個性以前に個性的な奴等ばかりなんですけど   作:ゴランド

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なんというか・・・・はい。
黒影《ダークシャドウ》が好きな皆様
本当にごめんなさい。


☆第26話 曇天が広がっていた 

空には太陽と分厚い雲チラチラと見える。眩しい日差しに照らされ観客達の熱気に包まれた会場内で2人の生徒が対峙している。先に動いたのは天倉の方だった。獲物に飛びかかるかのように跳躍する。その際に右腕を大きく振りかぶり手は握らず引き裂くような形で攻撃するつもりなのだろう。

 

「黒影《ダークシャドウ》防御しろ」

 

『アイヨ!』

 

ガギィ!!

 

しかしそれを黒影は難なくガード。汎用性に優れている中、最も防御面が特化している黒影に対して物理攻撃はほぼ無意味に近いだろう。

 

「ウォオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

だが、そんな事御構い無しに天倉は攻撃し続ける。何度も何度も何度も鋭い爪が、ヒレが黒影を襲う。僅かだが黒影の防御が崩れてきていることがわかる。

 

『イッ、イデェ!ヤ、ヤメテェ!!スッゴクイテェ!!』

 

「くっ、これ以上防ぎ続けるのは困難か。一旦退け!」

 

常闇は個性《黒影》を解除するが、天倉はソレを見計らっていたかのように自身の爪を床に立て、ガリガリと床を削り火花を散らしながら接近してくる。

 

「くっ、うおっ!!」

 

常闇はその攻撃が当たるギリギリ寸前で飛び退き回避する。すぐさま体勢を立て直そうとするがそう簡単に天倉が許してくれる筈がなく、攻撃を仕掛けてくる。

 

(ぐ、速い・・・・麗日との試合を見ていて知ってはいたがスピード共に攻撃速度、次の攻撃へ移るタイミングが速すぎる・・・!)

 

常闇は天倉の攻撃を避け、そして避け、さらに避け、再び避けるといった繰り返しだった。個性を使用する天倉に対して持久戦という選択肢は間違っていないだろうが、問題は個性を使用する天倉の攻撃にどこまで耐えられるかだ。

今のところ、全ての攻撃はなんとか避けられる。しかしあくまで"なんとか"だ。気を抜けばすぐにやられてしまう。それに加え常闇の体力がどこまで持つかわからない。

常闇は現状を打開すべく攻撃に転じる。

 

「黒影《ダークシャドウ》!天倉を拘束しろ!」

 

『ア、アイヨ』

 

速く駆け回る天倉の機動力を潰す為には動きそのものを止めてしまおうと常闇は天倉を捕まえる作戦に出る。

しかし天倉はこちらに迫ってきた黒影に対してヒレの刃で切り裂く黒影は勿論ガードをする。

 

「ハァッ!!」

 

『ウギャアアァ!!』

 

が、たった1発の攻撃で大きく仰け反ってしまう。

 

「何っ⁉︎(しまった!酷使し過ぎたか⁉︎黒影《ダークシャドウ》の闇が残り僅かしかないのか!)」

 

常闇の"個性"である黒影《ダークシャドウ》は個性使用者とは別の意思を持ち、攻・守共に優れ、凡用性が高く中距離戦では無敵の性能を持つ"個性"だ。

しかし弱点もある。

 

【光】

 

それは闇と対を成す存在であり、神話においても自然的な対照を超え深い繋がりを持つ。

 

旧約聖書 『創世記』第1章にこのようなことが記されている。

 

〈はじめに神は天と地を創造された。地は混沌としており、闇が淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをうごいていた。神は言われた。「光あれ」。かくして光があった。神はその光を見て、良しとされた。神はその光と闇を分け、光を昼と呼び、闇を夜と呼んだ。〉

 

黒影《ダークシャドウ》はこの試合で太陽の光を浴び続けている。常闇の"個性"【黒影《ダークシャドウ》】は天敵である光が射し続けている昼の間は弱体化のみならず次第に弱まってしまうのだ。その為常闇はコスチュームに光を遮断するマントを要望していたのだ。

 

