個性以前に個性的な奴等ばかりなんですけど   作:ゴランド

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 新フォームが出たので皆さんお待ちかね恒例の暴走(初回確定)タイムが始まります。
え?待ちかねて無い?(´・ω・`)そんなー
さて、今回の新フォームの被害者は果たして何人出るかなー?wktk

 ちなみに戦闘中は好きな挿入歌を流して読んでください。クソ小説のクソ描写が少しでも和らぐと思います。




第47話 これでE/燃えよアマゾン

「亜樹子さん!」

 

「あっ、さとりちゃん!無事だったの?」

 

「はい……っ!見値子さん、その傷……!」

 

「あ、ははは……ちょっと油断しちゃってね」

 

 

「今、警察の人達がこいしちゃんの捜索をしているからすぐに見つかると思うよ」

 

「えっと…天倉さんは?天倉さんはどこに!」

 

「天倉くんなら────

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 

「うぉらッ!!!」

 

「ッ────!」

 

 

 腕をクロスさせガードの体勢を取り、防御に成功するが、全身に凄まじい熱量と共に衝撃が伝わる。まるで真正面からトラックが衝突して来たような感覚がバイカイザーを襲ったのだ。

 

 

「オラオラオラァッ!!」

 

 

 それを何発も身体の至る箇所に命中させていく。拳のラッシュがバイカイザーを襲い、その身体を浮かせる。

 

 

「オルァッ!!!」

 

 

 フルパワーのスイングが浮かせたバイカイザーを大きく吹き飛ばされ、今までの攻撃と比べ物にならないパワーに戸惑いを隠し切れない。

 

 

「ぐ、なんだこの力………!」

 

「その程度かァ!!」

 

 

 吹き飛ばされ倒れているバイカイザーを思い切り蹴り上げ、背を壁に打ち付けた後、追い討ちをかけるように拳を叩き込む。

 

 

「ぐ……舐めるな!!」

 

 

 先程から何度も攻撃されているバイカイザーだが、腕の歯車を高速で回転。チェーンソーの要領で天倉の拳を躱し、回転する歯車が天倉の腕を切り裂く。

 ブシャリと天倉の腕の肉を抉る音が響き、鮮血が宙に舞う。バイカイザーの歯車はギャリギャリと音を立てながら血の色に染まる。

 

 

「────⁉︎」

 

 

が、バイカイザーの動きが止まる。それもそのはず、彼の視界に飛び込んで来たのは()()()()()()()()光景だからだ。

 

 

「コレは……ッ!」

 

「余所見してんじゃねぇッ!!らぁッ!!」

 

 

 再び、丸太のような筋肉に覆われた脚でバイカイザーを蹴り上げ、そのまま目の前で浮いた敵に向かって拳を握り締め振りかぶる。

 

 

「ぐ……、装甲が融解している……!」

 

「ハァ……!ハァ……!どうしたァ…!その程度かァ!」

 

(……既に息が上がっているだと?)

 

 

 バイカイザーは目の前の天倉孫治郎の爆発力に驚くと共にその力が引き起こす副作用に関心をもたらす。

 

 

(成る程。コレは……単純な筋肉量の増加と体温の上昇か!)

 

 

 天倉孫治郎の"個性"は父から受け継がれたモノだが、僅かに彼の"個性"には母の【エネルギー変換】の力も受け継がれていた。

 

体内のカロリーを筋肉量の増加に加え、熱エネルギーへ変換する事によって体温の上昇を図り、パフォーマンスを限界まで引き上げる事に成功。ポテンシャルをフルに引き出しているのだ。

 天倉の身体から発せられている炎は極限まで熱された血液が体外に排出され発火したモノであり、あくまで二次的なモノだと理解できる。

 

 バイカイザー、いや最上魁星は天倉の新たな力に───

 

 

「ハ、ハハ……!遂にエクシードフォームの先へ行ったか!」

 

 

───歓喜した。

 

