個性以前に個性的な奴等ばかりなんですけど   作:ゴランド

33 / 61
今思えば、エグゼイドを最初見た時本当に人気出るのかな?と心配でしたがまさか今では物凄い事になっている上にもうすぐで最終回だとは思いもよらなかったです。
仮面ライダービルドも通り魔として叩かれているようですが、自分はそこから何か次の映画などに繋がっていくのではないかと思っています。

そして今更ながら小説を見返して思った。
・・・・アレ?ライダー要素少なくね?



第29話 変身

「飯田くん・・・大丈夫かな?」

 

緑谷出久は友人である飯田天哉を心配する。飯田は家の都合により早退する事になってしまった。

緑谷はこれから始まる天倉と爆豪の試合を飯田抜きで見る事に寂しさを感じていた。

 

「飯田くんならきっと大丈夫だよ」

 

隣にいる彼女、麗日が緑谷を励ます。緑谷はその通りだと自分自身に言い聞かせ、試合を見る事に集中する。

だがそれと同時に再び心配してしまう。先程までの天倉の様子が誰からの目から見ても悲しく見えた。

 

とても不安だ。とても不安の筈なのに、彼《天倉》は笑っていた。まるで先程まで雰囲気が嘘のように彼の表情は変わっていたのだ。

 

 

『準決勝第2試合!この組み合わせは個人的に楽しみだ!』

 

『ヒーロー科爆豪勝己! VS ヒーロー科天倉孫治郎!』

 

プレゼント・マイクはいつも通りにテンションを上げて実況を開始する。それに合わせ観客達も一斉に盛り上がっていく。

 

それに対してステージの上で対峙する2人はお互いにこれから始まる戦いの為に準備運動や精神統一をしている。

天倉も勿論、自身の心を落ち着かせる為に精神統一をしている。

 

「おい」

 

すると対戦相手である爆豪が話しかけてくる。天倉はいきなり話しかけられた為にビクッと驚く。そもそも爆豪のような性格をしている者に話しかけられれば誰だって驚くだろう。

 

「吹っ切れたんか」

 

「え?」

 

天倉は爆豪がしてきた質問の意図が読めなかった。心理戦でこちらを惑わす為の作戦だろうか?いや、爆豪がそのような事をする人間ではない事は知っているだろう。

爆豪がそんな事する訳・・・・・・・ないと思いたい。

爆豪は続けて話してくる。

 

「別にお前が何悩んでいても俺には関係ねェ

けどな・・・・」

 

『 R E A D Y━━━』

 

爆豪はこちらに手を向けると凶悪な笑顔を覗かせる。そして掌がボボボと火花が飛び散ったと思うと

 

 

 

 

『━━━━━S T A R T !!!』

 

「手加減するつもりはねェぞ!!!!!!」

 

 

 

 

BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!!

 

 

 

 

 

巨大な爆発が天倉を襲った。

 

 

 

 

『え?・・・・・ええええぇぇーーーーーっ⁉︎爆豪いきなりの大火力つーか、超火力ーーーーー⁉︎天倉手も足も出ずに終わったのかーーーー⁉︎』

 

『・・・・・いや、まだだな』

 

(だろうな、あいつがこの程度で終わる筈がねぇからな。あいつがこの後する行動と言えば━━━)

 

大爆発によりできた煙幕からひとつの緑色の影が飛び出てくる。天倉が個性を発動した事は誰の目から見てもわかる。

爆豪はそれを見るとニヤリと笑う。

 

「そう来ると思ったわ!!!」

BOOOOOOM

 

爆豪は正面から来た天倉に対して爆破━━━ではなく自身の正面の床に対して爆破を行い、爆破による壁が発生する。

天倉はやや怯み、勢いが落ちたがそのまま煙幕の壁の向こうにいる爆豪に対して蹴りを喰らわす。

 

「⁉︎」

 

が、蹴りは無意味に終わった。煙幕の向こうにいた筈の爆豪は姿を消していた。その為蹴りも空振りに終わってしまった。

それでは爆豪本人は何処にいるのだろうか?

 

「ハズレだバーカ」

 

上だ。天倉のすぐ上に、爆豪はいた。そして"個性"爆破により自身の軌道を変え天倉の背後へ回ると天倉の背中に掌を置く。

 

「死ねェ!!!!」

 

BOOOOOOOOM!!!

