個性以前に個性的な奴等ばかりなんですけど   作:ゴランド

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前回の話を投稿したら感想が結構きたことに驚きました。
たとえ感想が指摘、文句でも僕にとっては良い糧となるのでどんどん感想、評価をください。

あ、でもやっぱり悪口とかはやめてくださいお願いします。


第6話 こんなんじゃ・・・満足できねぇぜ・・・。

 

「ふぅ、あぶないあぶない。油断はダメだよね。そうでしょ轟くん。」

 

「・・・天倉。」

 

やっぱり動揺しているな。爆豪くんよりは落ち着いているけどちょっとだけ自分の力を過信している部分があったのかな?

だけど、1人だけでくるなんてなぁ、確かにさっきのは流石に危なかったけど。

 

とりあえず作戦通りに。まずは自分に注意を向けるため、挑発をしないと。

 

「どうしたんだい?轟くんさっきまでの余裕たっぷりの顔が焦った顔になったけど?さっきの攻撃が避けられたから?それとも急に確保テープが飛んできたから?それとも"4階で奇襲を仕掛けてくるはずの俺がこの場にいる"こと?」

 

「ッ!」

 

やっぱり、まぁ仕方ないけどそうしなければ、わざわざ偽の作戦を障子くんに聞こえるようにしていないし。

 

「(・・・・どうやってこっちの現状を把握しているのは知らねぇが、おそらく向こうの目的はあくまで【時間稼ぎ】そうでも考えねぇと、目の前でペラペラ喋ったりはしないからな。)」

 

「(俺が轟くんに勝てる確率はかなり低い、こちらが3人がかりで挑んでも勝てる算段も低い。こちらの個性は強力だが、あくまで短期決戦型、それも接近戦限定だ。それに対して向こうは強力な広範囲攻撃。炎と氷どちらも応用が利く。半分こっちに分けてくれないかなぁ。)」

 

天倉の目の前に立っているのは恐らくクラス最強、まともに戦って勝てる相手ではない。

ならばどうする?簡単だ。誰でもできる行動をすればいいだけだ。

 

「逃げるんだよぉ!」

 

「逃すか!」

 

俺が逃げようとするそぶりを見せた瞬間、轟くんは右脚から冷気を出し、地面に沿って凍らせてくる。大方、足元を凍らせて身動きを取れないようにするところだろう。

でもまぁ、"それがくるのはわかってた"。

 

「よっ!っと!」

 

「(!コイツ、避けやがった。)」

 

天倉は脚限定で個性を発動し跳んで足元の氷を回避した。

しかし、それだけでは終わらない。天倉はそのまま壁を走るようにつたい、そのまま轟の後方に着地する。

さらに

 

「ッ!またコレか!」

 

そう。確保テープだ上手く背後に回り込みテープを巻き付かせようとする。

しかし轟はテープを凍らせ逆にテープを伝って天倉を凍らせようとする。

 

「っと!失敗か。」

 

天倉は心の中で舌打ちする。天倉は腕部分に個性を発動しテープをすぐさま切り、その場から離れる。

 

「2人とも、とりあえず今の所は作戦を続行するよ。」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

約10分前

 

「ッ!跳べ!」

 

目の前に氷が迫ってきていた。だが運が良かった、個性をフルで発動していなければ、下の階の温度が低くなっているのに気づかなかったし、反射神経もフルでなければ動かなくなっていたところだ。

 

「2人とも、大丈夫?」

 

『わ、私は平気だよ〜、天倉くんが跳べって言ってなかったら危なかったよ〜。』

 

良かった。どうやら葉隠さんは無事みたいだ。

ただし、葉隠さん"は"だ。

 

『悪い、遅かった。俺は無理っぽい。』

 

「ッ!マジか、氷は溶けそう?」

 

『いや、ダメだ。火でもないと溶けないぞコレ。』

 

・・・・尾白くんはリタイアか。

一応、事前に障子くんが自分の腕に自身の身体の一部を複製できることは、個性テストと複製した口で喋っているのを見かけて知っていたため

あらかじめはっきりとこちらの嘘の作戦を聞かせておくことができた。

 

そして個性によってこちらの聴覚を強化し、あちらの会話を聞くことができた。

あちらは轟くん1人だけで来るらしい。

 

うわー、余裕たっぷりじゃないですか、やだー。

ぶっちゃけ勝てる気出ないよ、コレ一瞬でビルを丸ごと氷漬けにするヤツだよ、絶対に勝てる気しないって。

 

『天倉くん!』

 

「何?葉隠さん?」

 

『こっちも負けてらんないね!頑張ろう!』

 

よし、何がなんでも勝ちに行こう!

↑女子にカッコいい所を見せたい男子の図

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

ただ、凍らせて来るだけならジャンプなり、廊下の角に逃げ込むなり、俺ならいくらでも回避できる。

・・・・・・ただし制限付き。

 

「チィッ!」

 

「(っと、今度は右の手の平から!)危なっ!」

 

「(・・・・やっぱりか、天倉のヤツ俺がどう攻撃するかわかってやがる。)」

 

さっきのは危なかった。

ピット器官でどの部位から氷、炎が出てくるのか体温の変化でわかる。

そのため轟くんの攻撃がどうくるかは予測可能だ。だが、あくまでこれは轟くんに対して相性がいいだけだ。

もし仮に相手が緑谷くんだと、ピット器官は意味をなさない。ただ、相手の体温を見ているため、緑谷くんのような個性とは相性が悪い。

 

とりあえず、逃げるべし、逃げるべし!

