輪廻転生という事象がある。
別にトラックに轢かれただの神を名乗る存在のミスや道楽で死んだわけでもない。
ただ自我が目覚めた時、自分の前世を思い出した。
前世の親の顔は思い出せなかったが、ただ後悔だけがあった。ああすれば良かった、どうしてやらなかったのか。何をしなかったのか。すれば良かったのかも思い出せなかった。ただ後悔。その一念と、それに光を灯す大英雄の存在を思い出した。
少年は思い出してから直ぐに体を鍛えた。字を覚えた。
そして、自分の生きている世界観を知った。
ここは剣と魔法を使い、人と魔物が争う世界だということを知った。
全ては大英雄に少しでも近づく為に。
体を鍛えたのもそうだが魔法という存在。それはあらゆる生物が皆持っている魔力を練り上げて摩訶不思議な現象を起こす。何も無い所から火を出したり水を出す。
これには属性があり火に関係する魔法を使う者は火に関係する魔法しか使えない。属性は選べるらしく火に水。風に土。稀に光や闇とあるがまたの機会にしておこう。
少年は敢えてどの系統にも染まらない。無属性。出来ることは身体強化だけの魔法。しかもそれはどの属性でも使える共通魔法に分類される。
火属性が使えば手足に火を纏い目標を焼く。
水属性なら負傷した患部を癒す。
風属性なら文字通り風のように移動が出来る。
土属性なら岩のように体が固くなる。
だが、少年はどれも選ばない。
何故なら大英雄は自身を鍛えに鍛えぬいた、まさに無属性の頂点だから。
周りの者からも何でもいいから属性契約しなさいと言われたが少年は頑なに身体強化魔法。それ以上に己の体を鍛えた。
そして、自己流修行を始めて五年で遂に少年は大英雄の技の一つを会得した。
魔法を知り、応用の末出来た技だから純粋に会得したとは言い難い。だが、形には成った。
そして、翌日に控えた魔法学園への入学前の修行修めする。
イメージするのは最強の大英雄。
「か~」
体内の中にある魔力を増幅させながら独特の構えをする。
「め~」
右の腰に両手持っていき、魔力と共に《気合い》を込める。
「は~」
花が咲いたように開かれた手の平には蒼白く輝く光球が生まれていた。
「め~」
魔力と気合い。
その限界まで込められた光の球は真っ昼間の森の中でもう一つの太陽が生まれたかのようにも思えた。
「波ーーーーー!!」
光の球を押し出すように腕を前に突き出すと光の球から白い光線が撃ち出された。
それは目標にしていた苔が生えた大岩を覆いし、その後ろにあった木々をもその光の中に飲み込んだ。
そして、光が晴れたその先には・・・
目標としていた大岩を土台に色とりどりの花が咲き乱れていた。
更にはその後ろにあった木々には季節外れの果実が実り、更にはその射線上を偶然通りかかった猟師のおじいさんの肩こりが治っていた。
そりゃ、身体強化の魔法を撃ち出せば撃たれた生物は活力に満ち溢れるだろう。
「違う、そうじゃない」
大英雄の背中は遠い。と、感じる少年だった。
「オラの元気をわけてやる!」
攻撃ではなく回復魔法を修得した主人公でした。