎悪の篭る表情だった。

 

 

「い、いや……分かりません。って言うかどうしたんですがオールマイト。怖いんですけど!」

 

 

 そう、天倉はこのオールマイトに怯えたのだ。人の闇の面を垣間見た瞬間、凄まじい悪寒を天倉は感じてしまったのだ。しばらくしてオールマイトの表情は次第にいつもの笑顔へ戻っていく。

 

 

「………HAHAHAHA!なんてジョークさ。天倉少年にはユーモアが足りないからね。もう少し肩の力を抜くと良いさ、いいね?」

 

「……アッハイ」

 

「それでだ天倉少年。仮にも敵の言葉。惑わされてはいけないからね。その会話は他言無用で頼むよ」

 

 

 天倉は病室を出て行くオールマイトの背中を見て、ホッと一息つく。どうやら、杞憂に終わったらしいと思いながら天倉は再びベットに潜り込む。

 とにかく今は疲れた。早く体力を回復させる為に寝よう。そう考えながら彼は深い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、彼は知る由も無い。これは、ただの序章(プロローグ)だと言う事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……裏で奴が動いていたかッ!」

 

 

 平和の象徴の脳裏に【巨悪】の姿が過ぎる。

 

 

『君の嫌がる事は全て行う…もし、君の生徒が敵の手によって害されたら君はどんな顔をするかなぁ……?』

 

 

 頭の中でニタリと笑う奴の姿にオールマイトの握り拳から血が垂れる。

 

 

「これ以上、私の生徒に手を出させるものかッ『オール・フォー・ワン』!」

 

 

 

 

 

平和の象徴と巨悪の激突は近い───

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

──風都最寄りの駅

 

 そこに天倉と翔太郎がいた。そんな2人はベンチに腰を掛けて何か話している様子だ。

 

 

「お別れの挨拶くらい告げて来なくて良かったのか?」

 

「大丈夫ですよ、そう言う翔太郎さんも良いんですか?事件の後始末とか」

 

「ひと段落したからな……とんでもない職場体験になっちまったな」

 

 

 今日が職場体験最終日。風都に別れを告げる瞬間(とき)が訪れたのだ。コスチュームの入ったケースとバックを手に天倉は翔太郎に声を掛ける。

 

 

「わざわざすみません」

 

「良いんだよ、何だかんだでお前にも助けてもらったしな。亜樹子も行ってたが……たまには事務所に顔を出せよ?」

 

「……はい」

 

「なんだよ、まだ照井の言葉を気にしてんのか?」

 

 

『今までの事件については一切口外しないように。お前はヒーローとしては素晴らしいものだが……、免許も無し個性を使った人物としては良い行いとは言えない』

 

 照井の言う言葉は天倉の事を公表代わりに違反行為を見逃すというものだった。翔太郎の言葉が図星だったのか、バックを握る力が一段と強くなる。

 

 

「それもあります……」

 

「"も"……って事は他にもなんかあんのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺、分からないんです。……本当に俺は正しいのかって」

 

「まだ成人でも無いんだ。個性を使った事ぐらいは大目に……」

 

「最上魁星の事件の発端……娘さんが他界したから…ですよね?」

 

 

翔太郎の言葉が詰まる。

 

 

「お前……」

 

「すみません。フィリップさんに無理言ってお願いしたんです」

 

 

「確かに今でも最上さんがやった事は許せない……けど、最上さんも被害者だったんだ。…それなのに俺がやった事は本当に正しいか分からないんです」

 

 

 今回の事件、人を助ける事が出来た……が、それと同時に人を不幸にさせた。もしかしたらもっと別の手段もあったかもしれない。

 

 

「俺は、一体何のために戦って……!」

 

 

 何度考えても分からない。自分はヒーローとして正しかったのか?そんな自問自答が頭の中で何度も繰り返される。

 

 

 

 

 

 

「お前な……、本当に馬鹿だな」

 

「え?」

 

 

 呆れたように額を抑える翔太郎に天倉は声を漏らす。すると、翔太郎は彼の胸倉を掴み顔を近づける。

 

 

「お前の戦っている理由は()()と同じだろうが。『誰かを助ける為に戦う』それが俺達の理由だろうが。アイツ等の為にお前は戦ったんだろ?」

 