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

モニタールーム

 

 

「なんつーか、ワンパターンだな。」

 

「ああ、さっきから天倉が轟から逃げているだけだしな。」

 

「ええ、確保テープで捕まえようとしてもアッサリと破られちゃうしね。」

 

モニタールームでは、生徒たちと共にオールマイトが訓練の様子を見ていた。モニター越しの様子はどう見ても天倉が不利に見える。

が、しかし何人かは天倉と轟の一方的な戦いに違和感を覚える。

 

「けど、天倉も凄くね。轟の攻撃を全部避けているんだぜ。」

 

「どうやったら避けつつ壁を蹴りながら三回転半ひねりできるんだよ。人間じゃねーよ。」

 

「ですが少し妙です。あれだけの身体能力なら、轟さんから逃げ切ることなど容易なのでは・・・。」

 

「(そう、その通りだ。一見すると轟少年が優勢に見える。だが、それは違う。天倉少年はただ逃げている訳ではない。轟少年と一定の距離を保ちながら逃げている。)」

 

モニタールームではあちら側の音声はオールマイトにしか聞こえていない。つまり天倉の立てた作戦も耳に入っているということだ。

 

「(天倉少年の個性を考えると、少々分が悪いぞ。・・・・流石に大河の息子というだけはあるな。何がなんでも成し遂げようとするところがそっくりじゃないか。・・・・・性格とかは全く似てないけど。)」

 

オールマイトは天倉の身体能力ではなく、その目標を成し遂げようとするための大胆さに関心を抱いていた。

天倉は実行に移す前からすぐにネガティブな思考に入ってしまうため、精神はヒーローとして周りよりも劣っている部分が見れるが、何がなんでもやろうとする覚悟を彼はもっている。

 

彼の精神が大きく成長すれば将来は大物になるとオールマイトは予感していた。

すると、生徒たちが急にざわつき始めた。

 

「お、おい。天倉やべぇんじゃね?もう最上階まで追い詰められちまったぞ⁉︎」

 

「確かに、天倉ちゃん逃げ場はもう無いわね。」

 

「(さて、天倉少年、轟少年これからどうでる?)」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

とりあえず、最上階まで登って逃げてくることはできた。

だけど、そろそろ体力が限界に近づいて来た。腹もものすごく減ったし。

 

「おい、大丈夫か?さっきから腹の音が鳴り続けているぞ。」

 

「あ、うん。大丈夫。気にしないで、コレいつものことだから。」

 

「(いつもなのか?)」

 

さて、このままどうするか?制限時間までまだまだ時間かある感じだけど

それに・・・・。

向こうも何やら少々限界が近づいて来ているらしい。

轟くんの右半身の所々に霜がついている。推測するに、個性が強力な為使い続けると身体に影響がでる為、使える限界値があるということだろうか?

それにしては、さっきから右半身しか使ってないけど。

 

「そっちこそ大丈夫なの?氷しか使ってないけど、左側の炎は使わないの?」

 

「ああ、そうだな。そのせいで油断してまんまと、お前の策に嵌ったしな。障子にわざと偽の情報をながし、こちらの位置を特定すると同時に別の場所に誘い込む。核がある場所が最上階と聞いたが、お前の様子を察するに、核から一番遠い場所、一階にある核から俺を遠ざけるためにお前はわざわざ囮になるように俺から一定の距離を保ちつつ逃げてここまで誘導したんだろ。」

 

・・・・・・うわぁ、マジか。全部当たっている。

本当に勝てる気でないよ。そもそも俺に対してまだ全力も出していないのに、俺の策をあっさりと見破ったし。本当に勝てるのかなこのチーターに?

 

・・・・・仕方ない。これだけ注目されているならやってみるしかないか。これが奥の手みたいなものだし。

 

「それじゃあ、どうする?このまま一階に降りて、あるかもわからない核を見つける?それとも」

 

「今、その場でお前を倒すか?」

 

ああ、かなり自信満々だよ。ピット器官で轟くんの体温を見ているけど、左半身の体温がどんどん上昇していく。

 

よし。こっちも覚悟を決めるか。

俺は体制を低くし、前のめりになる。そしてそのまま全身に個性を発動する。

 

「(あっちが何を考えているのかわからない。だがわかるのは使ってくるのは炎ではなく、また凍らせてくる!)」

 

「(相変わらず凄い迫力だな。恐竜か、コイツ?)」

 

お互いの思惑は微妙にずれているが、一瞬の隙を見逃さないように構える。

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・冷たっ!」

 

「⁉︎」

 

「注意が逸れた?今だっ!」

 

