俺はかめはめ波(攻撃)を諦めない!   作:さわZ

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第五話 私、脱いだら凄いんです。

「こちらが例の少年が殴り付けた鎧になります」

 

王都アポロにあるフレイム中等部学園に設けられた会議室の中央に置かれた鎧は、胸部装甲の部分がまるでハンマーで殴られたように大きな凹みがあった。

 

「この鎧は貴族。しかも勇者アポロの末席貴族の護衛隊員の物であろう?最低でも四等級。それを強化魔法込みでとはいえ素手で凹ませた?本当に魔法使い志望なの其奴?」

 

あの大喧嘩からアルフ達を中等部学園の寮に送り届けたあと、派遣隊員達は中等部学園の重役達にすぐ話を取り次いでもらうことにしてもらった。

アルフにファイヤーボールを放った少年は傷害の容疑で自警団の取り調べを受けている。城門前での出来事なので言い逃れが出来ない彼等は今頃こってり絞られているだろう。アルフも脅しのつもりとはいえ、強大な力を感じさせる魔法。かめはめ波を放ったが一直線にしか進まないその軌道から傷付けるつもりはないと判断されコレットと共にフレイム中等部学園の寮で待つように言いつけられている。

そして今回の議題がアルフが殴り付けた鎧になる。

鎧の強度にはランク付けがあり、勇者アポロが身に纏った炎帝の鎧。現国王もしくは王子が戦闘時に纏う国宝級の史上最高の性能を持った鎧や他国の国宝とされているローブを頂点に、将軍や参謀が身に纏う物を一等級。

将校や凄腕の冒険者が身に付けているのが二等級。

王都の精鋭部隊や有力貴族。その護衛騎士団が身に付けているのが三等級。

少しばかりお金をかけたりして市場にあまり出回らない性能がいい鎧が四等級。

新兵や中級クラスの人間が身に纏うのが五等級。

その中古や練習用の模擬刀や鎧がが六等級。

更に粗悪な物は七等級になる。

ちょうど真ん中のクラスの鎧を素手で凹ませた。そいつは土精霊と契約していてもおかしくない。だが未だに無属性である。

 

「其奴は闘士ヘクレスの末裔とか?」

 

闘士ヘクレスは勇者アポロと同時期に活躍した格闘家で土の大精霊ノームと契約したという伝説が他国には存在する。

土の大精霊ノームと契約したヘクレスはその豪腕でドラゴンの首もへし折ったという逸話がある。

 

「いいえ。彼はアルマーニという村で育った一般人の少年です。ただ・・・」

 

「ただ・・・。なんじゃ?」

 

「彼は幼少期。それも五歳位から体を急に鍛え始め、魔法の勉強。身体強化魔法を徹底的に鍛えたそうです。魔力切れで倒れるまでほぼ毎日」

 

「魔力切れで倒れるまでだと!?そんなことをすれば数日間は魔法が使えなくなるぞ!」

 

魔法使いの魔力は一日のうちで1/3から半分は回復するがすべてを使いきると体は動かせるが再び魔法を使うまでにかかる時間は数日から一週間近くかかる。これは魔法使いにとっては致命的。魔法が使えない魔法使いになんの得があるというのか。

そんな時ですらも、いやだからこそアルフは体を鍛えることをやめなかった。

彼等は未だに知らないが魔力も筋肉と同じように酷使して休ませるとその量が微々たる程度だが増える。更にはコレットの存在が後押しする。

最初は家事で疲れていた母親の役に立つ為に疲労が少しだけ軽くなるプチヒールを王都アポロの巡回隊員の一人と契約していた水精霊と仮契約をして覚えたのだが毎日毎日魔力切れか体力切れで倒れる寸前のお隣さんの子供に使うことにより肉体的疲労の回復の期間が短縮。更に雀の涙よりも少ないが魔力も回復する。

よってアルフの肉体と魔力は日々強化される。おかげでアルフの体脂肪率は常に一桁台である上に数年間積み重ねてきた魔力総量も半端じゃない。

 

「それに彼が使う魔法ですが宮廷魔術師までとはいいませんがかなりの(回復)魔力を持っています。他国に渡すには余りも惜しい逸材です」

 

「何?!そこまでの(破壊)魔力なのか!?いや、雲を突き破ったという報告があった。あれが本当なら・・・」

 

それから話はトントン拍子で進み、アルフは形式上は軽い試験を受けることになるが合格が確定した出来レースになることは確実になった。

 


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