 

「人を助ける事に理由を一々付けなきゃ駄目なのかよ!古明地を助けたいと思って行動に移したお前はあの時、確実にヒーローだった!お前はあの時は仮面ライダーだった!」

 

 

 そう言うと天倉は先程まで向いていた逆側に無理矢理向かされる。

 

 

「受け入れろよ。お前はヒーローとして立派なんだってな」

 

 

 そこには助けたいと思った少女が立っていた。

 

 

「天倉さん……」

 

「……」

 

 

 何を言えばいいか分からなかった。

いや、そもそも自分が何かを言う資格は無い。そう思った。

人当たりが良く苦労人に見えるのは、表面上そう振る舞っていれば嫌われる事は無いからだ。

だから今まで己の内側を見せる(信用する)事が出来なかった。

 

君の思う程、自分は聖人君子では無い。

 

 

「あの時、天倉さんは私を信じてくれた」

 

 

違う、アレは自分の境遇に似た人への同情に過ぎない。

 

 

「本当は心の奥底では怖がっていた。」

 

 

その通りだ。皆、俺の事を嫌うに決まってるから。

 

 

「裏切られる事の怖さを天倉さんは知っている」

 

 

裏切られるのは当たり前だ。

 

 

「自分は周りと違うと言う疎外感を知っている」

 

 

自分は周りに比べて異質だ。

 

 

「貴方は私と同じだった」

 

 

だから君を心の底から助けたいと思ってしまった。

 

 

「この(個性)は本当に嫌だった。人の醜さを知ってしまう呪いが何故、自分が持っているのか分からなかった……それでも、信じ続けていれば報われるんですね……」

 

 

……どうして君は……。

 

 

「ありがとう、私のヒーロー」

 

 

俺をヒーローと呼んでくれるんだ?

 

 

「例え、それが同情だったとしても貴方は私を救ってくれた」

 

 

……そうか、そうだった。

 

 

「だからこそ、この気持ちは本物なんですね」

 

 

こんな笑顔を見れると期待したからヒーローになりたいと思ったんだ。

 

 

「私、古明地さとりは……天倉孫治郎さん。貴方の事が──「カシラァッ!!!」……あれ?」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『問題なのは───天倉のヤツ、赤城、青鋏、黄梟の3人が"操られ利用されており彼等に非は無い"と証言してしまったのだ。それが嘘か真なのか……あぁ、いや嘘だな。最上魁星とマトモに会話をしたのが『彼』と『古明地さとり』である為、確かめようが無いに加えて最上魁星の事情聴取も後日行われるが、"操られて利用された"のは確かな事実だ。

ヒーローにとって割り切りも大事な要素の1つであり、アイツはそれを理解した上でそう証言したのだ……だからこそ、アイツの今後が楽しみと同時に不安にもなる。

 

もし彼に、これ以上の困難が降りかかって来れば────』

 

 

 

 

 

「待ってくれぇ!カシラァ!」

 

「いや、カシラは霊烏路さんの事でしょ!なんで俺なの⁉︎」

 

「いや、カシラは大カシラになってパワーアップした!そして新しいカシラはアンタに決まったんだ!」

 

「俺達、これからちゃんと授業を受ける事にするからさ!」

 

「だから俺達もカシラん所の学校に入る!」

 

「分かったからついて来ないで!これ以上厄介事持ち込めば除籍処分されるから!ホントマジでお願いだからぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

「……ねぇ、さとり様。今どんな気持ち?」

 

「は?キレそう(別に、特に何も)」

 

「煽るなお空!あと、本音と建前が逆になってますよ!?」

 

 

 

 

 目の前の光景に翔太郎はフッと笑みをこぼすと手に持っていた自作の報告書を潰す。これ以上の困難が降りかかって来れば彼は身体的に、精神的に再起不能となると翔太郎は思った。

 

……だがそんな事は杞憂に終わるだろう。彼の周りにはあんなにも笑顔が溢れている。彼の周りには支えてくれる人達が居る。

 

 彼にも自分達のように助け合い、大切な事を気付かせてくれる仲間が居るのだと理解できる。帽子を深く被り直した翔太郎はそんな彼に別れを告げずに背を向ける。

 

 