 単純に最上魁星は嬉しかった。目の前の少年は自分の予想を遥かにに上回って来た。

……彼ならば自分の野望だって叶えてくれるかもしれない。そう考えてしまう。

 

 

「いいぞ天倉!君の本気見せてみろ!」

 

「上等だァッ!!!」

 

 

 天倉、いやアマゾンは燃え盛る炎を纏い拳をバイカイザーに叩き込む。殴れば殴るほどバイカイザーの装甲は融解し、アマゾンの手の甲からは()が噴き出る。自分への攻撃を気にする様子もなく、ただ攻め続ける。

 

 

「アレが、天倉なのか…?」

 

 

 その凄まじい様子に押されてしまう翔太郎。目の前に居るソレは自分が知っている天倉とはかけ離れていた。文字通りマグマの如く侵食する勢いで一方的な戦いを見せるソレにただ、圧倒されてしまう。

 

そんな翔太郎に相棒が声を掛けてくる。

 

 

『……不味いぞ翔太郎。一見すると天倉くんの優勢に見えるが実際は違う』

 

「どう言う事だ?」

 

『彼の体温は更に上昇し、体内のタンパク質は水素結合が切断され立体構造を崩してしまう。その結果、体内のタンパク質同士が凝固して彼の身体は変性し───』

 

「あぁ、もっと簡単に言え!」

 

『つまりだ、彼の身体は己の力で熱され自分の首を絞めているのと同じ状況だ。このままでは───』

 

 

 熱されたフライパンに肉や魚、卵を入れればどうなるだろう?表面は焼け焦げ内部まで火が通り柔らかな質感が固いモノへ変質する。

"ステーキ肉"が"元の生肉"へ戻る事は無いようにこのまま天倉の体温が上昇し続けるのは危険なのである。

 

 

 天倉の使う"個性"には形態が存在する。

現在、彼が好んで使用する消費カロリーを抑えた『基本形態(スタンダードフォーム)』。それ以前に使用していた出力、消費カロリーを全く考慮していなかった『グローイングフォーム』。生体電気を放出させる器官を持ち、スピード、殺傷力に特化した『エクシードフォーム』。

 

 そして現在進行形で発現させている『エクシードフォーム』を更に超えた『エクシードマグマ』は筋肉量を増加させ、体温を上昇させたものだ。『エクシードフォーム』と比べて、触手や刃などは使えない代わりに肉弾戦を特化させており、単純なパワーでは群を抜く形態だ。

 

 しかし、強力な分デメリットも存在する。『エクシードフォーム』も走力等が特化されているが、凄まじいスピードを出す為に電気信号の伝達スピードを"無理矢理上昇させている"のに加え全身の負荷も凄まじいものになる。

『エクシードマグマ』の場合は上記以上の全身への凄まじい負担に、急激な体温上昇によって後半は身体機能の低下を招いてしまう。雄英体育祭においてリカバリーガールに使用するのを控えろと言われたのはこれが原因だ。

 

 

 

 それを理解している筈なのに、(アマゾン)は止まらない。

時折、手から炎が噴き出ると同時にゴキャリと不快な音が響くがその手を止める様子は無い。

 

 ボギリと言う音と共に一段と炎が荒れ、雄叫びと共にアッパーが炸裂する。大きく吹き飛ばされたバイカイザーは肩で息をしながら燃え盛るアマゾンを見据える。

 

 

「面白い!君の執念は恐ろしいな!自分が死ぬ可能性を考慮しても戦い続けるか!」

 

「当たり前だ!!」

 

「何をッ──⁉︎」

 

 

 その一言と共にアマゾンはバイカイザーに抱き着いた。

 バイカイザーの問いに即答する天倉。彼の中で既に答えは決まっていた。自分は他人の笑顔の為に戦えればそれで良い。だからこそ、この瞬間が自分の最期になっても構わない。

 

 

「まさか……自爆するつもりか!!」

 

「こうでもしないと、お前を倒せないと思ったからな!!」

 

 

 アマゾンの全身の炎がまた一段と噴き上がり、周囲の温度も劇的に上昇する。バイカイザーは拘束から投げ出そうとするがアマゾンは拘束する力を一切緩めない。それどころか更に力を込め、抜け出せないようにする。

 

 

(これで良い……これで全部……!)

