フレイム中等部学園の生徒募集の最終日。
その日に学園の門を潜るのは王族や上級貴族といったエリート集団である。
彼等は前もって各自での魔法学習を修めたいわば経験者。だからこそ学園内にあるグラウンドに設置された練習場で自主的に魔法の練習をする他の生徒達を見てこう思う。ああ、あれは自分もやったな。と懐かしむ者や優越感に浸るものもいる。
そんな中、風の中級クラスの魔法を扱う少女。フィロ・ウィグロードは前者に当たる。
そんな彼女はグラウンドの中で異質な風を感じた。ちょうど試験も終わり、暇を持て余していたのでその違和感の正体を見るために足を運ぶとそこにはロープで区切られたグラウンドの一角に数本の槍がほぼ水平に突き刺さっていた。そこに勢いよく。文字どおり飛び込んできた同世代の少年の姿があった。
その少年は悔しそうに突き刺さっていた数本の槍を引き抜くと飛んできた方向に向かって勢いよく投げると「ぴょっ!」と変な声を出しながら投げた槍を追いかけるように飛び出した。
この一連の動作にはすべて身体強化の魔法が使われている。フィロは遠目にだが少年が投げた槍と少年がほぼ同時に地面に着地したのが見えた。
少年はまた投げた槍を回収すると先ほど同じように投げて「ぴょっ!」という奇声を上げて飛び出した。その距離は100メートルほどだが少年と少年の投げた槍は風を切り裂きながら空に舞う。
フィロは異質な風の正体が少年と投げた槍の風切り音だと気付いた。だが、この少年は何がしたいのかわからなかった。だが、少年が再び此方の方に飛び込んできた時には少年の着地した場所。足の裏には投げた槍があった。少年はフィロには気づいていないようだが嬉しそうな顔をしていた。そして槍を回収、投げて自分も飛ぶ。そしてついに少年は空中で投げた槍の上に乗ることに成功した。その嬉しそうな表情をしていた。
フィロはそれを見て確信する。彼は空を飛びたかったのだ。風の魔法を扱う者として分かる。空を自由に飛ぶ。その憧れ、感動は今でも鮮明に思い出せる。
彼は風の魔法の適正が無かったのだろう。だから身体強化の魔法で槍を投げてその上に乗り、疑似体験をしたのだろう。
そう考えているとまた少年は槍を投げて自分も飛んだ。
しかし、身体強化の魔法の配分を間違えたのか槍を飛び越して先に地面に着地する。それを追うように槍が少年の尻に目掛けて飛んでいき、
「アッーーーーー!!?」
フィロはもし彼がクラスメイトになったのなら優しく接しようと思った。
槍は刃引きしている模擬刀ならぬ模擬槍なのでアルフの尻は切れてないです。