個性以前に個性的な奴等ばかりなんですけど   作:ゴランド

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平成ジェネレーションズfinalのキャストが豪華すぎて言葉が出ない。




風都編
第35話 Aの体験/風が吹く街


「コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ落としたりするなよ。」

 

「はーい!」

 

「伸ばすな『はい』だ芦戸」

 

「はい・・・・」

 

「くれぐれも失礼のないように!じゃあ行け」

 

職場体験当日。

A組の面々は自分専用のコスチュームが収まっているケースを抱えながら職場へと、ヒーロー事務所へと向かう。

シュンとしている芦戸を慰めながら天倉は緊張感を覚える。雄英体育祭に続いての行事だ。天倉は周囲の楽しそうな雰囲気に改めてクラスメイトのガッツさとその生徒達を担当する相澤先生のプレッシャーの凄さを思い知らされる。

 

「アレ?なにそのオシャレな腕輪!いいなーどこで買ったのー?」

 

「え?あ、あぁコレのこと?」

 

と天倉の左上腕部に装着している銀色に輝く腕輪《リング》に対して芦戸はキラキラした子供のような目で見る。

天倉は今現在何故か、学生服の左袖を肩まで捲っている状態でこれ見よがしに銀色の腕輪が目立つ。

 

「それはコスチュームと一緒に送られてきた"個性"の補助アイテムだ。青山のベルトのようなモンだが、いちいち付け替えするのが面倒だからそのまま付けたんだよ」

 

そんな芦戸の様子に見兼ねたのか天倉の腕輪について軽い説明する。そもそも彼自身何故このような腕輪を付けているのかは、数日前に遡る。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

the 天倉の部屋

 

 

『happy birthday!!!!!!ご機嫌よう!天倉 孫治郎くん!!!!』

 

「・・・・・は、はい」

 

 

天倉はコスチュームと共に送られてきたメッセージと言う名の封筒を受け取り、自宅でソレを確認する事になったのだが封筒の中身である投影機《プロジェクター》には謎の男性が映し出され、無駄にハイテンションな挨拶に天倉は困惑してしまう。

 

と言うよりドアップいきなりハッピーバースデーと言われても普通の人ならばどうリアクションすれば良いか分からないだろう。

そもそも天倉の誕生日はまだ先だ。

 

「えっと・・・・『おっと!自己紹介がまだだったね‼︎私の名前は【鴻上光生】鴻上ファウンデーションの会長を務めている。

・・・・と前置きはここまでにして、君は疑問に思っているのだろう?何故、親会社である鴻上ファウンデーションがコスチュームの改良を務めたのかを‼︎』

 

「やべぇ、この鴻上さんって人色々と吹っ飛んでいるよ・・・・」

 

天倉は鴻上ファウンデーションと言う名前に聞き覚えがあった。とある記事をザッと読んだ程度だが、鴻上ファウンデーションは"3大何やっているかわからない大企業"と言われており噂では

 

・謎のシステムを開発している

・研究所所長が謎の人形を腕に乗せている

・欲望に関する研究を行なっている

 

などとおかしな噂ばかりだ。

ハッキリ言って天倉は物凄く怪しんでいた。と言うか全体的に怪しかった。鴻上光生と言う男性からはそれ程の物凄い胡散臭さが溢れ出ていた。

 

『私はね"欲望"こそが人の本質だと思うのだよ。

"欲望"は誰しもが持つモノ、いや‼︎欲望があるからこそ!人は生きている!欲望無くして人間は成り立たない!!天倉くん!君は体育祭の中でどのような"欲望"を示してきた?おそらく君はただ単純に"強くなりたい"と言う願望であのような力を発揮したのだろう』

 

困惑している天倉を余所に投影機に映し出されている鴻上光生はしばらく間を置いてから大きな声で叫ぶ。

 

『素晴らしいッ!!!!!!

