俺はかめはめ波(攻撃)を諦めない!   作:さわZ

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第十話 賢者サトゥーの復活

 学園生活一日目。

 朝起きたら自前の魔法で作った水で体を洗い着替えたコレットは、寮で出る朝食を取って、寮の玄関で前日に肉離れをしたアルフの面倒を見てくれた寮母さんに挨拶し、寮を出る。その際にアルフとの関係を尋ねられ慌てて否定した。他の寮生にも同じように尋ねられ、あたふたするコレットを寮生たちは微笑ましく見ていた。

 かくいうアルフはというと、コレットが起きる二時間ほど前に起床。今は穏やかな春の時期とはいえ、殆ど太陽が顔を出すのと同じ時間に起床。早朝の牛乳配達のバイトの帰りにパン屋に立ち寄り焼きたてのパンとバイトのあまりの牛乳を口にしながら寮に戻りシャワーを浴びて寮で出される朝食を食べてからの登校である。この間の移動方法はもちろん己の膝を高く上げたスキップをしながら。コレットが余裕をもって自分のクラスがある教室へ着くのに対してアルフは結構ギリギリに到着する。

 スキップしながらの登校で注目を浴びるがアルフは気にしない。むしろ英雄だってこのようにしていたとおぼろげながらに覚えているのでむしろ気分は上々だ。しかも今日から強化魔法を学べるのだから更にマシマシ。思わず鼻歌だって出ちゃいそうだ。

その途中で田舎もんだとか脳筋だとか同じ男性寮から出てきたひそひそ声が聞こえたが気にしていない。だってその通りだから。由緒正しき学園に何しに来たんだとか農民風情がという声も聞こえたが気にしない。確かに農民だしこの学園に来たのも強化魔法。しいては自分自身の肉体改造が主な目的だ。この学園に来る人達の大半は精霊と契約して立派な魔法使いになる事であり、けっして格闘家・武術家になるわけではない。

ちなみに魔法使いと武術家を比べると断然魔法使いの方が強い。何故ならロングレンジから狙えるから。アルフが夢想している武術家とその仲間たちほど強ければそうはならないが、というかあれも魔法の一種だと思う。人の体積でその何十倍どころか数千から数万倍もある山や大陸。星をも粉砕するのだから。

陰口は続く。何故ならこのむさくるしい男子寮に最短でも2年。長ければ5年は過ごさなければならないのにアルフといったらコレットといった可愛い幼馴染に連れられて女子寮まで連れて行ってもらったのだ。非モテや非リアにとってラブコメ的主人公は羨望と嫉妬の対象になるのだから。

あいつもしかしてえ初代国王のアポロと契約した炎の大精霊イフリート様と契約したいなんて考えてないだろうな。とか、そんな事で英雄になれると思っているんじゃないかといわれても気にしない。元より精霊と契約するつもりはないし国王アポロと比べるのもおこがましい大英雄になりたいと考えている。まあ、その考え自体おこがましいのだが。

そして、

 

「どうせ、あいつが目指している奴もそう大した奴じゃねえよ」

 

 と言われても気にしない。

 何故なら即座に身体強化魔法を使い、自分の目指している大英雄を馬鹿にした輩を『高い高い10Mバージョン』したのだから。

 登校日初日からアルフは悪口を言ったら体を掴まれて10Mの高さまで飛び上がりパイルドライバー(着地の時には地面すれすれで寸止め)するやべー奴だと認識を自分の事を悪く言う輩たちに植え付けるのであった。

 石造りの門と教室をくぐり自分の割り振られた机に座る。そこには横長の机に生徒が三人並んで座れるように配置された椅子。そして机の上には魔法の教本と茶色い用紙を十数枚挟んだノートが置かれていた。たった十数枚ということなかれ、この世界では魔法が発達する代わりに科学技術が遅れている。その為十数枚の紙でも高価なものであり貴重品なのだ。トイレの紙すらも未だに動物の皮かボロ布といった具合なのだ。まあ、アルフは勉強よりも実技の方に力を入れたいと考えていたからあまり必要ないかと考えていたが、良く鍛え、よく休み、よく遊び、良く学ぶ。この四段階の修行生活を変えるわけにはいかない。恐らくこれから学ぶのはアルマーニ村とは比べ物にならないほどの量と質だろう。だがこれくらい越えなければ大英雄に追いつけない。

 そう気合を入れ直してアルフは隣の席に座ったクラスメイトとの挨拶もそこそこにして勉強に取り組むことにした。

 

 「で~あるからにして~、んむ、どこまで話したかの?」

 

 (((おじいちゃん、そこはさっきも話したでしょ)))

 

 甘かった。

 まさか、自分のクラスを担当する先生があまりに高齢でちょっとあれだった。

 クラスメイトの自己紹介を二度もやろうとした時点で気が付くべきだった。このおじいちゃんちょっとボケが入っている。

 

 「え~、つまり、魔法とはイメージが大事なんじゃが、自分の力量にあった魔法を選択しないと使えない。で~あるからして、自己紹介を」

 

 「おじいちゃん。じゃなかった先生自己紹介は終わりましたから続きを」

 

 こんなやりとりも既に三度目である。

 

 「そうじゃったかな?魔法はイメージであり、自分のレベルより上を使おうとしたら威力や効果が薄まったり変質するのじゃ。で、あるからにして、儂の名前はサトゥーじゃ」

 

 「そうだね。おじいちゃん」

 

 この先生の名前を忘れる事なんて葉当分ないだろう。少なくても在学中は忘れられそうにない。

 

 「というわけで魔法という物はイメージが大切なんじゃ」

 

 (大事な事だから繰り返して言っているんですよね?我慢だ。我慢だ俺)

 

 ちなみにアルフはこの先生の真正面の席隣にアインという男子生徒がいるがアルフ同様にストレスをためている様子だ。まあそれはこのクラスにいる生徒全員の気持ちでもある。この何度も忘れるおじいちゃんにどうやって覚えさせてやろうかとイライラが募りいつの間にかアルフの右手にはかめはめ波の光がこもっていた。それは片手でも打てますと言う事とそれほどまでにイライラしているという事だ。

 

 「え~つまり、なんじゃったっけ?まずは自己紹介をしてみようかの」

 

 ぷちっ。とキレたアルフだけじゃなく数人の生徒の堪忍袋が。

 それはそうだろう。この学園に魔法を学びたい為に幾つもの試験を受けて合格したのに何でおじいちゃんの面倒を見なきゃいかんのかと。そしてアルフは誰よりも行動に出た。

 

 「これが俺の自己紹介だボケジジィイイイイッ」

 

 1年無属性の2クラスの教室が青白い光で埋め尽くされた。

 

 

 

 「大変です。かの賢者サトゥーが先日痛めた腰の痛みなどなかったように教鞭をとり、滑舌よく喋りながら授業しています」

 

 「まじでかっ?!一体何があったというのじゃ…」

 

 数年前国王から認められた賢者サトゥーだが高齢が仇になり、昨年の暮れからボケが始まり今年の学期が終われば退職させようとしたしたが、今の彼は最年少の教師にも劣らぬ活力に満ち溢れ教鞭を振るっていた。そんな中でアルフだけは涙でノートを濡らしていたという。

 




自分と自分の夢を貶す輩に対しての正当防衛。少なくても肉体的には殺傷はしていないからセーフ。陰口は悪い文明!

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