 

 

 自分自身にそう何度も言い聞かせる。自分を犠牲にして他を救う。それがヒーローとして当たり前の事だ。例え自分がどうなろうと、他人の笑顔を守れればどうでも良い。昔からそう誓っていた。

 だからこそ躊躇なくこれ(自爆)選択する事が出来たのだ。天倉は自身の体温を限界まで上昇させパワーを暴発させようと───

 

 

 

──天倉さん

 

「………」

 

 

 ふと彼女の言葉が頭をよぎる。

 

 

(あぁ、もう少し気の利いた別れの言葉とか送っておいた方が良かったのか────)

 

 

 瞬間、横から衝撃が走る。しばらく頭の中が真っ白になっていた天倉だったが気が付くと彼は地面とキスをしていた。振り向くとそこには自分に蹴りを放っていたのだろうコチラに"右脚"を突き出していたWが立っていた。

 

 

「……え?翔太郎……さん?」

 

「……あ、いや…俺じゃない相棒の方だ」

 

 

 翔太郎も驚いたように呟くが、そのままWは彼の胸倉を掴み引き寄せる。

 

 

『何故、あんな事をしようとした?君は完璧なヒーローになったつもりなのかい?』

 

 

 フィリップの言葉に天倉は押し黙ってしまう。図星だ、完璧に見抜かれてしまっている。天倉はなんとかして言い訳をしようと考える。

 

 

『……Nobody's Perfect』

 

「え?」

 

『僕の恩人の言葉さ。完璧な人間なんて存在しない。無論、ヒーローだって同じさ』

 

 

 胸倉から手を離すと、フィリップは天倉に向かって手を差し伸べる。

 

 

『君の目指すヒーローは笑顔を守るヒーローなんだろう?だとするなら彼女を悲しませてはダメだろう?』

 

 

 その言葉を聞いて、天倉は辺りを見渡す。

すると、少し遠い場所に約束した彼女が佇んでいた。亜樹子と見値子も側におり、ホッと安心すると同時にチクリと胸が痛む。

 

何故、こんな時に胸が痛むのだろうか?

 

 

「───あ、そうか」

 

 

 不思議で堪らない天倉だったがすぐに答えは見つかった。彼女は笑顔ではなかった。今にも泣き出しそうな顔だったのだ。

 

 

『君は昔、その"個性"と君自身の優しさ故にイジメに遭ったそれ以来、君は周りの人を信じられなくなり、どうせ裏切られてしまうと怯えてしまった』

 

「……そうだ、俺に価値なんて無い。だから笑顔を守るヒーローとしての存在価値がある俺を作り出したかった」

 

 

 彼の中でのヒーローとは民衆の都合の良いマシーンと言った認識だった。喝采など要らないマシーン。だが本当は笑顔を守り、皆に受け入れる存在になりたかった。

その為に強く在りたいと願っていた。

 

 

『強いだけのヒーローに価値は無い。君の優しさが必要だ。それがもし弱さだとしても"僕達"はそれを受け入れる』

 

 

 差し出されている手をマジマジと見つめると恐る恐る手を伸ばし、掴む。

最初から手は伸ばされていた。だが、自分はその手を見るどころか勝手に怯えて皆が伸ばす手に気付いていなかった。

 

 

「あぁ、クソ。緑谷くん達も伸ばしていたじゃないか……」

 

『目は覚めたかい?……ふぅ、一体誰に影響されてしまったんだろうね』

 

 

 フィリップは自分自身に呼び掛けるように呟く。仮面で表情が読み取る事は叶わない。だが、その声色は嬉しそうな、懐かしそうに感じられる。

 

 

「どうやら落ち着いたようだな。どうだ気分は?」

 

「えぇ、まぁ……。なんかスッキリした気分ですね」

 

「フッ、そうかよ」

 

 