「いや、アイツなら大丈夫か……と?」

 

 

ふと、足元に視線を向けると()()()()と目が合った。そんな猫の視線の高さに合わさるように翔太郎は屈むと言葉が通じるか定かでは無い猫に話しかける。

 

 

「よぉ、『ミック』。今回、お前の出番は無かったようだ……痛でででっ⁉︎おい、なんで爪を立ててくんだよ!」

 

 まるで「お前らがしっかりしていないから自分が出る羽目になった」と文句を言っているが如く不機嫌そうに猫は翔太郎の顔に爪を立てた。

 

 

 ビルが溶け、人が死ぬ。

それは、この街ではありふれた出来事。

だが、この街には探偵がいる

 

そして街の外には彼等と同じ信念を持つヒーロー達が在る。

 

──今日もまた風が吹く。

 

 




【最上魁星の家族について】

『最上見値子』
14歳という若さで逝去。
当時"個性"は発現していなかった【無個性】の中学生。12年前、下校時に"個性"を持った集団グループからの暴行、陵辱を受けその後自殺を図り死亡する。

『最上雪菜』
最上魁星の妻であり最上見値子の【無個性】の母親。
娘が亡くなったショックで衰弱。娘の後を追い自殺を図り彼女もこの世を去る。

その後、科学者であった父親の最上魁星は『i・アイランド』へ移住を行うが、数年後に彼が開発した『トランスチームシステム別名(カイザーシステム)』と共に行方不明となる。





〜〜〜専門用語解説。



D(ダミー)・ガイアメモリ』

 元々風都で販売されていたモノを最上魁星が真似して製作した模造品。他人の細胞に含まれる"個性因子"を更に他者の身体に取り込ませる事によって"個性"が一時的に発現される。その際に"個性"に合わせた身体を作る為に身体は怪人化される。

※例として『マグマ身体から噴出させる』を扱うにはマグマを噴出する為の器官、マグマの熱に耐えうる身体等が必要。その為、身体が自動的に怪人化する。

種類としては『ビースト』『バード』『キャッスル』『スタッグ』『オウル』『ブレイズ』『クロウ』『ギア』等が存在する。

『リモートコントロールメモリ』はD・ガイアメモリの中でマザーコンピューターのような存在であり、『リモートコントロール』をラジコンの操作機器とするならば『ギア』と『エンジン』を除く『他のメモリ』は遠隔操作される玩具である。


 ちなみに『D・ガイアメモリ』の他者の"個性"を利用した技術はとある極道組織に伝わったと言う……。



『駆鱗煙銃』

別名『トランスチームシステム』、『カイザーシステム』

 "個性因子"を弾丸として他者に撃ち込む事によって"個性"の発現が可能となるシステム。"個性"が持続する時間は3〜5時間。
最上魁星が製作した拳銃型デバイスであり、本来の使い方は自身に"個性因子"を二重に撃ち込む事である。
 すると自身の外見が大きく変わり【無個性】の者でも使えるシステムである。最上魁星はギアとリモートコントロールを使用する事によって『カイザー』へ変身を遂げた。
 更に三重にして"個性因子"を自身に撃ち込むと『バイカイザー』と言う名称へ変化し、身体中の細胞の破壊を引き換えにパワーアップを遂げる事に成功した。







【事件の流れ】


娘と妻を失い"個性"による力を求めた彼はオール・フォー・ワンと接触する。彼の力によって『最上魁星』は『茂加味快青』と新しい戸籍を手に入れる。

風都に移住した最上魁星は"偶然"娘の名前と同じだった女の子を養子として迎え、彼女と仲の良い女の子も養子に迎えた。

↓↓↓

 オール・フォー・ワンは【とある人物】からの情報でオールマイトの生徒が風都に来る情報を手に入れ、その生徒が来るタイミングと、茂加味快青が事件を起こすタイミングが重なるように調節を行う。

↓↓↓

 風都の中でも『古明地こいし』の"個性"に目を付けた茂加味快青は彼女の姉に「妹の"個性"を私の力で上手く扱えるようにしよう」と嘘偽りの無い言葉で交渉する。

その後、偶然『古明地こいし』の細胞から模造のガイアメモリを作り出す瞬間を目撃した火焔猫燐は第1実験対象として扱われる。
火焔猫は【Bのガイアメモリを古明地さとりに渡す】と言う命令を無意識に行い、無意識中の行動は蓋をされたように記憶の奥底に封じられてしまう。