実に素晴らしい欲望だよ!天倉くん‼︎"欲望"と言うのは単純になればなるほど難しいものだ‼︎

私はね‼︎君のその"欲望"に惹かれたのだよ!!』

 

「・・・・は、はぁ」

 

『そこでだ!君のコスチュームと共に個性の補助アイテムを送っておいた。

私のささやかなプレゼントだ』

 

「補助アイテムって・・・・・・」

 

と天倉はガサゴソと投影機が入っていた封筒の中身を漁る。すると何かが手に触れたのを感じ、ソレを手に取ってみる。

ソレは銀色に輝く腕輪であり、鳥の顔を模したよな形をしている。

 

『その腕輪は【レジスター】‼︎君の個性の事はすでに調べてあってね、レジスターは君専用に作られたアイテム!個性を長時間使用する事が可能になる所謂、予備バッテリーのようなものだ‼︎』

 

「え⁉︎それって滅茶苦茶すごいモンじゃないですか‼︎」

 

『しかぁっしッ!!!

君のコスチュームの一つであるベルト‼︎とあるシステムの導入の為に開発が遅れている‼︎ハッキリ言ってこのままでは完璧なコスチュームとは言えないだが‼︎‼︎その為にレジスターにもういくつかの機能が備わっている‼︎』

 

鴻上は映像の向こう側で一息溜めるとニヤリと笑い、口を開く。

 

 

『何だと思う?』

 

「いや、知りませんよ」

 

『だろうね!!!!だが、君は今どのような機能を持っているか知りたいという欲を出した‼︎それはとても喜ばしい事だよ‼︎』

 

天倉のリアクションをまるで知っていたかの如く鴻上光生は天倉の疑問に対して無駄に大きな声で答える。

 

『君のコスチュームの核になるベルト!我々が開発している新システムを導入しているのだが行き詰まっていてだね。とあるモノが必要なのだ』

 

「とあるモノ?ってかさっきサラッと凄いこと言わなかったこの人?」

 

新システムの導入。気前が良すぎる会長に対してもしかして何か企んでいるのでは?と思ってしまう天倉を余所に鴻上は話を続ける。

 

『give and take!!これからも君へのバックアップをする代わりに君のデータを取らせて欲しい!!』

 

「・・・・・え?それだけ?」

 

天倉はてっきり金や【自主規制】や【自主規制】などのモノを寄越せと言われるのではないかと思っていた為、呆気にとられてしまう。

 

『もしも良いならば今すぐにレジスターを左上腕部に装着して欲しい!いや、君ならばそうするだろう!!』

 

何故、装着する本人の事では無いのにそこまで断言できるのだろうか。側から見ても胡散臭く、そこらの宗教勧誘よりも怪しい言動を信じる者などいないだろう。

 

 

「まぁ、いいや。左腕だっけか」

 

 

━━訂正、此処にいた。

 

天倉は腕輪をガチャリと左腕に装着すると「おおッ」と感激した声を漏らす。

実はこうやってアクセサリーをつけるのは初めてだったりするので内心滅茶苦茶ウキウキしている。

 

「はぁー、意外とイカスなぁ。うん、いい感じ!」

 

『そう!装着する際に注意して欲しい事がある!!レジスターを通して君の身体データを取る為"激痛を伴う"が君ならば心配ないだろう!!』

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「え?激痛ってどういうk━━━

 

 

グササササササササササササッッ

↑腕輪《レジスター》の裏から無数の針が飛び出る音

 

 

ドクシュッ‼︎

↑無数の針が左腕の肉に突き刺さる音

 

 

 

━━イ゛ェアアアアアアアアアアアアアアア

 

 

 

 

その後、天倉は約7時間の間悶絶し続けたという

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

天倉は顔を真っ青にし、左腕をさする。

 

「いいなー!私にもつけさせてよ!」

 

 

「やめといた方がいいよ━━━死ぬほど痛いから」

 

「・・・・・うん」

 