『ヤ、ヤメロォ!オレノカラダハボドボドダァ!』

 

「く、後もう少しだ・・・・その刻が来るまでの辛抱だ。」

 

弱体化してしまった黒影はこのように戦闘の意欲も失い、もはや盾にするしか出来ない程の力になってしまう。

今の常闇は極力回避に専念するしかなかった。

 

 

 

「天倉くんの動き・・・・・麗日さんの時と似ている?」

 

緑谷は天倉の動き冷静に分析する。麗日との試合に比べて全く違う動きを見せた天倉に関心を持ったのか、いつも以上にブツブツと呟いている。

そんな様子の緑谷にクラスメイトは呆れながらも感心してしまう。

 

「み、緑谷くん。相変わらずだね」

 

「よく飽きないよな。癖なんだっけ?」

 

「えっ?あ、ああ、ゴ、ゴメン。邪魔だったかな?」

 

「いえ、緑谷さんの分析力はこちらも学ばせてもらっていますわ。ですが、少し静かにした方が良いかと・・・」

 

と八百万がチラリととある一点を見つめる。そこには苛立ちを見せ、全身から謎のオーラ的なものを出している爆豪がいる。イライラしている所為なのか目が大変な事になっている。

 

「え、あ!かっちゃん⁉︎ご、ごめん!!」

 

「うっせぇ、黙ってろクソナード」

 

爆豪はそれだけを言うとすぐに黙り込んでしまう。しかし緑谷はそんな様子の爆豪に違和感を覚える。

いつもの爆豪ならば緑谷に罵倒する際、言葉に嫌悪の念が込めてあり小さい頃からの付き合いであり、幼馴染でもあるの緑谷にはすぐに分かったのだ。

 

「・・・ん・・・・クくん・・・・・・・デクくん?」

 

「え、あ⁉︎な、何⁉︎麗日さん⁉︎」

 

緑谷は麗日に先程から呼びかけられていたの気付かなかったらしい。

 

「いや、さっき私の名前呟いていたけど?どうしたんだろうなーって」

 

「あ、あぁそれの事?・・・・天倉くんの動きを見てて思ったんだ。麗日さんとの試合のときもそうだったけど、"個性"を使っているときの天倉くんの動きが個性を使っていないときと比べて雑に見えるんだ」

 

「雑・・・・・・?」

 

緑谷にはオールマイトから授かった個性を持っている。がその個性の扱い方は自分でも自覚する程の雑さだ。自分が個性を使うのではなく逆に個性に使われているような、制御しきれず振り回されているような感じが天倉からも伝わって来る。

 

「これは僕の推測なんだけど・・あの"個性"は恐らく出力が高すぎるんだと思う。天倉くんの戦闘のスタイルが変わるのはパワーが強すぎて制御しきれていないと思うんだ」

 

そもそも天倉が得意とするのは関節技や蹴りによる連撃など複雑な技がほとんどだ。だが個性を使用している間はパワー寄りの戦い方になりゴリ押しに近い戦法になってしまう。出力も高い為コントロールも難しくなると同時に感情が昂り興奮状態になってしまう。

 

「現に常闇くんは攻撃を回避することができている。出力が高い分、動きや攻撃パターンが単調になっているんだ」

 

つまり天倉の個性は逆に天倉自身の持ち味を殺してしまっているのだ。

 

爆豪もその事には気付いていた。天倉が個性に振り回されている事は麗日の試合、そして今現在の常闇との試合で確信したのだ。

天倉の"個性"ではなく彼自身の身体能力から編み出される技の数々、自身の手の内を読ませず、何をして来るか分からない突発性が脅威に思えるだろう。

しかしそれ以上に脅威と思える事があった。

 

━━爆発力

 

麗日との試合終盤で見せた勝利への執念、土壇場で生み出された圧倒的な爆発力、言うなれば火事場の馬鹿力だろう。

それが個性の力を無理矢理引き出しているように爆豪は思えた。

 

「見てぇ・・・」

 