 天倉の答えに仮面越しに不敵な笑みを浮かべる翔太郎。そんな彼にアクセルである照井は声を掛ける。

 

 

「随分とご機嫌だな。弟子を取った気分にでもなったか?」

 

「弟子?………あぁ、成る程な」

 

 

 翔太郎も気が付かない内に自分と天倉を重ねていた。未熟だった頃の自分と、その自分の世話を焼いていた"あの人"。いつからだったのだろう、自分が世話を焼く側になっていたのは。

相棒は、その事をとっくに気が付いていたのだろう。

 

「ったく……、さっさとケリつけるぞフィリップ」

 

『あぁ、分かった。……と、言いたい所だけど今回はかなり特殊だ』

 

「どういう事だフィリップ」

 

 

 フィリップの言葉に照井は疑問を投げかける。

 

 

『バイカイザーは《ギア》の力を軸に《リモートコントロール》《エンジン》の力を纏っている。彼の体内にはメモリ3つ分のエネルギーが蓄積されている。このまま放っておけば最上魁星はタダでは済まないだろう』

 

「方法はあんのか?」

 

『簡単だ。ならばコチラもメモリ3つ分の力を与えエネルギーを相殺すれば良い……が、僕達と照井竜は戦闘のダメージが残っている。片方がツインマキシマムを行うと言うのも危険だ。となると最善の方法として………』

 

「?」

 

 

 Wは天倉の方にチラリ視線を向け、言葉を投げかける。

 

 

『天倉君、君の力を貸して欲しい』

 

「正気かフィリップ!」

 

 

 フィリップの言葉に照井は食いつく。天倉孫治郎はこれまで事件解決に貢献してくれた人物だ。しかし、一歩間違えれば相手を殺してしまうかもしれない手段に彼を巻き込んでしまう。

彼は警察として、1人の人間としても見過ごす訳にはいかなかった。

 

 

「方法は?」

 

「天倉……!」

 

 

 だが、彼は躊躇なくフィリップの言葉に応える。

照井は止められない事に悔やむ。こんな事に巻き込んでしまった事に、こんな危険な目に遭わせてしまった事にだ。

 

 

「照井さん、ありがとうございます」

 

 

突如として天倉の言葉が照井の耳に入る。

 

 

「だけど俺は覚悟は出来ているんです。俺はあの人を許せない……だけど、それでも助けたい。ここで死なさせないその為に俺は戦います」

 

「…………」

 

 

 既に覚悟はできている……か。そう考えながら照井は己の獲物を地面に突き刺す。

 

 

「天倉、これを使え。その形態なら簡単に使う事が出来るだろう」

 

「え?わ、分かりました……!」

 

 

 突き刺さったエンジンブレードを掴み、地面から抜く天倉。全身に伝わってくる重量はこれから起こる出来事に警告しているようにも感じられた。

 

 

『トリプルメモリブレイクだ。まず僕達のマキシマムドライブでバイカイザーの《リモートコントロール》、《エンジン》の装甲を剥がす。その後、この中で最もパワーの高い天倉くんが《ギアメモリ》をブレイクするんだ。天倉くん、その形態はいつまで維持できる?』

 

「え?うーん……残り20秒くらいですね」

 

『そうか、なら君はエンジンブレードのマキシマムドライブでバイカイザーの体内、胸部中心に存在するメモリを直接破壊するんだ』

 

 

 フィリップの説明を聞くと天倉は無言で頷く。

 

 

「んじゃ、さっさと決めるぞ。せっかくだからな、技名は………」

 

 

 ウンウンと考える翔太郎の横から天倉が手を挙げ、意気揚々と答える。

 

 

「あ、ハイ!『真空切り裂きストライク』で!」

 

「だっさ⁉︎ネーミングセンスねぇなお前!あーったく……『ライダースラッシュ』とかで良いだろ」

 

「安直過ぎませんか………ん?何でライダー?免許持ってないんですけど」

 

「……お前、前に自分で仮面ライダーって名乗ったじゃねぇか」

 