彼は低いトーンの声+真顔で答える。その様子に色々と察したのか芦戸はそれ以上何も聞かなかった。寧ろ聞く気になれなかった。天倉の全身からこれについては触れるなオーラを放出し、もし聞いたのならば何をしてくるか分からないので彼女は敢えてスルーを決め込む事にした。

天倉は職場先に近いであろう最寄りの駅までの時間を確認する為、駅に備え付けられてある時刻表を探す。

 

するとキョロキョロと時刻表を探している天倉の目の前をガタイが良く相変わらずキッチリとしている飯田天哉が横切る。

 

「あ、飯田くん!職場体験お互いに頑張ろうね」

 

「・・・・あぁ、そうだな。天倉くんも頑張ってくれ!」

 

「うん!・・・・そういえば、飯田くんの職場体験先って何処なんだっけ?」

 

天倉はお互い頑張ろうと飯田を励ますように応援した後、興味本位で飯田職場体験先を聞く。

いや、正確には聞いてしまったの方が正しかった。

 

「・・・俺は保須市へ行くそこで・・・・とそろそろ時間だな。それじゃあ天倉くん!お互い職場先のヒーロー方に失礼の無いようにな!」

 

飯田はそういうといつものように腕をビシッビシッとロボットのように動かし、駅の改札へと振り向く。天倉はそんな様子に相変わらずだなと思った。

が、それと同時に天倉は飯田が無理しているように感じた。何故そう思ったのかは分からない。おそらく天倉特有の第六感《直感》から来るものなのだろう。

天倉が感じたのは体育祭の時の轟と同じ、何かに対する激しい憎悪。いつもの飯田からは信じられないものだった。

 

天倉が飯田を見送っていると緑谷と麗日の2人が近寄ってくる。おそらく2人も飯田の事を心配しているのだろう。

 

「飯田くん・・・いつもと比べて様子がおかしいよね・・」

 

「多分、お兄さん関連だと思う」

 

「?どういう事?」

 

天倉は2人から飯田天哉の兄に関する事を、ターボヒーロー【インゲニウム】が"ヒーロー殺し"に襲われた事を聞いた。

 

 

ヒーロー殺し【ステイン】

 

これまでに17人のヒーロー殺害、23人のヒーローを再起不能へと陥れ、オールマイトが現れた後の犯罪者としての殺人数は1、2を争うほどである。

恐らく犯罪史上その名を残すであろう敵《ヴィラン》

 

天倉もその名は何度か聞いており、そのヒーロー殺しに飯田の兄である【インゲニウム】が被害に遭っているとは思ってもいなかった。

いや、正確には狙われるとは思わなかったの方が正しいだろう。

 

「・・・しばらくそっとしておいた方がいいのかな?」

 

天倉は無闇に飯田の兄に関する事に干渉してはいけないと思い、呟く。

さらには、励ましておくべきだったのだろうか?と自己嫌悪に陥ってしまい、暗い雰囲気に包まれてしまう。

 

「ンなとこ突っ立てないでお前もさっさと行ったらどうだ?」

 

「相澤先生・・・そうですよね。すみませんでした」

 

天倉は相澤に声をかけられ我に返ると、慌てて駅の改札へ駆け足で向かう。

そんな様子の天倉を見て相澤はやれやれと溜息をつく。

 

「ったく、緊張感くらい持って欲しいんだがな・・・・にしても、本当に大丈夫か?"アイツの指名先"は」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

金曜日 職員室にて

 

 

 

「天倉くんの指名が今更来たのって本当?」

 

「えぇ、そうらしいですよミッドナイトさん。緑谷とこならともかく、最終日の前日に指名ってのはどうかと思いますがね」

 

相澤の元にネットから天倉への指名が一件だけ来ていた。緑谷出久ならばオールマイトの件で合点がいくが何故、ギリギリになって天倉の指名が来るのか不可解であった。

 

「どうしたもんか・・・・」

 