そして火焔猫燐は無意識の中、古明地さとりにガイアメモリを渡してしまう。

↓↓↓

 古明地さとりはガイアメモリを持つ人間は【特定の無意識の行動を取る】と言う力により無意識に自らの腕に生体コネクタを取り付ける。その後も無意識にドーパントへ変身を行い、彼女の意思関係無しに無差別放火が彼女自身の手で行われる。

↓↓↓

 そして最上魁星は天倉孫治郎の"個性"である『カロリーを消費し骨格筋、骨、細胞を急激に成長、増強させる』仕組みに目を付ける。

↓↓↓

その後、D・ガイアメモリ事件は本格的に始まる事となった。













 風都編のテーマは『"個性"の有無について』でした。


"個性"は本当に人々の希望となるのか?それとも絶望になるのか?普段"個性"はカッコイイ特殊能力的に描写されてますが、別の視点から"個性"見ると違う意味として捉える事も出来ると思います。

"無個性"は"個性"持ちへの嫉妬、羨望。"個性持ち"特有の悩みについて上手く描写出来たのかな?と思います。


 スパイダーマンの『大いなる力には、大いなる責任が伴う』仮面ライダービルドの『力を手に入れるってのは、それ相応の覚悟が必要なんだよ』はヒロアカにおける"個性"に対しても言える事なのでは?と思いました。
USJ編でも13号先生は"個性"は人を殺める事ができると言っていましたが、13号先生は本当に良い人格者だと思います。


 ちなみに作者は緑谷君が『"個性"を手にした幸福者』なら天倉君は『"個性"を手にしてしまった不幸者』と考えております。


 まぁ、元々風都編はこんな長編にするつもりではありませんでした。平成ジェネレーションズで万丈が先輩ライダーから戦う理由を学ぶシーンがカッコよかったのでそれに便乗して風都編を書き始めたのですが………何故、こうも壮大になったし。



最後の最後はシリアス……と思った?残念、シリアルでしたー!

ねぇ、今どんな気持ち?どんな気持ち?天倉にヒロインができると思った奴等、今どんな気持t(無言の紅蓮炎迅脚





【おまけ(見たい人だけどうぞ)】



『告白成功ルート』


「私、古明地さとりは……天倉孫治郎さん。貴方の事が好きです。異性として、恋愛対象として大好きです」

「?何だって?ススキ?」

「好き」

「ごめん、耳が壊れたみたい。何だって?」

「好き!(本気)」

「は?─────


瞬間、天倉の首から上が爆発した。許容量以上の衝撃に耐えられず核の炎が上がったのだ。

勝った!風都編 完!




『ヒロインとしての敗北者』


「人生空虚じゃありゃせんか?」

「ハァ…ハァ…敗北者?」

「煽るなお空!」




『ヤンデレ三銃士』


「私は展開的に天倉さんに恋するキャラになりました。ですが、この後の展開を考えると私は使い捨てヒロインにされる運命…どうすれば……!」

「私に任せてよお姉ちゃん!」

「あなたは!風都編で存在をほのめかしたは良いけど台詞は一言も無かった私の妹のこいし!」

「キレそう。…だけどそんなお姉ちゃんの為に」

愛が深い系ヒロイン(ヤンデレ)三銃士を連れて来たよ」

「愛が深い系ヒロイン三銃士?」

「嘘吐き焼き殺すガール『清姫』」

「嘘吐きは絶許」

「ヤンデレクイーン『我妻由乃』」

「ユッキーヲコロスモノハァァァァ!!!スベテシネバインダー!!!」

「Nice boat. 『桂言葉』」

「中に誰もいませんよ」

「コレで使い捨てヒロインにならずに済むよ!やったねお姉ちゃん!」

(やべぇ…天倉さん強く生きて)

燐はただ天倉の生存を願う事しか出来なかった。







 これにて風都編は一旦終了になります。

 一 旦 終 了 に な り ま す


ちなみにアンケートの結果は活動報告の方で発表させていただきました。
それを見た感想として………。

 な ん で こ う な っ た

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。