爆豪は無意識に口の端を吊り上げる。その脅威に思える爆発力の限界を爆豪は見てみたかった。普段の彼《天倉》からは考えられないような、麗日との試合以上の実力を見てみたいと爆豪は思ったのだ。

 

 

『天倉攻めて攻めて、攻め続けるーーーーー!!!序盤は攻め続けていた常闇も今では防戦一方!打つ手なしなのかーーーーー⁉︎』

 

「ぐ、黒影《ダークシャドウ》・・・・!受け止めるな!攻撃の軌道を逸らせ!」

 

『ボウリョクハンタイ!!』

 

常闇は天倉の怒涛の攻撃を防ぐと同時に回避するしかなかった。今の黒影では天倉の動きに着いてこれず攻撃を与えることが出来ない。そもそも弱体化している為ダメージを与えるのも怪しいところだ。

 

すると天倉の攻撃が止む。すると天倉は常闇からかなり離れた距離に佇む。

 

『おっと⁉︎急に攻撃の手止めたぞ!!どうした天倉流石に無駄だと分かって諦めたか⁉︎』

 

「・・・・いや、違うな。次で決める気か・・・・・」

 

常闇は思考する。

天倉がこれから何をしようとして来るのか、なぜ次で決めて来るのかなど、どんどん考えが浮かび上がる。

 

恐らく天倉は"個性"のタイムリミットが近づいて来ている為、これ以上時間をかける事が出来ないのだろう。その為、確実に自分を倒す事ができる程の一撃を決めに来るに違いないと常闇は思った。

 

だとすると自分が取る選択肢はその一撃を防ぐことだろう。今の黒影はもはや脆い盾としか使う事が出来ない。常闇自身次の攻撃に反応し回避できるかも分からない。

 

(ならば黒影《ダークシャドウ》を盾、いや壁として使い防御その隙に奴の視界から外れ再び距離を取る!ヤツも限界に近いならこのまま距離を保ちつつエネルギー切れを狙うのが最善の策だな。問題はヤツがどのような手段で俺を狙って来るかだな。)

 

常闇は天倉を見据えいつでも黒影に指示を与えられるようにイメージする。

相手が一体どう来るのか予測する。緑谷がいつも行なっている事がここまで精神を削るような業だとは思わないだろう。

常闇の頰に汗が伝う。

 

右からか?

 

左からか?

 

上からか?

 

スライディングで下からか?

 

フェイントを仕掛け背後からか?

 

もしかしたら意表をついて地中から来るかもしれない。そんなイメージが常闇の頭の中を飛び交う。

 

そして

 

『おーーーーーーーっと!!!!天倉!!正面から仕掛けた!!』

 

「黒影《ダークシャドウ》ッッッ!!!!!正面だッッッ!!!!」

 

『カカッテコイヤーーーー!!!!』

 

天倉は駆け出し一気にこちらへ迫って来る。

その速さは個性把握テストで見せた50m走の記録を越えているだろう。

 

流石に速い。

 

 

━━━だが対応圏内だ。

 

「伸ばせ!!!」

 

黒影は手をガードレールの様に大きく伸ばし一直線の道を作り出す。左右へフェイントを仕掛ける事が出来ない様にする為だ。

 

残りの距離10m

 

そして黒影の伸ばした腕は次第に天倉を挟み込む様に迫っていく。

 

残りの距離5、4、3、2、1・・・・

 

「捕まえろ!!!!」

 

そして黒影の伸ばされた腕は天倉を鎖で縛る様に巻きつ━━━━━

 

 

 

 

スカッ

 

 

『アリャ?』

 

「なっ⁉︎」

 

かれる事はなかった。

突如として天倉の姿は消え、黒影の腕はただ空気を切るだけだった。常闇は何が起きたのか理解できなかった。

そしてすぐに我に返り姿を消した天倉を見つける為に辺りを見渡す。

 

右、左、背後、下・・・・・

 

「・・・・・・!!」

 

この展開、常闇は麗日の試合で見た事がある。

相手の視界から消え一気に相手の死角から攻撃を仕掛けて来るパターンだ。

 

となると天倉がいるのは━━━━━

 

突如として自分の影に別の影が重なった。見なくても分かる。天倉は今自分の真上にいる。

正面から仕掛けてきたのはあくまで視線を正面へと集中させるのが目的。

真の狙いはその強靭な脚力から生み出される跳躍で一気に視界から外れ意表を突いた上からの落下攻撃。

 

常闇は上を向くと太陽を背後に踵落としを仕掛けて来る天倉が視界に入る。

 

(くっ・・・・回避の暇を与えずそれで尚、黒影《ダークシャドウ》で防御をしたとしても落下によるスピード+衝撃で黒影《ダークシャドウ》ごと俺を押し潰す様に攻撃する気か!!)

