俺はかめはめ波(攻撃)を諦めない!   作:さわZ

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第十二話 赤く染まった校庭。

 アルフが太陽拳の失敗から三日ほど過ぎた頃。

 アルフは校庭の真ん中で担任教師であるサトゥーの元でマンツーマンの居残り授業を受けていた。その前にサトゥーはかめはめ波(回復)を受けていた。そのお蔭で居残り授業は順調に進んでいた。

 

 「君の魔法は詠唱をした方がいいと思うんだがね」

 

 「詠唱ですか?」

 

 この頃ボケ始めていたため自分を頼る生徒がいなくなっていたためサトゥーもイキイキとアルフの為に教鞭をとる。

 

 「詠唱とはその術者のイメージを明確にしている。初級である『ボール』系の魔法もその言葉からイメージがつきやすい。己の魔力を球体にしやすくする。次に流れよ。轟け。飛べ。と命令することでその魔法に動きを持たせる。一見回りくどい真似かもしれないがそうする事でイメージが明確になり魔力のロスも抑えられる。これはこの学園に来る前の生徒達が気づかないうちにやっている」

 

 ふむふむと頷きながらアルフは以前やった太陽拳の事を尋ねてみた。そもそも自分の憧れた英雄達は詠唱などしない。気合一つでその技を繰り出せた。ある意味魔法とはかけ離れた物だ。だが、敢えてそれに詠唱を加えてやってみる。

 

 「日輪の力を借りて!」

 

 無敵な鋼の快男子の爽やかボイスが似合いそうな詠唱である。

 

 「誰よりも輝け!」

 

 違う英雄の技が出そうな詠唱である。

 

 「太陽拳!」

 

 「「ぎゃああああっ!目がっ、目がぁああああっ!」」

 

 ビカッ!とアルフの顔から凄まじい威力の光が迸った。その為、その目の前にいたサトゥー。そして魔法の術者であるアルフの目を光で潰した。それからしばらくの間のたうちまわった後、肩で息をしながらその後色々と議論した。

 

 「ど、どうやら君は自己強化型の魔法に特化しているようだ」

 

 「自己強化って?」

 

 「いわゆる無属性魔法だ。火属性ならその拳に火を纏ったヒートナックル。水なら氷を纏ったアイスナックルなどが使えるが君はまだ未契約だったね。というかそれしか出来ないからね。むしろ火属性に属する『ライト』が契約なしで出来るんだ。むしろそっちが異常だ」

 

 つまり、残像拳といった体を基本とした技の再現しか出来ないという事だ。じゃあかめはめ波。回復するという逆効果とはいえ使う事が出来るのはどうしてかと聞いたらイメージが完璧すぎるという点もあるが、未だに分からない所がある。

 かめはめ波を使った後は少しお腹が減るのだがそれはどうなのか?もしや自分の持つ熱量(カロリー)を燃やすことを強化してそれを放っているのではないかと論議を重ねるが答えは出ない。

 そうこうしていると日も落ちてきたのでもうそろそろ切り上げようとしたサトゥーに待ったをかける。強化系に特化しているのなら試してみたい技を一つ思い出した。それを試したい。

 サトゥーは先程の失敗を繰り返さないように離れる。かつどのような魔法(技)をイメージしているのかと聞いてみたら、それは身体強化の延長だという。

 アルフは中腰になり、魔力を全開で解放。ここまではコレットと共に試した残像拳と同じ。だが、試すのはここからが本番。

 

 「赤く燃え上がれ!」

 

 アルフの体から溢れ出す魔力に赤が混ざる。それは燃え上がる太陽の日のように。赤く力強い赤。

 

 「限界を極めし王の拳!」

 

 その技は彼の英雄が死から蘇る際に修得した王の技法。

 

 「界!」

 

 迫りくる巨大な悪を迎え撃つ拳。

 

 「王!」

 

 その技の名は・・・。

 

 

 

 ぴゅろろろろろろろ。

 

 

 

 3分後。

 全身を自分の血で赤黒く染め上げたアルフがサトゥーの手によって保健室に運ばれた。

 

 「アルマ先生!急患です!全身の穴と言う穴から血が噴き出してっ!」

 

 「それは大変。って、また君ですか!」

 

 あの英雄だって高重力と言う環境で修業してやっとの思いで修得。しかも使った後には全身筋肉痛で動けなくなるくらいの激痛に襲われたというのに、体を鍛えているとはいえ武闘家でもない少年のアルフが再現しようとしたら当然、不相応の報いとしてそのフィードバックとして全身から血が噴き出る症状にアルフは襲われた。というか使った時点で体がはじけ飛ばないだけ温情である。これが魔法と技術の差かもしれない。

 一週間のうちに二回も利用することになった血塗れのアルフ。保健医を務めているアルマに顔と名前を覚えられてしまう瞬間であった。

 


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