背後から聞こえた声に注意が逸れた轟に喉元を食い破る勢いで襲いかかる天倉は両手を轟の顔の前まで伸ばす。

轟が気づいた時にはもう、遅かった。

 

屋内に破裂音が響き渡った。

そして天倉の掌は轟の顔の前で合わさっていた。

 

相手の目をつぶらせることを目的とした奇襲戦法"ねこだまし"だ。

 

天倉は全身に個性を発動しているため身体能力も上昇している。そのため

 

「っ!耳が!」

 

相手の耳に少しだが、ダメージを与えることもできる。ねこだましを天倉が自分の個性を上手く使い、アレンジしたものである。

※個性を発動してねこだまししただけです。

 

「今だっ!葉隠さん!」

 

「やっと出番がきたー!」

 

天倉は轟くんの背後に潜んでいた葉隠に伸ばした確保テープの端をそのまま投げ渡す。

 

「(くそっ、さっきの声は葉隠か!)」

 

轟は心の中で舌打ちするが、天倉と葉隠はお互いテープの端を持ちつつ円を描きながら轟にテープを巻き付けようとする。

 

「(よしっ!あともう少し!)」

 

その時、轟の左半身から熱気が溢れ、屋内の壁や床の所々についていた氷が溶け始めた。

それと同時に轟の身体に密着していたテープも燃え始めた。

 

「っ!葉隠さん、テープを離して!」

 

「うわっ!あちちちちち!」

 

屋内は熱気に溢れ、溶けた氷は熱され水、熱い湯になる。

そして葉隠は先程まで裸足だったためチャプチャプと音を立てながら足踏みした。

 

轟は葉隠の声、そしてチャプチャプとした足音の方向に対して右足から床にかけて凍らせた。

 

「ひっひえええ!さっきまで熱かったのに、また冷たい!」

 

「悪いな、こうでもしないとお前の場所を知ることができなかったからな。ここに葉隠がいるとなると、一階で尾白が核を守っているということか。」

 

今、この場には轟(本気モード)、天倉(体力限界)、葉隠(身動き取れない)がいる。実質は轟と天倉の一対一だ。

いや、ほぼ勝負は決まっている。誰がどう見ても轟の勝ちだろう。

しかし、お互いはそうは思っていなかった。

 

轟は天倉の作戦に何度も引っ掛かったため次は確実に慢心せずに天倉に負けたくないと、

 

天倉は轟と真っ向に当たれば負けると理解していたが、尾白と葉隠の分を取り戻したい。何より自分のプライドが戦わないことを許さなかった。

 

『轟、こっちの状況だが、』

 

「悪いな、今こっちの方を先に済ませる。」

 

『悪い、天倉。こっちだけど。』

 

「分かっている。だけど、これだけは譲れないんだ。」

 

2人の通信機から障子と尾白の声が聞こえるが、お互いこの勝負を途中でやめたりはしない。

これからお互いの意地がぶつかろうとしているのだ。

 

「(・・・・・あれ?私、ものすごく空気?)」

 

1人、ものすごいアウェイな空気に包まれていた。

 

互いのしびれを切らし、2人が踏み出そうとした瞬間屋内にオールマイトの声が響き渡った。

 

『ヒーローチーム WIーーーN‼︎』

 

「「・・・・・・は?」」

 

天倉と轟の思考が停止した。そして再び2人の通信機から連絡が入る。

 

『えっと、悪いな。天倉、お前らが戦っている途中に障子がこっちに来てさ、一応、足の氷は溶けかかっていたから核に触れさせないようにしたんだけどさ。』

 

『いくらお前が強かったとしても1人で行くのは危険だと思ったからな。しばらくして核を見つけ、尾白と戦っていた。なんとか核に触れることはできた。』

 

2人は通信機から何があったのかを聞くと、ものすごく気まずいオーラが吹き出ていた。

 

「(・・・ど、どうしよう。ものすごく気まずい空気に。)」

 

葉隠は気まずい空気にオロオロし、オールマイトはその場にいる生徒たちに声をかける。

 

『うん!障子少年よく頑張った!尾白少年もあともう少しだったな!おっと葉隠少女も出番は少なかったものの良い活躍だったぞ。そして・・・天倉少年、轟少年。えっと・・・お疲れさん!』

 

オールマイトからドンマイと言われるが、2人の耳にはオールマイトの言葉は入ってこなかった。

轟は自信が嫌悪する左側の力を使う寸前に追い込まれ自信の未熟さにショックを受けていた。

 

「(くそっ!何をやっているんだ俺は!これは訓練だぞ。それなのに油断して、こんなのじゃあアイツを見返すことなんてできねぇ。それに、天倉に全力を出さずに舐めきっていたなんてすげぇ失礼だしな。)」

 

そして天倉の場合、個性の副作用による空腹感、不完全燃焼による虚無感に見舞われていた。そしてどこからか出したIPPON満足のバーを頬張りながら天倉は呟く。

 

 

こんなんじゃ・・・満足できねぇぜ・・・。

 

 





注意。天倉くんは決して蟹、鴉、元王がいるようなチームには所属しておりません。ましてや満足ジャケットも着こなしてもいません。

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