「……あぁ、成る程。そう言う事か」

 

 

 先日の戦いで自分は『仮面ライダー』と呼ばれ、ついその場のノリで便乗する形で名乗ってしまった事を思い出す。

あの時は流れるままに名乗ってしまう事になってしまったが、今この瞬間、自分はヒーローとして、"仮面ライダー"として戦っているのだと実感する。

 

 

「……しゃあッ!」

 

 

 深呼吸をした後、拳を口元に運び自身に喝を入れる。

今ここに3人の仮面ライダー(正義の味方)が揃いバイカイザー(黒幕)の前に立ちはだかる。

 

 

「……いよいよ幕開けと言う事か?」

 

 

 バイカイザーが不敵な笑みを浮かべながら呟く。その言葉に対して天倉は何も言わずに剣を構える。

 

 

「都市伝説とされる誰にも理解されずに孤独に戦い続けるヒーロー『仮面ライダー』が2人……いや、君も含めると3人か?」

 

「……」

 

「私は既に満身創痍。どう足掻いたとしても君達に勝てる未来(ヴィジョン)が見えない」

 

「………」

 

「それでも君は無抵抗な相手を集団で倒すと言うのかな?」

 

 

 自然と剣を握る手の力が強くなるのを感じ、天倉は口を開く。

 

 

「貴方はそれ相応の事をして来た。霊烏路さんに、見値子さんに、三羽烏の人達に、古明地さんとその妹さんに、身勝手な研究に巻き込んで悲しませた」

 

 

 己も、彼女達の事を理解出来なかった。もっと自分に出来る事があった。周りの皆を信頼出来ていなかった。自分の罪は既に数えた、ならば次は相手が罪を数える番だ。

 天倉は人差し指を向け、言い放つ。

 

 

「さぁ、お前の罪を数えろ」

 

 

 その言葉と共にWとアクセルは駆け出す。Wは瞬時にメモリをチェンジさせ、緑と黒の姿に変わる。

そして、2人のライダーは各々のドライバーを操作し、その場で跳躍を行う。

 

 

Joke(ジョーカー) MAXIMUM DRIVE(マキシマムドライブ)

 

Accel(アクセル) MAXIMUM DRIVE(マキシマムドライブ)

 

 

 2人のライダーは空中で回転を加え、バイカイザーに蹴りを叩き込む。

 

 

『「ライダーツインマキシマム!!」』

 

「ッ!!」

 

 

 対するバイカイザーは自身の正面に歯車の形をしたエネルギーを形成し盾として攻撃を防ぐ。

 

 

「おおおおおおおおッ!!!」

 

「『「ハァァァァアアアアアッッッ!!」』」

 

 

 2人のライダーとバイカイザーの力がぶつかり合う。両方のパワーとパワーが火花を散らし、拮抗の末打ち勝ったのは───

 

 

「『「ハァアアッ!!」』」

 

「ぐぁッ───!」

 

 

 仮面ライダー達だ。ライダー達は歯車のエネルギーを打ち破り、見事バイカイザーの胸部にマキシマムドライブを決めたのだ。そこへ、天倉が剣を手に駆け出す。

 

 

「決めろ!天倉ァ!」

 

 

 翔太郎の言葉と共に、照井から預かった『エンジンメモリ』をエンジンブレードのスロットに挿し込む─────

 

 

「させると思うかッ!」

 

──ガギィン!

 

「ッ⁉︎」

 

 

───事は出来ず、天倉の手に収められていたメモリはバイカイザーが放った歯車型のエネルギーによって弾き飛ばされてしまう。

 

 

「しまっ「天倉ッ!」──!」

 

 

 翔太郎の呼び掛けに反応した天倉はエンジンブレードのスロットに飛んで来た()()()()を挿し込む。

 

 

「切り札は最後まで取って置くもんだぜ…決めろ!」

 

Joke(ジョーカー) MAXIMUM DRIVE(マキシマムドライブ)

 

 