 

次第に天倉の一撃が常闇へと迫る。

常闇は不思議と時間がゆっくりと流れている様に感じているだろう。一刻一刻と時間と共に天倉との距離が狭まる。

 

残りの距離7m

 

お互いの影が重なっていき

 

6、5m

 

分厚い雲が太陽へと重なり始める

 

4、3、2m

 

そして床に伸びた影は次第と薄くなっていき

 

1m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コッチヲミロ』

 

 

ズガアァン!!!

 

激しい音が響いた。そこには先程まで攻撃を仕掛けていた筈の天倉が床に叩きつけられていた。

天倉は一体何が起きたのか理解出来なかった。何だ?今何が起こった⁉︎そしてさっきの言葉は誰が━━━

 

『オイ、コッチヲミロ』

 

天倉の背後に再び声が聞こえてた。直後天倉はすぐにその場を飛び退く。すると天倉が先程までいた場所は大きな黒い手によって叩きつけられていた。

 

『な、何だありゃーーーーーーー!!!大きな黒い影が天倉を襲ったーーーーーー!!?』

 

『成る程な常闇がギリギリまで防御していたのはこれが狙いか』

 

天倉の目の前には全長3m程の黒い怪物がいた。しかしソレには見覚えがあった。

常闇の個性である黒影《ダークシャドウ》だ。しかし先程のものと比べ明らかに大きさが違う。

 

『ヤットコッチヲミタカ・・・・クソガ』

 

口調も先程までと比べ荒くなっている。勿論パワーも上がっている。すると常闇が天倉に向かって話し出す。

 

「真っ向で闘争するのならお前の方が強いだろう。だが、今の実力ならば確実に勝利するのは俺達だ」

 

そして背後から黒い手が黒影の手が伸びて来る。天倉はそれを察知すると跳躍し躱す。

 

『ニゲルナ!!』

 

「ぐっ⁉︎」

 

しかし黒影はもう一方の手で空中で身動きが取れない天倉を捕まえる。勿論天倉は脱出しようとするが

 

(・・・・・ッ!力が・・・湧かない・・・!)

 

タイムリミットが近づいている為なのか先程までの戦いで残りのエネルギーが少なくなり力が充分に発揮出来ないのだ。天倉自身このタイミングでデメリットが襲って来るとは思わなかっただろう。

 

『ナマッチョロイゾオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

黒影は天倉を押し潰すかの様に床に叩きつける。天倉は成す術なくモロにダメージを受けてしまう。

 

「ぐっ!黒影《ダークシャドウ》勝手に行動するな!!」

 

『ウルセェ!メイレイスンナ!!』

 

今まで命令通りに動いていた黒影が主である筈の常闇に反抗してしまう。

黒影は何故ここまで強くなったのかには理由がある。それは天候だ。厚い雲が太陽を覆い光を遮断したことにより黒影の闇が増幅し天倉を上回る程にパワーアップを果たしたのだ。

しかしパワーアップをする際に黒影の制御は難しくなる為、主である常闇の言うことを聞かない事もあるのだ。

 

「ぐっ・・・・ガァアアアアッ!!」

 

天倉は喧嘩をし、隙を見せた黒影の顔部分に飛びかかり自身の鋭い爪、牙を突き立てる。が効いている様子は見られない。

 

『ジャマダ!!』

 

黒影は自身の顔面にいる天倉をハンマーで叩き落とすかの様に両手を組み、そのまま天倉に向かって振り下ろす。

しかし攻撃にあたる直前で飛び退き回避する。

 