 

自身の脚力による勢いと爆豪の爆破がプラスされ、天倉は前方へ大きく吹っ飛ばされる。

天倉は場外を避ける為、床に両手両足の爪を立てギイイイイイイイイと床を削りながら減速していきステージの端ギリギリで止まった。

 

「ぐっ・・・・」

 

天倉は背中にダメージを負いながらもその痛みを堪えるように爆豪に向かって走り出し、拳を繰り出す。

が、爆豪はソレを難なく躱すとあまくの腹部に掌を添える。

 

「動きが単調なんだよ・・・・隙だらけだボケ!!!!」

 

BOOOOOOM!!!!

 

天倉の腹部に爆破が起きる。爆豪はカウンターの要領で天倉に攻撃を加えているのだ。

だが、それだけでは終わらなかった。

 

顎、胸、肩、脚、首、腹、腕、腿

 

次々とラッシュを繰り出すかのように爆発が起きる。そして、トドメを言わんばかりにアッパーを喰らわすように爆豪は腕を振り上げる。

 

 

「死ねェ!!!!!!」

 

BOOOOOOOOOOOM!!!!!!

 

 

巨大な爆破により、天倉は大きく後方へ吹き飛ばされる。

一方的だった。今までの天倉の強さが嘘のように爆豪は天倉を圧倒していた。

観客達はその様子に呆気にとられていた。

 

『ま、マジで?爆豪強ええぇぇぇぇ!!!あの天倉を一方的にって・・・・・嘘だろ⁉︎』

 

『そうだな・・・・爆豪の強さもあるが、それ以上に天倉は今までの戦いによる疲労が出てんだろ。天倉の"個性"は長期戦になればなるほど不利になる。

この体育祭じゃあ特にな。全く、合理性に欠けるよ』

 

爆豪は煙幕が立ち上っている場所、天倉が倒れているであろう場所を注目し、常に爆破できるように構える。

 

 

(さて、こっからだ。あいつは何をして来る?また真正面からか?上から襲って来るか?それとも━━━━)

 

煙幕が徐々に薄れ、完全に消えて無くなるとそこには

 

何も無かった。

 

そう。何も、誰も無かった。そこにいる筈の天倉孫治郎の姿が無かったのだ。

爆豪は焦るが、すぐに落ち着き、思考する。

 

姿を消した?透明化?いや違う。もしそうなら煙幕が多少揺れるなどの動きがある筈だ。

観察しろ。そこには何がある?目を凝らしよく見ろ。

天倉がいた筈の場所を詳しく見る。するとそこには不自然な穴が一つ存在していたのだ。

 

爆豪は一つの結論に辿り着くと同時に行動に移す。自身の両腕を地面に叩きつけ床を爆発させる。

 

 

「地雷暴発《マイン・バースト》!!!」

 

床を爆破させるとそれに伴いステージの所々にヒビが入り、そして何かが床から飛び出て来た。

 

「グアアァァァァァァァァッ!!!」

 

天倉孫治郎だ。彼は爆豪の死角、真下から攻撃を仕掛けようとしていたのだ。

だが、その身体は先程まで天倉とは違っていた。所々が鋭利になっており、ヒレ状の刃は肥大化しており背中から触手状の鞭が形成されていた。

常闇との試合で見せた形態へと天倉は変化していた。おそらく先程まで状態では爆豪に勝てないと分かったのだろう。

 

地面から出てきた勢いで空中へと飛び上がった天倉は触手を突き刺すように爆豪へ伸ばす。

が、爆豪はソレを回避すると片方の触手を掴む。

 

「邪魔だ!ッラァ!!!」

 

爆豪はそのまま掴んだ手で爆破を起こし、もう片方の手で触手をちぎるかのように追撃で爆破を起こす。

すると爆破の影響で触手が焼け切られる。

 

「ッガアアァァァァァ!!!」

 

天倉は触手を焼け切られ生じた痛みによって怯んでしまい、着地すると同時に動きが止まってしまう。

爆豪は待っていましたと言わんばかりに天倉へ接近すると両手を天倉の眼前に添える。

 

 

「閃光弾《スタングレネード》!!!」

 

すると天倉の目の前に強力な閃光が発生する。天倉はモロに目に光を浴びてしまい、その場で目を抑え悶絶する。

 

「ッガアアァァァァァアアアアアアアアアアアア!!!???」

 