 その音声と共に黒のエネルギーが形成されたエンジンブレードを手に風を切るかのように駆け抜ける。

 

 

「ライダー……スラッシュ!!はぁぁあああああああッッ!」

 

 

 天倉の雄叫びと共にバイカイザーの胸にエンジンブレードの鋒を突き立てる。瞬間、バチバチと激しいスパークが発生しながらも天倉はエンジンブレードを押し込んで行く。

 

 

「ぐ……ぁ……さ…せるかぁッ!」

 

「ッ!」

 

 

 だが、突き立てられたブレードをバイカイザーは両手で掴むと、その持ち前のパワーで無理矢理引き抜こうとする。この土壇場でエクシードマグマ以上のパワーを出し始めた事に天倉は心の中で舌打ちをする。

 

 

『ぐ、マキシマムドライブが体内のメモリまで達していない!』

 

「クソ失敗だったか!」

 

 

 

 最後のバイカイザーの足掻きに翔太郎達は嘆く。コレが最上の信念だと言うのだろうか?自分の命にも関わると言うのに、何故そこまでやるのか?それ程までの執念を最上は持っているのだろうか。

 

 

 

「──いや、まだだッ!!!」

 

 

 だが、それは彼も同じだった。天倉はエンジンブレードから()()()()、その場からバックステップを行う。その行動にバイカイザーは驚愕を露わにし動きが止まってしまう。

 

 

「何ッ⁉︎」

 

「俺の必殺技……Part1……!」

 

『Violent Strike』

 

 

 ベルトのグリップを力強く握り、捻るとドクンと右脚が熱くなるのを感じる。右脚の筋肉がブチブチと悲鳴を上げる。

 

 一歩、一歩、踏み抜いた地面を焦がしながら駆け出した後、大きく跳躍を行う。その動きは雄英体育祭トーナメントで爆豪との戦いで見せた飛び蹴りと似ているが、前のものと比べ違う点が1つあった。

 

"爆豪対策用特訓強化型キック"

 

又の名を

 

 

「ライダァァァアアアアッ!キィィィイイックッ!!」

 

 

──ズドン!!

 

 

 体を空中で前転させ回転を加えた蹴りをバイカイザーの胸に突き立てられたエンジンブレードに叩き込むと、大砲が擊ち出された様な音が響き刀身が更にバイカイザーの胸に突き刺さる。

 

そして、

 

 

──パキン

 

 

 何かが割れる音がバイカイザーの胸の奥底から響く。

 

 

「達した!胸のメモリまでマキシマムドライブが達したぞ!」

 

「ハァ……ッハァ……ッ」

 

 

 蹴りを放った後、膝をつきながらも反動を殺し着地に成功する。手応えはあった。メモリの破壊する音が身体に伝わって来た天倉はバイカイザーを倒したと言う事を確信していた。

 

 

「ク、……クク。残念だったなぁ、君の力、私の物にできれば娘だって……いや、それどころか世界中の人間も救う事が出来るのになぁ……」

 

 

 だが、バイカイザーは尚も立っている───いや、恐ろしいまでの執念だ。最早、立っている事すらやっとなのに、まだそんな事を言う余裕があると言うのだろうか。

 

 

「……貴方は良い人だ。だけど、貴方程の力なら誰かを犠牲にしないで成果を出す事だってできた筈だ」

 

 

 だからこそ、天倉は最後の最上魁星の会話を交わす事にした。それは彼なりの慈悲、いや同情なのだろうか?