相澤は教師として、生徒をこんな怪しい職場へと赴けてよいのかと悩んでいた。

一瞬、天倉のバカ親の仕業かと浮かんだが、そもそもそのバカ親がこんな回りくどい真似をする訳が無いと考えを改める。

 

すると周りの何人から声が上がる。

 

「あら、指名が来たなら別に深く考えなくてもいいんじゃないかしら?」

 

「と言ってもですね・・・・」

 

「hey hey hey〜〜!もしかして天倉の事心配なんか?怖い顔して1人の生徒を心配するなんて放っておけないネェ〜〜♪」

 

「黙れクソグラサン」

 

プレゼントマイクは自分だけ辛辣な態度を取られ「why⁉︎」とリアクションを見せるが相澤は勿論それを無視。

3年生の講師を務め、ヒーローでもある【スナイプ】もミッドナイトの意見に賛成するような態度を見せる。

 

「まぁ、今になっても後悔している3年生がいるんだ。受けてもいいんじゃないか?噂じゃあ天倉くん、指名が一件も来なくて不良チームを結成したらしいぞ?」

 

「んだそりゃ。あくまで噂だろ」

 

「まぁ確かにな。だが、天倉くんは"ビッグ3"にも注目されている程の人材だ。指名を受ける事には越した事は無いと思うぞ」

 

ビッグ3その言葉を聞いた瞬間、相澤の眉がピクリと動く。

 

 

 

━━【ビッグ3】

 

現雄英高校のトップの3人と言われている3年生。それぞれ相澤が担任を務めているA組にも負けない程の個性的な性格をしており、もし天倉と出会ったならばツッコミが絶えないだろう。

しかしその実力はプロヒーローを押しのけるかのような強さを持ち、

その3人の中でも【ルミリオン】はオールマイトを除いて最もNo. 1に近い男だと相澤は思っている。

 

 

 

あの3人に天倉が注目されているという事を知ると相澤は溜息をつく。

 

「(こりゃ、天倉《アイツ》の苦労も絶えないだろうな)・・・まぁ、決めるのはアイツだからな。俺には知ったこっちゃ無いな」

 

「 hey hey hey!そう言って実は心配なんだろぅ〜〜〜?一緒について行ってやればいいんじゃねぇの〜〜〜〜〜?」

 

「黙ってろ。マダオ《"ま"るで"ダ"メな"お"気楽な教師》」

 

プレゼント・マイクが再び辛辣な態度を取られ「what⁉︎」と言っているが相澤は勿論それを無視する。相澤は意を決したように自身のデスクから離れ、天倉に指名について話す事を決意する。

が、職員室の扉に手を掛けようとした瞬間相澤はふと、とある事を思い出す。

 

「ミッドナイトさん、ちょっとイイですか?」

 

「あら何かしら?」

 

「えぇ、まぁ大した事ないんですけど」

 

 

別に後でも良かったのだが、忘れない内に早めにとある事を聞いておこうと相澤は思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

「体育祭のあの時・・・天倉と俺が話し込んでいた所になんでアナタが居たんですか?」

※28話参照

 

 

相澤は目を細め、ミッドナイトに尋ねる。ソレはまるで敵と対峙するヒーロー。所謂、仕事をする際の顔。相手の表情、筋肉の動き、汗、僅かな変化を見逃さない眼だ。

 

 

「どうなんですか?答えてください」

 

 

相澤のボサボサとしただらしのない髪の毛がブワリと逆立つ。相澤が"個性"を発動する際の特徴だ。

ミッドナイトはそんな相澤の様子を見て、「ハァ」と観念したかのように溜息をつく。

 

 

「そんなの当たり前じゃない・・・・・」

 

 

ミッドナイトはそう呟くと答える。

 

 

「そんなの・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の趣味以外なにがあると思ってるの?」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「趣味?」

 

「えぇ趣味よ」

 

 

相澤の言葉にミッドナイト《熱血フェチ》は頷く。するとミッドナイトは身悶えるかのように身体をクネクネさせながら口を開く。

 

 

 