「ハッ!視力が何倍も良くなってんだろ?瞼も存在しねぇそのデケェ眼には良く効くだろうな!!」

 

更に爆豪は両手を振りかぶり天倉の頭をガッシリと掴む。爆豪は再びニヤリと笑みを浮かべると

 

「オラァ!!おかわりだ!!!」

 

両方の掌から爆破を起こす。天倉は呻きながら耳が存在するであろう両方の側頭部を抑える。

天倉はあまりのダメージにフラフラとよろめいてしまう。

 

「やっぱりな。レースの時、地雷の光と音に凄ぇ苦しんでいたもんなぁ。それがテメェの長所であり短所ってところか」

 

爆豪は淡々と天倉の弱点について説明していく。今の天倉は誰からどう見ても勝ち目があるようには見えない。

天倉は目と耳を抑えながら次第に元の姿へと戻っていく。恐らく無意識のうちに"個性"を解除したのだろう。

 

天倉はゼェゼェと肩で息をしている状態だ。ここに来て一気に今までの戦いの疲労が襲って来たのだろう。それに対し爆豪は汗を掻いてはいるが、目立った外傷などは無く1発も攻撃を喰らっていない為に無傷だった。

 

 

「天倉くん大丈夫なんですか、アレ?目も耳もやられた。しかも疲労と自身の"個性"でかなり弱っている状態ですよ。リカバリーガールに傷を直してもらう事は出来ると思いますが、確実に疲労によって次の試合をする事はできませんよ」

 

セメントスは審判であるミッドナイトに試合を止めるべきか連絡する。はっきり言えばこれ以上緑谷のように生徒を重症にしたくないとセメントスの教師として思っている。

 

「・・・・いいえ、このまま続行します」

 

「・・・・・分かりました」

 

しかし審判であるミッドナイトは試合を止めることを拒む。セメントスはミッドナイトの声に何か感じたのか、それ以上は何も言わなかった。

ミッドナイトの判断は教師としては恐らく間違っているだろう。しかしミッドナイトは今、1人のヒーローとして天倉孫治郎を見ている。

 

彼の目はまだ死んではいない。寧ろその逆だ。彼の目には熱い闘志が意志が思いが詰まっている。

 

(初めて会ったときとは全く違う目を・・・・本当にキミには驚かされるわね)

 

ミッドナイトは彼を見ていると不思議と笑みが溢れてくる。ヒーローとして、教師として生徒がこうやって成長していくのは嬉しい事だからだ。

 

それに加え

 

 

「オーーーイ、何やってんだ!」「それでもヒーローなの⁉︎」「立ってくれよ!」「お前はまだ戦えるだろ!」「あん時の強さはどうした⁉︎」「お前には期待してんだぞ!」「お前の強さを見せてくれよ!!」「立ってよ天倉ーーーー!」「2人とも頑張れーー!!」「満足させてくれよ!」「立てえええええええ天倉アアアアアア!」「爆豪もがんばれーーーー!」「心が躍るなァ!!」「天倉ァ!!!」

 

 

麗日との試合でのアンチが嘘のように応援してくれている観客達が現れてくる。爆豪はその声援に自分があまり含まれていない事に少々ご立腹の様だが。

 

「テメェ・・・・まだやるんか?」

 

「もちろんだよ」

 

天倉は爆豪の質問を受けながらヨロヨロと立ち上がる。どう見ても満身創痍これ以上戦える様には見えない。だが、そんな彼を突き動かすものが存在している。

それは、自身が変わると言う覚悟だ。

 

 

「俺はこれから・・・・・変わるんだ」

 

 

 

天倉は両脚で床をしっかりと踏みしめ、やっとの思いで立ち上がると構える。

両足は肩幅に開き、右腕を左斜め上に伸ばし左手を丹田、下腹部に添える。そして、右腕を左から右へと移動をさせ左手もそれに合わせて滑らせる様に左腰に平行に添える

 

 

天倉の目にはまるで炎が灯っているかのような気迫を感じる。

爆豪は天倉が行なっている行動に疑問を持つが、直ぐにこれから何をしようとしてくるか理解できた。

 

(これは・・・・ルーティーンか)

 

 

 

【プリショットルーティーン】

 

ゴルフ用語として使われており構えに入るまでの一連の動きと心の準備を行うプロセス。この場合、技を繰り出す前にある一定の動作を行うことで、集中力を高めて技の成功するイメージを高める技術として使う。