「あぶ・・・・なっ⁉︎」

 

しかし天倉の目の前に再び黒影の腕が振り下ろされていた。その振り下ろされた腕はまるでハンマーの様な拳は天倉に命中した。

 

『WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!』

 

さらに何度も何度も拳が天倉へ振り下ろされ周りの床も破壊されていく。遅れる様にガードをするが黒影の連撃に追いつかない。

これ以上の防御は無理だと判断し大きく後ろへ跳躍した後、再び黒影へと飛びかかり腕のヒレの刃で切り裂こうとする。

 

『貧弱貧弱ゥウウウウウウウ!!!!!』

 

 

 

ドゴォッッッッ!!!!!

 

 

しかし闇の増幅によって強化された黒影の前にはヒレの刃どころか返り討ちに遭うだけで無駄であった。

天倉は黒影の拳を受けそのままステージの端ギリギリまで転がっていく。

 

「すまないな天倉。手加減はしておいた・・・・もはやその身体では抗う事すらままならないだろう。降参しろ、次は手加減出来るか分からないからな」

 

ボロボロになって倒れている天倉の前には常闇の背後に漆黒の化け鴉が佇んでいる。その光景はこれから天倉に不吉が降り注ぐ様に思えた。次第に天倉の意識は薄れていく。

それはまるで深く暗い底の見えない海に沈んでいく様に・・・・・・・・。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

彼の瞳に映っているのは底の見えぬ絶望。彼は大きな力にただ潰されるだけだった。

今の彼に出来ることは何もない。彼は思い知った。所詮自分はヒーローに相応しくない。自分はヒーローになる存在では無いから負ける。この戦いに勝って原点を探し出すなんて言っていたが所詮口先だけだった。

 

これで良いんだ。

 

これで正しいんだ。

 

これで当たり前なんだ。

 

 

ただ

 

贅沢を言うかもしれないけど・・・・・

 

 

━━━━彼女との約束は守りたかったな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時不思議なことが起こった

 

 

 

天倉の体内にある個性因子が彼自身の強い意思に反応した!

彼に僅かに残る勝ちたいと言う強い思いが細胞ひとつひとつがエネルギーを作成する!

 

個性因子は、宿主である彼自身の細胞は天倉を一つの結果へ!勝利という名の結果へ導く為に彼を動き回ることができるまでに回復させた!

 

しかしまだ足りない!

 

ヤツを倒すにはまだ足りない!

 

 

 

 

『お、おーーーーーーーーっと!!!!!天倉が立ったーーーーーっ!!!まだアレで立ち上がることができるのかーーーーーっ!!!』

 

「天倉・・・・・⁉︎」

 

 

 

彼の中の細胞はさらなる答えを求めた。どうやればアレ《黒影》を倒すことが可能なのか?

ならば宿主である天倉自身をさらに強く成長を!進化をさせれば良いと言う解答に辿り着いた!

 

 

 

 

天倉はフラフラしながら立ち上がる。その様子は誰がどう見ても満身創痍なのだろう。

しかし天倉は腹の底から叫び声を上げる。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッ!!!!!!!!!!」

 

 

まるで喉から血を出さんとばかりの声量だ。

直後彼の身体に異変が起きる。

 

彼の胸の中心に小さな細長い結晶の様な物が出現しそこから背中にかけて節足動物の脚のような鞭のようなものが巻き付く形で形成される。さらに全身からミシミシと音を上げながら肩からは三つの刃の様な突起物が生え、さらに両腕のヒレ状の刃は肥大化し、これでも言わんばかりに刃が形成される。

額の1本角の様な触覚は分裂し、まるでカミキリムシの様な2つの触覚へと変態していき、瞳は鋭い眼差しに変わり、口元はガバリと開きその中から歯牙状の器官が露出する。

 

 

「オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オオ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オッッッッ!!!!!」

 

 

そして現れたのは身体の所々から蒸気が発生しながら憤怒のような表情を浮かべている化け物であった。

 

 

『』

 

 