「だって!!教師と生徒の青春よ!!!!!しかもドライな対応をする教師が弱気になっている生徒に向けて厳しいながらも優しさが見え隠れしている言葉を送り、しかもその言葉は教師の照れ隠しと思うと"興奮する"!!!!!!それに最近生徒達の絡みばっかりだったから新鮮な感じがしたのよ!!!分かる⁉︎生徒同士の絡みもいいけど、生徒と教師なんて今のご時世そう見れるモノじゃないわ!!!!!!緑谷くんとオールマイトの絡みもいいけど!!!こういったのも"嫌いじゃないわ"!!!!!!ハッァーーーーーーーッ!!!良いわ‼︎あの時出会ったあの子がこんなにも私好みの青臭い展開を見せてくれるとは!!だから教師はやめられないのよぉ!!!!」

 

 

「━━━━━」

 

 

相澤は声が出なかった。いや、声を出すことができなかった。

あんなシリアスな場面にこんなふざけた理由があるとは思わなかった。というか思いたくもなかった。

 

「いやぁーーー!!!天倉はやっぱり普通の生徒とは一味も二味も違うネェ!!こりゃあ楽しみが増えてきたって感じだな‼︎」

 

すると変態《ミッドナイト》の言葉にマダオ《プレゼント・マイク》が釣られ、ノリノリで乗っかってくる。

相澤はこの時どんな顔をすればいいか分からなかった。自分の周りにこんな奴等がいたとは思わなかった。

 

 

とりあえずそこから逃げるかのように相澤は天倉の元へと向かったのだった。

 

 

 

そして何故か相澤は天倉に対して少しだけ優しくなったという・・・

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

(あの後、天倉は指名が来たのが余程嬉しかったのか狂喜乱舞していたな・・・・)

 

 

相澤は天倉を見送りながらつい先日の事を思い出していた。しかしあまり良い記憶ではなかった為、物凄く暗い雰囲気に包まれていた。

とにかく、重い足取りで物凄く行きたくない職場《雄英高校》へと足を運ぶ。

 

 

(・・・・にしても指名が来たという【鳴海探偵事務所】だったか・・・・んなヒーロー事務所聞いたこと無いぞ・・・・)

 

 

相澤は頭から離れない靄に悩みながらもいつも通りのやる気のなさそうな顔をしながら駅を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

the 夢の中

 

 

「(0M0)ウワアアァァァァァァァァァァ」

 

「いつまで逃げる気だ!!立ち向かって来い!!!」

 

 

ドーモ。読者の皆=サン。久しぶりの一人称視点の天倉孫治郎です。

今現在、居心地の良い新幹線の中で寝てしまい夢の中でバナナ師匠に精神的な特訓と言う名の地獄のシゴキを受けています。

 

とにかく俺は逃げて逃げまくる。

いや、仕方ないじゃん?だってあのバナナの人バイクに乗りながら槍をブンブン振り回してくるんだよ?

立ち向かって来いって言っている方がおかしいと思う。

 

 

「立ち向かって来いって!!どう考えても轢かれるのがオチじゃないですかーー!!!それ以前にどう戦えっていうんですかーー!!!」

 

俺は逃げながらも必死に叫ぶ。

 

「そんなの自分で決めろ!!それに"個性"やらなんやらを使えば良いだろ!」

 

あ、"個性"の事すっかり忘れてた。ていうか夢の中で"個性"が使える事自体知らなかった。俺はバイクでこちらに突っ込んでくるバナナの人を迎え撃つ為に全身に力を込める。

 

すると俺の身体は瞬く間に全身緑色、赤い双眼を持ったトカゲのような姿へと変貌を遂げた。

そのまま俺はバイクを受け止めるとギャリギャリとタイヤが擦れる音を響かせながらバイクの速度が落ちていく。

 

「やるな、だが!」

 

とバナナの人はバイクからジャンプしてこちらの背後へと着地。そのまま俺の背中に槍を突き立てようとする。

 

「うおおおっ!!!」ブォン!!!