 

 

「何をしようとしてるか分かんねェが、隙だらけなんだよ!!!」

 

爆豪は技を出させまいと両手を後ろへ向け爆破をし、天倉へ接近する。しかし、天倉は少しも動こうとしない。

 

残りの距離10、9、8、7、6、5、4m

 

天倉は避けるそぶりを見せなければ瞬きもしない。

残り3m、2m、1m

 

 

そして突如として右手を左手の上に素早く乗せた後、身体を開き両腕を広げながら叫ぶ━━━━

 

 

「━━━━変身ッ!!!」

 

「死ねェェェ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

━━━大爆発

 

 

 

爆豪の大爆破は天倉の胸に確実に触れた後爆発を起こした。それもとてつもない威力の爆発だ。

一般人ならば確実に気絶する程のだ。

 

 

「あ、天倉くん⁉︎」

 

「コレ、やり過ぎじゃ⁉︎」

 

「天倉まさか死んだんじゃ・・・・・・⁉︎」

 

 

『ちょっ、直撃ィィーーーーーーー!!!!天倉モロに喰らったァーーーーーーー!!!!もうコレヤベェよ!爆豪マジやばくね⁉︎強えぇよ爆豪!!!天倉流石にコレはひとたまりもない━━━━━━━━』

 

『・・・・・・・・・』

 

 

爆煙が立ち上る中、爆豪はただ立ち尽くしていた。彼は今、喪失感と怒りによって何を考えれば良いか分からなかった。

 

━━━まさかこの程度でアイツはやられたのか。期待した俺は何なんだ。

 

爆豪が作り出した爆煙をただ見つめガッカリとした思いを怒りに変えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

━━━ボウ

 

 

突如、爆煙の勢いが増す。その勢いは煙の大きさに比例し熱量も多くなる。

そして

 

 

━━━ボウウウウウッ!!!!!!!!!

 

 

 

 

巨大な熱風が爆豪に襲いかかった。あまりの熱量に爆豪は顔を腕で覆い隠し、目を瞑る。

観客達も爆煙が大きくなった事に驚くと同時に襲いかかってきた熱量に慌てふためく。

 

『なっ、なんだぁーーーー!!!いきなり爆煙が大きく、熱く!!!っつーか、アチィーーーーー⁉︎ガラス越しに熱が伝わってくるんだけど⁉︎』

 

『・・・・・ほう』

 

プレゼント・マイクが慌てふためく中、相澤消太はその熱風の発生源に注目すると感心するような声を漏らす。

 

そして熱風が止み、爆豪は目を開ける。

するとそこには緑色の炎を纏った人間がいた。熱風を発生させ爆煙を払った原因が目の前にいた。

そして、その炎は徐々に勢いを失っていき、隠していた本来の姿を露わにする。

 

その姿は蜥蜴《トカゲ》のようだったが違う。メタリックな緑色の体表面をし、額には一対の触覚を、赤い釣り目状の複眼を持つトカゲ━━━━しかし、爆豪の知っている姿とは異なっている点がある。胸にはオレンジ色の装甲が形成され、全身もシャープな無機質な鎧をイメージさせられる。

そして側頭部、肩、腿には傷のような赤い模様があり、四肢の末端にはそれぞれ肘から先を膝から先を覆うグローブ、ブーツのような黒い外殻が形成されている。

最後に口元には噛みつく事を拒否するかのように平坦なマスクが存在する。

 

 

「テメェ・・・・・・」

 

爆豪はこの状況下に対して不思議と笑みを浮かべていた。それに対し天倉は爆豪を見据え構える。新たな姿で

 

 

 

 

━━やっと見つけることができた。俺のやりたい事、やるべき事を。

 

爆豪くん、緑谷くん、麗日さん、飯田くん、常闇くん、心操くん、魔理沙さん、上条くん、射命丸さん、相澤先生、ミッドナイト先生、オールマイト先生、拳藤さん

 

そして、俺に大事なことを気付かせてくれた・・・・

 

 

━━だから見ててください。俺の

 

 

━━━━━━━変身ッ!!!

 




やっと変身と言わせる事ができました。そしていよいよ体育祭編もクライマックスになりました。
早くヒーロー殺し編もやりたいと思っております。


アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。