 

 

「綺麗事を……そんな理想できる筈もないだろう」

 

「綺麗事で良いじゃないか。俺は色んな人達の笑顔を守れる……貴方のような敵の笑顔も守れるようなヒーローになりたいんだ」

 

 

 それは純粋無垢な子供の我儘の如く。天倉の理想は、夢を見る子供の様な、とても愚かな綺麗事だ。

 

 

「……ククク、君はまるで水晶だな。子供のように純粋無垢な欲望を持ち、少しの衝撃を与えただけでも壊れそうな水晶だ……」

 

 

 そんな綺麗事を口に出すヒーローに対して、彼は彼なりの皮肉を込めた言葉を天倉(ヒーロー)に送る。

 

………だが、そんな彼だったが、少し嬉しかった。天倉の言葉に救われた様な気がした。

 

 

 

 

「◼️◼️◼️◼️◼️………に気を付けろ」

 

「えっ?」

 

 

 瞬間、バイカイザーの身体は爆散する。その場に居たのは倒れた憎き敵の最上魁星と割れたギア・メモリだけだった。

天倉はそんな彼を見た後、後ろから近付いて来る見値子に向けて声を掛ける。

 

 

「………見値子さん。後はお願いします」

 

「……最上魁星、現行の容疑で身柄を拘束します」

 

 

 

 終わった。やっと終わった。

……だがコレで本当に終わったのだろうか?と天倉はピンと来なかった。

 

 呆気なかった。最後はとても呆気なかったのだ。コレが罪を犯した者の最後だと言うのだろうか?

 

 

「……俺は……」

 

「天倉さん────!」

 

 

 突如として掛けられた声にビクッと驚く天倉。振り向くと、そこには守ると約束した者が立っていた。

……何故だろうか。彼女を見た直後、全身から力が抜けガクガクと身体が震える。

 

「………良かった」

 

 

──あぁ、そうか、怖かったんだ。

 

 そう思うと、涙が溢れて来る気がした。今まで自分の気持ちを押し殺して来た。殺されかけ、死の淵を彷徨い、その果に自分は彼女を助ける事が出来た。

 

ならば───彼女の前でこんな姿を見せる訳にはいかない。

天倉は彼女に向けて笑顔を見せ───

 

 

「……ッい…」

 

 

笑顔を見せ────

 

 

「……?天倉さ────」

 

 

「アッツゥイッッッ!!!??」

 

 

「『「「「!?」」」』」

 

 

 

───られる状態ではなかった。

 

 

 

「熱ッ熱熱!暑ッ⁉︎熱ッ!!熱ーーーーッ!!?アッツいんですけどォ!!」

 

 

 天倉の身体中から炎が溢れて出る。するとフィリップが『あぁ』と納得するような声を出す。

 

 

『どうやらその形態の限界を迎えたようだね。コミックのような描写を現実で見るのは初めてだ、とても興味深い。』

 

「い、いや呑気に観察してないで⁉︎だ、誰か水水水水水水水ッ!いや、氷!誰か氷持ってきて⁉︎焼ける──────ッ⁉︎シヌゥッ!!轟くん助けてェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ! 今、天倉に呼ばれた気がした!」

 

「焦凍ォ!パトロール中だ!俺の声に反応しろォ!」

保須に来ている轟親子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソァ!!!そういや職場体験中だったよチクショウッ!ってかアツッ!!?誰かヘルプ!ヘルプミィィィイイイッ!ヘッ─────」

 

 

突如として途切れる天倉の声。

 

 

「あ、あれ?天倉?おい、天倉?」

 

「」

 

「天倉さん?」

 

 

へんじがない ただの焼死体のようだ

 

 

 

「「天倉ァ(さん)ーーーーーッ!!?」」

 

 

 




皆ー、応援ありがとー!(チャー研風)


 と言うわけで天倉君が死んだので次回からは『Re:この素晴らしい二度目の人生は人肉大好きフレンズ(言い掛かり)と災厄の戦乙女から始まる異世界狂想曲生活はスマートフォンを持って来るそうですよ』が始まります。

ゴランド先生の次回作にご期待ください。


作者「流行るかな?」

兄「絶対に流行らんわ、オルガ混ぜとけ」

作者「あ゛?」

兄「は?」

この後、無茶苦茶殴り合った。





 さっきまでのは冗談で次回はエピローグになります。読み返すと1年間、風都編やってたんだなぁと改めて認識しました。と言うわけで今後はオリジナル編を書くのは控えようと思います。

 風都編に否定的な読者さん喜んで下さい。もうすぐで終わりますよ。


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