 

「!」

 

しかし俺は受け止めたバイクの勢いを受け流すように背後に向けてスイングする。バナナの人の武器である槍はバイクによって弾かれる。

 

「ッやるな」

 

「よし!」

 

俺は内心でガッツポーズを取るが、あまり良い気分ではなかった。その理由は俺の姿にあった。俺の姿は全身緑色の垂れたような赤い双眼をしている。

体育祭以前からの姿。

そう、爆豪くんとの戦いで身に付けた筈の"燃費の良いモード《基本形態》"では無いのだ。

 

 

(どうして?どうしてあの姿じゃ・・・)

 

「何処を見ている!!!」

<ファイトオブハンマー

 

「は?・・・マンゴー?」

 

と俺が唖然しているとバナナ師匠・・・もとい姿を変えたマンゴーの人は物凄く重そうで美味しそうなぶつけられると滅茶苦茶痛そうなハンマーをこちらに振りかぶって来た。

 

 

「え、ちょ、ちょっとm━━イ゛ェアアアアアアアアアアアアアア!!!??」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

━━━ppp・・・ppp・・・ppp

 

 

「ッは⁉︎・・・ゆ、夢か・・・・」

 

やはり俺は新幹線の中でグッスリ寝ていたらしい。

というか5分の4の確率で夢の中でバナナの人が現れるのでオチオチ寝る事もままならない。

 

「全く・・・バナナと来て次はマンゴーの世紀末覇者か・・・」

 

俺は自分のスマホから鳴り響くアラームを止め、気分転換の為に窓の外に視線を向ける。先程まで見えていた街並みが一瞬にして見知らぬ街へと変わっていく光景をただ眺めていると不思議と心が落ち着いてくる。

それと同時に旅に出ている感じがしてワクワクしているところもあった。

 

「っと・・・そろそろ降りないとか」

 

俺はそう呟くとコスチュームの入ったケースを片手に、足元に置いてあったバックを背負い降りる為の準備をする。

止まる新幹線が揺れ、少しバランスを崩すが直ぐに体勢を整え、新幹線から降りる。

 

「・・・・ん」

 

風だ。

新幹線から降りた瞬間、まるで俺を出迎えるかのように心地よい風が吹いて来た。俺はホームを降り、改札口を通り、駅から出る。

すると俺の目に飛び込んで来るかのようにとある建物に俺の視線は釘付けになった。

 

「でっかい風車・・・・・」

 

第一印象は巨大な風車のついたタワーだった。よく見てみるとあらゆる建物に風車や風見鶏があちこちに設置され心地よい風によってまるで生き物のように動いている。

 

 

 

━━━【風都】

 

天倉を指名してくれた事務所があるという街の至る所で確認できる巨大な風車のついた風都タワーがシンボルの街だ。

風都タワー以外にも街のあちこちに大小問わず風車や風見鶏があり、街の電力はそうした光景の一端をなす風車による風力発電がかなりのウエイトを占めている。

 

 

「・・・っとそんな事よりも、風都風花町一丁目二番地二号目だったよな・・・」

 

俺は手に持ったメモを確認しながらその場所を探す。というか本当に風車や風見鶏ばっかりだな・・・・なんかサンタのコスチュームをしたおっさんに胡散臭い風貌のおっさんが屋台でラーメン食べてるんだけど・・・・・・・後で食べに行きたいなぁ。

 

「お、ここだな」

 

俺はメモに書いてある場所に辿り着いた。

そこにはかもめビリヤード場と書かれた少し寂れたレトロな雰囲気を醸し出した建物だ。ポツンとこの建物には似つかわしくない黒と緑のバイクが置いてあるのがとても気になってしまう。

 

 

・・いや、俺が探しているのは【鳴海探偵事務所】であってビリヤード場じゃないんだけどなぁ。本当にここで合ってるのかなぁ・・・。

 

「やっぱり他の人に聞いた方がいいのk・・・・」

 