さすがの事態にプレゼント・マイクや相澤も絶句している。

そして天倉は背中から触手状の鞭を出現させ頭上でウネウネとくねらせ両手を地面へと付け四足歩行の動物のような体勢をとる。

 

 

「「「「「「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」」」」」」

 

 

そして遅れるように観客席の半数が悲鳴を上げる。

ステージ上に現れたのは全身刃物+触手+顔面凶器の化け物なのだから仕方ないのだろう。

それに加え第一回戦で見せたあの凶暴性がどこからどう見ても増している様にしか思えないのだ。

そして何人かがバタバタと倒れていく。

 

 

勿論その被害はA組にも及んでいた。

 

「お、おい!芦戸!口田!しっかりしろ!!ダメだ気絶している!」

 

「や、八百万さんまで!葉隠さんは・・・・・き、気絶しているのかどうか分からない・・・・・⁉︎」

 

「あ、あれ・・・デクくん?梅雨ちゃんは大丈夫みたいだよ?」

 

「あ、良かった!流石あすっ・・・つ、梅雨・・ちゃんだね!・・・・・・あ、あれ?」

 

「・・・・・・・」シーン

↑気絶している

 

 

(((((座ったまま気絶・・・・だと⁉︎)))))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それがお前の真なる力なのか?」

 

「グウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ・・・・・」

 

常闇は大きく変貌を遂げた天倉を見据えていた。常闇は先程までとは違い雰囲気だけでなく実力も段違いだと理解できる。

 

「やはり俺とお前は似た者同士なのかもしれないな」

 

常闇はボソリと呟く。

彼らの個性はどちらも強力になればなるほどその凶暴性が増す個性だ。常闇は無意識に天倉と自分を重ねていたのだ。

そして天倉を見ていく内に分かった。ヤツは自分自身の力に恐れていることを。

 

 

「グアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

天倉は跳躍し手首から鎌を出現させ振り下ろす形で攻撃してくる。

 

「迎え撃て!黒影《ダークシャドウ》!!」

 

『ブッコロシテヤンヨオオオオオオオォォォォォォォ!!!』

 

しかし黒影は天倉の正面に出現し壁のように立ち塞がり捕まえようとする。

が、天倉は背中の鞭を黒影の斜め後ろへ伸ばした後床へ突き刺し、まるでワイヤーアクションのように黒影の手から逃れ後方へ移動する。それだけでは終わらない。

黒影の背後から前へとすれ違うように腕の一回りも二回りも大きくなったヒレ状の刃で切り裂く。

 

『グアアァァァァァァァァッッ!!?』

 

そして顔面へ蹴りを入れ怯ませた後、爪で何度も黒影の身体中を引っ掻く。

振りほどくかのように黒影は攻撃を仕掛けるが天倉の移動速度が格段に上がっているのが分かる。全く攻撃が当たらないのだ。

 

「くっ・・・・・黒影《ダークシャドウ》、お前に身を委ねる!全力でヤツを叩きに行け!!!」

 

『!!・・・・アイヨ!!!』

 

黒影は一瞬黙った後、全身に力を溜めるような動作を行う。そして、天倉に目掛けて両拳を交互に連続で叩き込んだ。

 

 

『ドララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララッッッッッッッ!!!!!』

 

 

黒影のラッシュが天倉へと炸裂する。あまりの速さに黒影の腕が数十本にも見える。

 

『・・・・・ハッ⁉︎、き、気づかない内にすげぇことになったんぞ!!常闇凄い反撃だ!!!つーかまじすげぇ!!?床がバッキバキになったんぞ!!?』

 

プレゼント・マイクの言う通り黒影のラッシュにより床は小さなクレーターが重なり1つの巨大なクレーターと一体化していく。

がさらに驚くべき事態が起きる。それは

 

 

『・・・・え?マジで!!?黒影《ダークシャドウ》のラッシュを全部避けてんぞ!!?どうなったんだ!!つーか目が追いつかねェェ!!』

 

天倉は黒影のラッシュを上回る機動力で前へ、横へ、後方へと全ての攻撃を回避しているのだ。

そのスピードは飯田までとはいかないが、瞬発力に関しては飯田の個性【エンジン】を超えているだろう。

 

そして天倉は全ての攻撃を潜り抜け、まるでチーターのごとく四足歩行でステージを駆け回る。

 

『サッサトアノ世ヘイキヤガレエエエエエエエエエエエエ!!』

 

黒影が伸ばした腕は虚しくも全てジャンプ、ステップ、スライディング等で回避される。

そして数分が経過した後常闇はある事に気付く。

 

(何故だ・・・・何故ヤツの個性は解除されない⁉︎もう既にタイムリミットは過ぎた筈だ!)

 

天倉の個性がいつまで経っても解除されない事に常闇は疑問を抱く。が突如として天倉は黒影に接近を仕掛ける。

黒影は天倉を叩き潰すように両手を叩きつけるが全て躱される。そして背後に回ると背中から鞭を出現させ黒影を拘束する。

 

『グッ⁉︎』

 

 

そして天倉は自身の右手をまるで槍のような手刀の形にすると、そのまま黒影の目の前で右腕を後方へと引く。

 

そして━━━━━━

 

 

 

ドシュッッッッッ!!!

 

 

 

『ナ・・・・・・!!?』

 

「黒影《ダークシャドウ》!!??」

 

 

 

━━━━黒影の腹部に手刀を突き刺した。

 

天倉の右腕は見事に黒影のボディを貫通していた。観客達はそのあまりの光景に絶句するしかなかった。

 

 

『ニガサ・・・・ネェヨ・・・・』

 

しかし黒影は体を貫かれたまま逃さないように天倉を拘束する。あまりのホールドに天倉は身動きが取れないようだ。

 

『コノママテメェモミチズレニシテヤンヨオオオオオォォォォォォォ』

 

と黒影は天倉を拘束したまま押し出していく。黒影の狙いは自分ごとステージ場外へ出る事なのだろう。

黒影自身は常闇の個性であり宿主の常闇ではない為場外へ出たとしても常闇の負けにはならないだろう。

 

これは黒影《ダークシャドウ》自身が選択した解答━━━

 

あくまで黒影自身は個性だが、黒影は信念を持っている。それはなんとしてでも宿主であること常闇を勝たせてあげたいと言う信念だ。

 

 

その勇気ある行動に観客達の声援が送られる。

 

「負けるなああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」「頑張れえええええええええ」「かっこいいぞおおおおおおおおおおお!!」「ファイトオオオオオオオオオオオオ!!!」「お願い勝ってえええええええええええ!!!!」「黒影《ダークシャドォ》ォォォォォォォォォォォォォォ!」

 

それは全て黒影への声援だった。個性の一部でしかない黒影は声援に驚く。

これら全てが黒影への応援なのだから。そんな様子に常闇は目を閉じフッと口元が緩む。

 

(黒影・・・・お前はやはり俺の最高の相棒だな・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチ・・・・チチ・・・・・・

 

 

「?」

 

突如として常闇の耳に謎の音が聞こえる。まるで物体同士が擦れ合い、静電気を発するような音だ。

常闇はその音の発生源を見つけようと辺りを見渡す。

 

 

バチチ・・・チチ・・チ

 

 

なんだこの音は?と常闇は頰に汗が伝う。嫌な予感がする。確実に嫌な予感が・・・・。

 

 

バチバチチチチチチチチチチチ

 

 

徐々にその音は激しくなっていく。常闇はとにかく見渡す。右でもない左でもない。背後でもなければ上、下でもない。ならば一体どこからなのか。

すると常闇は気付く。何故天倉は何も抵抗をしないのだろうか?ヤツは何かを狙っているのではないのか?

常闇は黒影に指示をする

 

「離れろ!黒影《ダークシャドウ》!!」

 

『ア?ドウシt

 

 

 

バチチチチバチチチバチチチチチチチチチチチチバチチチチチ!!!!

 

 

 

突如天倉の身体中から電流が迸る。そしてその電流は一気に天倉のとある部位に集まる。

その部位とは黒影を貫いている右腕だった。

 

そして

 

 

 

 

 

バチイィィィンッッッ!!!!!!