すると俺はとある事に気付く。黒と緑のバイクのすぐ隣にピンクの文字で【鳴海探偵事務所】と書かれた水玉模様の看板が立て掛けてあった事に・・・・。

物凄く合わない。レトロな雰囲気を醸し出しているこの場所にバイク以上に似つかわしくない看板だった。

 

「・・・・あ、二階にあるのか」

 

俺は看板の隅に事務所が二階あるという文字を見つけるとそのまま二階へ続く扉の先へと進んでいく。階段を少し上った先には一つだけ扉があった。

おそらく此処が事務所の入り口なんだろう。物凄く緊張して来たのか冷汗まで掻いてしまう。とにかく服装を整え、深呼吸をして息を整える。

 

「・・・よしっ!」

 

と俺は意を決して扉を開ける。

例え何があったとしても俺はこの扉を閉める事はないだろう。俺はヒーローになる為に、笑顔を守れるようなそんなヒーローになる為に此処に来た。

俺は開けたと同時に声を張り上げて挨拶する。

 

 

「ゆ、雄英から来た天k「ちょっと!!!別にいいでしょ!ペット探しくらい!!何度もやってんだから慣れたもんでしょ!!」

 

「雄英からk「よくねぇよ!!!いいか!俺の求める探偵ってのはな!!そんなペット探しとかじゃねぇんだよ!浮気調査や人探しならまだしも、最近ソレばっかじゃねぇか!!!」

 

「あのーすみm「別にいいでしょ!!!そのおかげでしっかりとお金も入って来てるんだから!!翔太郎くんがそんなんだから赤字続きだったじゃないの!!!なーにがハードボイルドよ!!翔太郎くんからはそんなモノ微塵も伝わってこないわ!!」

 

「えーt「亜樹子ォ!!!!!!今言っちゃいけねぇ事言ったな!!!!!!」

 

 

キキィ・・・・・バタン

↑扉を閉める音

 

 

どうやら俺にはまだ早かったらしい。なんか緑色のスリッパを持った女子とハネ毛の茶髪でソフト帽を被った黒のベストにスラックスを穿いた男性が口喧嘩していたような気がするけど・・おそらく見間違いだろう。

出直すとすっか!

 

天倉孫治郎はクールに去るぜ・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ちょっと待てぇぇ!!!」」

 

 

 

すると普通に呼び止められた。

空気読んで去ろうと思ったのに・・・・解せぬ。

 




短編 【煩悩の数だけ】

此処は東京都陸堂市瞳ヶ丘5-3-10に存在する【大天空寺】

そこに八百万が居た。
何故此処にいるのか、ソレは指名に関する事に原因があった。八百万への指名がほとんどセクハラ紛いのモノばかりであり、ぶっちゃけもう自暴自棄になっていた。
八百万は自身の"個性"を使用し、ハサミを創造するとおもむろに自身の髪の毛を切ろうとする。

すると偶々、境内を掃除をしていた僧侶が八百万を止めに入る。

「なっ、何をしているのですか⁉︎髪を切るのはやめるのですぞ!!」

「嫌なんです‼︎自分が・・・世の中が‼︎」

「わ、分かったから落ち着いてほしいですぞおおお!!!タ、タケル殿ォ〜〜〜〜〜〜!!!大変ですぞ〜〜〜!!!」

その後、八百万は何故か英雄に関する武具を創造するのにハマったらしい・・・・。




次回から本格的に特別篇に入ります。

じつはこの特別篇は読者の皆様に協力させていただいた仮面ライダーのアンケートの結果によってやるかやらないかを決める事になっていました。
もしも特別篇をやらなかった場合はエンデヴァー事務所、もしくは逢魔ヶ刻動物園に関する所に行かせようかなー?と考えていました。

ぶっちゃけ僕の文才でどこまでいけるか分かりませんが気長に次の話をお楽しみにして下さい。
あと評価の方もポチッとよろしくお願いします。

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