 

 

 

 

まるで何かが破裂するような、音が響き渡った。そしてその音の発生源には無惨にもボロボロに弱っている黒影とその黒影の顔面を掴み持ち上げている天倉が立っていた。

 

「黒影《ダークシャd」

 

 

 

ザシュッ!!!!

 

 

「━━━━━━━━」

 

そしてトドメと言わんばかりに天倉は黒影の首元をヒレ状の刃で引き裂いた。

そして黒影は徐々に小さくなっていき

 

『ワリィ・・ナ・・・・・・マケチ・・・マッテ・・・・ヨ』

 

黒影は常闇の身体の中へと戻っていった。

 

「・・・・・・黒影《ダークシャドウ》お前は・・・」

 

常闇は自身の胸を抑える。自身の相棒が懸命に戦ってくれたことを褒めるように、誇らしく思うように、彼はただ黒影に感謝する。

 

 

そしてそこへ一歩ずつ近づいて来る天倉。

彼は手首から鎌を形成し構える。2人はしばらくお互いに睨み合った後、常闇は天倉に向けメッセージを送る。

 

「天倉、我を見失うな。お前の中の答えは既に見つけている筈だ」

 

「・・・・・・・・」

 

2人はまだ睨み合ったままだ。

そして、一歩天倉が踏み出すと━━━━━━

 

「・・・・・zzZ」

 

「!!??」

 

彼は立ったまま気絶━━ではなく深い眠りに落ちていた。そして彼の体は次第に元の人間態へ戻っていく。

常闇はあまりの展開に混乱していたが、すぐに天倉が寝ている理由を察した。この場ではソレに関する個性を持つプロヒーローが審判をしているのだ。

 

「━━━驚いたわね。極薄タイツを破った直後に効いたんだから。彼って鼻が良いのかしら?」

 

審判であるミッドナイトがこちらへやって来る。ミッドナイトは常闇と天倉を交互に見た後、常闇へ質問する。

 

「どうする?まだ彼と戦う?」

 

「いえ・・・・降参です。それにこいつ《ダークシャドウ》にはしばらく休んでもらいます」

 

 

 

 

『常闇くん降参!!天倉くんの勝利!!!!』

 

 

彼は勝利した・・・がそれにしても勝者に相応しい天気とは言えず頭上にはただ

 

 

曇天が広がっていた。

 




なんか途中からどう見ても常闇くんが主人公にしか見えないのは何故だろう・・・
それに対して天倉がどう見ても悪役・・・・

ちなみに黒影は死んでいません。ちゃんと生きています。


【天倉くんエクシードフォーム(仮)】

本来はフォームチェンジは考えていなかったのですが勢いのままやっちゃいました。

一応、全身凶器というコンセプトです。
容姿はアマゾンオメガオリジンにエクシードギルスのパーツ、口元はジョーカーアンデッド(※分からない人はアナザーアギトのクラッシャー展開時を想像してください)と言う感じです。
そしてどう見ても怪人ですありがとうございます。

装甲は薄く、機動力重視+殺傷特化型と言うアサシンっぽい感じ

触覚は2つに分け、仮面ライダーっぽくしたと同時に周りから受け取る情報を2倍にすると言うあやふやな設定。

体内には発電器官が備わっており、自身のエネルギーを変換して電撃を発生させることが可能。

これは元々コメント欄で鞭に関する返信をしていたら
エクシードギルス→ガタキリバ→オーズ→シャウタのウナギ利用できね?と言う感じになりました。本来はスティンガーから電流を流す予定でしたがなんかサスケェの千鳥みたいになりました。
とりあえず黒影には電光バイオレントパニッシュの犠牲になってもらいました。

とりあえず読者の皆様にどの様な感じか分かってもらえるように描いてみたので見てもらえるとありがたいです。


【挿絵表示】



アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。

後ついでに挿絵が邪魔もしくは不快と感じ、挿絵なん描くな死ねカスと思ったらすぐに削除するのでいつでも言ってください。
と言うかマジでお願いします。下手したら黒歴史になるかもしれないのでお願いします!

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